夕暮れ時。
人間たちは鴉が鳴くからおうちに帰り、妖怪たちは烏が啼くから誘われる。
そんな薄暗い、夜の前のひととき。
「よるが~ふる~♪帳をおろし~て~♪」
人里から離れた森の近く、一つの明かり。
『八目鰻』ととても達筆な文字で書かれた提灯の明かりの元、ひとつのちんまりとした屋台があった。
「そのくらき~よくぅぼぉ~にぃ~捕われし愚かなものどもっっっ!!!!ッッヘイイィィ!!!!」
…だいぶテンションが上がっているように見える、いやそうとしか見えないおかみさんが、金網でじゅー、といいにおいとともに八目鰻を焼いていた。
そんな周囲500メートルに響き渡る夜雀のデスボイス。
その音響結界(?)を突破して暖簾をくぐったものが一人。
「…やぁ、おかみさん。もう開いているかい?」
「ヴォォォォ!!!!……ってありゃいらっしゃい、珍しいお客さんだね」
とても少女のような見た目からは創造できないようなシャウトを中断して接客モードに入る夜雀のおかみさん。
「珍しい…まぁ、たしかに珍しいだろうね。私みたいに人間に肩入れしてる半獣が来たら」
「いえいえ、そういう厭な意味で言ったんじゃないんで。ただ、ホントに貴方の様な方が来るのは珍しいな、と」
そう言って、小鉢に綺麗に盛り付けられた料理を出すおかみさん。
「まぁ、なんだ。私にもたまには酒を飲んでスッキリしたい日があると言うことさ…これは、なんだか見慣れない料理だな?」
「八目鰻の内臓や骨を叩いてつくねにして、それをこの秘伝のたれで焼いたものでござい。…少々癖が強いんですが、まぁ酒のかてにはなりますよ」
そういってごとりと焼酎…しかも結構強そうなものをとくとくとやや大きめのコップに注ぎ、でん、と渡す。
つくね串と、焼酎。うむ、たしかに完璧なる酒飲みへの甘い誘惑である。
だが。
「これだけ一元の客に気前がいいとなにか裏があるんでは無いかとか探ってしまうぞ?おかみさん」
にやり、と笑いながら言う半獣。
「あっはっは、いやいや、そんなことはありませんよぅ。ただ、何か思いつめてらっしゃるようなのでそういうときは早いとこ酔いつぶれて吐き出しちまう方がいいってもんでしてね」
ことり、ともう一つ皿を出すそちらにはいわゆる「うまき」がのっていた。
「だから、お客さん。私でよければ吐き出しちまってくださいな?」
「ふふっ、ありがとうおかみさん。では、あったかいうちにいただくよ」
そういってもぐり、とやや大き目のつくねをかじる、と、その刹那。
「~~~にっがい!!!」
あわててぐいっとコップいっぱいの焼酎を流し込む。が、その焼酎。ストレートである。
「がっはぁ!!」
げほげほとむせる半獣。アルコール濃度が高い焼酎をストレートでいっきしたらどうなるか、お分かりだろう。
「~~で、うちの生徒たちと来たら、隙あらばお喋りしだすし、はては居眠りまで…!!」
20分後にはすでに立派な教師が立派なへべれけになっていた。
そしてまぁ、出るわ出るわ。愚痴の数々。
かれこれ10分間切れることの無いマシンガン以上のミニガン、いや、アベンジャー愚痴。
(教師ってのはここまで大変なものなんですねぇ)
その愚痴の弾幕をきちんとグレイズしながら対応するおかみさん。
(まぁ、そのたまった愚痴もここで吹き飛んでしまえばいいんですけど)
そう思って再びコップに弱めのお酒を注ぐおかみさん。と、そこに。
「あややや、久しぶりに来てみれば。珍しい来客ですねぇ」
「そういうあなたさまも随分珍しいうちに入りますがねぇ
ばさり、と大きな羽をたたんですでにぐでんぐでんの半獣の隣に座る鴉天狗。
「私はいつもので!あと一番高いお酒全部!」
やれやれ、と言った感じで新しいお猪口と徳利を出す。それと一緒に、例のつくねを出した。
「あややや。これは新作ですか?この美味しさ如何によっては明日の文々。新聞のコラム欄を書き換える必要がありますね!」
ちなみにコラム欄とは『亡霊お嬢の食いだおれるまで食い尽くせ!』というコーナーで、そこで取り上げられた飲食店は絶対に繁盛すると言う人気コラムである。
「それは重畳ですね。どうぞ、お重ができるまでのつなぎにでも」
「ではでは、いっただきまっす!」
ぱしん、、と律儀に手を合わせ、がぶりと大胆に。
「うん!!おいしい!!ちょっと癖があるけどそれがまたこのお酒にあうわけねーだろにがいわぁぁぁ!!!!」
「おぉ。これが本場のノリツッコミ…」
「おかみさん。私は新聞記者であってお笑い芸人ではないので口の中を洗い流すお酒をください」
でん、と再びやたらでかいコップになみなみ注がれたお酒を渡し、それと一緒にうな丼をテーブルに置く。
「しかし、今日は気前がよござんすね、記者さん。なにかいいことでもあったので?」
「んぐんぐ…っぅぷはーっ。そうなんですよぉ!ついに人里で私の新聞を定期購読してくださる方がぁ!!できたんですよぉ!!」
そのことばに、今まで突っ伏して一人でぶつぶつ言っていた半獣がゆらりと起き上がると、怖い目をしていた。
「…おい、鴉。その新聞は、子供たちに悪影響を与えるような内容は書かれていないだろうな……?」
「あやっ!!?そんな内容あるわけありませんよ!清く!正しい!射命丸なんですからっ!!」
えっへん!と赤らんだ顔で胸を張る鴉天狗。
「…じゃぁ、試しに見せてみろ、その新聞」
「おぉ!いいですよ!こんなときのために常備してますから!はい、どーぞ♪」
この鴉天狗はいい酔い方をする。とっても明るく、というより邪気のない朗らかな性格になるのだ。
「………なんだこれは…!!!」
その新聞の一面。即ち、お父さんが読んだまま放置してしまってたまたま子供が見る可能性だってあるページによりにもよって
『あの悪魔の屋敷のメイド長、黒白魔法使いと愛と恋の入り乱れ!!?』
であった。ちなみに写真ではあの黒白の髪の毛に頭を埋めているメイド長と顔を真っ赤にしている黒白が写っていた。
「こんな不健全なものを人里に広めるな!!!そうかお前か!!おまえのせいで最近生徒たちが『せんせーあかちゃんはどこからくるの?』とかきいてくるようになったんだな!!!?あのかわいい私の生徒たちを汚してくれやがってそこになおれ鴉天狗!!!!お前の生まれの歴史を改ざんしてくれる!!!!!」
一息にそういいきるとがたんと立ち上がり臨戦態勢に入る半獣。
「あややや…。私が必死に生み出しているネタをそんな風にこき下ろしてくれるとは、いいでしょう、半獣風情に真の妖怪の恐ろしさを叩き込んであげましょう!!!!」
それに答えるように立ち上がり、風をまとい始める鴉天狗。
そんな二人の口の中に放り投げられるおかみ特製つくね
「「にっがぁぁぁっぁぁ!!!!」」
一瞬前まで殺気立っていた二人は一瞬で仲良くハモったのだった。
そんなこんなで明け方近く。
あの後、半獣と鴉天狗は何故か意気投合し酒を酌み交わしていた。
今度、あの鴉天狗を教師として来て貰うらしい。絶対やめた方がいいと思う。
「さぁて。今日も笑顔いっぱいでしたね~♪」
そういってのれんを畳み、提灯を消す。
あの半獣も鴉天狗も、最後はとてもいい笑顔だった。
酒におぼれるのも、たまにはいいじゃないか。
たそがれに
たれのかおりに
いざなわれ
えがおがごちそう
すずめのおやたい
おそまつ
人間たちは鴉が鳴くからおうちに帰り、妖怪たちは烏が啼くから誘われる。
そんな薄暗い、夜の前のひととき。
「よるが~ふる~♪帳をおろし~て~♪」
人里から離れた森の近く、一つの明かり。
『八目鰻』ととても達筆な文字で書かれた提灯の明かりの元、ひとつのちんまりとした屋台があった。
「そのくらき~よくぅぼぉ~にぃ~捕われし愚かなものどもっっっ!!!!ッッヘイイィィ!!!!」
…だいぶテンションが上がっているように見える、いやそうとしか見えないおかみさんが、金網でじゅー、といいにおいとともに八目鰻を焼いていた。
そんな周囲500メートルに響き渡る夜雀のデスボイス。
その音響結界(?)を突破して暖簾をくぐったものが一人。
「…やぁ、おかみさん。もう開いているかい?」
「ヴォォォォ!!!!……ってありゃいらっしゃい、珍しいお客さんだね」
とても少女のような見た目からは創造できないようなシャウトを中断して接客モードに入る夜雀のおかみさん。
「珍しい…まぁ、たしかに珍しいだろうね。私みたいに人間に肩入れしてる半獣が来たら」
「いえいえ、そういう厭な意味で言ったんじゃないんで。ただ、ホントに貴方の様な方が来るのは珍しいな、と」
そう言って、小鉢に綺麗に盛り付けられた料理を出すおかみさん。
「まぁ、なんだ。私にもたまには酒を飲んでスッキリしたい日があると言うことさ…これは、なんだか見慣れない料理だな?」
「八目鰻の内臓や骨を叩いてつくねにして、それをこの秘伝のたれで焼いたものでござい。…少々癖が強いんですが、まぁ酒のかてにはなりますよ」
そういってごとりと焼酎…しかも結構強そうなものをとくとくとやや大きめのコップに注ぎ、でん、と渡す。
つくね串と、焼酎。うむ、たしかに完璧なる酒飲みへの甘い誘惑である。
だが。
「これだけ一元の客に気前がいいとなにか裏があるんでは無いかとか探ってしまうぞ?おかみさん」
にやり、と笑いながら言う半獣。
「あっはっは、いやいや、そんなことはありませんよぅ。ただ、何か思いつめてらっしゃるようなのでそういうときは早いとこ酔いつぶれて吐き出しちまう方がいいってもんでしてね」
ことり、ともう一つ皿を出すそちらにはいわゆる「うまき」がのっていた。
「だから、お客さん。私でよければ吐き出しちまってくださいな?」
「ふふっ、ありがとうおかみさん。では、あったかいうちにいただくよ」
そういってもぐり、とやや大き目のつくねをかじる、と、その刹那。
「~~~にっがい!!!」
あわててぐいっとコップいっぱいの焼酎を流し込む。が、その焼酎。ストレートである。
「がっはぁ!!」
げほげほとむせる半獣。アルコール濃度が高い焼酎をストレートでいっきしたらどうなるか、お分かりだろう。
「~~で、うちの生徒たちと来たら、隙あらばお喋りしだすし、はては居眠りまで…!!」
20分後にはすでに立派な教師が立派なへべれけになっていた。
そしてまぁ、出るわ出るわ。愚痴の数々。
かれこれ10分間切れることの無いマシンガン以上のミニガン、いや、アベンジャー愚痴。
(教師ってのはここまで大変なものなんですねぇ)
その愚痴の弾幕をきちんとグレイズしながら対応するおかみさん。
(まぁ、そのたまった愚痴もここで吹き飛んでしまえばいいんですけど)
そう思って再びコップに弱めのお酒を注ぐおかみさん。と、そこに。
「あややや、久しぶりに来てみれば。珍しい来客ですねぇ」
「そういうあなたさまも随分珍しいうちに入りますがねぇ
ばさり、と大きな羽をたたんですでにぐでんぐでんの半獣の隣に座る鴉天狗。
「私はいつもので!あと一番高いお酒全部!」
やれやれ、と言った感じで新しいお猪口と徳利を出す。それと一緒に、例のつくねを出した。
「あややや。これは新作ですか?この美味しさ如何によっては明日の文々。新聞のコラム欄を書き換える必要がありますね!」
ちなみにコラム欄とは『亡霊お嬢の食いだおれるまで食い尽くせ!』というコーナーで、そこで取り上げられた飲食店は絶対に繁盛すると言う人気コラムである。
「それは重畳ですね。どうぞ、お重ができるまでのつなぎにでも」
「ではでは、いっただきまっす!」
ぱしん、、と律儀に手を合わせ、がぶりと大胆に。
「うん!!おいしい!!ちょっと癖があるけどそれがまたこのお酒にあうわけねーだろにがいわぁぁぁ!!!!」
「おぉ。これが本場のノリツッコミ…」
「おかみさん。私は新聞記者であってお笑い芸人ではないので口の中を洗い流すお酒をください」
でん、と再びやたらでかいコップになみなみ注がれたお酒を渡し、それと一緒にうな丼をテーブルに置く。
「しかし、今日は気前がよござんすね、記者さん。なにかいいことでもあったので?」
「んぐんぐ…っぅぷはーっ。そうなんですよぉ!ついに人里で私の新聞を定期購読してくださる方がぁ!!できたんですよぉ!!」
そのことばに、今まで突っ伏して一人でぶつぶつ言っていた半獣がゆらりと起き上がると、怖い目をしていた。
「…おい、鴉。その新聞は、子供たちに悪影響を与えるような内容は書かれていないだろうな……?」
「あやっ!!?そんな内容あるわけありませんよ!清く!正しい!射命丸なんですからっ!!」
えっへん!と赤らんだ顔で胸を張る鴉天狗。
「…じゃぁ、試しに見せてみろ、その新聞」
「おぉ!いいですよ!こんなときのために常備してますから!はい、どーぞ♪」
この鴉天狗はいい酔い方をする。とっても明るく、というより邪気のない朗らかな性格になるのだ。
「………なんだこれは…!!!」
その新聞の一面。即ち、お父さんが読んだまま放置してしまってたまたま子供が見る可能性だってあるページによりにもよって
『あの悪魔の屋敷のメイド長、黒白魔法使いと愛と恋の入り乱れ!!?』
であった。ちなみに写真ではあの黒白の髪の毛に頭を埋めているメイド長と顔を真っ赤にしている黒白が写っていた。
「こんな不健全なものを人里に広めるな!!!そうかお前か!!おまえのせいで最近生徒たちが『せんせーあかちゃんはどこからくるの?』とかきいてくるようになったんだな!!!?あのかわいい私の生徒たちを汚してくれやがってそこになおれ鴉天狗!!!!お前の生まれの歴史を改ざんしてくれる!!!!!」
一息にそういいきるとがたんと立ち上がり臨戦態勢に入る半獣。
「あややや…。私が必死に生み出しているネタをそんな風にこき下ろしてくれるとは、いいでしょう、半獣風情に真の妖怪の恐ろしさを叩き込んであげましょう!!!!」
それに答えるように立ち上がり、風をまとい始める鴉天狗。
そんな二人の口の中に放り投げられるおかみ特製つくね
「「にっがぁぁぁっぁぁ!!!!」」
一瞬前まで殺気立っていた二人は一瞬で仲良くハモったのだった。
そんなこんなで明け方近く。
あの後、半獣と鴉天狗は何故か意気投合し酒を酌み交わしていた。
今度、あの鴉天狗を教師として来て貰うらしい。絶対やめた方がいいと思う。
「さぁて。今日も笑顔いっぱいでしたね~♪」
そういってのれんを畳み、提灯を消す。
あの半獣も鴉天狗も、最後はとてもいい笑顔だった。
酒におぼれるのも、たまにはいいじゃないか。
たそがれに
たれのかおりに
いざなわれ
えがおがごちそう
すずめのおやたい
おそまつ
おかみすちーの包容力は凄い!
一元→一見では?
アンタだったのか。デスボイスで思い出したww
ああ、なんで現実世界にはみすちーがいないんだろう……
最後の句のたそがれにたれがかかったみたいでちょtっと気分がよく焼酎ください!!!!