ワタクシ。上白沢慧音は現在
「慧音ー!! 慧音ー!!」
とある理由で
「けーねー!!もう学校は終わって来てるんだろー?」
妹紅の家の台所の戸棚に隠れている。
「けーねー!!まだ来てないのー?」
ああ、妹紅が呼んでいる。そう、妹紅が私を…もこたんが私を!!
「も……っ!!!」
「慧音!?」
しまったぁあああ!!ごまかせ!!ごまかすんだ!!早くしろ!!脳みそを回転させろ!!歴史を弄って無かったことにしろ!!とりあえず居ないことをアピールしろ!!ハリーハリーハリー!!
「……い……いませんよー」
「なんだ。気のせいだったか……」
よし!居間に戻ってくれてる。しかし危ない。つい応えてしまうところだった。
「そうか。まだ来てないのか……」
ああ、もこたんごめんね?でもこれももこたんが可愛すぎるのがいけないんだよ?もこたんは私の居ないときに何をやってるのか?私のことを普段はどう話しているか。独り言でなにか言ってないか?
そして……
私のもこたんを掻っ攫おうとする泥棒猫を排除するため……。
ぺしぺし
むむ、いかんいかん。思想が危険な方向に向き始めてしまった。これは違うぞ?妹紅の家に行ってみたら誰も居なくて物色…じゃなくて、妹紅を探してたら玄関から声がして、吃驚してしまい、つい戸棚の中に…。
こうなったら出辛いものだ。一時様子を見て抜け出そう。
重ねて言うが「一時」だけだ!そう!様子を見るのはほんの少し……。
「慧音どうしたんだろ?」
戸棚の隙間から妹紅が見える。私の心配をしてくれてるのか?なんて健気な!私は幸せものだ。
「ちょっと見に行ってみようかな?」
まったぁぁぁああああああ!!!行くな!行かないでくれ!!まだぜんぜん観察できてないぞおおおおおおおおおおお!!!!
…げふんげふん
そ…そうだな。ずっと待たせてるのも悪いしな。ここに居る限り出れないのに探しに行かせるのは不毛なことをさせてるわけで……。
そうだ!
ひゅるるるるるるる……スコン!
「あいてっ!? なんだ?紙飛行機?なにか書いて…用事ができて来れなくなった☆上白沢慧音…星がうぜぇ」
ふぅ。これでなんとかなったか。
予想通り妹紅は「なんだよ~夕飯作ってくれるっていったじゃーん」とか言いながら座布団に寝転がった。ごめんね☆もこたん。
「あーそうだ。夕飯どうしよう」
おお?そうか。私が出れないってことは私の手料理を食べてもらえないじゃないか!!くっ!!上白沢慧音……一生の不覚!!
「しゃーない。自分で作るか」
あ、しまった。
もこたんはどこに向かっているか?台所である。
私はどこにいますか?私はそこに居る。
いぃやぁああああああああああああああああ!!!!きちゃらめえええええええええええええ!!!!!!!!
コンコン
私が「慧音……なにしてんの?」と言われる状況に陥るまであと3歩というときに、玄関から天使のノックが聞こえた。
「どちら様~」
危ない危ない。どこのだれか知らないけどありがとう。恩に着る。今の内に移動移動……おや?こんなところにダンボールが。
「こんばんわ。ワタクシ怪しいものではありませんウサ」
ん?
「おや、輝夜んとこの」
あれ?
「そう。因幡てゐと申しますウサ」
悪魔だぁあああああああああああっ!!!
っと。おちつけ。、まだ何も起こっていない。あれはさっきまで天使だったお方だ。そう簡単に悪に回るとは限らない。
「ここを偶然通りかかったときに偶然夕飯どうしようと聞こえてきたので、偶然持っていた食材で、偶然知っていた妹紅さんの好物が偶然作れるなーと思いまして立ち寄ったわけでございます」
なんて偶然の多い天使だろう。そこで偶然私を助けるとはこの兎も予想できなかっただろう。
「ありがたいけど。なんで私の好物知ってんのさ?」
「いやですね妹紅さん。こないだの宴会のときに言ってたじゃないですか。」
「あれ?そうだっけ?」
嘘だっ!!もこたんの台詞は全て記憶している私が言うからには間違いない。この兎まさか……
「そうですよ~。さらに酔っ払って私の服の中に……あの……手を……」
「ええっ!!?」
嘘をつくな因幡!!そんな事実は無い!!どんなに歴史を見ても無かった!!
「ご……ごごごごごごめんなさい!!酔ってるときは……ああああんまりき……記憶がなくって!!」
それは酔うとすぐ寝ちゃうからだよ妹紅。
「いえっ!気にしないでください。私決めたウサ!」
「え?」
「私、妹紅さんの通い妻になるウサ!!」
は?
私の立ち位置を横取り?
「ええっ!?」
怯むもこたん。迫る糞兎
「実は姫様の敵ということでしたが、姫様と戦ってるあなたの存在がだんだん私の心の中で大きくなって……」
「いや、ちょっ!待て…」
「焼き鳥はまだ作れませんが、きっと覚えます!!だから……一緒に居させてください!!」
バキィッ!!!!
「黙れ小僧ォォォ!!貴様に妹紅が救えるか!!」
あ
……
「…慧音?」
……
「なに……してんの?」
「あーそのだな。んんっ。なんというか」
そのとき私は見た。あの兎がニヤリと笑うのを。
「てめぇ!!計算してやがったな!?」
「慧音!おちついて!」
「罠だ!!これは罠だ!!」
「慧音……いったいどうしたのさ」
妹紅のもんぺをひっぱるてゐ。キタネエ手でさわんじゃねぇよ!!
「あの方はもう駄目です。いったん永林さまのところに連れていきましょう」
「……そうだな。こんなのいつもの慧音じゃない。きっとなにかの病気なんだ」
「もこぉ……私は正常……だ」
「……もこたんは私のものウサ♪あんたみたいな牛や姫様にも渡さないウサ~」
最後に聞こえたのは耳元でぼそりと聞こえたてゐの台詞だった。
退院後。輝夜と結託して包丁片手に兎狩りを始めるのは別の話。