※この作品は前作『失くし物の真実』の続きみたいなものです。続けてごめんなさい。
やあ、ナズーリンだ。今私は森の中を歩いている。迷う?そんな馬鹿なことしないよ。私はプロのダウザー、もちろん探し物をしているのさ。
私に掛かればどんな失くし物だって探し当てられる。
……まあ、もっとも今回の失くし物は≪私≫が隠したのだがね!
今度は、ご主人様の大切にしている宝塔を隠してやった。そうしたらご主人様慌てて私に泣きついてきたよ。あの泣き顔といったら…
フフフフフ、完璧だ!必死に探したと思わせる、はだけた服、潤んだ瞳、震える唇、そして決めの一言「な、なずーりん。あのね…」
どれをとっても素晴らしい!これぞまさに、理・想・郷!!私の幻想は現実のモノとなったのだ!!!
ククク、しかも今回はこれだけではない。なんと見つけてきたら、ご褒美としてケーキを食べれることになっているのだ。ご主人様と一緒に!
――「ほら、口にクリームがついてるじゃないか。まったく、うっかり者だな」 「あ、あのナズーリン…」 「なんだい?」 「え、えーと…クリームを」
「そのクリームを、誰に、どうして、欲しいんだい?」 「うう、なずーりんに、とってほしいです…」 「よく言えました。私からのご褒美だよ」
そして二人は互いにクリームを舐めあうのだった。なんてことに!!!
こんな、こんな幸せなことがあっていいのか?!くそっ、ニヤニヤが止まらない。
いつもとは違うテンションで道なき道を行く。クールな私?そんなこまけえことは いいんだよ!と、この後のおやつタイム(いろんな意味で)に
思いをはせる。そして隠し場所に辿り着いた。さっさと持って帰ろう。そう考えて隠した場所を覗く。だがそこには………何も無かった。
「は?う、嘘だろ…」
満遍なく見回す。一応、念の為に周辺も探してみたがない。どこをどう探しても宝塔の欠片すら見つけられない。ダウジングもしたが反応なし。
確かにここに隠したはずだった。涙目になりながら何度も何度も探し続ける。しかし、結局見つからず寺に帰ることとなった。
一方そのころ、星は台所でゴロゴロと悶えていた。宝塔を探しにいったナズーリンを想いながら。
「ウフフフフ、や、やはりナズーリンは素敵です。わざと服をはだけさせて迫ったら耳まで真っ赤に染めているし、ご褒美の話をしたら
とても嬉しそうな顔を見せてくれた。ナズーリンの好きなものなんてすでにリサーチ済みです。ふわふわのクリームがのったショートケーキが
大好きだということも。さあ、どうしてあげましょうか?ここは伝説の”あ~ん”で攻めてみましょうかね!
――「ナズーリン、口をあけて。はい、あ~ん」 「ご主人様ぁ~、恥ずかしいよぉ」 「フッ、照れちゃって可愛いですね」 「そ、そんなこと…」
「大丈夫、優しくするから」 「本当?なら、あ、あ~ん」
そして二人は甘~い時間を過ごしたのだった。とかやったりして!!!」
ゴロゴロゴロゴロ、転がり続ける星。鼻血が飛び散りなんともいえない姿へと変わる台所。
一時間悶え続けなんとか落ち着きを取り戻す。台所は惨劇に見舞われた様な部屋となっていた。でもそんなこと気にしない、可愛いあの子が
そろそろ戻ってくる時間です。ケーキの準備をしなくては!と意気込み、冷蔵庫を開けた。しかし、星は絶望することになる。ケーキが失くなっていたのだ。
ナズーリンの為と三時間並んで買ってきたケーキが影も形も無い。星が膝から崩れ落ちる。失くし物は多い方だが、まさかケーキまで失くすなんて……
ナズーリンとのさっきまでの甘~い妄想がガラスのように崩れていく。どうしましょう、これ………
絶望に打ちひしがれていると、玄関からガラガラと音がした。
ま、まずい!ナズーリンが帰ってきました!仕方ない、なんとかはぐらかしてもう一度買ってくるしかありません。毘沙門天に呼び出されたとか
言い訳すれば大丈夫でしょう。まだ慌てる時間ではない!そう考え、慌ててナズーリンを迎えにいく。
「お、おかえりなさい。ナズーリン。疲れたでしょう!それなら部屋で休んでるといい。申し訳ありませんが、私は毘沙門天に急に呼び出されたので
少し出かけなくてはなりません」
早口でまくし立てる。だが、ナズーリンは下を向いたまま動かなかった。
「あ、あの、すいませんがご褒美はもう少し待って下さいね。すぐに買っ……ゴホンゴホン、ちゃんとありますよ。ええ、冷蔵庫に置いていますとも!
ただ、一緒に食べたいのでちょっとの間待っててほしいなぁ、…なんて」
ご褒美。その言葉で一瞬ナズーリンがビクッと動いた。そして、
「わ、悪いが疲れたから部屋に戻るよ」
そう言い残し、さっさと廊下を走り抜けていった。ま、まさか…気づかれた!?ナズーリンは可愛いし、勘もいい。そして可愛い。ケーキが無いことも
すでに知っていて怒ったのだろう。さっきの態度も納得できる。本格的にまずい事態になってしまった。
「どどどどうしましょう?!このままでは好感度が駄々下がりです。いけない、それだけは嫌です!落ち着け私、こんなときは確か素数を数えたら
落ち着けると本に書いていました。ナズーリンが1匹、ナズーリンが2匹、ナズーリンが3匹……なにそのハーレム!!!」
今度は玄関で転げまわる。全然落ち着ける状況ではなかった。
「ハアハア、さて、まずはナズーリンに謝りに行かなくてはなりませんね。許して貰わないと今後の生活に支障をきたしてしまいます。主に私の
快楽方面で。許してくれるでしょうか?も、もしこのまま怒って部下を辞めるなんて言われたら生きていける自信がありません。ああ、怖い。
――「ケーキまで失くすなんてね、さすがに愛想も尽きたよ。部下は辞めさせてもらう」 「申し訳ありません!謝りますから、そんなこと言わずに!」
「ふん、ご主人さ…イヤ、星。辞めてほしくなかったら誠意を見せてくれないか?」 「誠意といいますと…」 「そうだな…私はケーキが食べたい」
「ですからケーキは…」 「フフ、君がケーキになるんだよ!」 「そ、そんなこと!駄目です。私たちはただの主従関係なんですよ!」
「これからは私が主だ!!従者は黙って言うことを聞けばいいんだよ。フハハハ!」
そんな蔑んだ目で見ないでください!ナズーリンはそんな子ではありません!あの子は私の部下です。そんな酷いことするわけが無い!
そう、私が従者になるなどありえません。この私が、私がナズーリンの従者だなんて………」
星が頭を抱えて転がり続けている間、ナズーリンは自室の布団に潜り込んでいた。
「ああ、駄目だ!言えない。宝塔失くしただなんて…ご主人様悲しむだろうなぁ。探し物もできない鼠なんていらないとか言われたらどうすれば……
――「残念ですが貴方はクビです」 「ま、待ってご主人様!」 「言いたいことがあるならはっきり言いなさい。鼠らしく『ちゅ~』を付けながらね」
「あう、許してほしいで…ちゅ~」 「………」 「おねがいしまちゅ。みすてないでくだちゃい」 「フッ、いつものクールはどうしたんです?」
「ちゅ、ちゅう///」 「いい事考えました。部下ではなくペットにしてあげましょう!大丈夫、ちゃんと可愛がってあげますよ。身も心も………」
認めない!そんなの絶対に認めるもんか!ご主人様は私が可愛がるんだ。私が可愛がられるなどありえない。挙句に私がペットだって?
そんなの許せない!そんな屈辱!!ご主人様のペットだなんて………」
星&ナズ「「ああ、それも有り…だな」」
二人は気づいていない。部屋には隠しカメラがあることに……そして、命蓮寺には隠し部屋が存在していることに。
その部屋は真っ暗だった。そこに映し出された二人の姿。そして、それを観ている謎の黒い影。膝の上には生き物を乗せている。
「に、にゃ~」
傍にはなんと、宝塔とケーキが置いてあった。黒い影が生き物を撫でながら微笑む。
「ウフフ、悔しがりなさい。絶望なさい。泣きなさい。笑いなさい!素敵よ、二人とも可愛すぎっ!ああ、萌(ほう)の世界に光が満ちる」
「にゃ~って、聖~もう疲れたー。さっさとケーキ食べようよぉ」
「駄目よ、ぬえちゃん。今は、『素直になれない二人を影から見守る秘密結社の首領(膝には猫付き)』ごっこをしているんだから。
私のことはボスとお呼びなさい。それと、ケーキも宝塔もちゃんと後でこっそり返しておくから食べちゃ駄目です」
ええ~そんなぁ~とケーキを羨ましそうに見つめる猫(役:ぬえ)。その頭を優しく撫でながらボス(役:聖母)はもう一度映像に目を向ける。
法界にいた頃、知り合いになった魔界の神様にこの遊びを教えて貰った。確かこの遊びがばれて、娘が一人出て行ったと嘆いていたわね。
今はもう懐かしく感じる魔界生活を思い出す。元気にしているかしら?
それにしても、一生懸命宝塔を探し、ケーキをこっそり冷蔵庫から持ち出して、猫の協力を得て、正体不明の種でわからないように隠した甲斐が
ありました。
「星ちゃんもナズちゃんもお互いもっと素直になればいいのに。二人とも意地張っちゃって可愛いんだから。でもそこがあの子達らしいわ。
誠に愛しい、愛玩動物であるッ! いざ、ナズ星――!」
「もうわけわかんないよ……ボス」
猫「そんなことより、もっと撫でて欲しいにゃ~」
ちくしょう、命蓮寺はみんな可愛いなもう!
いざ ナズ星!
萌(ほう)たww
これはダメな一輪と村紗にも期待www
村紗と一輪はダメなのかまともなのか期待w
ワロタw
なんというフリーダム
ま、いっかw
それでもムラサと一輪なら…いや、なんか組み合わせ的にこの2人もダメそうだ
ボスの真実にも噴いたがアリス家出の真実にも耐えられなかったww
うん、最高すぎるこれ
ちょっと悟りこの手につかんでくる。
今では素晴らしい妄想の毎日です!
ぬえ辺りかと思ったらボス何やってるんですか