Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

気づけよ……

2010/04/05 20:51:44
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 紅魔館地下図書館。
 紅魔館に住む魔女、パチュリーのものであるこの図書館は、もはや本の城とも言える広大さから、ほとんど外に出歩くことのない主が「動かない大図書館」とあだ名される由来にもなっていた。


 それはともかく、数日前のことである。
 珍しく紅魔館の外まで出掛けていたパチュリーは、図書館に入るなり信じられない光景とご対面することとなった。
 視線の先にはこの図書館で自分が使役している小悪魔が一人…………と、もう一匹。

「あ、パチュリー様。お帰りなさいませ~♪」

 小悪魔がいつもよりいくらか上機嫌さの混じった声でパチュリーを迎える。が、パチュリーの視線はそのひざの上に釘付けになっていた。

「こ……こあ…………それ、なに?」

 ようやく意識の主導権を取り戻したパチュリーがやっとのことでそれだけ問うと、小悪魔はわずかに口をとがらせて答えた。


「それ、なんて言い方しないでくださいなー。私の愛娘に」


 小悪魔は自分のひざの上で眠っている……えーと、小悪魔(小)の頭を撫ぜながら答えた。
 ぶーぶー、とでも言いたげな失礼満面の顔で反論されるが、パチュリーはそれどころではなかった。たった今とんでもない真実を知らされた気がするのだが、脳がそれを受けつけない。

(むすめ? 地底にそんなような妖怪が居た気がするけど、それの親戚か何かかしら。で、でも、こあにソックリなのよね……。むすめ、ムスメ、MUSUME、娘…………!?)

「そんな、嘘……あなた、まさか子持ちだったの…………?」

 パチュリーの驚き様に、今度は小悪魔が首を傾げる。

「ええ。……って、パチュリー様こそ、まさかお忘れになったんですか? 私は魔界に家族を残してここに来たんですよー?」
「そうだっけ……?」
「そうですよ! 愛する家族を残して召還されたんですよ、私は…………」

 よよよ……と、どうにも嘘くさい仕草(日ごろの行ないのせいかもしれない)で泣きに入る小悪魔。

 と、二人のやり取りが耳に入ったのか、小悪魔のひざの上で寝ていた小悪魔(小)が目を覚ましたようだ。

「ん…………おかーさん、おきたー」
「あら、目が覚めちゃった? まだもう少し寝ていてもいいのよ?」
「ううん、もうおきるー」

 いかにも母娘といった微笑ましい情景だが、パチュリーは何故か寒気さえ感じた。
 と、小悪魔(小)の寝ぼけ眼がパチュリーを捉えた。

「あれ? このひとだれ?」
「お母さんのご主人さま、パチュリーさまよ。とーってもえらい魔法使いさまだから、失礼なことをしないようにね。ほら、ごあいさつなさい」

 小悪魔(小)は小悪魔のひざの上からぴょこんと飛び降り、パチュリーの元に駆け寄る。そして、ぺこっとおじぎした。

「パチュリーさま、はじめまして。これからもおかあさまをよろしくおねがいします」
「え、ああ、うん。よろしくね……?」

 パチュリーから返事をもらえたことが嬉しかったのか、小悪魔(小)はその顔いっぱいに笑顔を浮かべて小悪魔の元へと駆けもどった。

「いままでも何度か来ていたんですけどねー。なにかとタイミングが悪くて、パチュリー様がいない時だったんですよー。ほら、あの天人の事件の時とか……」

 そう話す間にもじゃれつく小悪魔(小)をあやしている小悪魔。



(…………もう少し、待遇良くしてあげようかな……)

 柄にもなく、普段の自分を省みてそう思ったパチュリーだった。





◇◇◇◇◇◇◇◇



「…………っていうことがあったのよ」

 所変わって、紅魔館の談話室。
 紅魔館の面々、いつもの客(泥棒ネズミともいう)、そして普段は見かけない顔がそろっている。……が、パチュリー以外のメンバーは軒並みテーブルに突っ伏していた。レミリアの後ろに控えていた咲夜にいたっては立ったまま意識を飛ばしている。

「…………? 何か変な所あった? 今の話に」
「ああ……、とりあえずお前が今まで私たちが話していたことを全く聞いていなかったってことは理解した」

 どうやら全滅から一番に復活したらしい魔理沙が疲れたように言う。

「いんや、パチェのことだから聞いててもこれだわ、きっと」

 続いて復活したレミリアが否定する。
 親友の小馬鹿にしたか呆れているのか分からない言葉にむっ、と口をとがらせるパチュリーだが、うわの空で話を聞いていなかったのは事実なので黙っておくことにした。

「折角面白い話もあったのにー。朝一番に私の部屋に来るなり『フランなんかだいっきらい!!』って叫んだお姉様が私にきゅっとされそうになったはなしとかー」

 復活したあと何事も無かったかのように紅茶を飲みはじめたフランドール。

「ねえ、魔理沙。魔法使い、ってこんなにニブくても成れんの?」

 レミリアに招待されたのか、珍しく紅魔館にいる霊夢。

「全力で否定するぜ。魔法使いに必要なのは八割の努力と二割の勘と二割のひらめき、だ」
「私はそれよりもこの調子で賢者の石まで辿り着けたことに驚くわ…………。あなた、もしかしなくても天才?」

 魔理沙の隣りで最後までオチていたアリスが尊敬と驚きとなんだか色々と混ざった眼差しをパチュリーに向ける。
 さすがに我慢しきれなくなったパチュリーが拗ねたように言う。

「じゃあ、今まで何の話をしていたっていうのよ?」

 それを聞いた全員が示し合わせたかのように溜め息をついてから、声を合わせて言った。



「「「「「エイプリルフール」」」」」





「……………………え? あれ?」
「まったくー。いきなり呼び出すから何かと思ったら『エイプリルフールの手伝いして』って……。わたしにも予定があったのにー」
「あら、なんの予定?」
「当然、エイプリルフール」
「ならいいじゃない。十分楽しめたと思うけど?」
「たしかに楽しかったけどさー、わたしがお姉ちゃんの『娘』は無いと思う」
「そういうわりにはノリノリだったくせにー♪ うりうり~」
「にゃー! だきつくなー! なでまわすなー! はなしてー!」

 ~少女脱出中~

「あー、久しぶりに堪能したあ」
「はあ……、それにしても、あんなのでよく騙されてくれたよねえ……。ちょっと弱かったんじゃないかなあ、あれ」
「ああ……。パチュリー様相手に本気を出すとたーいへんなことになるから…………」
「……何があったの?」
「二十年位前のエイプリルフールに『かえってきたドラえもん』をやったのよ。わりと渾身の演技で」
「うわあ…………。んで?」
「気づかないどころか大泣きされちゃって……帰ってきたときにも言いづらくて『そのうちバレるだろう』と思ってたら…………」
「うん」
「ようやく気づいたのが三年前に思い出話になったときだったのよ…………」
「…………」
「…………」
「…………それ、他の人は気づいてたの?」
「『魔界に帰る小悪魔』のシーンでね、見送ってくれるパチュリー様の後ろの方でお嬢様と妹様が声も出さずに笑い死にしそうになってたわ」

「…………お姉ちゃん」
「なに?」
「わたしもここで働きたくなったんだけど」
「うん、私からパチュリー様に言っておいてあげる。ただし…………」
「え、なんかあるの?」



「パチュリー様が今年の嘘に気づいたらねー」
「あはは…………」



◇◇◇◇◇◇◇◇



 後のここあである。
 ってのはナシか、ここあは公式じゃないし。
 そんなわけで玖爾です。久しぶりに人形劇をやったら『こあくまに甘えるここあ』を幻視。そしてここに至る。なんでだ。
 エイプリルフールにも遅いけど後日譚になっているということでひとつ、勘弁してください。

 そんでは、また。
玖爾
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
パッチェさん可愛いなw騙されすぎw
2.名前が無い程度の能力削除
パッチェさんに萌えたww
3.名前が無い程度の能力削除
小悪魔(小)可愛いぜ
4.奇声を発する程度の能力削除
ここあ可愛いなw
5.ぺ・四潤削除
ここぁ萌えすぎだろ……マジでいたら誘拐我慢できないかもしれない。
人妻小悪魔もやべぇ……
最近笑い死ぬパッチュさん多く見てたせいか騙されパッチュさんが新鮮だww
6.名前が無い程度の能力削除
おいおいパチェ、気付けよ……
7.名前が無い程度の能力削除
というか妹がいたのかよw