いつの間にか赤い靴を履いていたの。
暗い部屋の中でね。
うん、お姉様の部屋。
さっき遊びに来たの。
夜になったら、なんだかとても会いたくなっちゃったの。
お姉様はちょうど眠れたところだったみたい。
起こしちゃったみたいだったから、私あやまったの。
そうしたら、頭をぽふぽふってしてくれてね。
お飲み物を持ってきてくれて、カーテンを開けて。
大きな満月。
おっきなおっきな満月が浮かんでたんだよ。 とても綺麗だった。
二人でずっと見てたの。
お姉様とくっついてた左腕があったかかった。
持ってきてくれたお飲み物をすすってね。
お姉様にぽふぽふってしてもらってね。
二人で座ったベッドがとても柔らかいの。
お姉様の体があったかいの。
なんだかとても気持ちよかったんだ。
ずっとずっとずっとそうしていたかった。
でもね。 お姉様ったらひどいんだよ。
眠いからって先にベッドに入っちゃったの。
私はしばらく、一人でガラスの向こうのお月様を見ていたの。
丸くて、大きくて、綺麗だったなあ。
でもね、飽きちゃったんだ。
カーテンをさっと閉めた。
お姉様のいるベッドの端っこに、ぽふってしてね。
退屈だったの。 天井は見ても面白くない。
辺りを見ても、何も面白そうな物は無かったなあ。
だってお姉様と一緒じゃないと面白く無いもの。
そう思って、お姉様に声をかけてみたの。
寝ちゃったのか、返事が無かったの。
なんだか面白くなくて、胸が詰まりそうになった。
だからそっと近付いてね。
お姉様の綺麗な髪。
起こさないように触ってみた。
とても柔らかくて、指の一本々々にまでまといつくようで。
なんだか凄く気持ちよかった。
そうしたら変なの。
体が揺れてるような感じがしたの。
体の奥の方から何かが出てきそうな感じでね。
私、変になっちゃったのかと思って急に不安になったの。
胸に手を当ててみたら、そこがばっくん、ばっくん、て鳴ってた。
体が爆発しそうだった。
でもね。 なんだか変なの。
気持ちいいの。
お姉様の髪を撫でてから、ばっくんばっくんが止まらなくてね。
それに気持ちいいの。
お姉様を見ると、それはどんどん速くなってね。
凄く気持ちよくなってくの。
お姉様は眠ってたわ。
静かに息をしてね。 目を優しそうに閉じてね。
紅い唇が柔らかそうでね。 まつげが可愛くてね。
細い首筋がとても綺麗だったの。
お姉様を見てたら私、何だか変になっちゃったわ。
息が苦しくなって、ばっくんばっくんってなって。
ぐっと近付いたの。
お姉様の顔と、私の顔がくっついちゃいそうなほどに。
なんでそうしたかわからないの。
ただお姉様にもっと近付きたかったの。
お姉様の匂いがした。
とても、とてもいい匂いだった。
お姉様の細い首筋が見えた。
とても、とても綺麗だった。
ばっくんばっくんが凄く、速くなって
私、どうしたんだろ
目の前が 真っ暗になって
いつの間にか、赤い靴を履いていたの。
私はベッドに前屈みになって倒れていたの。
眠っちゃったみたいだった。
起きたら真っ赤っか。
お気に入りの靴も汚れちゃっててね。
真っ赤な何かが塗られてたの。
目に痛いくらい真っ赤な何かが。
それを見たら、まだ胸がばっくんばっくんしてるのに気がついたの。
凄く変な気持ち。
手が真っ赤なんだ。
赤い何かで汚れてた。
そう言えばお姉様は?
そう思って、一緒にベッドで眠ったお姉様を見たの。
お姉様は赤かった
体中、真っ赤っかな水が飛び散っていてね。
赤い汚れが首の辺りを真っ赤にしてたの。
何がどうなったのかわからなかった。
けれど、凄く気持ちが良かった。
だから私、笑ったの。
大きな声で笑ったの。
そうしたらね。
こんこん。 って音がしたの。
誰か来たみたいだった。
私、笑いっぱなしだったわ。
だって楽しいんだもの。
なんだかよくわからないけど、楽しいんだもの。
笑ってたから、変だと思ったのかな?
ノックしてた誰かが急に入ってきたの。
ドアを開けて入ってきたのは咲夜だった。
しばらく部屋の中を見てぽーっとしてた。
それから急に怖がったような顔になってね。
そうしたら私、またばっくんばっくんが始まっちゃったの。
咲夜の綺麗な顔を見てね。
咲夜の綺麗な首筋を見てね。
もう一回笑ったわ。
そうしたら、咲夜が私を急に澄ました顔で見てね。
「フランドール様。 これは一体、どういう事ですか?」
そう尋ねる人間は瀟洒なる従者。
咲夜は平静を装った顔で、赤に染まったベッドのある部屋を見回した。
「あはははは。 わからないー」
身に付けた服を真っ赤に汚したフランが、けたけたと笑いながら答えた。
「あはっ。 あはっ。 あははっ。 あはははははははははははは」
笑い声が夜闇に響き渡る。 憮然とした面持ちで、咲夜はそれをただただ眺めていた。 その笑い声は不吉な何かを感じさせた。
壊れた――そう形容するのが無難であろう。 フランはとても楽しそうに笑っていた。 笑いながら、彼女が一歩咲夜へと歩み寄った時、
「うるさいわね」
「眠れないじゃないの」
咲夜のものでも、フランのものでも無い声がした。 レミリアがむくりとベッドから起きあがった。
「……レミリア様? これは、どういうことでしょう」
「え? ……嫌だ。 何これ」
レミリアは自分の首筋に手を当てた。 そこが湿っていることに気づき、首筋を顧みた。 まだ乾き切らない赤が、そこにはたっぷりとぶちまけられていた。 彼女は顔をしかめながら、傍らにいるフランへと視線を移す。
「あはっ。 あはははー。 なんか気持ちいいのー。 お姉様ぁ」
そのフランは、ワイングラスを片手に頭をくらくらとさせている。 頬に赤みが差し昇り、完全に出来上がっている。 ベッドで上半身だけを起こしたレミリアは、重たげに垂らした頭を左手で支えた。
「……まだフランには早かったかしら」
「レッドワイン、ですか?」
「だって、フランだってもうすぐ五百歳だもの。 お酒を楽しめないなんて可哀想かな。 ――なんて思って」
「……着替えを、お持ちしました」
時間を止めた咲夜がベッドクロースとシーツを替え、レミリアの着替えを差し出したところで、
「あ。 えー! 咲夜ぁ! あのおいしいお飲み物どこやったのー!?」
空になっていたグラスを片付けられてしまったフランドールが騒ぎ始めた。
これはいいフランちゃんですね
異様な甘さで口当たりが良く飲みやすい。
之は実に良い酒飲みですね
つワインを梅酒割りロック
フランがやばいくらいに可愛い
てかそんな状況をみたら咲夜さんでも凍り付くよなぁw
フランちゃんといい、あなたといい…なんてイタズラっ子!
咲夜のお楽しみブランディが次々消失する事件まで幻視したよ。
※飲酒スペカは危険ですのでほどほどに。
ああもうフランちゃん可愛いなぁ。