黄金の色が大地を覆う向日葵畑。
そこに、黒くくすんだ円が穿たれている。
ある一点を中心に向日葵が枯れてしまっているのだ。それが、外に向かってグラデーションを描いているのだ。
空を飛ぶ霧雨魔理沙はそれを見て、クレーターを思い出した。
空から降ってきた隕石が地表に痕をつけるように、その中心にある何かが向日葵を枯らしているのだと思った。
だから魔理沙はその中心に向かって飛んだ。
そして、傍に降り立ち、それを目視した。
それは、地面に伏している風見幽香だった。
幽香は目を強く閉じ、気息奄々としていた。険しく、青ざめた顔は普段の彼女からは想像できないものだった。
決して穏やかなものではなかった。声をかけ、身体を揺さぶったが反応はない。意識がなかった。
魔理沙は異常を悟り、幽香を抱えて医者のところへと飛んだ。
□
八意永琳と永遠亭は快く幽香を受け入れてくれた。
幽香はすぐに診察台に乗せられ、永琳の手で診察を受けることになった。
しばらくして診察が終わり、すぐに治療が始まるのかと魔理沙は思ったが、幽香は清潔なシーツに包まれ、病室に運ばれていくだけだった。
魔理沙は安心した。患者に施す処置が安静を求めることなら、病状はさほど深刻ではないのだと考えた。
しかし、永琳は眉根を寄せていた。
「あれは栄養失調よ」
栄養失調とは、幽香も貧相な暮らしをしているのか。魔理沙はそう考えて、しかしそれが間違っていることに気付いた。
幽香は妖怪だ。妖怪は人間のような食事で栄養を摂取する必要は無かった。
では、妖怪である幽香が陥る栄養失調とは何か?
聡い魔理沙はすぐに想像が付いた。それを肯定するように永琳は言葉を続けた。
「回復させるには、人の子を食べる必要があるわ」
風見幽香は人を喰らう妖怪だった。
「彼女の場合は、その力を使いすぎたのね。圧倒的に養分が足りていないのよ」
永琳は淡々と続ける。
魔理沙は愕然とした。
妖怪は里の人間を喰らってはならないという決まりがある。かといって、迷い人を喰らう機会などそうそう得られるものではない。幽香は人間を襲うことが出来ない状況にあるのだ。
回復させる手段は無い。
けれど魔理沙には、弱っていく幽香をそのままにしておくことは出来なかった。
「なあ、永琳はどんな薬でも作れるんだろう? それで、どうにかならないのか?」
「残念だけれど、治療するための薬が人の子なのよ」
永琳の言葉は、非常に判り易かった。
けれども、魔理沙は納得し難かった。
「納得がいかない顔ね。どうしても助けたいのなら、貴方が食べられてくれるのかしら?」
永琳が、問う。
魔理沙は首を縦に振ることが出来なかった。やはり自分の方が大切なのだ。
自分と幽香を天秤にかけ、そして、自分の方が残った。魔理沙自身、それが正しいと思った。それでも、幽香が失われてしまうことが正しいとは思わなかった。間違っていると思った。
成す術は、無い。けれども、気持ちに決着が着かない。
気持ちがもやもやとして落ち着かなかった。
魔理沙は一旦幽香の様子を見るために、彼女の病室へと向かった。
□
部屋の前。解放されている扉から、中の様子を窺うと、永琳の弟子である鈴仙が幽香の傍についていた。
鈴仙は、左手にぐずぐずになったムースのようなものが入った器を手にしている。それを右手のスプーンで掬い、幽香の口元に近づけた。
「はーい、風見さーん。ごはんですよー」
妙に間延びした声で鈴仙がいった。鈴仙は患者に対する接し方に慣れていた。相手が力の強い妖怪であろうと、営業スマイルをもって幽香の口に食事という名目でぐずぐずムースを入れようとしていた。
そのとき、突然幽香は身体を少し起こした。
「――私に触るなっ!」
そういって、鈴仙の手を払い除けた。
スプーンが畳の上に落ち、載っていたぐずぐずが散らばってさらにぐずぐずになった。
「何やってるんだ、幽香!」
魔理沙は幽香の元へ駆け寄った。
幽香は魔理沙の姿を認めると、口元に僅かながらの笑みを浮かべた。まるで強がりのように見えた。
「あら、魔理沙じゃない。私をここに連れてきたのも貴方だって聞いたわ。……悪いけれど、すぐにでも帰らせてもらうわね」
幽香は何かを急いでいる風にいった。彼女にとって、何かが自分の身に迫ってきているのを感じたのだろう。
魔理沙が制止するのも聞かず、すぐさま立ち上がろうとする。
けれど、腰が持ち上がる前に咳き込み、また座り込む。辛そうに、そして恨めしそうに魔理沙を睨む。
「お前は、向日葵畑で倒れていたんだ。周りの向日葵は、枯れてしまっていた」
周りの向日葵は枯れていた。その言葉を聞いて、幽香は顔を曇らせた。
そして、どこか部屋の外に目を遣った。
幽香にしてみれば、すぐにでも向日葵の様子を見に行きたかったのだろう。彼女がまだここに留まっているのは、それが叶わないからだった。
□
「どうすればいい。どうすれば、幽香は元に戻る」
部屋を出て、魔理沙は永琳に尋ねた。
永琳は答える。
「栄養失調、養分が足りないといったわね。――妖怪にとっての養分とはつまり、妖分。その妖分とは一体何かしら?」
問いに、魔理沙は考える。妖分。妖怪の原動力となるもの。
永琳は幽香を直すのに必要なのは、人の子だといった。
人の子。養分。妖分。ようぶん――魔理沙は考えに考え抜いた末、あるひとつの結論に至った。
「つまり、幼分が足りないんだな!」
「ええ、その通りよ」
永琳は、魔理沙が自分の考えに付いて来ていることに、満足そうに笑みを浮かべる。
「幼分とは精気にも似ているわ。老人が小さい子供と遊んで、若さを吸い取って元気になるわ~、といっているその若さこそが精気であり、幼分なのよ」
幼分。それは人の子を食べることで補われる。
しかし、里の人間を襲うことは禁止されているのだ。
どうやってその問題をクリアするのか、魔理沙は考える。
「代わりに幼分を摂取する方法はないのか? 例えば、そこの鈴仙に代わりをさせるとか」
「嫌よ、そんなの!」
「残念だけれど、人ならざる者は見た目以上に歳を重ねているから、幼分を与えることは出来ないわ。あと見た目的にも幼分って感じじゃないし」
確かに、鈴仙からは幼分は摂取できそうになかった。鈴仙は幼の字とは程遠かった。
そうなると、代わりになる子供といえば――。
「魔理沙、貴方が幽香の幼分を補ってあげるという方法はあるわね」
魔理沙は想像する。誰かの代わりに、自分が幽香に食べられるのだ。
しかしそれには気が進まなかった。やはり自分の身体の方が大切なのだ。
魔理沙は、自分の身体と幽香を天秤にかけて、自分の身体を残したのだ。それが魔理沙にとって正しかった。
「けど、幽香がこのまま弱っていくなんて間違ってる……!」
魔理沙の結論は、さっきと変わらなかった。変わらなければ、今の問答の意味が無い。
永琳は、何か魔理沙に判らせたいことがあるはずだ。
だから魔理沙は、更に思考を深める。
他の里にはいない人間ではどうか。けれど、さばさばしている霊夢に幼分があるとはいい難い。咲夜なんてもっての外だ。
他に、魔理沙や他の人間以外で、幼分を補えそうな者はいないか。
……幼分、養分、妖分。
そのとき、魔理沙は閃いた。
幼も妖も持ち合わせる存在がいることに。
「幼分とは、妖分。妖分を補うのは"妖"――つまり、妖精のことだ!」
確かに、妖精は生まれ変わりもするから、実質年齢は低い。
さらに見た目的にも、幼分たっぷりである。
その答えを永琳は、
「――ご名答」
笑みと共に肯定した。
魔理沙は永琳の答えに辿り着いたのだった。
□
「妖精が住んでいる木は成長が早い。これは妖精が多くの幼分を持っているからよ。そして、風見幽香は花を操るフラワーマスター。幼分は彼女にとって原動力だと推測できるわ」
「成程、そこまで関係性があったのか……」
魔理沙は感嘆した。永琳が述べた事実と、永琳の頭の回転がずっと早いことに。
そして、永琳はすでに解決策を見出していた。
「貴方に出来ることは、妖精を捕まえてくることよ」
魔理沙は頷いた。
そして永琳に、どうやって妖精を捕まえるのか、その対処法を習った。
「妖精を捕まえることはとても難しいわ。覚悟してかかることね」
その言葉の後、咳き込む声が聞こえた。それは幽香のものだった。
すぐに魔理沙は箒を引っ手繰った。それを永琳が呼び止める。
「あの様子だと長くは持たないでしょう。――刻限は日没まで。出来るだけ急ぎなさい」
もう、命旦夕に迫っている。
妖精を捕まえて幽香に食べさせるため、そして幽香に元気になってもらうために、魔理沙は飛んだ。
□
――妖精を捕まえるのは難しい。
捕まえようと近づくと逃げられるか、攻撃を受けるからである。
安全に妖精を捕獲するためには、妖精が気を抜いているところを狙うのがベストだ。
加えて永琳は、いった。
――妖精は場の"たのしい度"が高いところに現れる。
「胡乱な表現だぜ」
魔理沙はぼやいた。しかし魔理沙にも判らないわけではなかった。
魔理沙は永琳から支給された金平糖を、地面に放った。
散歩の途中、お菓子が落ちているのを見かければ、きっと楽しいに違いない。そうして"たのしい度"が上昇し、妖精が現れるだろう!
そう考えた。そして魔理沙は、それが見える位置にある茂みの中に身を隠した。
待った。
魔理沙は待った。
しかし、待てど暮らせど一向に妖精が現れる気配は無かった。
何故だ? 魔理沙は疑問する。
自身の立場に置き換えて考えてみる。遠くに落ちているあの赤とか青とか緑のものは何だろう。あ、あれは金平糖だ! 金平糖が地面に落ちている! うわあばっちい!
「これは作戦ミスだな」
呟き、魔理沙は金平糖が入っている瓶を取り出した。
地面に落ちている金平糖と群がっている蟻を蹴散らす。瓶を固定するために、適当に穴を掘り瓶を半分の高さほど埋める。さらに目印として、子供用の定食を頼むと出てくる紅ライスに刺さっている小さな国旗を立てる。
こうすると楽しいだろう。魔理沙は茂みに戻って、観測を続けることにした。
日は少し低い位置にあった。魔理沙が張っていた場所は吟味したおかげでとても過ごしやすく、気がつけばうとうとと眠りを誘われていた。
次に気が付いたときには、日が随分と落ちているのが見えた。魔理沙は眠っていたのだ。
しまったと思い、すぐに金平糖の瓶の様子を窺う。
すると、どうだろう。瓶を囲む子供のような影があるではないか。
背中に羽を生やした小さな姿。それは妖精だった。
やっと見つけた――魔理沙は妖精を捕まえるため、咄嗟に立ち上がり、茂みから飛び出した!
のだが、起き抜けのため上手く走れない。
2、3歩ふらついた後、足がもつれ、その場に倒れてしまった。
短く悲惨な音を立てる。
それに反応して、妖精たちが魔理沙の方を見た。
「……?」
そして、見つける。
魔理沙の手にタモ網と犬用の紅い首輪が握られているのを。
いかにも捕獲する気まんまんの装備である。
妖精たちは、
「……ぴ」
「ぴ?」
「ぴ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!」
何か悲鳴を上げると、一目散に逃げ出していった。
四方八方に散っていく妖精の後姿に手を伸ばすが、届くはずも無い。
そのまま眺めることしか出来ず、魔理沙は妖精に逃げられてしまった。
魔理沙は立ち上がり、金平糖の瓶を確認した。
その中には、少しの金平糖の欠片しか残っていなかった。
「幻想郷の妖精が小人サイズだったら、置き網的に捕まえられたかも知れないな……」
叶わないことを呟いた。魔理沙は茫然自失して、その場に立ち尽くした。
□
もうすぐに日が暮れようとしていた。刻限が刻一刻と近づいていた。
魔理沙は妖精が捕まえられずにいた。けれども、このまま何もせずに終わるわけにはいかなかった。
「"たのしい度"を上げるには、どうしたらいいんだ……?」
魔理沙はひとり悩んでいた。
なんとはなしに空を見上げる。空は橙、紅を経て群青へと変わっていた。一番星が輝いて見えた。
……一番星か。
魔理沙は幼い頃の、星の降る夜を思い出していた。そのとき、自分の心がとても高揚していた。
何もかもが楽しかった頃の思い出だ。
そう、それはたのしかった。
「そうか、その手があったか……!」
魔理沙はすぐさま箒を手に取り、飛び上がった。
空高く、もっと高く。
顔を見せ始めた月と同じ高さまで。
そして、腰に手を回し、一本の瓶を取り出した。その瓶には、小さな星がたくさん詰め込まれていた。金平糖の瓶にも似ていたが、それはより魔理沙に近しいものだ。
魔理沙は思い出す。
金平糖にも妖精たちは群がった。"たのしい度"が高い場所に妖精が集まるのだ。金平糖はきっと楽しいのだ。
――だったら、空から金平糖が降ってくるのなら、もっと楽しいだろう……!
願い、魔理沙はその瓶を上空へ力一杯放り投げた。
一定の間隔を空けて、瓶が光と共に炸裂する。
遠くガラスの割れる音。
その後、空から星が落ちてきた。
金平糖の瓶の引っ繰り返しでもしたかのように、空からたくさんの星が降っているのだ。
手に収まるほどの大きさで、輪郭が正五角形の対角線と同じである典型的なマンガ星。それが様々な色の淡い光を伴って、尾を引きながら地上へ降り注ぐ。夜という黒のカンバスを、無数の星が思い思いに滑り落ちていく。
魔理沙はその光景を、『スターダストレヴァリエ』と呼んだ。
「来いよ妖精……!」
魔理沙は流れ星に願いを込めた。奥歯が擦り切れるほどの思いだった。
残された時間は僅かである。妖精が出てくるのを待っているわけにもいかない。魔理沙は飛び、妖精が出てきていないか探した。
けれども、近くに妖精の姿を見つけることは出来なかった。
遠くにいる妖精は魔理沙の姿を見た途端、逃げ出していった。もう一度姿を現すようなこともなかった。
刻限が、もうすぐそこまで来ている。
どうして妖精が近寄ってこないのだろうか。妖精たちにとってはこれは楽しいことのはずだ。
そこで魔理沙は気付いた。
星が降ってくる姿は遠くで眺めているのが一番だ。
なぜなら、降ってきたその隕石はというと、地表に大きな傷跡を付けるほど強大な力を持っているからだ。
例え仮想的であってもこの流星群。落下地点に行けば、自分の身が危険に晒されるからだ。
「野次馬根性が足りないっ……!」
魔理沙は叫んだ。けれども、自らこの星の弾幕に晒されに行く物好きなどいるはずが無かった。
ただのひとりを除いては。
「――痛っ」
下の方で声が聞こえた。
魔理沙はそちらに目を遣った。
「……マンガ星? こんなものが本当に月から降ってきているのかしら?」
それは幼い声だった。
白の衣装。反り返る形の薄い羽。金の髪は縦ロールを巻いている。
背の低い影はまさしく妖精のそれである。
とりわけ彼女はルナチャイルドという名前を持っていた。
――見つけた。
一瞬間後、魔理沙は声も上げず、真下へ飛んだ。
箒と重力による加速は、彼女に限界を超えるような速度を与える。
そして魔理沙は鷹だった。
地面が近づくと首を振り上げ、速度を維持し地面すれすれを飛びながら、ルナチャイルドの身体を掬うように掴み上げた。
その後、砂埃を巻き上げながら上昇しつつ、ルナチャイルドの首に首輪をかけた。
□
永遠亭。魔理沙は息を切らしながら幽香の病室に飛び込んだ。
日はどっぷりと暮れて、もう夜の気配を見せていた。
永琳のいった刻限などとうに過ぎていると、誰もが判っていた。魔理沙だけがそれを判ろうとしないでいた。
幽香は魔理沙が出かけたときと変わらず、シーツに包まれて寝ていた。
けれどその目蓋は閉じていた。その姿からはまるで生気というものが感じられなかった。
「幽香!」
魔理沙は駆け寄り、その名を呼んだ。
彼女の手を掴んだ。手は随分と冷たくなっていた。
魔理沙の周りには嫌な想像が纏わり付いた。
「ゆ……幽香、目を開けろよ! 時間切れだなんていわせないぞ! 間に合わなかったなんて……絶対にっ!」
叫ぶ。
彼女の意識を手繰り寄せようとする。
「起きろよ……っ!」
魔理沙は、幽香の手を強く握り締めた。
――すると、僅かに握り返す力を感じた。
魔理沙は見る。幽香の目蓋が半分ほど開いているのを。
そして、口が開いた。
「ま、……魔理沙」
「幽香!」
幽香はまだ意識があった。しかしもう余力が無いのか、喋る声はぼそぼそとして聞き取りづらい。
「魔理沙がいてくれるだけで、生き返るわ……」
幽香の様子はまるで老人のようだった。
魔理沙にとっては目を背けたくなるような光景だったが、それでも安心した。
魔理沙は幽香に声をかけながら――手に持っていた綱を引っ張った。その綱の先には、首輪とルナチャイルドが繋がっていた。
「痛い痛い痛い!」
非難の声を上げているが周りはまるで聞かなかった。
「ほら、幽香。お前のために幼分を取ってきたんだ。――たっぷりと補給してくれ」
そういって魔理沙は、幽香に綱を手渡した。
幽香はその綱をゆっくりゆっくりと引いた。ルナチャイルドが逃げようともがくが、綱を引く力はローラープレス機に巻き込まれていくかのように強く確実だった。ルナチャイルドは首が締め付けられて度々えずくような声を上げた。
その時間は長かったが、綱の長さも無限ではない。やがて幽香の手元に首輪が来るまでに至った。
ルナチャイルドの縦ロールが、幽香の手に触れた。
呼応するように幽香の眉がぴくりと上がる。
それを皮切りに、幽香の手は縦ロールを弄んだ。最初は跳ねるように、徐々に絡みつくように強くなっていった。
「ひゃぁ……」
ただ弄られていることに痺れを切らしたのか、ルナチャイルドが小さく声を上げた。
すると、幽香の両手はルナチャイルドの頬を掴み、引っ張った。柔らかい肌が伸びていった。
「ひぃあいひぃやい!」
ルナチャイルドはぱたぱたと暴れた。それでも幽香は手を離さなかった。
魔理沙は幽香の目に光が戻ってくるのを見た。
幽香は口を開く。
「ねえ、貴方の名前は何というのかしら」
幽香はルナチャイルドの頬を引っ張ったままである。当然彼女の返答は。
「ふ、ふなひゃいるほ……」
呂律の回らない風になった。
「へえ。貴方、ふなひゃいるほ、っていうんだ?」
「ひっ、ひがっ……!」
それから、幽香は手を離し、身体を起こした。綱を上に引っ張り、ルナチャイルドの身体を抱き寄せた。
ルナチャイルドの顔が幽香と並んだ。彼女も危険を察したのか、身体が縮み込ませていた。
また、彼女の頬は赤くなっていた。幽香が引っ張ったからだった。
「――痛かったかしら、ふなひゃいるほ、ちゃん?」
そういって幽香はその赤い頬に口付けた。
肌が唇に吸い付いてるようだった。それを幽香はさらに吸った。ルナチャイルドの頬は不自然に動いていた。幽香が舌で頬を嘗め回しているからだった。
「ひっ……ぃ!」
ここに来てルナチャイルドがじたばたと暴れ出した。けれども綱に繋がれている限り彼女が逃げることは出来ない。
それに幽香の方が体格も大きく、力も強い。
すぐに幽香がルナチャイルドに上乗りになった。幽香の両手が、ルナチャイルドの両肩を抑え込んでいた。
「助け……助けてーっ!!」
幽香はとても活き活きしていた。
魔理沙はそれに満足して頷いた。そして踵を返し、病室を後にした。
□
病室を出た魔理沙を、永琳が待っていた。
「あんなはしゃいでる幽香を見たの、初めてだ」
魔理沙は疲れていた。それでも微笑んで見せた。
それに永琳も応えた。
「上手くいったみたいね、おめでとう」
「永琳のおかげだ」
「私は助言しかしていないわ」
「それでもさ」
話していると、病室から幽香が出てきた。
とても楽しそうな雰囲気だった。気のせいが肌つやが良くなっていた。
「有り難う、魔理沙。あなたには感謝しているわ」
「ん、もう帰るのか?」
「ええ――やっぱり自分のところの方が落ち着くしね」
そういって幽香は左手を振り上げた。
その手には綱が握られていて、引っ張られた綱の先からルナチャイルドが現れた。衣服は不自然に乱れていて、頬どころか顔が真っ赤になっていた。目の端には涙を溜めていた。
ルナチャイルドは魔理沙の方を見た。助けを求めているような希う眼つきだった。
ここまでルナチャイルドを無視してきた魔理沙だがそれを見て、流石にいわなければならないことがある、と口を開いた。
「近所に迷惑がかかるから、やるときは音消せよな!」
ちょwww
ツッコミ所がwww
どういうことなの・・・。ゆうルナですか・・・。
新しい・・・惹かれるな・・・。
妖精の扱いが酷いのは公式だからなぁ…
…魔理沙もゆうかりんの幼分になってもいいんじゃないかな(ぼそり)
ルナアダルトに進化しましたwww
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| ('A`) ギシギシ
/ ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄ アンアン/
けしからん、もっとやってくれ。
アダルトというより、食欲的な意味の情景しか浮かばなかったという ;
残り二人とチルノその他が助けに行くパターンですね分かります。
だが幽香さんに襲われて悶えるルナ…
これはイイ!
やっぱルナはエロ担当だよな…!!