鈴仙はアリスと別れ、てゐと共に小二病患者の家を一軒一軒回った。
そして、あることを確かめ、確信する。
「あとは、そう。正体を確かめて解決策を見出せばいい!!」
一刻も早く永琳にこのことを知らせる為に、鈴仙とてゐは最高速度で永遠亭へと向かう。
* * *
「師匠!わかりました!」
どたどたと廊下を走り、永琳のいる部屋に飛び込む。
そこには山ほどにも積まれた文献を読み漁る永琳の姿があった。
鈴仙に気付くとバッと顔をあげ、驚いたように鈴仙を見据える。
「よくやったわ!正直お手上げだったのよ」
ちらりと手元に視線を移すと、そこには某動かない大図書館作の永×鈴の同人誌が置いてあった。
もちろん鈴仙にはうず高く積まれた本によって見えることはない。
…早く隠そう。
「とりあえず報告してくれるかしら?」
そそくさと鈴仙に見えないように同人誌を隠しながら、いたって冷静に尋ねる。
鈴仙は興奮したように捲し立てた。
「里まで下りて、見てきました。症状が出ているのはやはり男性ばかりで、仕事もせずに遊び呆けてました。それより!
カブトムシです!カブトムシが、小二病の病原だったんです!」
「カブトムシ、ですって?」
「そうです。患者のどの家にもカブトムシがいました!」
ようやっと同人誌を文献の間に隠し終わり、永琳は月の頭脳を回転させ始める。
(カブトムシが原因…カブトムシ。
つまりは少年、男の子。女性に被害がほとんどなかったのはそういうこと…。
何故?どうやって?
そうね、まずはそこから。
カブトムシ自体は珍しいものではないわね。つまりそのカブトムシは通常のものではない?
虫と言えば…リグル、はないわね。
何かしらの呪詛の依り代?否定。男性を小二化させる理由がない。
特殊なフェロモンを発している?否定。聞いたこと無いわ、そんなの。
ならカブトムシをトリガーにした集団催眠?否定。やっぱり理由がないわ…
実物による調査が必要)
ここまでわずか0,5秒。
「ウドンゲ、そのカブトムシ手配できるかしら?」
脳内で出た結論に従い、永琳は指示を出す。
「え、そうですね。てゐがまだ、持っていると思います」
「そう、ならちょっと借りてきてくれるかしら」
カブトムシが原因なら、てゐが所有しているだろうことは想像の範囲内だ。
あの子は見つけた宝物をそう簡単には手放さないだろうから。
鈴仙はてゐの元に向かっていた。
「てゐ、貸してくれるかな」
やはり気懸りなのはてゐの性分。
人のものはよく勝手に持っていくが、自分のものとなればかなり渋る。
まさにジャイアンっ子なのだ。
色々と頭を悩ませながら歩いていると、てゐの部屋の方からがしゃんがしゃんと物凄い音が聞こえてきた。
「…っ!?何?」
弾かれた様に鈴仙は駆け出した。
「どうしたの!?」
ガラリと障子をあけると、あわあわとそこら中の物をひっくり返すてゐの姿があった。
「鈴仙!いないうさ!てゐのカブトがいなくなったうさ!」
「えぇ!?」
「虫かごはたんすの奥にいれといて!だれにも見つからないようにしてあったうさ!でも消えたうさ!いないうさ!」
…なんてことだ。
重要な手掛かりが姿を消してしまうなんて。
呆然とする鈴仙の頭に、患者もカブトムシ持ってるじゃんと言う事実は浮かばない。
そんな鈴仙にてゐはしがみつき、がくがくと揺さぶる。
「鈴仙!てゐのカブト!」
その拍子にてゐの手からポロリと何かが零れ落ちた。
はっとしてそちらに目を向ける鈴仙。
それはころころと転がり、かつんと小さな音を出して障子にあたり、止まる。
「…びー、玉?」
陽の光を映しこんでキラキラと輝く。その光はなぜか物悲しく。
鈴仙はゆっくりと空色のビー玉を拾い上げた。
「…どうしたの、これ?」
てゐの方を見ると、さっきまで慌てていたのが嘘の様に沈み込み、俯いている。
「虫かごに、はいってたうさ…カブトムシの代わりに」
「誰かが、すり替えた?」
だとしても何故ビー玉なのか?
「考えてもわからないわ。とにかく、師匠のところに戻りましょう。てゐ、貴女も来なさい」
鈴仙は愚図るてゐの手を引き、永琳の元へと向かった。
「消えた…?」
「はい…代わりに、これが」
永琳に、そっとビー玉を手渡す。
しばらくそれを手のひらでコロコロと転がし、やがて眼をつぶりぎゅっと握りしめた。
ややあって。
「そう、そういうこと…」
空気を吐き出すように永琳が呟く。
「謎は、すべて解けた…!」
* * *
永琳は困惑する鈴仙を連れて調合室へ向かっていた。
「さぁ、答え合わせよウドンゲ」
足早に歩きながら、永琳は鈴仙に投げかける。
「カブトムシとビー玉。共通点は何かしら?」
「へ?そんなのあるんですか?」
「はい時間切れ。答えは夏よ。ビー玉はラムネのあれね」
「そんな…わかる訳ないじゃないですか」
「私の弟子なら解りなさい。で、本題よ。そのビー玉、よく『視て』みなさいな」
「視て?…あ」
「わかった?それは物質ではないわ。実体化した『想い』、あるいは『念』よ」
「想い、ですか」
「そう。恐らくその想いは外で忘れられてしまったのでしょう。そして此処にたどり着き、幻想のカブトムシとなった」
「待ってください。ビー玉ですよ、これ」
「まだわからない?同じものなのよ、どちらも」
「同じって…」
「正確にいえば、ビー玉は残り滓ね。
カブトムシの形を取っている時は、触れた者の精神にシンクロして童心を思い起こさせ小児病を発病させる。それは子供のころに戻りたい、昔はよかったって思っている人ほど影響が出る。だけど、きっかけがあれば元に戻るでしょう?てゐの様に。
そうするとその『想い』は、カブトムシの形は保てなくなるの。原理はわからないけど、ね。そして、そう。ビー玉になってしまうの」
「どうして、そんなことがわかるんですか?」
「象徴なのよ」
「象徴?」
「そう。カブトムシは夏の象徴、あるいは…子供心の象徴。そしてビー玉は夏の終わり、つまり子供の自分からの成長しなければならない、そういう切なさの象徴なの。夏に飲みまくったラムネのビー玉って、涼しくなってくると色々思い出してキュンとくるでしょ?
幻想入りしたのは『子供の子供らしさ』、ってところね」
「うーん、わかるような、わからないような」
「納得しなくてもいいの。ただそういうものなんだと理解してくれれば」
「はい」
二人は問答を終えるのと同時に調合室にたどり着き、その足を止める。
永琳は勢いよく扉を開けると、景気づけと言わんばかりに両頬を叩いた。
「さぁ、とっておきを作るとしましょう!」
* * *
調合した薬を配り終え、永遠亭に戻ってきた永琳と鈴仙。
「お疲れ様。今回は本当によくやってくれたわ」
「えへへ。ありがとうございます」
嬉しそうに目を細める鈴仙の頭を、永琳は優しく撫でた。
「さて、私は山積みの文献の片付けをしないと。あのままにはしておけないし」
面倒だけど、と永琳は苦笑すると鈴仙はそれを止める。
「私がやっておきますよ。師匠もお疲れでしょうから、先にお風呂入っちゃってください」
「そう?じゃあお願いしようかしら」
せっかくなのでお言葉に甘えることにした。
実際、大急ぎで大量の薬の調合なんかをしたため、それなりに疲労がたまっているのだ。
「ごゆっくり」
「うん、ありがと。じゃあ頼むわね」
手を振って、永琳は浴場へ向かった。
「…ぅーん、気持ちいい」
ぐっと伸びをして、今日は色々大変だったなぁと思いだす。
大変だったなぁと…
大変…だ…
「………あ゛っ!!!!」
ぴちょーん、と雫が落ちた。
永琳はバスタオル一枚で浴場を飛び出し鈴仙の元へ向かったが…時すでに遅く。
その後しばらく鈴仙に白い目で見られ続けたという。
* * *
里の方で小二病が終息の兆しを見せ始めた頃、忘れられた守矢さんちでは。
「ほら、…さわってみてよ」
「あ…すご、おっきくて、固くって…っ、もう…っ」
「ふふふ、怖い?」
「…っ」
薄暗い和室の中で、二柱が身を寄せ合っている。
そこへ何も知らない早苗が、盆に茶を載せて入って来た。
「お二人とも、お茶が入りましたよ…?何してるんですか?」
「あぁ。かなちゃんにカブトムシ見せてたんだー。ほらっ」
「わぁ!大きいですね!私にも見せてください!」
「さなえー、こわいよー。かぶとむしこわいよー」
* * *
「こんばんは。GHKニュースのお時間です。
一週間ほど前から人間の里で猛威をふるっていた奇病、通称「小二病」が、ヤクザイシの八意永琳氏によって回復に向かっているとのことです。
この病は精神病の一種であるとみられていますが、何故このような病が流行したのか等の詳しい事はわかっておりません。
八意氏は「三日も薬を飲んでいれば完治するはずだ」と述べており、患者たちに無償で「胡蝶夢丸ホープ」及び「胡蝶夢丸ヘブン」と呼ばれる薬を提供していました。
八意氏によると、これらは「大人だっていいじゃない!子供にゃできないことがある」をモットーに開発された新型胡蝶夢丸と言うことで、18歳未満の患者に対しては「胡蝶夢丸ホープ」、18歳以上に対しては「胡蝶夢丸ヘブン」が処方されました。
「ホープ」は就職難にも負けない前向きな夢が見られ、「ヘブン」は(放送倫理委員会による自主規制)な夢が見られる効果があるとのことです。
何故このような分け方をしたのかとの報道陣の質問には
『知らないの?Z CEROを未成年に売ると、販売した側が訴えられるのよ』
とよくわからない答えが返ってきました。
やはり天才の言うことは常人には理解が及びませんね。
次のニュースです。魔法使いの霧雨…失礼します!ここで臨時ニュースです!
…大変な事が起きました!他称電気ウナギの永江衣玖氏と自称変態という名の紳士、比那名居天子氏が電撃結婚!電気ウナギだけに!
これは驚きです!比那名居氏と言えばストーカー防止法及び窃盗罪、猥褻物陳列罪違反によって逮捕、父親の権力によって保釈中だった方です。
その比那名居氏がまさかの被害女性の永江氏と結婚!何があったのでしょうか!?
今から博麗神社にて結婚記者会見が行われるそうですので、中継の犬走さんに繋いでみましょう。犬走さん?
『はい!こちら犬走です!
あ、今永江氏が比那名居氏の手を引いてカメラの前に姿を現しました!』
パシャ!カシャカシャ!←フラッシュ
『GHKをご覧の皆さん。そうです私が永江衣玖です』
\キャーイクサーン!/\キャーイクサーン!/\キャーイクサーン!/
『今回、電撃結婚ということですが…』
『えぇ、皆さん驚かれたでしょう。何故私が、セクハラ受けたり下着を盗まれたりしたこの私が、この天子と結婚するのか、と…
いえ、ごもっともです。ですが。
あれは一週間ほど前のことですね。私の家にふらふらとやってきたかと思うと、体育座りで私のことをじっと見つめているのですよ。
いつものハエ取り紙の様な粘着質な視線ではなく、きらきらと輝く子犬の様な瞳で…』
『ほぅほぅ、それで?』
『それで、いきなり告白されたんです…「いく、だいしゅき!」って』
『それはそれは』
『もう、なんていうか、それがツボに入ってしまって…思わずお(放送倫理委員会による自主規制)です』
『…それはそれは』
『で、もうこれは結婚させていただくしかないと』
『いくー、おなかしゅいたー』
『えぇ、総領娘様。もうすぐ終わりますから。そしたらハンバーグ作ってあげますからね』
『わーい!』
『…』
『とまぁこんな感じですね。申し訳ないのですが私の嫁が愚図り出したので、この辺でお暇させていただきますね』
『…あぁはい。是非そうしてください』
『さぁ帰りましょう私達の愛の巣へ』
『うん!はんばぐはんばぐ!おねーちゃんばいばい!』
『…ばいばい。中継、終わります…』
…よくわかりませんでしたが、気のせいか比那名居氏の身長が縮んでいたように見えました。永江氏はロリ専みたいですね。と言うか比那名居氏の身に何が起こったのでしょうか。調査の必要性を感じます。
犬走さんは大丈夫ですかね?ひどく疲れているようですが。
えーなお、結婚式は来週、博麗神社にて行われるそうです。これに対して博麗神社の霊夢氏は「祝い金のついでに賽銭を入れてほしい」と、コメントしていました。がめついですね。
以上でGHKニュース、終わります。引き続き番組をお楽しみください
お相手は幻想郷最(ry、射命丸文でした」
「これって、小児病?」
魔理沙と一緒にテレビを見ていたアリスが、ぼそりと呟いた。
「こんばんは、代理の椛です、それでは早速
『師匠、鈴仙嬢のめsげふ嫁に』(姫さまはるみゃかみすちーが嫁)
『守矢一家に死角無し』(かなさま可愛いよかなさま)
『衣玖さん実は被虐趣味』(てっちんは攻めが良しかと)
の三本です。蛇陰(じゃん)、劔(けん)、崩(ぽん)っ(キィン!)うふふふふ」
「あのぅ椛さん落ち着いて、ね?」
「だが断る、だが断るよマイハニーにとりん(はぁと)」
にとりんは妖怪の山の嫁。
椛っちゃんはにとりんとかなさまのダーリン。
異論でどうぞ消し去って下さい。
面白かったです(先ず真っ先に打てよ……)
あと蝉の抜け殻は切な過ぎるので個人的には却下です。
ラムネ飲みたい。
確かに夏休みのラストは浮かれる気分にはならないですよね…宿題とか。
え~りん・・・隠し場所は引き出しの底につくっておくんだよ!(ぇ
\キャーイクサーン/
夏休みの宿題の中で、読書感想文が一番辛かったですね・・・。
今更ですが初めは一話目しか頭になかったので、どう続けたもんかと悩んだりしてたんですが…
よく終わったもんだ(しみじみ
子供はやっぱり公園で走り回ったりしたほうがいいと思うんですよ…
さてコメ返し。
>>謳魚様
そんなあなたにロリてんこプレゼント。
て「はんばぐたべたい!」
>>3様
夏休みの宿題とか多すぎて終わる訳ないんですよ!
>>4様
わかります。
最近はネットで代わりに感想文書いてくれる人がいるらしいですよ。
あと激しくラムネ飲みたい!!!!
変わりに現れたのは、ペットボトルのラムネ。
・・・・・・よし、ビン入りのラムネを飲みに、ちょっくら幻想郷に行って来ます。
こういう子供心は忘れちゃいけないんですよ!
>>GUNモドキ様
あ、作者の分も一本お願いします。
ビン入りのラムネ ということばをみて、
ラムネの中に入ってるビー玉の如く、
ラムネの中に入ってるビンが頭の中に浮かんでしまってっっっ!
ビンにラムネが入ってるんですよねうん、
ラムネって言葉がゲシュタルト崩壊。