Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

けももも

2008/12/05 04:30:33
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☆けもみじ くちばしゃめいまる
  








「早苗さんの手ってすべすべで可愛いですよね」
「椛さんの手だってもふもふしてて気持ちよさそうですよ」

 妖怪の山の白樺の木の上で。
 風祝と白狼天狗が雲を眺めて日向ぼっこ。

 眼下に広がる幻想郷は枯れ草色。
 木々は残らず葉を落とし、山の稜線が二重に見える。そんな季節。
 今日の空気はずいぶん温くて、秋の最後の悪あがきのよう。
 それでも麓から吹き付ける風は時々強く二人に吹きつけ、日差しで温められた体温を奪う。


 だから。


「もふもふ~」
「ああ、もう、急に抱きつかないでくださいよ。びっくりします」
「んー」

 人間の少女は、白狼の天狗装束の首元から覗く、ふかふかの毛皮に向かってダイブする。
 そのまま顔を胸にうずめて、そのほわほわの毛並みを存分に肌で味わう。
 つめたい冬の空気の匂い、知らない不思議なお香の匂い。それに混じって椛の匂い。

「今日もほかほかですねぇ…」
「もう…」

 すんすん、とまるで犬のように匂いをかがれて、照れる椛。
 とん、と真っ白な毛に覆われたマズルを早苗の頭に乗せる。

「そんなに、気持ちいいものなんですか?毛皮って」
あごを頭に乗せたまま、聞く椛。

「気持ちいいんです」
 むな毛の中からフゴフゴと、早苗が返してくる。

「今日はまたいちだんとふわふわで気持ちいいんです」
「そうですか?」
「むっちむちの冬毛~」
「あ、ちょっと。ああ、もう!」

 腰にまわされた腕が服の上から毛皮をもみもみ。
 耳がへたりと下へ垂れる。身悶えたい衝動に駆られる椛だが、今居るのは木の枝。暴れたら双方落下。だからもみもみされるまま。

 そうやって椛が我慢しているのを早苗は分かっている。だからこそ、思う存分もみもみふかふかするのだ。まるで椛をいじめているような、ちょっぴり背徳感のある幸せな感触がたまらない。
 ちょっと身じろぎして、改めて、顔を胸にうずめる。
 柔らかな毛が顔の上を流れていく。時々まつ毛に引っかかったり、鼻の入り口をなでて行くこそばゆい感触。
 毛皮のない、つるりとした肌を持つ人間であるからこそ味わえる感触。
「ああー」
 この幸せな時間が、いつまでも続けばいいのに。
 ぎゅう、と椛を抱きしめる。


 そう思うからこそ幸せな時間は続かない。

ばきり

「ふえ?」
「あ」

 突如響いた破砕音にぎくりと首をめぐらせた二人の上から、黒い羽がはらりと舞い落ちる。

「あやややや、お熱いわねぇ、お二方…ああ、熱い、熱い。なんてことかしら。ここだけ真夏のような熱さだわ」

 嫉妬まる出しの低い声。
 見上げれば、一羽の鴉天狗が空中に仁王立ち。
 くちばしをぷえ、と開いて吐き出したのは砕けたペンの軸。
 黒い羽毛に覆われた顔の中で、さらに黒い瞳がギラリとこちらを睨みつけている。
 口調は敬語なしの天狗モード。
 やば、と椛がつぶやいた。尻尾がくるりと下を向き、ひげがへたりと垂れ下がる。

 そんな椛の様子を知ってか知らずか、早苗は射命丸に微笑みながらのたまった。
「あ、こんにちは射命丸さん。どうです?ご一緒にもみもみしません?」
「ええい、黙らっしゃい!さんざ私のもみちゃんをもみもみしといてまだ足りない?あなたもう十分もみちゃんのふかふかを堪能したでしょう!今日はまだ私もみもみもふかふかも味わってないのよ!こんなに天気のいい日なのに!ああ、憎たらしい。憎たらしい!世が世ならねえ、あんたみたいなおいしそうな人間なんか、さらって捌いて夕飯のお鍋なんだからね!」

 ばっさばっさと上下に羽を振り回し、くえー!とくちばしを開いてまくし立てる射命丸。鋭いくちばしの先端がカチカチ鳴っている。肉なんて簡単に切り裂けそう、まるで黒曜石。でもその中から厚くて短い舌がチロチロ覗いていたりして、いまいち怖さに徹底感がない。

「わたし、美味しそうだそうです。そうなんですか?椛さん」
「え、え?」
「おいしそうな匂い、します?」
「いやあのっ」
「もみちゃん…っ!」

――――頼むから、頼みますから文さんをあおらないでくださいっ…!
 椛の心の声は早苗には届かなかった。
 涙目でキリキリくちばしを鳴らす鴉。あやしげな笑みを浮かべてしな垂れかかる早苗。
 引くも押すも出来ない狼は、ただただひたすらもみもみされるのみ。
 早苗はそんな今の状況が、楽しくて仕方がなかった。 
 




 一年前。
 希望と恐怖を胸に神様と一緒に飛び込んだ世界は、不思議の国だった。
 

 切れ長の瞳、細い鼻。目が覚めるような美人の狐。
 ビロウドのような毛並みの、イタズラっ子の猫又。
 小さなくちばしをいっぱいに開いて、賑やかな歌を歌う夜雀の少女。
 それに聞き入るエメラルドの瞳の蛍の少女。
 銀と金、きらめく毛皮の吸血こうもり姉妹。
 どこか悲しげな眼をした長身の兎と、細められた目が果てしなく胡散臭い垂れ耳兎のコンビ。
 機械油で真っ黒な水かきに、ケアは大切だよと鼻歌交じりで軟膏を塗り込む河童の少女。
 そして、真っ白な毛皮の白狼天狗達に、墨よりも黒い、夜の闇で染めたような羽毛の鴉天狗達。
 そんな者たちが闊歩する、人妖入り乱れるまだら模様の不思議の国。 

 普通の人間として生きていく、だけではなかった。
 彼らに囲まれた早苗は、ここでは「人間」という普通の生き物として、生きていくことになったのだ。
 
 最初は、怖くてたまらなかった。でも、今では楽しくてたまらない。
 その昔、人と動物が言葉を交わし、笑い、いがみ合い、愛し合った神話、昔話の世界。
 そんな、日本の原風景の一員として暮らせることが、早苗は楽しくてたまらない。








「うふふ、そうですか。どうあってももみちゃんから離れないと。うふふ、解りました。よーっく解りましたよ…」
相変わらずばっふりと椛にくっついたままの早苗に、ついに射命丸が団扇を取り出す。
「解ったらどうするんです?あきらめてくれますか?それとも…」
早苗も懐から大幣を抜く。その意思表示に射命丸はすう、と目を細めた。
「ほほう、人間の子娘がこの私とやり合うつもりと?これはまた命知らずな…」
「人間の子娘だからって甘く見ない方がいいですよ。現人神の奇跡の力、その身に味あわせて上げましょうか?」
団扇の陰から見下ろす視線に、早苗は不敵な笑みを浮かべて対抗する。

「あのう…文さんも早苗さんも落ち着いてください…ね、お願いですから」
『黙ってて』
「あうう…」
ぴすぴす鼻を鳴らしながらとりなそうとした椛だったが、もふもふに魅せられた少女達に一言で退けられた。

白樺の枝に椛を残し、早苗は空中で文と対峙する。
「覚悟はできた?人間」
「そちらこそ、天狗様」
「二人ともー、くれぐれも怪我しないでくださいねー。枝に気をつけてくださいよー。木の葉っぱはもうないですしー」
椛の心配そうな声を受け、二人の少女はニヤリと笑うと、スペルカードを引き抜いた。
「椛の新毛もみもみは私のものよ」
「ご自分の羽で十分でしょう?欲張りはいけません」
「……」
「……」
「…ふん」



「ミコ鍋にして食ってやる。剥いてあげるわ、生意気な風祝め!」
「剥かれるのはそっちです!その羽綺麗に毟ってあげますよ、焼餅焼きの天狗様!」

初冬の空で、風使いの少女達が弾幕勝負を開始する。
「なんて口上ですか二人とも…」
落ち葉と一緒に椛のつぶやきを吸い込んで、山に爆風が渦巻く。


今日も、妖怪の山は平和だった。












****** 天界のどこかで ******

体の前で手を組んだ竜宮の使いの前で、羽衣で拘束された青髪の天人が正座をさせられている。
竜宮の使いの手には、半ばから折れた「初物」と書かれた小旗。

「総領娘様?何か申し開きなどありますか?」
「な、なによ、軽い冗談でしょう!塩と七輪を枕元に置いたくらいでそんなに怒ること無いで、あたっ」
「まな板と出刃包丁も置きました」
「そ、それは忘れたのよ!置き忘れたの!昨日の夕飯の後片付けのあぶっ」
「昨晩は根菜の煮物でした。見苦しい嘘はおやめください」
「信じないっての?天人のこの私をぶっ、って、ちょっと!いい加減尾っぽで叩くのやめてよ!なにか飛沫が飛んでくはあんっ」
「旗を置いた時点で確信犯でしょう。さて、申し開きはないようですね。それでは失礼いたします。覚悟はよろしいですか?」
「あ、あんた、天人にこんな仕打ちをして許されると思ってっ、何出してんの?ちょっと、それ、それは無いでしょう!いや、いやあ!こないで!あ、あやまる、謝ればいいんで――――」
「棘符『雷雲棘魚』」
「巻きついてそれはやめてえええええええ!」

今日も雲の上は平和だった。


獣人も幻想なら並行世界のどこかにケモ幻想郷もあるかなぁ、と。
エ○レンジャー程度の獣人度のつもりで書いてますが、そこはお好みで増減を。

わんこの冬毛のむちむち感は何物にも換え難いものだと思います。
コメント



1.謳魚削除
けもけもしてるという事は永遠亭と地霊殿はほんわかしまくりとゆー事にっ!
2.名前が無い程度の能力削除
リグルとヤマメあたりがヤバいことになってそうでこわい
3.名前が無い程度の能力削除
手が4本か足が4本か…まさか手だけが6本あるとか!?
4.名前が無い程度の能力削除
こういうのもいいですねぇ
5.名前が無い程度の能力削除
もみさな美味しいです^q^