「ふぅ……食った食った」
魔法の森の朝。ガラクタ山と言っても過言でないような家で、霧雨魔理沙はいつもと同じような朝を迎える。
朝食はお米と茸の味噌汁、目玉焼き。典型的な和食だった。
腹が膨れて逆に二度寝したくなるような眠気に抗いいつもの服に着替える。
「ん~」
髪をグシャグシャと掻きながら、洗面所の鏡を見てふと思う。
「……たまには髪型でも弄ってみるか」
別にお洒落をしたいとか、可愛く見せたいとか、そんな女の子らしい感情からの衝動ではない。
人間誰しも、必要のないことをしたくなるような気分になることがたまにある。
魔理沙のその衝動も、『なんとなく』というヤマもオチもない気分からのものだった。
鏡の中の自分との闘いが始まる。
「ツインテール」
盟友である河童の少女を模し、両手で頭の両サイドの髪を纏めて掲げてみせる。
一瞬自分でも可愛らしい、と思ったが、自分のキャラを思い出す。
「……ダメだ、にとりや小町はともかく私がやったら痛すぎる……」
さっさと諦めて髪を下ろし、少しの間逡巡し、
「じゃあサイドテールはどうかな」
今度は片側のみ纏めてみる。
テールそのものは合格ライン。だが、片側だけを纏めてしまったがために動かざるを得なかった髪とそうでない髪が左右で予想以上に不釣り合いに。
「……なんかバランス悪いな。フランとか大妖精みたいにサイドテール用に切り揃えればいいだろうけど……」
彼女らは妖怪であるから、あの髪型で何年と過ごせるだろう。
しかし自分は人間であるから、髪を切ったところで(あくまで妖怪と比べれば)すぐ伸びてまた不自然なカタチになるだろう。
それに、1つだけの髪型のために髪を切るのは何か嫌だし面倒だ。
左右で釣り合いが取れる髪型、ならば。
「じゃあ、ポニーテール!」
髪を後ろに纏め上げる。
「……悪くないな。でも霊夢んちにも行く手前、変に突っ込まれても嫌だなぁ」
とりあえず保留、っと。
髪を下ろし、他に髪型に特徴のある知り合いを思い浮かべる。
「ん~、他には……ルナとか永琳みたいなやつ、か?」
カールやお下げを想像する、も。
「ってダメだ、あいつらみたいにするには私じゃ短い」
永琳のお下げが三つ編みっぽかったのを思い出し、やっぱり無難なところからいこうと思った。
「三つ編みか。お燐みたいにするには、ちょっと面倒だな……」
三つ編みは慣れているとはいえ、3つも4つもするのは流石に憚られた。
「やっぱいつも通りかな……」
そして結局、片方だけを三つ編みにするいつもの髪型に落ち着いた。
「よし! ……ん? あ、そうだ」
そういえば、『片側三つ編み』に拘って、左右どちらかしかしてなかったのを思い出す。
「……これでよし、と」
そしてもう片方も三つ編みが完成。くるくると弄りながら鏡で確認する。
「美鈴、いや、どっちかっつーと咲夜よりか」
魔理沙は髪の長さ的に紅魔館の門番よりメイド長に近い。
普段見慣れている髪型でもあるせいか、違和感もほとんどなかった。
「……案外、似合ってるかも。ふふっ」
思わず、笑みが零れる。
「ええ、お似合いよ」
「!!?」
が、次の瞬間凍りついた。
「おはよう」
いつの間にか件のメイド長……十六夜咲夜が自分の隣にいた。
「え? おは、よ? ……え、と、どーして?」
パニックになったせいで朝の挨拶も疑問も半端になってしまった。
そんな魔理沙に対し、咲夜は瀟洒な表情で告げる。
「お嬢様方は眠られたし、特に急ぎの仕事もなかったからちょっとお茶でもしようと思って来たんだけど……」
が、その顔はどんどんニヤけていき、
「お茶とお菓子より、こっちの方がいいかしらね♪」
やがて満面の笑顔になる。
「……え?」
わけもわからず固まったままの魔理沙を意にも介さず。
「お揃いのリボンと~……」
にこにこしながら魔理沙の両の三つ編みの先に、自分が愛用するのと同じデザインのリボンを括りつけ、
「メイド服!」
(時間を止めわざわざ館から持ってきた自分のお古の)メイド服を、やはり時間を止めいつもの魔女服から着替えさせた。
そしてメイドカチューシャを装着。
程なくして、魔女っ娘メイド♪キリサメマリサ☆が誕生した。
「う……うわああああああああああああああああああ!!!」
鏡に映る自分の姿を見てようやく現実に戻ってきた魔理沙は発狂した。
数時間後、お茶会に紅茶を持ってきた魔理沙の姿を見てスカーレット姉妹が盛大に驚愕するのはまた別の話。
魔理沙の後ろで咲夜がにこにこにこにこにこにこにこにこしているのもまた別の話。
魔女っ娘メイド♪キリサメマリサ…是非イラストで見てみたい!!
素晴らしい咲マリご馳走様でした!
激しく見てぇ!
うん、さくまり。
ディモールトベネ!
魔理沙メイドありました。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=big&illust_id=6522773