※このお話はフィクションです。
実際の団体・人物・名前・出来事等一切関係ございません。
タグの表記通りオリキャラ女が出てきます。若いのにたまに煙草吸います。
その人物が話の結構な割合を占めるのと、鬱な展開がありますので、ご注意ください。
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「ん~、今日も1日良く寝て良く食べて良く働いたなあ」
与えられたシンプルな部屋に戻り、伸びを一つ。
そのまま、ふかふかに気持ちいいベッドにダイブする。
ボフッという音と共に、枕に顔を埋めた。
紅魔館の赤い髪色門番長・紅 美鈴は、夜勤の門番と交代し
本日の自分に課せられた仕事を終えた所だった。
カーテンを開け窓を見やると、そこには綺麗過ぎる程の満月がこちらを見る。
「…」
ふと何を思い出したのか、机の引き出しから鍵を取り出し、奥底に仕舞ってある箱を取り出す。
随分と色褪せてはいるが、赤や緑や青の宝石のようなモノが散りばめられており、
とても綺麗な箱だった事が伺える。
その箱をそっと膝上に置き、徐に鍵を開けた。
カチッ
中から取り出されたのは、布に巻かれた細長い何かだった。
「あれから、随分経つなあ…」
「美鈴、何やってるの?」
「わっ!?」
突然背後から声がしたかと思うと銀色髪のメイド長、
十六夜咲夜が立ち尽くしていた。
いつでもどこでも神出鬼没。
もう何年もの付き合いになるが、この登場の仕方は未だに慣れない。
「そんなに驚かなくても良いじゃない」
「だって…いきなり現れるんですもん。というか、ノックくらいしてくださいよ」
「何回叩いても返事がなかったの」
「お嬢様のお世話は…」
「今日は下がって良いと言われたわ。ところで、それ何?」
「あー、えーっとこれはですね…」
ポリポリと頬を掻きながら話をしていいものかどうか悩みながら、
最終的には説明する事にした。
その目には、静かな決意の色を宿して。
「これは、キセルというものでして、この火皿に刻み煙草を詰めて火をつけ、
この吸い口からその煙を吸うんです」
「へえ、初めて見たわ。かなり年期の入った代物のようだけれど
手入れが隅々まで行き届いているわね」
「ええ、こうして定期的にお手入れしてますので」
「でも貴女吸うの?」
「いえ、私は吸いませんよ。刻み煙草もないですし」
「ふーん。でも吸わない貴女が持ってるのは何故かしら」
「これは、私の持ち物ではないのです」
「じゃあ、誰の?」
美鈴は、真剣な顔をしながら、咲夜をじっと見据える。
「まあ…大切な人と言いますか」
「えっ…?」
「…いやまあ、話すと長いのですが」
「いいわ、続けて。その大切な人っていうのが気になる」
「実はこの帽子も大切な人の物なんです」
「…へえ」
「でもいいのですか」
「ん?何か話すると不味い事でもあるの?」
「私が今から話する事を聞くと、咲夜さんは、私の事を嫌いになると思います」
「・・・そんな事ないわ」
「普段はおちゃらけていますが、私は罪深い妖怪なんです」
「でも、私は貴女の過去を知らない。だから、聞きたいわ。
どんな話を聞くことになろうとも、美鈴は美鈴だもの」
「・・・有難うございます」
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では、昔の話をします。
昔と言えば、余り思い出したくないのですが、私が色んな意味で若かった頃です。
幻想郷へ来る前、私は「中(チュウ)」と言う名の国にいました。
その国での私はちょっとばかし、名の知れた妖怪でした。
何故か?それはまたこれからお話しますよ。
さて、妖怪と言っても私の場合は、今と同じ人の姿をしていましたので、
パッと見は妖怪だなんて分かりません。
人間の中に混ざっても、きっと一部の人以外は判断ができません。
妖怪の姿でも構わないのですが、人間の姿の方が何かと動きやすくて
私にとっても都合の良い格好でした。
そして、昔は随分と刺激を求める傾向がありました。
楽しい事や悪さをする事が好きで、色んな町へ入っては、
その中の一番強い者に喧嘩をふっかけて闘い、夜な夜な歩いては、
人間を襲ってその肉を喰らいました。
「!」
「…大丈夫ですか?」
「ええ、続けて」
では、話に戻ります。
その頃は欲もロクに制御出来ず、本能のままに動く。
とても飢えていたのです。
他の妖怪と比べると無駄な殺生はしませんでしたが、先程言ったように食べる事はしていました。
今とは全然想像付かないでしょう?
ある日の事、偶々入った街に、とても強い人間が居て、手合わせする機会が出来ました。
と言っても、私が一方的に仕掛けていったので手合わせも何もあったもんじゃなかったんですけどね。
奇襲を掛けた形になった(付け加えると、妖怪の中でも負け知らずの)私が、
その人間にいとも簡単に負けてしまいました。
てんで歯が立たなかったのです。
その人間は、李師匠と言いまして、実はただの人間ではなかったんです。
「どういう事?」
「つまりですね、」
咲夜さんと同じように、不思議な力を持っていたんです。
それは、気を操る程度の能力。
素早い動きで突進を仕掛ける私の剛の動きに対して、水の流れるが如く、体内に
流れる気を操り柔らかで自然な動きで攻撃を受け流す李師匠。
私は、こんなにも強くて綺麗に闘う人間を見たのは初めてでした。
人間の中にもなかなか強い奴が居るんだなあ、捨てたものじゃないなと感心してしまって。
気付けば私は、その動きを伝授して貰おうと李師匠に弟子入り志願していました。
いやあ、その後妖怪仲間にこっぴどく非難されましたよ。
元から変わり者だと云われていた私ですが、お前は妖怪としてのプライドは無いのかと。
私はそういう事には興味が無かったので、他人事のようにまあまあ、と宥めていました。
李師匠も私が妖怪である事を知っていても、あっさり弟子入りOKと言ってくださいました。
今思うと、何ともおかしい組み合わせでした。
変な人間の師匠と変な妖怪同士、気が合ったのかもしれません。
それからは、修行の毎日です。
汗をタラタラ流しながら、朝から晩まで他のお弟子さんらに混じって修行。
体力には自信があったので周りがバテている中でも、黙々と続けました。
「貴女の気を操る程度の能力は、李師匠のお陰だったのね」
「ええ、そうです」
そんな毎日を続けていたある日の夜。
私はフラフラと散歩するのが好きなので、繁華街の細い路地裏を歩いていました。
時刻は深夜。
辺り真っ暗の筈ですが、繁華街は眠る事を知りません。
人は絶えず通り過ぎ、ネオンや提灯の灯りが燦然と輝いていました。
カップル、フラついたおじさん、集団で屯する若者達。
スーツを着た男性。
化粧をし誰かに着いていく女性。
香ばしい、美味しそうな炒飯の匂い。
酒。子供。浮浪者。成金。犇めき合う老若男女。
様々な音や映像や臭いがどぎつく混ざり合ったその空間。
え?
何故わざわざそんな怪しい所歩くのかって?
まあそれは最初に話した内容に関係します。
キョロキョロと辺りを歩いていたら、まだ年端のいかないような人間の女の子が
怪しい店の前で客引きをしていました。
そういう女の子は繁華街の中に沢山居て、別段珍しい事でもなんでもなかったのですが、
私は何故か惹かれ、じっとその子を観察しました。
その子は虚ろな目をしていましたが、その瞳の奥を凝視するといやはや、
私でさえも驚く程ギラギラとした目をしていました。
一瞬、人間社会に紛れ込む妖怪と見間違ったかと思いましたが、
カンや匂いで妖怪か否かが分かるので、やはり人間に違いありませんでした。
私は引っ張られるようにして、フラフラとその子の前までやってきました。
『こんばんわ』
『こんばんわ。おねえちゃん、どうですか』
『んー、そうね。名前は?』
『…リオ』
『リオね。OK、買うわ』
買うと言っても私はその…咲夜さんが思っているような、そういう事はしません。
(どういう意味よ)
ただ、女子供の肉は美味しいので…
どうしてもお腹が空いて我慢ができなくなった時は、売られた子供をひっそりと食べました。
然しリオに関しては、私は食べたいと思いませんでした。
何故かはわからないのですが、食べる事よりもどこかへ連れて行ってあげたかったのです。
ずっとあの瞳の事が頭に残っていました。
私はリオの手を取って、そのまま歩きました。
すると店の奥から白髪の混じった男性が出てきてお金を要求してきましたが、
私はそんなもの持ってないので路地裏へ連れて行き、リオの代わりに食べました。
まずかった。とりあえず腹を満たせれば後はどーにでもなります。
怖がる事なく私の手を握るリオが、私に尋ねました。
『どこへいくの?』
『こんな所抜け出して、私と一緒に色んな所へ行こう』
『・・・うん』
『あれ、どうしたの?嫌?』
『ちょっとまってて』
リオは、店へ戻り、キセルと箱と小さなボロボロのカバンを持ってきました。
『吸うの?』
『うん。わたしの、ふたつだけのタカラモノなの』
そういって、リオはにっこり笑いながらカバンに仕舞いました。
店に売られた子供は殆ど何も与えてもらえないので、
ごみを漁っては使えるものを持ちさって自分のものにします。
その粗大ごみの中にあった、綺麗な色をしたその箱に惹かれたのだとか。
私は、なるほどと思いながら、自身も人ごみの中から
リオを見つけた事を嬉しく思いました。
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そこから、二人旅が始まりました。
色んな山や川や海や村や街に入り、襲ってくる妖怪や人間からリオを守り、
気に入った場所が見つかれば、そこに長期滞在もしました。
仕事をしてお金をもらうという事も覚え、
仕事を斡旋している建物を見つけては、顔を出して仕事に精を出しました。
私はリオと共に新しい事を覚え、
それらがとても新鮮で、とても楽しくて、とても充実していました。
その頃から、何故が私は人間を食べようと思わなくなり、
代わりに人間と同じ食事を取るようになりました。
一緒に魚を取っては焼き、狩りをしては毛皮を取ったり干し肉にしたり、
果物の木を見つけては、登って取り、その実を頬張りました。
リオは読み書きもできなかったので、自分が師匠の元で習った文字を地面に書いて教え、
拾った本を教科書代わりにしました。
そうしてリオは段々と大きくなり、子供から、綺麗な女性になりつつありました。
たまにあのキセルを吹かしていますが、その姿が何とも様になってきました。
道行く人とすれ違うと、こちらを振り向く男性がちらほら見えるようになりました。
私は変な虫がつかないよう、警戒しながらリオの周りをぐるぐる回り、
その度に大丈夫だからとリオは笑うのでした。
そんな楽しい毎日でしたが、楽しい事ばかりではありませんでした。
リオが大きくなると共に、その身体に異様な斑点ができ始めました。
私は、治るかもしれないという思いから、毎日リオに気を送り続けました。
気を送っている間は、とても穏やかな顔になるのです。
然しその斑点は消える事はなく、街の医者に見てもらっても、分からないと言いました。
時々苦しそうにするリオに、私はただただ、気を送る事しかできませんでした。
『美鈴』
『何?』
『私と一緒に旅して、楽しい?』
『楽しいわよ。一日過ぎるのがとても早く感じる。どうしたの?』
『いや、ちょっと気になっただけ』
『遠慮せず、何でも言いなね』
よしよしと頭を撫でてあげると、くすぐったそうにして頬を赤く染めるリオ。
『・・・じゃあお言葉に甘えて。美鈴は、妖怪よね』
『うん、そうね』
『私は、人間よね』
『そうね』
『人間と妖怪って、・・・結ばれるのかな』
『?』
『変な事聞いたわ、今のは忘れて』
はにかみながら、しかしその目はどこか寂しそうでした。
旅をしながらリオを治せる医者を探し続けましたが、皆、首を横に振るばかりで、
寧ろ呪いだ何だと言って遠ざかり、リオに触れようとしませんでした。
私は無断で出てしまった李師匠の元へと戻り、
治せるかもしれないと門をたたきましたが、師匠はもうこの世に居ませんでした。
案内されたお墓の前で、私は師匠の名前が刻まれた墓碑をじっと見つめました。
リオは、心なしか背中をさすってくれました。
取り次いでくれたお弟子さんの一人が、何かを持ってこちらに来ました。
『貴女が帰る事があるならば、これを渡してくれ、と』
それは師匠の身に着けていた、龍星のついた緑色の帽子でした。
私はそれを被り、師匠と弟子さんに深く頭を下げ、その街を出ました。
ぜえぜえと息苦しそうにするリオを抱きかかえながら、私は歩き続けました。
私と一緒に来たから、こんな事になったのだろうか。
連れて行かなければ、良かったのだろうか。
あの時、すぐに出発せず師匠の元に戻ればよかったのだろうか。
後悔ばかりが、私の心に募っていきました。
ふうっとリオが吐いたキセルの白い煙が、
ゆらりゆられて夜空の彼方に消えていく様を眺めている時でした。
『美鈴』
『・・・何?』
『元気が無いわ、どうしたの?』
『そうかしら、大丈夫よ。何でもないわ』
『それならいいのだけれど・・・ねえ、美鈴』
『何?』
『私は、貴女と一緒にここまでこれて本当に良かったと思ってる』
『・・・』
『あの場所でずっと居て過ごしていれば、私はここまで生きれなかったと思う』
『・・・どういうこと?』
『あのね。あの場所の子供達は皆、今の私のように斑点ができて、早死にするの』
『・・・!』
『原因は分からない。けれど、あの場所で生きる以上、逃れる事はできないみたい』
『リオ・・・』
『それで、ね。美鈴』
『うん』
『私、美鈴と色んなところへ行って、色んなものを見て、色んなことを知って、
そして、気づいた事があるの』
『どんなこと?』
『私ね、貴女の事が、どうやら好きみたい』
『・・・?』
好き・・・?
その意味がわからず考えあぐねていると、リオは私の両肩を掴みました。
『どうしよう、傍に居たいのに、ね』
『リオ?』
『ずっと、傍に、居たい』
リオは泣きながら、私の胸に顔を埋めました。
私はどうしていいかわからず、その涙を舐めました。
昔から、リオが泣いた時に、無意識に頬に流れる涙を舐めてあやしていたのです。
野良妖怪の本能みたいなものですかね。
その時の背中に回された両手が、妙にあたたかかった。
私は、その後も、好きという事がどういう事なのか、最後までわかりませんでした。
・・・その後、暫くして、リオは息を引き取り、
私の心にはぽっかりと大きな穴があきました。
虚無感。
悲しみ。
寂しさ。
怒り。
リオという存在が、いつの間にか私の中で大多数を占めていました。
初めて泣きました。泣くという事を理解しました。
いつしか自暴自棄になり、己を傷つけ、とある屋敷の最奥の部屋に
自ら鎖をつけて縛りました。
私は頑丈だったので、いくら傷つけても死ぬ事はありませんでした。
その後、数百年の月日が流れました。
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「誰かに呼ばれた気がして目を開けると、そこに今のお嬢様が居て、私を解放してくれました」
「・・・、それで、門番になったの?」
「はい。その時は反抗していましたが、今あんたを無くすのは惜しいと言ってくださって。
今ではとても感謝しています」
「そう」
「・・・咲夜さん」
「何かしら?」
「とても重い話をしましたが、咲夜さんは文句も何も言わず、黙って聞いてくれた。
私は、改めて過去と向き合う事ができました」
「ええ」
「どうも有難うございます」
「どういたしまして」
「そして今の私ははっきりと、好きという気持ちがどういう事なのか、わかりますよ」
「・・・どういう事?」
「こういう事です!それっ」
「ちょ、ちょっと美r!」
あはは、と笑いあいながら、何故か枕投げが始まりました。
ひとしきりほたえた後、咲夜さんは、私の頭を撫でながら言いました。
「嫌いに、なれないわ」
リオと、師匠へ。
ようやく、過去の自分から一歩踏み出せそうです。
自分自身キセルを余り知らないのでちょっと調べたのですが、
色々な長さや模様や素材を使ってるみたいですね。管の部分は竹や、金属の素材で造っているそうです。
おじいさんが吸ってるイメージがありますが、女性が吸っても絵になりそうな気がします。
>2さん
コメントどうも有難うございます、色々と書いてくださってとても有難いです。
書けた満足感でいっぱいになってしまいましたが、
走り書きした部分もありますので内容としても薄っぺらいと思います。
心理描写とても難しいです、辞書で調べはするのですが心理描写という言葉自体
自分の中でよく理解できてなくて、表現の仕方がもう一つ分かってないです。
時代設定に関しても、
原作を無視したど素人の勝手な妄想で書き上げています。
すいません。
でもこうしてご意見頂けるととても嬉しいので、また機会ございましたら、宜しくお願いします^^
今後に生かすことが出来たらと思います。重ね重ねになりますが、どうも有難うございます。
オリキャラ少女と美鈴の話がとても良かった。
それはともかく、いい感じでした。
よかったですか、嬉しいです。
個人的にこういった話が好きなので、書いてみた次第です。
どうも有難うございます!
>5さん
アドバイスどうも有難うございます。
自分がどういった話量にしたいか、それによって流れもまた変わってくるといった感じですかね。
んー、どう決めるか、それもまた難しいところです。
いい感じと言ってくださって有難うございます、嬉しいです!
流れるテンポとクールだけどどこか人間味のある美鈴が良かったです!!
日が空いている投稿物にも関わらず、お読み頂きどうも有難うございます^^
バンドのイケメソ先輩が吸ってらっしゃるんですね、なかなかお通な感じに見えますよね、キセル。
内容としては淡々としてましたが、それでも良かったと言ってくださって有難うございます!