「処暑……ねぇ……」
日めくりカレンダーをぺらぺらとめくりながら、紅葉の神 秋静葉は溜息をついた。
節気は処暑に近い、初秋のある朝だった。
べりっとカレンダーを1枚めくって、静葉は
「で?貴女はいつまでそこでへたっているのかしら?」
と、畳の上で突っ伏して動かない妹、穣子を見た。
「…………暑い。」
立秋をとうに過ぎたとは言えまだまだ暑かった。できれば秋分まで寝ていたい、そんなことまで穣子は考えていた。
蝉の鳴き声がひたすら鬱陶しい、朝。
「………ぅぁー」
気がつくと、いつのまにか静葉は外出していた。
紅葉の様子でも見に行ったのだろう。毎日毎日飽きの来ない人だ。あきが来ないのは私か、ははは。
………穣子は自分で考えたことに悲しくなった。泣いていいかな?
次に穣子の意識が帰ってきたとき、穣子はずぞぞぞ、という音を聴いた。
だるい身体を起こして見ると、静葉が冷麦を食べていた。
「なんでお姉ちゃんだけ勝手に食べてるのよ。」
寝起きの低いテンションで問い質す。静葉は飄然としていた。
「ああ、起こしても起きないかなと思って。」
「ということは実際には起こしてないのね……」
呆れてものも言えない穣子。いつものことながらまったくこの姉は、と溜息をついた。
「ほら、けっこう多めに茹でたから穣子も食べなさい。」
「はーい」
2人で山と盛られた冷麦を食べる。
食べる、
食べる。
冷麦を全て食べきる頃には、八つ時になっていた。
すると食器を片付けに行ったと思っていた静葉が、
「さっき人里でね、西瓜を貰ってきたのよ。」
と、西瓜を持って戻ってきた。
「西瓜だと!?!」
穣子は飛びついた。
お盆の上にある西瓜をひったくりむしゃぶりつく。
「そう。穣子様によろしくって。」
「うぐっ」
ぐっさり。穣子に15のダメージ。
静葉はすべてを観通しているかのように一言
「もう秋なんだから」
と言った。
「………分かってるわよ。」
穣子はふてくされつつ、そう言った。
蝉が鳴いて蜉蝣がよたよたと飛ぶ、ある日のお話。
さあリリ静を書く作業に戻るんだ。
静葉がしっかり姉さんしており、ほのぼのしました。
この言葉のダメージ、本当よく分かりますww