Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

我ら二人、○○なり

2009/06/10 23:52:51
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「私たちって」

人里の茶屋。
青空の下、外に設けられた長椅子に二人が腰かけて茶を飲む。
茶を飲むだけならば神社にいてもできることなのだが。
異変もなくて妖怪退治依頼もなくて、仕事もひと段落終えてしまうと残った時間をどう有意義に潰そうかという矛盾を抱えた話になってしまう。ただ、今日は神社で呆けるのではなく人里に出てきた。なんてことはない。ただの気まぐれ、暇潰し。
二人の暇潰しの途中。
その片割れである紅白の巫女が口を開いた。

「私たちって、他人からはどういう風に見えるのかしらね?」

二人が仲良さそうに並んでお茶を飲む光景が。
その声は小さく。隣に座るもう一人に尋ねているようにも、ただの独り言のようにも聞こえる。あえてどちらかに区別するのなら霊夢は何かしらの返答を期待していたわけではないので、独り言ということになるのだが。

「友達、ではないでしょうか?」

そんな独り言に霊夢の隣に座る者は返答を返した。それは疑問系の台詞である以上、聞こえたら返事はするだろう。

「友達ねぇ」

その言葉の意味を租借するように霊夢は口に出してみる。
ぱっと見はそう見えるだろう。間柄的にも、友達と言う感じなのかもしれない。だが霊夢は思わず眉をひそめる。
理由は明白。

「物足りない」

「不満ですか?」

不満も不満。

「もっとこう、親密そうな」

もっと近い存在でいたい。だから不満。
そう思っているのは私だけか、そう心の中で霊夢はつぶやく。隣に座るそいつから最初に出た単語がそれということは、彼女もまたそうとしか思っていないのかもしれないと。

「親友とか?」

その彼女から1ランク上の返答が返ってきた。
いい感じに近くなってきた。今の二人の間柄を示すにはもっとも的確な表現かもしれない。彼女の口からその言葉を引き出せただけでもうれしく思う。
しかし、

「それは売却済」

「魔理沙さん?」

「その通り」

親友と言う表現は近い。が、魔理沙とはまた違う感覚なのだ。そうなると、魔理沙とこいつを同じカテゴリに分けるのはおかしなことではないか。
確かに私たちは親友なのかもしれない。魔理沙は間違いなく自分にとっての親友で、そしてこいつもそれと同じように私の親友なのかもしれない。
でもそれですら足りない。だから売却済。
では一体何なのかと言われると、霊夢は答えることができない。その感覚があまりに複雑すぎてどのような表現が正しいのかわからないのだ。
そんなことを霊夢がつらつらと考えていると、

「親友、ではダメなんですね」

心なしか気落ちした声が届く。霊夢としてはそれですら物足りないと言う意味だったのだが、どうやら相手は逆方向に捉えてしまったらしい。どうもこの相方は、口ではっきりと伝えないと正しく理解してくれないことが多くて困る。
・・・・・・さっきまでネガティブの入っていた自分が言うのもおかしな話か。

「親友でも不足だって言ってるの」

「あ、そうだったんですか」

一転して弾んだ声に。こういう声で話させると相方のほうがより女らしい。そうなるとこちらの「女らしさ」が陰に隠れてしまうので困ったものだ。
困ったものだ。一度調子付くとどこまでも有頂天になるあたりも。

「夫婦?」

「その思考のぶっ飛び具合に乾杯」

冗談めかして湯飲みを掲げる。そこまで思考がワープできた彼女の脳内過程が知りたい。
随分と飛躍してくれたものだが、そう言って貰えるとうれしい。
夫婦。何だかくすぐったい表現。
その表現が適当か不適当かと言われれば、それは不適当なのだろう。両方女である以上『夫』役はできようはずがない。
しかし例えて言うのであれば、

「その場合私が夫なのかしら」

「私でもいいですよ?」

「あんたが夫役?あんまりピンとこないわね。ていうか却下、行き過ぎ」

ちょっと行き過ぎているような。
自分の持つこの感覚と自分が思い描く夫婦という感覚とは違う気がする。お茶だって程よく暖かいほうが飲みやすいのだ。多分、親友と夫婦の中間くらいが丁度いい距離感なのではなかろうか。
欲を言えば、いずれは仲むつまじい夫婦くらい親密になりたいとも思うが・・・・・・
すると相方がまた別の単語を持ち出してきた。

「姉妹はいかがですか?」

姉妹。微妙なものを持ってきてくれたものだが、まぁ夫婦よりは妥当といったところだろう。
ならば親友と比べてどうかと考えてみるが、両者の比較は難しい。親友のほうがより近いというのが霊夢の意見であったが、人によってそれはまちまちのはずだ。
とりあえず姉妹としておこう。
そうなると姉妹の『姉』はどちらなのだろうかと考えてみる。私がこいつを「お姉ちゃん」と呼ぶ光景と、こいつが私を「お姉ちゃん」と呼ぶ光景を眼に浮かべ。
『姉』は私・・・・・・・・ではないか。
私では『小生意気な妹』役しか務まらない気がする。
それはともかく、

「血は繋がっとらん」

「そういう突っ込みは野暮ですよ」

突っ込んだつもりが突っ込み返された。
それもそうだ。
別に答えのない問い。距離感を示すもっとも適切な言葉を捜しているだけ。
言葉の正確な意味合いからすれば『友達』『夫婦』『姉妹』どれもが違う。一番近いと思われる『親友』こそが正しいのかもしれない。
でも、もっと近くにいたい。
我侭。

「義兄弟というのもありますから」

「・・・・ふむ」

血のつながりとは切っても切り離せぬ縁。
着かず離れず、しかし共にある。
いいかもしれない。
まぁ問題があるとすれば、

「姉妹だとすると結婚する時が」

「結婚っ?!」

その言葉を口にして相方が頬を紅潮させる。かく言う私もちょっと紅い。言った後でなんだが、さすがに恥ずかしかった。
実際に結婚するわけでもないのだけど。
・・・・・・、
もし、
もしどちらかが『男』だとしたら。
やっぱり惹かれあったのだろうか?
どうだろう。私が女で、こいつも女だったからこそ惹かれたのではないだろうか。なれば『姉妹』と言う単語の響きが『親友』『夫婦』などよりも一層特別なものに聞こえてくる。
二人だけの、特別な関係を示す言葉。
特別。その響きがこそばゆい。

「冗談よ。姉妹、いいじゃない。義姉妹の契りでも結ぶ?」

「桃園で?」

「アレは3人じゃなかったっけ」

「そうでした」

相方が苦笑。
桃園の誓いではないけれど。
いつか本で見た口上を思い起こす。
願わくば同じ時を歩み。
常に共にあり。

「巫女二人、姉妹なり」

離れすぎず、近すぎず。

「私は風祝ですよ」

「そういう突っ込みは野暮よ」

「ですね」

早苗も苦笑。
異変もなく平和な空の下。
霊夢が櫛団子に手を伸ばす横で、早苗が茶を啜る。
ふと、二人は空を仰ぎ見た。
今日もよい天気だ。



 
紅白巫女と青白巫女が姉妹・・・・・・・・ゴクリ(何


昨日はむきゅーの日だったんですね。そうえばパチュリーモノを書いたことがない気がする。
次は乗り遅れぬようにせねば・・・・・・次ってなんだろ?
水崎
コメント



1.GUNモドキ削除
6(む)月14(いしき)で、古明地さんとこのこいしちゃんの日・・・かもしれませんね。
2.名前が無い程度の能力削除
あんまり百合百合してない親友以上の特別な関係。素晴らしい。
レイサナ分補給完了です。有難うございました!
3.名前が無い程度の能力削除
まったりとした空気がたまらん。

二人が結婚したら東風屋霊夢と博麗早苗のどっちになるんだ。
4.名前が無い程度の能力削除
レイサナ(゚∀゚)ktkr
5.名前が無い程度の能力削除
相方って表現と暇な中学生っぽい雰囲気がいいな。