「えっさ、ほいさ」
私は、適度にリズムを取りながら屋台の準備をしている。
もうそろそろ、黒いカーテンが空を包み込むところ。
八目鰻は十分に入荷しておいたし、タレもある。
屋台もいつも通り。破損しているところもない。
あとは下ごしらえを簡単にやっておくだけだ。
鰻を捌いて平らにしておき、串を刺し皿の上にのせ、その皿を氷の入った発砲スチロールの箱の中に入れておく。
新鮮なものを出したほうが店としては好評なのだが、開店した時は自慢ではないが人が多いため少しは下ごしらえをしておく必要があるのだ。
あとは日本酒……。ビールなど屋台として必要不可欠なものをチェックし、準備万端。
もうそろそろ開店の時間だった。
「ふー……。そろそろね……」
「そーなのかー」
「!?」
いきなり後ろから声が聞こえたのでビクッと体を揺らしてしまった。
この声は……ルーミアか……。
相変わらず神出鬼没な……。
正直言って、今でもこの娘は掴めない。
なんというか……何を考えているのかわからないのだ。
「貴方は食べてもいい妖怪?」
「いや……食べるなら八目鰻にしておいてくれないかしら」
「そーなのかー」
「もちろんお金は払ってね。って、どこにいるの? ……えぇ!?」
消えたと思って目を落とすと発砲スチロールにつめておいた八目鰻を食べていた。
ちょっと……それ生だって……。さっき捌いたばっかの奴だって……。
「あんまり美味しくないー」
「いや……それは生だから……」
「『なま』って?」
「調理していないって意味よ」
「そーなのかー?」
「そーなのよー」
後半からは適当な対応になってしまった。
この娘にはこれぐらいがちょうどいい気がしてきた私は一体……。
「お金はこれでいいのかー?」
ポンと手渡される袋。
どうやら小銭が入っているらしい。
「えぇいいわよ……。って、いない!?」
「それじゃーお腹すいたからーさよーならー」
「ちょっと待って! お釣りお釣りー!」
夜雀と空腹妖怪こと宵闇の妖怪は夜を掛けていく。
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「……みょーん。今日も幽々子様の我侭にふりまわされました……。ミスティアさん、お酒を一つ……。って? いない?」
「おっ。白玉楼の庭師さんじゃないかい。ちょっと大将がいなくて困ってるんだ。代わりに鰻焼いてくれないかい?」
「これはこれは……毎度お世話になっている商店街の店長さん達……」
「なっ? 一つ頼まれてくれないかい?」
「……みょーん……。わかりましたー……」
しぶしぶと屋台の中に入り、鰻を捌いていく妖夢であった。
その耳には夜雀の悲鳴が聞こえた気がした。
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面白かったけどそこが引っ掛かります。
こういうほのぼのこそ東方の雰囲気によく合う。
話自体はいいけど