太陽は空の頂点に登り高々と笑っている。雲の隙間に差し込む日差しには力がある。
空を自由に舞い、縦横無尽に駆け巡る。人の子の目では追う事は出来ない。
黒い翼を持つ天狗。太陽には逆らわず、雲を支配する。
向かう敵には力を出し惜しむ。常に切れる頭は惚ける。
理の定めに従い、定めを遂行し続ける。
♪
天気は良好。空は何処までも青色が続いていた。
鳥たちの囀る声が聞こえる。動物たちの営みが聞こえる。木々のざわめきが聞こえる。
幻想郷は春を迎えていた。今頃はリリーが様々な場所を巡っているだろう。
誰も彼も浮かれ、春を楽しんでいる。
それは天狗とて例外では無かった。
「春は、飛ぶのが気持ちがいいわー。みんな、この陽気に浮かれて記事に出来そうなおもしろいことをしてくれればいいんだけど」
幻想郷のブン屋、射命丸文は空を飛びながらそんな事を口走っていた。
普通に考えると何かが起きてほしいと思うのは為らない事だ。だが、新聞家業を生業にしている彼女に取っては、何かが起こらないと何も書く事が出来ない。故に異変が好物である。
「お? 博麗神社の方では楽しそうな声が聞こえるわね。もしかしたら記事になるような事があるかもしれないし、行ってみましょうか」
風に乗って来た声を聞き分けた文は方向転換をして博麗神社の方へと飛び去った。
♪
「霊夢ぅぅーー! 結婚してくれぇぇー!」
「離しなさいよ、気持ち悪いわね」
博麗神社にはいつものような顔ぶれが揃っていた。
宴会を開いているようで既に出来あがっている者たちが何名か居る。
たった今、霊夢に抱きついている魔理沙もその一人だろう。
「こら、魔理沙! 霊夢から離れなさいよ。霊夢が嫌がっているでしょう」
魔理沙に向けてお咎めを言うアリス。背中には邪悪なオーラが滲み出ている。
普段お淑やかに見える彼女から邪悪なオーラが出ている理由は言うまでも無い。
「霊夢は私の嫁だぜ。誰にも渡さないぜぇー」
「誰があんたの嫁よ! 真っ平御免だわ」
「一生養ってやるぜ」
「え、本当? 食事も毎日三食出る?」
「当たり前だろ。霊夢は私の家に居てくれればいいんだよ」
霊夢の心が揺らぐ。彼女は金銭が絡む事に対して耐性が無いのだ。
「あら、私の家だったら一日五食は出るわよ」
突然、空間にスキマを造って紫が現れる。
見慣れた光景なので驚く者は一人も居ない。
「ご、五食!」
霊夢の心が一気に傾く。一日三食すら食せていなかった者がこの誘いに揺れぬ訳が無い。
「紫、私と結婚しましょう」
「じゃあ、さっそく式の用意をさせるわ」
文は何となく宴会に混ざらず、外野に居た。
博麗神社に来てから、もう霊夢と紫が結婚すると言う大きなスクープを見つけた彼女は満足げである。
「ま、一時の気の迷いだろうでしょうけど……」
文は一人呟く。
「何が気の迷いなの? そんなところに居ないで天狗も混ざればいい」
文の後ろから、鬼の伊吹萃香が出現する。
「影に隠れて独り言を言っているとは怪しい姿だねー」
「私は取材の為に来ているのです。故に目立つ訳にはいきませんからね」
「ふぅーん、取材ね……。何時から天狗はそんな事をするようになったのか……」
「あなたたち鬼が居た時はそんな事していませんでしたからね」
「今は天狗の天下か」
「そんな滅相もありません。私たちは常に誰かの下についてぺこぺこしている種族ですよ」
「ふーん。確かにそれが天狗なのかもしれないね」
それだけを言うと萃香は宴会へと混ざって行った。
会場に颯爽と登場した萃香は料理の並んでいる中から一升瓶を取り、一気に飲み干した。
「全部、飲むんじゃないわよ!!」
霊夢の罵声が飛ぶ。
しかし、萃香は気にも留めず酒を浴びるように飲み続ける。
(これが私たちを支配していた者の在り様ね。威厳なんて微塵も感じられないわ)
文は萃香の様子を見て思った。
「ところで霊夢。式を挙げる場所は何処がいいかしら?」
「どこでもいいわよ~」
「太陽の畑なんていいかもしれないわ。向日葵がたくさん生えてて綺麗だわ」
どうやら、結婚の話は進んでいるらしい。
霊夢の酔いは一向に冷める気配が無い。
「私の霊夢を返せぇぇーー!」
「大丈夫よ、魔理沙。私が居るわ!」
「駄目だ、アリス。私は霊夢が欲しいんだ」
「な、なによもう。みんな霊夢、霊夢。霊夢のそんなに何がいいのよ!」
「「「 脇!! 」」」
文は持っているメモ帳に霊夢の良いところについて書きこむ。
満場一致で皆さんは『脇』と答えたと。
「そんなに脇が好きなら、あんたも一生寒い思いをしていればいいのよぉぉー!」
アリスが目尻に大粒の涙を浮かべながら走り去っていく。
それを咎める者は誰も居ない。
「やあ、皆さんお揃いで。宴会をしてるのか、僕も混ぜてもらおうかな」
フンドシ一張羅の森近霖之助が爽やかに登場した。
これも皆さんお酒が入っているので誰も咎めない。
「やあ、魔理沙。調子はどうだい?」
「おお、こーりんか。幾ら春と言えどその格好は寒くないか?」
「僕は冬でもこの格好だから平気だよ。だから、春の温度はかえって暖かいね」
「そうか、良かったな」
文は持っているメモ帳に付け足しをする。
香霖堂亭主、森近霖之助は冬でもフンドシ一枚で過ごしていると。
何と平和な幻想郷なのか。
これでは天狗が惚けるのも無理は無い。
いがみ合う存在の人間と妖怪が仲良くしている。
不思議な輪が完成しているのだ。
文は書きとめる手を止めた。
そろそろ自分も混ざろうかと思ったからだ。
「皆さん、皆さん。奇遇ですねー。私も混ぜてもらいますよ」
萃香は遅れて登場した天狗に何も言わない。
きっと今は楽しもう、それだけしか皆の頭には無いのだろう。
♪
昔から変わらぬモノがある。すぐに姿を変えていくモノがある。
今昔も天狗の行動は変わらない。力を出さず、常に惚ける。
だが、それ故に残っていくモノがあるのかもしれない。
空を自由に舞い、縦横無尽に駆け巡る。人の子の目では追う事は出来ない。
黒い翼を持つ天狗。太陽には逆らわず、雲を支配する。
向かう敵には力を出し惜しむ。常に切れる頭は惚ける。
理の定めに従い、定めを遂行し続ける。
♪
天気は良好。空は何処までも青色が続いていた。
鳥たちの囀る声が聞こえる。動物たちの営みが聞こえる。木々のざわめきが聞こえる。
幻想郷は春を迎えていた。今頃はリリーが様々な場所を巡っているだろう。
誰も彼も浮かれ、春を楽しんでいる。
それは天狗とて例外では無かった。
「春は、飛ぶのが気持ちがいいわー。みんな、この陽気に浮かれて記事に出来そうなおもしろいことをしてくれればいいんだけど」
幻想郷のブン屋、射命丸文は空を飛びながらそんな事を口走っていた。
普通に考えると何かが起きてほしいと思うのは為らない事だ。だが、新聞家業を生業にしている彼女に取っては、何かが起こらないと何も書く事が出来ない。故に異変が好物である。
「お? 博麗神社の方では楽しそうな声が聞こえるわね。もしかしたら記事になるような事があるかもしれないし、行ってみましょうか」
風に乗って来た声を聞き分けた文は方向転換をして博麗神社の方へと飛び去った。
♪
「霊夢ぅぅーー! 結婚してくれぇぇー!」
「離しなさいよ、気持ち悪いわね」
博麗神社にはいつものような顔ぶれが揃っていた。
宴会を開いているようで既に出来あがっている者たちが何名か居る。
たった今、霊夢に抱きついている魔理沙もその一人だろう。
「こら、魔理沙! 霊夢から離れなさいよ。霊夢が嫌がっているでしょう」
魔理沙に向けてお咎めを言うアリス。背中には邪悪なオーラが滲み出ている。
普段お淑やかに見える彼女から邪悪なオーラが出ている理由は言うまでも無い。
「霊夢は私の嫁だぜ。誰にも渡さないぜぇー」
「誰があんたの嫁よ! 真っ平御免だわ」
「一生養ってやるぜ」
「え、本当? 食事も毎日三食出る?」
「当たり前だろ。霊夢は私の家に居てくれればいいんだよ」
霊夢の心が揺らぐ。彼女は金銭が絡む事に対して耐性が無いのだ。
「あら、私の家だったら一日五食は出るわよ」
突然、空間にスキマを造って紫が現れる。
見慣れた光景なので驚く者は一人も居ない。
「ご、五食!」
霊夢の心が一気に傾く。一日三食すら食せていなかった者がこの誘いに揺れぬ訳が無い。
「紫、私と結婚しましょう」
「じゃあ、さっそく式の用意をさせるわ」
文は何となく宴会に混ざらず、外野に居た。
博麗神社に来てから、もう霊夢と紫が結婚すると言う大きなスクープを見つけた彼女は満足げである。
「ま、一時の気の迷いだろうでしょうけど……」
文は一人呟く。
「何が気の迷いなの? そんなところに居ないで天狗も混ざればいい」
文の後ろから、鬼の伊吹萃香が出現する。
「影に隠れて独り言を言っているとは怪しい姿だねー」
「私は取材の為に来ているのです。故に目立つ訳にはいきませんからね」
「ふぅーん、取材ね……。何時から天狗はそんな事をするようになったのか……」
「あなたたち鬼が居た時はそんな事していませんでしたからね」
「今は天狗の天下か」
「そんな滅相もありません。私たちは常に誰かの下についてぺこぺこしている種族ですよ」
「ふーん。確かにそれが天狗なのかもしれないね」
それだけを言うと萃香は宴会へと混ざって行った。
会場に颯爽と登場した萃香は料理の並んでいる中から一升瓶を取り、一気に飲み干した。
「全部、飲むんじゃないわよ!!」
霊夢の罵声が飛ぶ。
しかし、萃香は気にも留めず酒を浴びるように飲み続ける。
(これが私たちを支配していた者の在り様ね。威厳なんて微塵も感じられないわ)
文は萃香の様子を見て思った。
「ところで霊夢。式を挙げる場所は何処がいいかしら?」
「どこでもいいわよ~」
「太陽の畑なんていいかもしれないわ。向日葵がたくさん生えてて綺麗だわ」
どうやら、結婚の話は進んでいるらしい。
霊夢の酔いは一向に冷める気配が無い。
「私の霊夢を返せぇぇーー!」
「大丈夫よ、魔理沙。私が居るわ!」
「駄目だ、アリス。私は霊夢が欲しいんだ」
「な、なによもう。みんな霊夢、霊夢。霊夢のそんなに何がいいのよ!」
「「「 脇!! 」」」
文は持っているメモ帳に霊夢の良いところについて書きこむ。
満場一致で皆さんは『脇』と答えたと。
「そんなに脇が好きなら、あんたも一生寒い思いをしていればいいのよぉぉー!」
アリスが目尻に大粒の涙を浮かべながら走り去っていく。
それを咎める者は誰も居ない。
「やあ、皆さんお揃いで。宴会をしてるのか、僕も混ぜてもらおうかな」
フンドシ一張羅の森近霖之助が爽やかに登場した。
これも皆さんお酒が入っているので誰も咎めない。
「やあ、魔理沙。調子はどうだい?」
「おお、こーりんか。幾ら春と言えどその格好は寒くないか?」
「僕は冬でもこの格好だから平気だよ。だから、春の温度はかえって暖かいね」
「そうか、良かったな」
文は持っているメモ帳に付け足しをする。
香霖堂亭主、森近霖之助は冬でもフンドシ一枚で過ごしていると。
何と平和な幻想郷なのか。
これでは天狗が惚けるのも無理は無い。
いがみ合う存在の人間と妖怪が仲良くしている。
不思議な輪が完成しているのだ。
文は書きとめる手を止めた。
そろそろ自分も混ざろうかと思ったからだ。
「皆さん、皆さん。奇遇ですねー。私も混ぜてもらいますよ」
萃香は遅れて登場した天狗に何も言わない。
きっと今は楽しもう、それだけしか皆の頭には無いのだろう。
♪
昔から変わらぬモノがある。すぐに姿を変えていくモノがある。
今昔も天狗の行動は変わらない。力を出さず、常に惚ける。
だが、それ故に残っていくモノがあるのかもしれない。
好きな意味でとってください
あと……脇が(ryって突っ込みは不粋かな?
こういうの好きですw