これは、「とある人形使いのお泊り その2」の続編となっております。先にそちらを一読することをお勧めいたします。
◇
「で、話って何よ?」
目の前で、ニコニコと笑みを浮かべ、ビシッ!っとペンを突きつけている鴉天狗に霊夢は冷たい視線を向ける。それもその筈、書く記事は全て脚色され真実など一割にも満たない。どこぞの兎は被害こそ小さいから良いものの、この天狗の被害は一瞬にして幻想郷中に広がる。悪気が無いので、尚更性質が悪い。それがこの天狗――射命丸 文なのだ。
その上、不運な事に何故か会った時から、取材モードに入っているのだ。こうなった文は、脅威の洞察力を持つため適当に誤魔化す事も出来ない。逃げれるなら逃げたいが、残念な事に速さにおいてこの天狗より上は存在しない。だからこそ、素直に取材を受けるしかないというのが、霊夢とアリスの導き出した答えであり、霊夢の不機嫌の原因だった。
そんな霊夢の心情を知ってか知らずか、文は手にした手帳をパラパラと捲ると、苦笑を浮かべ、ポリポリと頭を掻く。どうやら、どう切り出すかを決めかねているらしく、「あー、うー」と数回唸った後に、ようやく口を開いた。
「いえ、お二人の様子がおかしかったものですから、何かあったのかと思ったのですが……よくよく考えたら、お二人に同時に訊くわけにもいかないですよねぇ?」
「どうしましょうか?」と呟いているが、二人からしたら知った事ではない。用が無いなら早く帰せとも思うが、ここで帰ったとしてもこの天狗の事だ。明日あたり神社を尋ねて来るだろう。
その時アリスに出会ったら?理由を説明したところで、全く別の理由に摩り替わり、その日の内に幻想郷中に知れ渡るだろう。もしそれでアリスに距離を取られたら堪ったものではない。これは霊夢の考えだが、アリスにしてもこれ以上霊夢に嫌われる事は避けたい……つまりは、この天狗を自由にさせてはいけない。その結論に二人が同時に辿り着いた時、パタンと音を立てて文が手帳を閉じた。
どうやら、この場は一次撤退する事にしたらしい。本来なら喜ぶべき結果なのだが、今の二人にとっては最悪の状況である。もし神様が居るのなら、何故この様な試練を与えるのか……いや、よくよく考えると幻想郷にまともな神はいなかった。
「お時間取らせてしまってすみません。明日あたりにお二人のお家に出直して――」
不味い、そんなくだらない事を考えてる場合じゃなかった。とりあえず、蛙と蛇をしばき倒す計画は後回しだ。今はこの天狗を帰さない様にしないと――すると、今まで黙っていたアリスが、突然口を開いた。
「べ、別々にインタビューすれば良いんじゃないかしら?」
◇
文は今ほど自分の好奇心を呪った事はなかった。アリスの提案に従い、霊夢とアリスの二人を交互にインタビューする事になり、まず霊夢からにしたまでは良かった。しかし、「何故あんな変な歩き方だったのか、またアリスと話さないのか」と訊いた瞬間、アリスと一緒にいると緊張して上手く話せないだの綺麗過ぎて困るだのといった惚気話を延々と聞かされた上に、アリスも似た様なな話だった。
つまる所、お互いがお互いの事を気にし過ぎて、かえって逆効果になっているというだけの話だった。あそこまで惚気られたのでは、独り身には堪ったものではない。インタビューが終了した頃には、文は涙で視界がぼやけてしまった。
「何で泣いてるのよ?」
「べつにぃ~……グスッ、羨ましくなんてありませんもん。私には椛がいますもん……うわーん!!」
「椛ー!!」と叫びながら、飛び立った文の後姿を残された二人は、ただただ呆然と見送るしかなかった。
◇
「で、話って何よ?」
目の前で、ニコニコと笑みを浮かべ、ビシッ!っとペンを突きつけている鴉天狗に霊夢は冷たい視線を向ける。それもその筈、書く記事は全て脚色され真実など一割にも満たない。どこぞの兎は被害こそ小さいから良いものの、この天狗の被害は一瞬にして幻想郷中に広がる。悪気が無いので、尚更性質が悪い。それがこの天狗――射命丸 文なのだ。
その上、不運な事に何故か会った時から、取材モードに入っているのだ。こうなった文は、脅威の洞察力を持つため適当に誤魔化す事も出来ない。逃げれるなら逃げたいが、残念な事に速さにおいてこの天狗より上は存在しない。だからこそ、素直に取材を受けるしかないというのが、霊夢とアリスの導き出した答えであり、霊夢の不機嫌の原因だった。
そんな霊夢の心情を知ってか知らずか、文は手にした手帳をパラパラと捲ると、苦笑を浮かべ、ポリポリと頭を掻く。どうやら、どう切り出すかを決めかねているらしく、「あー、うー」と数回唸った後に、ようやく口を開いた。
「いえ、お二人の様子がおかしかったものですから、何かあったのかと思ったのですが……よくよく考えたら、お二人に同時に訊くわけにもいかないですよねぇ?」
「どうしましょうか?」と呟いているが、二人からしたら知った事ではない。用が無いなら早く帰せとも思うが、ここで帰ったとしてもこの天狗の事だ。明日あたり神社を尋ねて来るだろう。
その時アリスに出会ったら?理由を説明したところで、全く別の理由に摩り替わり、その日の内に幻想郷中に知れ渡るだろう。もしそれでアリスに距離を取られたら堪ったものではない。これは霊夢の考えだが、アリスにしてもこれ以上霊夢に嫌われる事は避けたい……つまりは、この天狗を自由にさせてはいけない。その結論に二人が同時に辿り着いた時、パタンと音を立てて文が手帳を閉じた。
どうやら、この場は一次撤退する事にしたらしい。本来なら喜ぶべき結果なのだが、今の二人にとっては最悪の状況である。もし神様が居るのなら、何故この様な試練を与えるのか……いや、よくよく考えると幻想郷にまともな神はいなかった。
「お時間取らせてしまってすみません。明日あたりにお二人のお家に出直して――」
不味い、そんなくだらない事を考えてる場合じゃなかった。とりあえず、蛙と蛇をしばき倒す計画は後回しだ。今はこの天狗を帰さない様にしないと――すると、今まで黙っていたアリスが、突然口を開いた。
「べ、別々にインタビューすれば良いんじゃないかしら?」
◇
文は今ほど自分の好奇心を呪った事はなかった。アリスの提案に従い、霊夢とアリスの二人を交互にインタビューする事になり、まず霊夢からにしたまでは良かった。しかし、「何故あんな変な歩き方だったのか、またアリスと話さないのか」と訊いた瞬間、アリスと一緒にいると緊張して上手く話せないだの綺麗過ぎて困るだのといった惚気話を延々と聞かされた上に、アリスも似た様なな話だった。
つまる所、お互いがお互いの事を気にし過ぎて、かえって逆効果になっているというだけの話だった。あそこまで惚気られたのでは、独り身には堪ったものではない。インタビューが終了した頃には、文は涙で視界がぼやけてしまった。
「何で泣いてるのよ?」
「べつにぃ~……グスッ、羨ましくなんてありませんもん。私には椛がいますもん……うわーん!!」
「椛ー!!」と叫びながら、飛び立った文の後姿を残された二人は、ただただ呆然と見送るしかなかった。
と王子がおっしゃっています
勢い余って狂喜乱舞!!!
甘い展開乙です。
文自爆w