バカルテット、リリーに説教する

　まだ風は寒いものの、季節としては春
　
「は～る～で～す～よ～」



「ちゅんちゅん、リリーホワイトだ！」
「もう春だね～」
「春なのか～」
「こら～！春が来たらレティが帰っちゃうじゃない！」

　だからこそ、春が来た事を伝える為に
　春告げ妖精であるリリーホワイトは目の前に居たバカルテット達に
「春ですよ～♪」

　春が来た事を伝える為に弾幕を放ってきた

「来たよ！皆弾幕回避！」
「ちゅんちゅん！」
「防御なのか？」
「喰らえ！アイスシールド」

　毎度の事なので、バカルテット全員でそれを回避する
「ちゅんちゅん、チルノ、シールド張って」
「あたいに任せなさい」
　チルノがその場に大きな氷の塊を作り出して簡易のシールドにする
　もっとも、あまりにも大量の弾幕によって氷の塊もすぐに削られる
「ルーミア！右から奇襲して！」
「了解なのだ！」
　だが、氷が削られるよりも先にルーミアが
　リリーホワイトの前現われて体当たりを食らわせようとする
「喰らえ～！」
「はる～！？」

　横からの奇襲にリリーホワイトが驚くが何とかそれを回避して
「リグルキーック！（ゲシッ！）」
「はぶっ！？」
　氷の真上から飛んできたリグルに踏みつけられた



「は…はうぅ…」
　踏みつけられて涙目で大人しくなったリリーホワイト
「…もう、弾幕をばら撒くのは迷惑だから止めてよ」
「ちゅんちゅん、里にも被害が出てるんだから」
「そうなのだ、余計な工事が増えるから止めて」
「レティが帰っちゃうから帰れ！」
　そのリリーホワイトに四人が説教すると
　
「うぅ～でも、春を告げるのが私の存在理由なんですよ？」
　リリーが頭を押さえながらそう反論した
「ん～…それは確かに…」
「ちゅん…一理あるね」
　リリーの反論にバカルテットの頭脳であるリグルとミスチーが頷く
　妖精には妖精の存在理由がある
　リリーホワイトは春告げ妖精…春を告げることが存在理由なのだ

「あたいは？」
「チルノは他の妖精よりも力が強いから」
「ちゅんちゅん、だからまた別格なの」
「そーなのか」
　だから、一年にわたって存在し続けているチルノは
　妖精の中でもとんでもない力を持っているのだ
「えっへん！あたいったら最強ね！」
「…あの～…」
　胸を張るチルノと、その傍で泣き止んだリリーホワイトが　
「なら私はどうやって春を告げれば良いんですか？」
　四人にそんな質問をしてきた



「…普通に春を告げれば良いんじゃないの？」
　リグルの意見が最もなんだが
「…そうしたいんですけど、普通に飛んでいるだけだと
　魔法使いと巫女に攻撃されちゃうんです…」
『あ～』
　バカルテット全員がため息をつく
「…霊夢と魔理沙なら仕方がないよ」
「うん、見つかったのが悪いとしか言えないものね」
　ミスチーとチルノがリリーの肩を優しく叩く
「はる～…」
『酷い目に会いたくないのなら、空飛ぶ人には手を出すな』
　幻想郷の中での妖怪の心得だ

「それじゃあどうしようか？」
「う～ん…」
「はる～」
「ちゅんちゅん」
　リグルの問題提起にチルノやリリーホワイト
　そしてミスチーも腕を組んで考えはじめる
　そんな時にルーミアがボソッと呟いた
「…弾幕以外の武器を持つのはどうなのか？」

　その言葉に、ルーミア以外の皆が手を叩いた
「というわけで、何か弾幕以外の武器を持って春が来た事を叫んでください」
「ちゅんちゅん、私達もなにか使えそうな武器が無いか調べて見るから」
「あたい、レティと大妖精に聞いてみる！」
「今から、香霖堂に行ってみるのだ！」
「わ、わかりました」
　バカルテットの言葉にリリーホワイトも頷く
　そして、皆が別れ様としたときに…

「そうだ！皆明日は…」
　チルノが皆に明日やる予定の遊びを告げた
　その内容を聞いたほかのメンバーも
「チュン、私もかまわないよ？」
「うん、何か武器が見つかったらだけど…」
「武器を見つけてくるのだ！」
　何時ものメンバーはそれに賛成して

「あの…私もですか？」
「当然よ！あたいが最強って事を証明するんだから」
　いつの間にかリリーホワイトも
　その遊びに参戦させられることになっていた



















　そんでもって後日


　バカルテット四人が集まっていた
「持って来たよ？」
「ちゅんちゅん…かなり無理した代物だよ」
「用意してきたのだ」
「ふふん、あたいの武器が一番凄いんだから」
　お互いに今日のために武器を持ってきていた

「まだ、リリーホワイトは来てないみたいだね」
「ちゅん、それじゃあどんな武器を持って来たのか見せ合いしようか？」
「武器の見せ合いなのか？」
「あたい一番！」

　チルノがそう言って、みんなの前に背中に担いでいた物を見せる
「レティに手伝ってもらって作った『アイスソード』よ！」
　刀身から柄まで全て氷で出来ている大きな剣だった
　その凄さに皆がため息を漏らす
　その様子にチルノも胸を張っていた
「でも、チルノにこれ持てるの？」
　だが、リグルの言葉にチルノが固まり
　その剣を持ち上げようとして…
「ふん…えい！…んぎぎぎぎっ！」
　持ち上げれなかったようだった　



「…さあ、チルノ無視して次は誰が武器を見せるの？」
「ちゅんちゅん！なら次は私だね」
　チルノが武器を何とかしようとしているのを尻目に
　今度はミスチーが細身の直刀を取り出した
「ちゅん…鳥老様からお借りしてきたんだよ」
「凄い綺麗な装飾だね…」
「…すごく軽いのだ！」
　触らせてもらったリグルとルーミアがその刀の軽さに驚く
「へへっ…鳥老ラーミア様からお借りした『隼の剣』
　その軽さゆえに一撃放つ間に二回攻撃が出来るんだって」
「「へぇ～」」
　
（んぬぬぬぬっ！持てない！）
（チルノちゃん、どうしたの？）
（あ、大妖精？）


「次は私の番なのだ！」
　ミスチーの剣の紹介が終ると、
　次はルーミアが背中に担いでいた武器を降ろした
「よい…しょっと」
　降ろすと同時に、地面に少しめり込んだ　

「…ね、ねぇ？…これ何？」
「ちゅん…鉄の塊にしか見えないんだけど…」
　そのあまりに異様な代物にリグルとミスチーが
　額から冷や汗を流しながらルーミアに質問する
「ん～とね…椛お姉ちゃんから借りてきた
　『ドラゴン殺し』って名前の超重量剣…」
　それを剣というにはあまりにも異様過ぎた
「お姉ちゃんの素振り用の武器借りて来たのだ」
　
　まず第一に先ほどのチルノの大剣もそうだが

「…ちゅん…ルーミアそれ振り回せる？」
　人が持てるか筈が無い代物である　
　ミスチーがルーミアにその事を伝えると
「ん…んんっ！」
　ルーミアがその剣の柄を持って
「よっこいしょ」
　両手で何とか持ち上げた

「…も、持ち上げた！？」
「ちゅん！ルーミア凄い！」
　その姿にミスチーとリグルが度肝を抜かれて
「…振り回すのは無理…」
「「だろうね…」」
　ルーミアにそれを地面に降ろさせた

（…良い？大妖精…せ～の！）
（（ん～！んん～！））
（…チルノちゃん、無理だよこれ）
（くっ、やるわね…私が作った剣にしては…）



「さあ、最後は僕だね」
　最後に残ったリグルが背中に用意していた物を見せる
「ちゅんちゅん…西洋刀みたいだけど…」
「…錆びているのか？」
　少々厚刃であるが、それは錆びているようだった
「うん、でも凄い頑丈だからって幽香が言ってた」
「えっ？あの大妖怪の？」
　武器の借主の名前を聞いてミスチーが驚く
「そうだよ、幽香に話を伝えて何か良い武器ないかなって聞いてみたら
『…これ持っていきなさい』ってポンと貸してくれたんだ」

　風見幽香が持っていた代物となると
　ただの錆びた刀とは思えない
「…きっと、何か凄い力があるのだ…」
「ちゅん…なにか曰くとか剣の名前とかは聞いてないの？」
　その言葉に、リグルが頭をかいて

「ん～…由来を聞いても、『私が作った』としか聞いていないし
　剣の名前を聞いたら『そうね、マナの剣って言われていた事もあったわね』
　って言われたから、詳しい事はよくわからないんだ」
「ちゅん…マナの剣」
「…大妖怪が作った武器なのか～」
　名前も由来も良くわからなかったが
　きっと凄い代物なのだろうと、二人が驚いていた
　

（…あ、いたいた）
（あ、レティ？）
（レティさん！どうしたんですか？）
（こら、駄目じゃないチルノちゃん、私のアイスソード持って行ったら！）
（…だ、だって～）
（はい、これがチルノ専用のアイスソード…これは私が持っていくから）

　ひょい！

（…それじゃあ、そろそろ春眠するからまたね）
（後で昼寝しに行くから！）
（お疲れ様でした！レティさん）












「さて、これで全員の武器がそろった」
　チルノが自分で持てるサイズの剣を持って来て
　四人がお互いの武器を構える
「そうね！後はリリーが何を持ってくるかね」
　チルノがそう言うと同時に

「はるですよ～！」
　背中の方から聞きなれた声が聞こえてきた
「ちゅん…来たみたいだね」
「これで皆そろったのだ…」
　そうして、バカルテットの四人がリリーが来た方に振り向くと
（ぎゅぃぃぃぃぃぃん！）

「ちょ、ちょっと！？」

　そこに居たのは

「わ、わはぁ～！？」
　
　高速で回転する刃を持つ武器を持ち

「う、うわわわわわっ！？」

　渾身の笑顔で

「ぢぃん！？」

　回転させながら突っ込んでくる
　春つげ妖精の姿であった

「は・る・で・す・よ・？」
「「「「に、にげろ～！」」」」


　本来なら、この後皆でチャンバラごっこをするはずだったが
　なし崩し的に、リリーホワイトから逃げる鬼ごっこになった


　この後、チェーンソーを持った
　リリーホワイトの噂が里の中で響く事になった
　事実を確認しに行った勇敢な新聞記者が居たが
　その新聞記者が何処に行ったのかは行方が知れない







　もうすぐ春です…もしかしたら貴方の背後にも
　春を告げる妖精が…

「は・る・で・す・よ・？」

（ぎゅぃぃぃぃん！）
　
　此処から先は血で染まっていて続きが読めない

　どうも、脇役です…
　春ですね～…早苗さんの自機ばんじゃいなＳＳの案もありますし
　バカルテット達に、ライブアライブさせる話の案もあるうえに
　レティと美鈴がタッグを組んで勇儀姉さんとガチバトルさせる案もある
　でも、その前に書くための気力が持たない…まあいいか春だからね？

（は・る・で・す・よ・？）
　おや？後ろからチェーンソーの音が…




　おまけ

「…あ、やっと見つけましたよ文様」
「いや～、まさかリリーホワイトの噂を探す途中で
　道端に置いてあった椛の刀に押しつぶされるとは思って居ませんでした」
「わう、それじゃあ帰りますよ？文様…（ひょい）」
「…あの、それ軽々と持ち上げれる物なんですか？」
「わう？少し重いですけど、慣れれば楽ですよ？」
「（あやや…椛って凄い力持ちなんですね）」



　おまけ２
　
　改めて、後日チャンバラをしようとしたら
「こいつは珍しい物だから、借りて行くぜ？」
「ちゅんちゅん！も、持っていかないでよ～！」
　ミスチーの借り物の刀を魔理沙に持っていかれちゃった…
　その事を聞いた三人…お互いの保護者達に相談してみた


「レティ！ミスチーの剣が魔理沙に取られた！」
「…チルノちゃん、昼寝するのちょっと遅れるわね？」
　アイスソードを片手でレティが持ち上げると
「…魔理沙の家にちょっと散歩に行ってくるわ」
　無言のまま表に出て行った


「幽香…実はミスチーの剣が…」
「あら…自業自得かもしれないわね」
「…お願いだよ…ミスチーを助けてあげて」
「（涙目リグルの上目使い！？）…ふ、ふふっ…少し待ってなさいリグル」
「…やってくれるの？」
「（あ～もう、可愛いわね♪）…マナの剣に力を注ぐわね」
　金色に輝く剣を持って、風見幽香が魔理沙の家に向かった

「お姉ちゃん！かくかくしかじか！」
「わうわうウマウマ…わかりました…」
「…お、お姉ちゃんそれ重い…」
　ドラゴン殺しを片手で持ち上げる椛
「…わう、お留守番よろしくお願いしますね、ルーミアちゃん」
「わ、わは～」
　ルーミアが頷くのを見て、その頭を椛がわしゃわしゃと撫でてから
「…ちょっと行ってきます」
　椛が魔法の森に向かって飛んだ

　後日、魔理沙の家が解体されることになるのはまた別のお話