向かい合い座る目の前の女はしゃべり続ける。すごく、退屈だ。段々と身に覚え
のない説教をされているような気分になる。
だけどここ―永遠亭で出されたお茶請けのお菓子はやたらと美味しいから、腹が
立つけど仕方ないから居てやる。いいやもう、寧ろ居座ってお菓子食い尽くして
やる。何せここの住人は甘味をとりわけ好んでいるから、もちろん嫌がらせの意
味で。
ちなみに本日のお茶請けはいちご大福。確か鈴仙手製らしい。とりあえず、美味
しい。
ぶっちゃけわたし本当はここに話を聞かされに来てるんじゃなくて、甘味を食べに来ているような錯覚にさえ陥る。いや、錯覚じゃないんだよね…これが。(わたしも永遠亭の人間と同等か、或いはそれより上位の甘党であるから)
「―ってちょっと妹紅聞いてるの!?」
いきなり名を呼ばれてびっくりした。なんなんだよ、ちゃんと聞いてるよ。そう
答えると輝夜は咳ばらいを一つして、言った。
「それで、慧音とはどうなのよって聞いたのに、」
あんた、いちご大福うめぇしか言わないんだもん。
そう言ってむぅーっと頬を膨らます表情が、腹が立つくらい様になる。美人って
そういうもんかね、とか認めたくなくて段々ムカッ腹立ってきて、でも何となく
隠さなきゃだし、もしゃりといちご大福を頬張った。うん、やっぱ美味しい。
「うめぇ」
「はぁ!?だから慧音とは…」
「ああ、うん……秘密」
「何よそれー!」
「べっつに関係ないじゃん…それに好きなひとを話題に出すの恥ずかしいし」
あ、やばい墓穴。死ねないのに墓穴ってこれ如何に。おい輝夜、にやにやが気持
ち悪いからやめろ。いや、やめてこれ以上追及しないで…って、無理だよねえ。
にやにや輝夜はわたしに問い掛ける。
「ふーん…じゃああれやそれやはしてないと」
「何さそれ?」
「ウブって言うかねー…そりゃないわ」
「ていうか慧音を呼び捨てして良いのはわたしだけだ、分かったか」
「うっさいわねー、じゃあけーねたんとでも呼ぼうかしら」
「何それ、変」
ぎゃあぎゃあ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「も、妹紅が望むならいつだって…!」
「はいはい分かったから、貴女はどこかの狐じゃないのだから服を脱がない」
危うく一肌脱ぐというより、肩以降を露出しかねなかった慧音を、彼女の肩口を押さえてとどめた。それよりも慧音の手の動く速度がやけに速く、ワンピースとブラウスのボタンは半分以上外れている。
しかしまあ、何でこう、私の周りには血気盛んというか、Love is blindというか、そういうものが多いのかしら。
そして何故私はこの覗き行為に荷担しなければならないのだろうか。寧ろ部屋に
戻ってくんかくんかすーはすーはしなければならないのに。
……何の?愚問ね。無論、放り出してきた実験の薬剤の具合よ。姫様の衣服だと
でも思ったそこのあなた、前に出なさい、前。
「……八意?」
「何かしら」
内心の呟きだったつもりが声に出ていたらしい。訝しむ目つきでこちらを見る慧
音。
……私自身も何か、何かわからない違和感が拭い去れない。何故私の視界には床と慧音が入っているのか。何故慧音の肩を床に押さえつけて、空いた彼女の片手を自身の手で床に縫いとめているのか。
慧音が、口を開く。
「その、そこ……ど「あややややっ!大スクープですねー!八意さんと上白沢さ
んは、できていたんですねっ!」
ガコン、と音をを立てて天井に穴がが開き、飛び出してきたのはブン屋。
正直、今一番見たくない顔がわくわくしながら解説を求めている。
この調子だと最初から潜んでいたに違いない。おおよそ天井裏でスクープまだかなとか、待機していたんだろう。私はそう見当をつけた。
だが実際はブン屋よりも大きな問題が転がっている。向こうの部屋に。
「何今の、もしかして、慧音…?」
「あと考えられるとしたら、永琳…?」
ああ、感づかれてしまった。
襖が開いた。どうしてくれよう、万事休すだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「いやあの、誤解ですって」
「じゃあなんで慧音の服が脱げかけなんだよ」
「それはその…」
いきなり脱ぎだしたなんて言えません。
「永琳…」
「ひ、姫!誤解!誤解ですってば」
「ひどいわ永琳、ずっと私と一緒に居てくれるって約束したじゃない…!」
泣くのは反則です姫様。後生だから泣かないで。嗚呼、頭が痛くなってきた。
「もしもし、八意」
はい何でしょうか、こちら八意永琳です。
「とりあえずどいてくれないか。話はそれからだと思う」
そういえば、そうだった。
私が身体をどかすと、待ってましたとばかりに妹紅が慧音に飛びつく。
「慧音、慧音!ヤブ医者に何もされてないよね!?大丈夫だよね?」
「大丈夫だ、あと八意はヤブ医者じゃないぞ」
ちょっと今聞き捨てならない言葉が何度か聞こえた気がしますが…優しい八意さ
んはスルーしておくとします。
むしろその妹紅と慧音はほったらかすとして(大丈夫そうなので)、問題は姫なわけで。様子を窺おうと覗き込むと小さく震えているわけで。
唇をきゅっと噛んで、泣き出しそうなのを必死に堪えて瞳は心なしか潤んでいて…どうしよう、可愛い。
そんな表情のまま口を開く、
「え、」
「……え?」
「………えいりんのばかぁぁー!」
八意永琳に無限のダメージ。
……リザレクション。
「…あやや、私忘れられていませんかね」
それどころじゃないんです、ブン屋さん。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そのあとの師弟会話。
「……というわけ」
「はあ。……そもそも何で覗きなんか」
「慧音に巻き込まれたの」
「それで姫様は引きこもったと」
「……ウドンゲ」
「はい」
「私はどうしたらいいのかしら」
真剣な顔で聞かないでください。ある意味自業自得ですって言いたいけど、師匠
は有無を言わさずくっついてくる。
寧ろどうしようと言いたいのは私です。
ああ、早く姫様出てきてくれないかなあ。
二人はどこから覗いてたのでしょうか? キャラの配置が分からない。
・文が突然前触れもなく出現した → 文は外からやって来て、廊下から襖を開けた?
・文の後ろで妹紅、輝夜が唖然 → 文と妹紅たちは初めから同じ部屋にいた?
覗いている場所は、隣の部屋、廊下、天井裏、カメラでの盗撮、など考えられるので、どこかにさり気なく、場所を示す描写を入れると良いと思います。
永琳が慧音を押し倒していたようですが、その描写も必要でしょう。覗きをしている段階で、二人の体勢を示す描写を(ry
慧音がどの程度裸になっていたかも描写してもらえると、読者は光景を想像できて、より楽しめるでしょう。
文さん、そんな所にいたんですか……。
自分で書いていても思うのですが、自分の作品を自身で読んでも、頭の中で勝手に補完しちゃうんですよね。
でも、他人は補完出来ない。それで、つい描写不足になってしまうのではないかな。
そのおかげで、この作品ができたんですね!
今度も、そのペースでお願いしますw
1のお方 読了ありがとう御座います。どうやらそうだったらしいです。
本当に仰るとおりで、くせに近いものかもしれません。推敲が足りなかったかも。と思い直し、次回からはちゃんと推敲しようと考えを改めました。
けやっきーさん 悪戯って素敵な響き!! 永琳とか、紫とか、ばば…大人びた人ほど戸惑う姿がかわいいかな、と思って。
次も出来たらそうしたいですねw
コメントありがとう御座いました!!