このお話は「ちびゆかの幻想 ~第一話 私の名前はちびゆかです~」の続きとなっております。
~第一話のあらすじ~
博霊神社の裏山に、突如大きな爆発音がした。
爆心地にいたのは一人の少女。
その子の名前は「ちびゆか」
なんと未来の可能性の世界からやってきた、紫とフランドールの娘だった!?
さらに、ちびゆかの世界では霊夢が突然消えてしまったらしい。
その原因をさぐるため、ちびゆかはこの世界、分岐点へとやってきたのだ。
自分のことを説明するちびゆか。そのとき突如ちびゆか達めがけ大きな槍が飛んできた。
その槍の名前はグングニル。
そう、襲ったのはなんと、フランドールの姉、レミリア・スカーレットだった!
その猛威にあわや、霊夢がやられるというとき、ちびゆかを光が包み込む。
「正義の色に想いを重ね、悪意を消し去る永遠の少女! ファンシーちびゆか只今見参!!」
< ~第二話 もう変身しないもん!~ >
ひらひらと、フリルとリボンがはためく。
その風はフリルとリボンの装着者である、ちびゆかから放たれていた。
紅い世界の中で、ちびゆかと霊夢と、そしてレミリアが対峙していた。
『あなたの存在を、この世界から末梢する!』
先のちびゆかの宣言。
決意、とも呼べるだろうソレを、ちびゆかは握りしめる。
これから起こる生死をかけた戦いへの恐怖を、閉じ込めるために。
「ファ、ファンシーちびゆか、だと!? 知らないぞそんな存在は! 私の歴史の中に存在していない!」
空中に浮かんでいたレミリアが言った。
驚いていることが、ありありとして見える。
心なしか、方が震えているようだ。
それは戸惑いか恐怖か。
とにかく、攻撃の手が止まったのは事実だった。
その隙に霊夢が符を取り出しながら、ちびゆかに話しかける。
「何を驚いているの、あの馬鹿」
「あれはレミリアおばちゃんじゃないです。あれは……幻想郷の歴史!」
ちびゆかが睨んだ先、幻想郷の歴史と呼ばれたレミリアが、ゆっくり地面へと降りてきた。
いまだに肩が震えている。
だが先ほどのとは違い、どこか不気味さを漂わせながら。
それは、笑いによる、震え。
「くっくっく、ファンシーか。少々驚いたが、結界が張られた服を着た……ただのちびゆかじゃないか」
「どうするのちびゆか。歴史とやらは殺る気まんまんみたいよ?」
言いながらも符を展開する霊夢。
こっちもやる気まんまん。どうやら闘志に火がついたらしい。
ちびゆかが一度うなづくと、右手のクリスタルから一本のステッキが現れる。
『新・レーヴァテイン』
炎を模した形のステッキを手に、ちびゆかが構え、霊夢に言葉を返す。
「バトル・レディ……霊夢おねーちゃん、さきほどのアレが放った弾幕。おひとりで避けられますか?」
「私を侮らないでほしいわね。あんなのハードな魔理沙の弾幕程度じゃない」
軽口を叩く。
きっとそれが、彼女たち弾幕少女の本気の証。
そして、そこから始まる挨拶。
霊夢が最初に口を開く。
「あんた、幻想郷の歴史だっけ?」
次にレミリアの姿を模したモノ。
「記憶、とも呼ぶわ」
「ふうん、それは便利ね。慧音のテストで絶対に100点じゃない」
「いや、零点さ。なにせ名前が無いからな」
「んじゃあんたの名前は、ふぁんふぁんね。決定。だって幻想だし」
そしてちびゆか。
「ふぁんふぁん……(お母さんの名前のセンスと同等……)」
「お似合いじゃないふぁんふぁん?」
「……こんなに世界も紅いから本気で殺すわよ」
「そんなに怖い顔しちゃって。歴史って案外人間っぽいのね」
日常から否日常へと切り替えスイッチ。
それが今……入った。
「はぁ!!」
ふぁんふぁんが気合と共に、姿を消した。
否、消したのではなく、超高速で動いたため眼に写らなかったのだ。
だが霊夢とて百戦錬磨の博霊の巫女。
いくら早く動こうとも、どこから攻めてくるか、感覚で分かる!
「そこっ!」
ふぁんふぁんが来るであろう位置へ、符をばらまく。
一枚の符の攻撃能力が低くても、一点に集中させれば威力は上がる。
「くっさすが一番危険な存在だな。だがこの程度では私を倒すことはできないぞ」
「それはどうかしら?」
「な、なに、これは!?」
ふぁんふぁんに当たった符が光の線を紡ぐ。
それが符同士で繋がり、ふぁんふぁんの手足を封じ込める。
そう、霊夢はアタッカーではなく、サポーター。
攻撃の要は、ステッキの力を解放し、大きな火球を頭上に掲げているちびゆかだ。
「霊夢おば、おねえちゃんどいてぇ!」
「ちびゆか、後でおしりペンペンよ」
霊夢がちびゆかの後ろまで下がる。
そして、動けないふぁんふぁんへと、新・レーヴァテインを振りかざす。
「パチェさん直伝、ロイヤルフレアァァァァァ!!」
掛け声と共に放たれた大きな火球が、ふぁんふぁんへと迫る。
その勢いは速く、一瞬で着地。爆風と爆音があたり一面を駆け巡った。
爆風が過ぎること数秒。
あたりを立ち込める煙も、落ち着きを取り戻していた。
「ちびゆか、やりすぎ」
「……まだだよ、霊夢おねえちゃん。この程度で終わるなら、私はここまで来てない」
「そのとおりだ」
ちびゆかに答えるかのように、爆心地から声がする。
クレーターができるほどの威力。
それなのに、煙の中から姿を現したふぁんふぁんは、傷一つついていなかった。
髪の毛にら蒼く輝き、白く透き通る肌が、首から胸、お腹、下腹部もすべてつるっと奇麗で……
「「なぜに裸!?」」
二人の声がハモった。
ちびゆかもこの展開は予想していなかったらしい。
「だって、燃えたし」
ふぁんふぁんが言ったとおり、周りには服の残骸らしき灰が舞っていた。
どうやら、服は普通の服だったらしい。
少し前までは紅かったであろう服が、今は一部のみ紅い布切れと化している。
その布切れを、ふぁんふぁんは掴み、言った。
「トレース」
その一言で、布切れが棒状になる。
『スピア・ザ・グングニル・コピー』
まだ戦いは始まったばかり。
そう言いたいのだろうか。
長い槍をもった少女のシルエットは、悪魔そのものだった。
「言ったでしょ? 本気で殺すって」
にこやかな笑顔で、ふぁんふぁんは言う。
楽しそうにな声で。
本当に楽しそうに、グングニルを投げる。
流れるような一連の動作の一つ。
殺すことを、なんとも思っていない行動。
殺意そのものが、霊夢へと迫った。
「同じ手は、喰らわないわ!」
ちびゆかと霊夢はグングニルを避けようと、紅い軌跡から体を放す。
目標を失い飛んで行ったグングニルが、爆発。ただの布切れへと戻った。
「霊夢おねえちゃん、さっきみたいにあいつの動き、止められる?」
「符が当たってくれたら、ね!」
二人が相談している間にも、グングニルコピーが迫る迫る迫りくる。
生み出しては投げ、生み出しては投げ、徐々に、二人は追い込まれていった。
「なによあいつでたらめじゃない!」
霊夢が文句を言いたくなるのも分かる。
ふぁんふぁんは攫む布がなくなると、自分の爪をはがしてグングニルにしだしたのだ。
しかも、爪はその場で再生。延々と投げ続けてくるのだから。
ちびゆかはよけるのに必死で、新・レーヴァテインを掲げることすらできない。
「あぁもう、夢想封印!!」
一瞬の隙を作ろうと放った夢想封印。
どんなものでも封印してしまうスペルカード。だが。
「トレース……ラウンド・グングニル」
ふぁんふぁんの青い髪の毛が、真赤に染まる。
そして夢想封印が当たる瞬間、パキンと、スペルカードが砕けた。
砕けたスペルカードを投げ捨てながら、霊夢らしからぬ悪態をつく。
「っとに、出鱈目ね。髪の毛をグングニルにするだなんて。まったく眩暈がするわ」
「この技はあまり使いたくない。頭が重いしな」
グングニルコピーを一本残し、元の髪の毛に戻す。
右手でグングニルコピーを「頭から引き抜き」、また投擲の構えをとる。
また、逃げ回る時間が始まるのか。
「させないよ」
「!?」
霊夢が作った隙、そこにちびゆかが割り込んだ。
新・レーヴァテインを、「剣」のように振り回す。
死角からの接近に、ふぁんふぁんは思わずグングニルコピーで防いだ。
だが接近したちびゆかの猛攻は止まらない。
頭を腕を脚を胴を首を、目にもとまらぬ速さで斬る。
振り回すたびに炎の装飾が柄に、新・レーヴァテインの先端を刃へと変えながら。
そして両手での一撃で、新・レーヴァテインは剣へと変わった。
炎ような、真紅の剣に。
ちびゆかの猛攻に、ふぁんふぁんも押され気味なようだ。
そこに霊夢の針が飛ぶ。ふぁんふぁんの背中めがけて。
「くあっ! このぉ、ふざけるなぁぁぁ!」
ロイヤルフレアの爆風にも耐える肌。だが、どうやら針は刺さるらしい。
ふぁんふぁん背中に大量の針が刺さったまま、グングニルコピーを勢いよく振るう。
力押しだったが、それによって起きた風圧で、ちびゆかは吹き飛ばされる。
霊夢に受け止めてもらいながら、悔しそうにつぶやいた。
「もう少し、もう少し私に力があればこのくらいの風なんて」
「はぁはぁ……くそ、がぁ……」
お互い肩で息をするちびゆかと、ふぁんふぁん。
だが、ふぁんふぁんに先ほどまでの余裕の色はすでにない。
その様子を見て、霊夢は気がついた。
「ちびゆか、見てあいつの爪」
「爪? あ、短くなってる。再生能力が追いついていない……もしくは低下しているの?」
「あいつはロイヤルフレアの熱量でも全く動じなかった。けれど、私の夢想封印には全力で防御に回ったわ」
「うん、さらに、針も効いてるみたいだね」
いまだに刺さったままの針。それも針の半分ほどまで深く刺さっている。
ふぁんふぁんは動きにくそうにしながらも、抜く気はないようだ。
前かがみになりながら、ふぁんふぁんはつぶやく。
小さな声から、そして相手にぶつける怒号へと変えて。
「殺す、殺す殺す殺す、絶対に殺す、殺して殺しテ殺ス! コノ間違っタ世界ヲ!!」
すでにレミリアの声でなく、獣のような咆哮が、衝撃はとなってすべてを吹き飛ばす。
地面を、神社を、賽銭箱を、石となった紫を。
ふぁんふぁんからあふれ出す負のオーラを、とっさに符で防ぎながら霊夢は言った。
「うわっあいついきなりぶちぎれたわよ!?」
「あれがあいつの本性。ただの、破壊衝動の塊です!」
「これまた性質が悪いわね」
紅いオーラをまといながら、ゆっくりとふぁんふぁんは上昇していく。
両手を横にまっすぐ広げ、十字の炎を身にまといながら。
『不夜城レッド・コピー』
通常の不夜城レッドとちがうのはそのオーラの大きさだろうか。
すべてを巻き込みながら、どんどん大きくなる。
数秒後にはちびゆか達も巻き込まれるだろう。
だが、当の本人達は……笑っていた。
「ちびゆか、体力はちゃんと残ってる?」
「おかげさまで、ね」
霊夢の支えから離れ、自分の足で立ち上がる。
少しふらついているが、その目はまだ死んでいなかった。
「レーヴァテイン、もう少しがまんしてね」
ちびゆかの想いに答えるように、紅い輝きを放つ新・レーヴァテイン。
その輝きは、ちびゆかの瞳と同じ色。同じように生きていた。
「準備はいいちびゆか?」
「いつでも!」
「一応確認しておくけれど、わかってるわね?」
「うん、やることはたった一つ」
ちびゆかが霊夢の質問に、大きくうなづいて答える。
そして、新・レーヴァテインを腰に腰に構え、魂の叫びを放つ。
「今度は」
「私たちが」
「「ダブルアタッカーよ!!」」
瞬間、結界を自分たちの周りに張り、ふぁんふぁんへと突撃。
オーラによる圧力に、ミシミシと結界が叫ぶ。
距離にしてあと50m。
なおもまっすぐ、ひらすらまっすぐに飛びかかる。
だがあと少しのところで、結界が割れた。
中心部の濃度に、耐えられなかったのだ。
高濃度のオーラが直接二人に刺さる。
あと少し、あと少しで届くのに。
「負けられない、ここで負けたら、私が私でなくなるから!!」
ちびゆかが、左手を前に出した。
手の甲についている紫色のクリスタル。
そこから幾重もの光があふれだす。
それは幾重もの結界となって、二人を守る力となる。
その光は、仲間の思い。願い。
彼女たちと関わってきた、少女たちの力が、守る力となっているのだ。
「二重、四重、八重、十六重、三十二重……霊夢おねえちゃん!」
「えぇ! 夢想封印・散、夢想封印・集!!」
スペルカード2枚を同時発動。
白き光が一斉にふぁんふぁんへと押し寄せる。
光に包まれたふぁんふぁんが叫ぶ。
「アアアァァァアアァアァァァァァーー!!
それはもう、獣ですらない。ただの■■■。
光が収束した瞬間、オーラの排出が止まった。
霊夢が呼ぶ、仲間を。
信頼のできる友の名を。
「ちびゆか!」
「これで最後!! 双想「破壊と創造の境界」!!」
宣言に呼応し、ティアラが外れる。
そして新・レーヴァテインの柄に付く。
左手から現れた紫色の符が、刀身に絡みつく。
右手のクリスタルと左手のクリスタルが眩い光を放ち、頭上に掲げた剣は、虹色に光る大剣となった。
『破壊と創造の境界』
剣から放たれる力が、漂っていた負のオーラを全てぬぐい去る。
ちびゆかの金色の髪の毛に反射した光が、ふぁんふぁんを照らした。
「!? そうなん……だ」
ぼそりとつぶやいたちびゆかが、大剣を構える。
そしてそっと目を開き、叫びながら突撃した。
「あなたの間違い、それは自分の世界が正しいと信じ、押し付けたこと。自分以外の世界を認めなかったこと! だからっ!」
剣が、ふぁんふぁんを切り裂く
一筋の水が、その軌跡をたどりながら、落ちていく。
「だから、次に誕まれてくるなら、色々な人の心の歌を聴いて。そうすればきっと……笑えるから」
「ア、ア、アアアアアアッァァァぁアぁぁあァぁぁぁぁあああああっ!」
静寂
憎悪
殺意
好意
騒音
(ああぁぁ……)
死
眠
滅
生
誕
(あ……)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
戦いは終わった。
ふぁんふぁんがいた場所には、何もない。
周りの世界も色を取り戻したようだ。
まるで、先ほどまでの闘いがなかったかのように、地面も神社も元通りになっていた。
「ねぇ、ちびゆか」
「なんですか霊夢おねーちゃん?」
「どうして、最後に泣いてたの?」
最後、それはふぁんふぁんを斬る時のことだ。
一筋の水。それはちびゆかの涙だった。
「破壊と創造の境界……あの剣が伝えてくれたの。ふぁんふぁんの歌を」
「あいつの、歌……」
「ふぁんふぁんは幻想郷の歴史。さらにその中でも、憎悪に関する歴史が集まったものみたい」
妖怪から人間への憎悪。
人間から妖怪への憎悪。
そして、人間から人間への、妖怪から妖怪への憎悪。
そんな事ばかりしかしらなければ、全てを壊したくもなるものかもしれない。
「ということは……ちびゆかに関する歴史は持ってなかったんでしょあいつ?」
「そうみたいだね。なんでだろう? 歴史は過去現在未来と、ずっとありつづけるのに」
「簡単なことじゃない」
霊夢がちびゆかの頭に手を載せて言う。
「あんたは誰からも恨まれない、愛されるために生まれてきた子供ってことじゃない?」
「あ……うんっ!」
今日一番の、いい声が神社にこだまする。
「あらあら、ずいぶんとボロボロになったわね霊夢?」
「あ、紫居たんだっけ」
「忘れるなんてひどいわ~」
先ほどまで石になっていた紫が、なぜか神社への階段を登ってやってきた。
霊夢は先ほどの出来事を思い出した。
「そういえば吹き飛ばされてたっけ?」
「気がついたら木に引っかかってて、おかげで腰が痛いわぁ」
腰をさすりながら、痛そうな顔をする紫。
それもわざとらしくて、なんだか可愛く思えてきた。
でも、霊夢はそんな事を口に出すわけもなく、ただいつものように話す。
「あんたの場合、慢性腰痛じゃないの?」
「このピチピチギャルに向かって何をいうのかしらこの子は」
「ピチピチギャル? どこにいるのかしらそんな人」
「れ~~い~~~む~~~!! ほらこのふともも! この胸! このうなじ! どうよどうなのよ!」
きゃあきゃか騒ぐ二人をみて、ちびゆかは笑った。
あははははと、おなかを抱えて。
「ほら紫、あんた笑われてるじゃない」
「私なの!?」
「ふふっ。ちがうよ。ママと霊夢おねーちゃんが、いつもの感じで安心したら、なんか抑えられなくて」
ほんのりと薄くでた涙を気づかれないようにぬぐう。
それでも、一度でてしまったら止まらなくて、止まらなくて止まらなくて。
たまらなくなって、二人に背中を向けた。
そして、元気なふりをして、語りかける。
「じゃ、私帰らなくっちゃ」
「あ……そっか。そうなんだ。それはそうよね」
寂しそうな声で答える霊夢。
どう声をかけたらいいか分からないのかもしれない。
紫は何も言わず、そっとちびゆかを背中から抱きしめた。
自分の子供。だけどちがう人の子供を。
「ねぇちびゆか。もう、分岐はしたのかしら?」
「うん、だから私は、帰らないと、いけない、の」
「だったら、向こうの私に伝えて頂戴」
一呼吸おいて、紫は続ける。
「ナイス私! こんな可愛い子を生むとかさすがよ私!」
「あ……う……」
さらに強く抱きしめて、さらに続ける。
「もう食べちゃいたいくらい。ねぇちびゆか、貴方私の子供にならない?」
ほおっておいたら本気でこのまま離さないかもしれない。
そんな不安が、ちびゆかの頬を汗という形で現れた時。
"スキマ"から腕が現れた。
「ゆかりんパーンチ!!」
「きゃぁん!!」
そしてそこから現れたのは、八雲 紫その人だった。
帽子のリボンが二本になっているけど。
「紫が二人!?」
さりげなく蹴りを入れようとしていた霊夢が戸惑った。
おそらくどっちに蹴りを入れたらいいのかを、迷ったのだろう。
「あいったたた。どうして私が私に殴られないといけないのよぉ」
「人の娘に手を出すからでしょ?」
「いいじゃない私なんだから」
「私は私だけど私は私じゃないわ。もう無事に分岐したから」
「私だけずるいわ~。少しくらい幸せを分けてよ、私なんだし」
「私は私の幸せを探しなさいな」
「いいわよ、私には霊夢がいるし」
「ふふ、そーねー霊夢がいるものねぇ?」
「そ、その含みはなによ」
「さぁ、何かしら? ふふふ」
訳が分からない。ゆかりが紫で紫がゆかりで。
分からないついでに、霊夢は蹴りを入れておいた、両方に。
リボンが一本の紫は、神社の階段を転がり落ち、リボンが二本の紫はスキマの向こう側へ。
おそらく二本の紫が、ちびゆかの母親なのだろう。
「霊夢おねーちゃんすいません、ママがご迷惑を」
「いつものことよ。それより、今のがお迎えなんでしょ?」
「はい。分岐したわずかな時間だけ、境界が歪んでスキマが開けるんです」
「だったらほら、行きなさいな。時間、ないんでしょ?」
がばっと、ちびゆかを持ち上げる。
脇の下に手を入れて、同じ目線まで持ち上げる。
「楽しかったわ、ちびゆか。ありがとね」
「私も、です」
「というわけで、そぉい!!」
「きゃぁぁ!?」
掴んだままダンクシュートといわんばかりの勢いで、スキマへちびゆかを押し込んだ。
スキマに背を向けて、霊夢が手を振る。
「……あんたとの別れの言葉はいらないわ。どうせまた会えるかもしれないしね」
もうお互いに顔は見れない。
「またね、ちびゆか」
ゆっくりとスキマが閉じていく。
その隙間から、ちびゆかの声が聞こえた。
「またね、霊夢おばちゃん!」
「おばちゃん言うな!!」
後ろ向きに投げた一本の針が、スキマを通った瞬間、この世界は固定された。
この世界がどこへ続いているかは知らないけれど。
ちびゆかのような子が、もし生まれてくるのならば
「楽しい毎日になりそうね」
青空に光る一番星を見つめ、霊夢はそっと目をつむった。
~エピローグ~
自分の世界に戻ってきたちびゆか。
そこは昔、紅魔館と呼ばれた館。
今は、天使が住まう悪魔の館、天魔館と呼ばれてたり、いなかったり。
その館の地下室に、親子が仲良く転がっていた。
もっと詳しく言うと、親の背中に子供が乗っていた。
「ちびゆか、成長した、わね……がくり」
「え、私ってそんなに重たい!?」
軽くショックを受けたちびゆか。
尻にしかれて伸びている紫。
そして、本を読んでいるパチュリー。
将棋で遊んでいる美鈴と小悪魔。
紅茶を飲んでいるレミリアに、その傍に立っている咲夜。
狭い地下室に、わらわらと紅ファミリーが集まっていた。
『おかえりちびゆか』
壁にはそう大きく書かれていた。
なぜか血で。
包帯を頭に巻いている美鈴を視界からそっとフェードアウトさせる。
……なにか見てはいけないものが、目に映った。
それはパチュリーの手元の本だ。
「ただいまみんな!」
それを言うべきか、言うべきだろう。
でもちびゆかは猛烈に逃げたくなった。
だってその本の名前は……
「おかえりなさい、ちびゆか」
最初に声をかけたのは本の持ち主、パチュリー。
合わせたかのように、みんながちびゆかを見る。
口々にお帰りといいながら、どうしてにじり寄ってくるのだろうか。
「汗かいたでしょう? さぁさっそくお風呂に入りましょう」
「パチェさん、目が怖いよ?」
「そんなことないわ。あ、お風呂に入っている間に渡したクリスタル貸して頂戴」
「ど、どどどどうしてかなぁ?」
嫌な汗が噴き出る。
お風呂は入りたいけど、まずい。今は言ったら確実に、大切なものが壊れる音がする。
「ちょっと、改修しようと思うのよ。おもに服のデザインを。この魔法少女図鑑に載っているこれとかに」
「やっぱりーー!!」
逃げようとするちびゆかを、どこに隠れていたのか、フランがつかむ。
お帰りのあいさつもなしに、ただ笑いながらに言った言葉は。
「ほらこれなんか可愛くていいと思うんだ!」
フランが指さしたのは、リリカルぽい服。杖もどこかメカニックで可愛いのだけれど。
杖にまでリボンがついていて、なんというか、リリカルだけどリリカルじゃなかった。
むしろふりふり。やっぱりふわふわ。そしてどこまでもファンシー。
ずずいっと迫る紅ファミリーの悪魔の手。
一種の恐怖に身を震わせるちびゆか。
「やだーーー! 私、わたし……」
抵抗も空しく、少女はただ叫ぶことしかできなかった。
「もう変身しないもん!」
>>気がついたら気にひっかかって
気→木?
誰っ!?
こじろー、あなた急ぎすぎよ
にしても可愛い
誰かパチェさんを止めようよ!
「天魔」館と聞いてレミリア×天魔とか想像しちまいました
ちびゆか可愛いよちびゆか!
紅ファミリー、いいぞもっとやれww
所で最後の方ちびゆかが霊夢の名前を
『霊夢さん』と言っているのは誤字ですか?
違っていたら、すみません。
ちびゆかを愛してくれる人が多くて我嬉しい!
>奇声を発する程度の能力様
ドット絵じゃないちびゆかを描く時がついにきたのか……
>3様
自分の力不足で申し訳ありません。
東方の世界にマッチできるよう精進していきます。
>唯様
フランドーン!?
誤字なのに書いた自分自身で笑ってしまった……
誤字報告ありがとうございます!
>5様
今回かなり心が安定していなかった部分もあるっぽいです。
ネットこわいネット
紅ファミリーはみんなパチェさんの味方! レミリアも紅茶を飲みながらにこやかな笑顔で……かわいい!
レミ天、あたらしいじゃないか!
>6様
仲いいな紅ファミリー
まさに家族一丸となってって感じですよねー。やることがアレですけど。
>7様
ふぁんふぁんもかわいそうな子だったのかもしれにゃい。
「霊夢さん」とは実は初期の設定でそう呼んでいて、ちびゆかの初恋の相手が霊夢で~と言い訳してみる。
すいません口調統一できてませんでしたすいませんorz
↓
左手
あのメタリック加減が妙に気に入って魔法少女ものでは一番のお気に入りに
あーゆーちびゆかも見てみたいかも
誤字情報感謝です!
ちびゆかに色々は衣装を着せたいですねー
フェイトさんの衣装がエrうわなにをするやめ(ry