Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

鬼に瘤(こぶ)を取らる

2009/10/22 23:52:49
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「あんた鬼と戯れ言ってことわざ知ってる?」
「ああ知ってるさ。それは私がパルスィに愛を囁きかけるって意味だろう」
「ほんとその脳天気な頭が妬ましいわね」

鬼と戯れ言。
親しくされればされるほど、かえって気味悪く感じることのたとえだ。
いや……今の私の感情は気持ちが悪いか……?
最近こいつがやけに馴れ馴れしく私に接してくる。
旧都を統括する怪力乱神、星熊勇儀。
今も後ろから抱きつかれる体勢で私はされるがままだ。

「パルスィのほっぺたぷにぷに~」
「頬ずりするなぁ!角があたって痛いわ!」
「パルスィの耳……ふぅ……」
「ふわぁ……!耳に息を吹きかけるな!」

ほんとに鬼の首を取ったようにはしゃいで私に接してくる彼女が妬ましい。

「なんであんたは最近毎日ここに来るのよ!」
「それはあんた……言わせる気かい?」
「そんな艶めかしい顔をするな!」

はぁ……と深い溜息をつく。
嫉妬心を操る能力のある私はこの地底でさえ忌み嫌われる者として避けられていた。
そう……避けられていたのだ。
しかし突然彼女がここに来るようになった。
最初に会ったときは勇儀のその軽いノリとまばゆいばかりの笑顔を妬み、罵り、彼女をまさに鬼を一車に載すように怒らせて追い返した。
だけど私は勇儀のように楽しそうな奴に対して妬まずにはいられないのだ。
それが自分が孤独で忌み嫌われている原因だと分かっているのだが、それが自分の性なのだろうやめることができない。
だから今回もいつも通りまた私が嫌われるだけだろうと気さくに話しかけてきてくれた彼女を申し訳なく思いながらそう考えていた。
しかし彼女は次の日も来たのだ。
しかも昨日の事がまるでなかったように。
彼女に何故昨日あんな事を言った私の所へまた会いに来たのかと聞いたら
「お前に興味がわいた」
と一言。
私は呆然として
「はぁ?」
と一言。
この時の私の顔は生涯で一番まぬけな顔をしていたに違いない。
それは彼女がまた会いに来た事実と彼女の発言によるものだ。
昨日さんざん妬んだ私からどこをどう見れば興味がわくのだろうか?
そう訪ねたら全体的に、と言われさらに私は混乱した。
そしてその日から彼女は毎日私の所に来るようになった。
会いに来てはとりとめもないことを楽しそうに私に話して帰って行く。
私といて何が楽しいのだろうか?
そう訪ねたらお前といるだけで、と言われ何故か私は顔を真っ赤にした。
そして告白をしてきたのが最近。

「パルスィ!私の妻になってくれ!」
「お前は旧都へ帰れ!」

まさかの告白である。
ただこのどっかの魔法使いの弾幕のように強烈な告白を冷静に一蹴した私もえらいと思う。
だれでもいいから誉めて欲しい。
しかしその後も彼女はあきらめず毎日ここに来ては愛を囁やき、馴れ馴れしいスキンシップをするのだった。

「なぁ……そんな私が来るのが嫌か?」
「………………いやよ」
「なんだその間は?」

正直言うと彼女がこうやって接してきてくれるのは嫌ではない。
今までの孤独に生きていた私の生活ががらりと変わっている今を実は内心喜んでいるのだ。
だから嫌では無いのだけど……。
ただ彼女との接し方がいまいち分からない。
ただでさえ人付き合いの少なかった私に対して彼女はゼロ距離接近をはかってくる。
だから戸惑ってしまうのだ。
私は嫉妬を操る妖怪。
彼女とこれ以上距離を縮めてしまえば自分が嫉妬に狂い勇儀に迷惑をかけてしまうかもしれない。
内心彼女ともっと近づきたいと考えているだけに私はあれこれ相手の事を思ってしまう。
だから最近は孤独に生きてきた時よりも私はある意味苦しんでいるのだ。
どうすればいいのか全然分からなくて……。

「ほんとどうすればいいのかしら……」
「籍をいれればいいんじゃないのか?」
「あぁ!もう!あんたは真剣に人が悩んでいるというのに!」

あぁほんとにこいつが妬ましい。
勇儀が私のことを気にして悩んでいると言うことはきっとないのだろう。
ただ私に接して楽しんでいるだけに違いない。

「はぁ……もうあなたのせいで最近逆に不幸な気がするわ」
「うむ……。そうか」
「そうかってあんたね……」
「鬼に瘤を取らるってことわざ知ってるか?」
「へ?」

今日わたしがしたように突然彼女がことわざの意味を聞いてくる。
しかし私はそのことわざを知らなかった。

「ど……どういう意味よ」
「今パルスィは私といて不幸だと思うんだよな」
「…………そうよ」

するとニカッと勇儀は最初に会ったときのようにまぶしい笑顔をみせた。

「つまりそういうことさ」
「どういうことよ!」
「籍をいれれば万事解決って意味だ」
「絶対ちがうわ!」

はぁ……とまた深い溜息をする。
こいつといると悩んでうじうじしている私が馬鹿のように見える。
このノリに巻き込まれて見るのも悪くないかもしれないと思ってしまっている私が恐い。

「とにかく私がお前の瘤をとってやるから心配するな」

とりあえずこいつのように何も考えないでもう少しこのまま一緒にいるのも良いかもしれない。
鬼に瘤を取らる:一見して不幸になっているようで実は幸運でしたって意味。

鬼が出てくる話しを鬼のことわざを使い物語を作るという無茶な話しをお読み頂きありがとうございました。
豆柴
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
少なくとも無茶ではない
2.名前が無い程度の能力削除
面白い…結構鬼が入った諺ってあるんだね…
3.名前が無い程度の能力削除
おい大変だ、この話まだ途中だぜ
二人が結婚するとこまでいってない
時間の問題だけどな!