聖には何かにつけて私に抱き付く癖があるみたいで。
暇を持て余した私とふいに目があったと思ったら次の瞬間には後ろから抱きくるめられていた。
むにゅうぅぅぅ。
自然と押し付けられる事になったでっぱいに何とも言えない気分になる私。
これはあれか、私への当てつけか何かか?
「うん。やっぱりぬえはこうやって後ろから抱きしめるのがベストですね♪」
随分とご満悦な声で一人勝手に納得する聖。
「…………なに勝手なこと言ってるのさ。」
顔の見えない聖にも伝わるように出来るだけ冷淡な声で言い放ってやる。
新参者だけど最早遠慮する間柄でも無いと私の方は勝手に思っているので一切の容赦はしない。
はっきり言ってやらないと聖はすぐ調子にのるから。
「持ち運びも楽ですよ?」
「いや、そんな更にお得みたいに言われても……。」
て言うか持ち運び易いなんて真っ赤な嘘じゃない。
だれが畳に尻餅を付いて座ってる少女を後ろから抱き抱えて運ぶもんか──ってこらこら! 実践しようとするな!
大体聖に掛かれば何だって紙切れみたいなもんじゃん。
怪力揃いの命蓮寺の中でも全く引けを取らないと言うか下手したら一番の力持ちだなんてこの見た目から誰が信じるのやら。
力持ちっていうかもはや馬鹿力だよね──
「南無三。」
ゴンっ!
「いったぁ……! いきなり何するのよ!?」
「声に出ていましたよ。全部。」
あちゃー……私とした事が失敗失敗。
「もうっ……! ぬえは私に抱き締められるのが、そんなに嫌ですか?」
今度は子供みたいに頬を膨らませる聖。べ、別にそういう訳じゃ無いけど……。
「て言うか何で私な訳? 他の面子じゃダメなの?」
そう指摘してやると、顎に人差し指を立てて今度は何やら考える仕草──
一々行動がテンプレートね……。
「そんな事は有りませんよ。私は誰にだって抱きつきます!」
「あっ、そう……。」
随分とまあ尻軽女だ事……。
「あれ? ひょっとして嫉妬ですか?」
「バカッ……! そんな訳ないでしょ!?」
「もう、照れない照れない♪」
なんだかとんでもない勘違いをされてしまった。
別に私は嫉妬もしてなきゃ照れてもいないんだからっ!
「大体他の連中が聖を甘やかし過ぎてるんだ……!」
間違いないと私は思うんだけど、同意を求めて振り返ると当の聖は苦笑いを浮かべている。
何よっ……! お前が言うなとか思ってるんじゃないの!?
思いっ切りジト目で睨んでやると、わざとらしく聖は視線を逸らした。どうやら図星らしい。
「まあ貴女の事はさて置いて──」
「……やっぱり。」
「──こほんっ。さて置いて。別に私は甘やかされてなんていませんよ?」
何の根拠があるのか知らないが、自信有り気に微笑む聖。
「事実、ナズーリンは私に抱き締められるのを良しとしませんから。」
誰かと思えばナズーリンか。あの小さな紳士は何かと体裁を気にしている様だから差して不思議でもない。
それに背が小さいのがコンプレックスみたいだから余計だろう。
「堅物だからねぇ~ナズーリンは。」
「それもあるのでしょう。だけどもっと大きな理由があるのですよ?」
さも愉快そうに笑う聖。どうやら思い出し笑いのようだけど、一体何がそんなに嬉しいのやら。
拒絶されて喜ぶんだから、よっぽどなんだろう……。
「……知りたい?」
「…………うん。」
これはあれよ? どうしても気になったからとか、そんな理由じゃないんだからっ!
お年寄りの話を聞いてやろうていう私なりの真心なんだからっ!
「以前ナズーリンを抱き締めようとした時、彼女は私の両手を広げさせまいと必死になって抑えながらこう叫んだのです。」
『わ、私の身体はご主人だけの物……! 例え聖殿と言えど、これだけは譲れないっ……!』
「ああ……あの時のナズーリンの表情と言ったら……掴まれた手から彼女の緊張と真剣さが伝わる様でした……。
何より潤んだ瞳で上目遣いに睨まれた時は正直くらっときましたよ。あの時彼女を押し倒さなかった自分を誉めてやりたい程に……。」
台無しだ……なんか甘酸っぱくも心温まる良い話かと思って聞いていたけど、最後の感想で全てが台無しになった。
──なんか付き合うのがバカバカしく思えてきた……。
ぎゅっ。
「聖……?」
不意に私を抱き締める聖の力が強くなった。と言っても暴力的に強くなった訳じゃなくて、より密接に聖は抱き付いてきたのだ。
「…………その時気付いたの。ああ……私が一緒に居られなかった時も二人はずっと一緒だったんだって……。」
か細い声で呟く聖。寂しさとか切なさとか……そう言うのがたくさん詰め込まれているように感じられた。
「一応言っておきますが、今の二人を私は心から祝福しています。本当ですよ?」
疑うもんか。奥手な二人を後押しした影の立役者を知らない者など命蓮寺(ここ)にはいないのだから。
努めて明るく振る舞っているようだけど、聖の声からは憂う気持ちは消えてなかった。
「…………ごめんなさい。年甲斐もなく恋しくなってるみたいなの……人肌が。」
永い時間、封印されていたと言う聖……その間、一体どんな気持ちで過ごしていたんだろう……。
私なら……きっと憎んでる。自分を封印した者を殺してやりたいくらい強く呪うだろう。
だけど聖は寂しかったみたい。
たったそれだけ?
だとしたらなんて強いんだろう……。
甘えるように他者を抱き締める事を誰が責められるだろうか……。
「…………好きにしたら良いじゃない。」
本当はもっと優しい言葉を掛けて上げたかった。
私でよければ好きなだけ抱き締めてて良いよ──そう言うつもりだった。
だけど素直じゃない私の口から零れたのはそんなそっけない言葉だった。
「ありがとう……ぬえは優しいのですね。」
「別にっ……!///」
やっぱりみんな聖に甘いようだ…………私も含めて。
胸の前に回された聖の腕をぎゅっと握り締めながら私はそう思った。
暇を持て余した私とふいに目があったと思ったら次の瞬間には後ろから抱きくるめられていた。
むにゅうぅぅぅ。
自然と押し付けられる事になったでっぱいに何とも言えない気分になる私。
これはあれか、私への当てつけか何かか?
「うん。やっぱりぬえはこうやって後ろから抱きしめるのがベストですね♪」
随分とご満悦な声で一人勝手に納得する聖。
「…………なに勝手なこと言ってるのさ。」
顔の見えない聖にも伝わるように出来るだけ冷淡な声で言い放ってやる。
新参者だけど最早遠慮する間柄でも無いと私の方は勝手に思っているので一切の容赦はしない。
はっきり言ってやらないと聖はすぐ調子にのるから。
「持ち運びも楽ですよ?」
「いや、そんな更にお得みたいに言われても……。」
て言うか持ち運び易いなんて真っ赤な嘘じゃない。
だれが畳に尻餅を付いて座ってる少女を後ろから抱き抱えて運ぶもんか──ってこらこら! 実践しようとするな!
大体聖に掛かれば何だって紙切れみたいなもんじゃん。
怪力揃いの命蓮寺の中でも全く引けを取らないと言うか下手したら一番の力持ちだなんてこの見た目から誰が信じるのやら。
力持ちっていうかもはや馬鹿力だよね──
「南無三。」
ゴンっ!
「いったぁ……! いきなり何するのよ!?」
「声に出ていましたよ。全部。」
あちゃー……私とした事が失敗失敗。
「もうっ……! ぬえは私に抱き締められるのが、そんなに嫌ですか?」
今度は子供みたいに頬を膨らませる聖。べ、別にそういう訳じゃ無いけど……。
「て言うか何で私な訳? 他の面子じゃダメなの?」
そう指摘してやると、顎に人差し指を立てて今度は何やら考える仕草──
一々行動がテンプレートね……。
「そんな事は有りませんよ。私は誰にだって抱きつきます!」
「あっ、そう……。」
随分とまあ尻軽女だ事……。
「あれ? ひょっとして嫉妬ですか?」
「バカッ……! そんな訳ないでしょ!?」
「もう、照れない照れない♪」
なんだかとんでもない勘違いをされてしまった。
別に私は嫉妬もしてなきゃ照れてもいないんだからっ!
「大体他の連中が聖を甘やかし過ぎてるんだ……!」
間違いないと私は思うんだけど、同意を求めて振り返ると当の聖は苦笑いを浮かべている。
何よっ……! お前が言うなとか思ってるんじゃないの!?
思いっ切りジト目で睨んでやると、わざとらしく聖は視線を逸らした。どうやら図星らしい。
「まあ貴女の事はさて置いて──」
「……やっぱり。」
「──こほんっ。さて置いて。別に私は甘やかされてなんていませんよ?」
何の根拠があるのか知らないが、自信有り気に微笑む聖。
「事実、ナズーリンは私に抱き締められるのを良しとしませんから。」
誰かと思えばナズーリンか。あの小さな紳士は何かと体裁を気にしている様だから差して不思議でもない。
それに背が小さいのがコンプレックスみたいだから余計だろう。
「堅物だからねぇ~ナズーリンは。」
「それもあるのでしょう。だけどもっと大きな理由があるのですよ?」
さも愉快そうに笑う聖。どうやら思い出し笑いのようだけど、一体何がそんなに嬉しいのやら。
拒絶されて喜ぶんだから、よっぽどなんだろう……。
「……知りたい?」
「…………うん。」
これはあれよ? どうしても気になったからとか、そんな理由じゃないんだからっ!
お年寄りの話を聞いてやろうていう私なりの真心なんだからっ!
「以前ナズーリンを抱き締めようとした時、彼女は私の両手を広げさせまいと必死になって抑えながらこう叫んだのです。」
『わ、私の身体はご主人だけの物……! 例え聖殿と言えど、これだけは譲れないっ……!』
「ああ……あの時のナズーリンの表情と言ったら……掴まれた手から彼女の緊張と真剣さが伝わる様でした……。
何より潤んだ瞳で上目遣いに睨まれた時は正直くらっときましたよ。あの時彼女を押し倒さなかった自分を誉めてやりたい程に……。」
台無しだ……なんか甘酸っぱくも心温まる良い話かと思って聞いていたけど、最後の感想で全てが台無しになった。
──なんか付き合うのがバカバカしく思えてきた……。
ぎゅっ。
「聖……?」
不意に私を抱き締める聖の力が強くなった。と言っても暴力的に強くなった訳じゃなくて、より密接に聖は抱き付いてきたのだ。
「…………その時気付いたの。ああ……私が一緒に居られなかった時も二人はずっと一緒だったんだって……。」
か細い声で呟く聖。寂しさとか切なさとか……そう言うのがたくさん詰め込まれているように感じられた。
「一応言っておきますが、今の二人を私は心から祝福しています。本当ですよ?」
疑うもんか。奥手な二人を後押しした影の立役者を知らない者など命蓮寺(ここ)にはいないのだから。
努めて明るく振る舞っているようだけど、聖の声からは憂う気持ちは消えてなかった。
「…………ごめんなさい。年甲斐もなく恋しくなってるみたいなの……人肌が。」
永い時間、封印されていたと言う聖……その間、一体どんな気持ちで過ごしていたんだろう……。
私なら……きっと憎んでる。自分を封印した者を殺してやりたいくらい強く呪うだろう。
だけど聖は寂しかったみたい。
たったそれだけ?
だとしたらなんて強いんだろう……。
甘えるように他者を抱き締める事を誰が責められるだろうか……。
「…………好きにしたら良いじゃない。」
本当はもっと優しい言葉を掛けて上げたかった。
私でよければ好きなだけ抱き締めてて良いよ──そう言うつもりだった。
だけど素直じゃない私の口から零れたのはそんなそっけない言葉だった。
「ありがとう……ぬえは優しいのですね。」
「別にっ……!///」
やっぱりみんな聖に甘いようだ…………私も含めて。
胸の前に回された聖の腕をぎゅっと握り締めながら私はそう思った。
ぬえちゃんツンデレッ!!ひゃほーう!
ひじぬえと思いてさりげなナズ星を想像すると悶える……!
出来ればもっとこういう話し書いて欲しい、
需要あると思うよ。
おばあちゃあああん!俺だぁあああ!南無三してく
正体不明の種をつけられてわからないんですがね