Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

我夢帝符

2007/02/23 09:35:16
最終更新
サイズ
11.54KB
ページ数
1
*これだけは!って事
 登場キャラクター達が若干トリップしておりますが、読み進めていく内にその気が顕著になって逝きます。
 受け入れられない方、途中で気分の悪くなった方はどうぞご遠慮ください。
































「!! 魔理沙!」

アリスがいつものように、誰に断わる事も無く社に踏み入り襖を開けると、
そこには肩を抱いて泣きじゃくる魔理沙、それを見下ろす霊夢の姿があった。
すぐさま霊夢を睨めつけ、問い詰めようとしたが彼女はアリスより力があるのだ。
万一霊夢が暴挙に出たら止められない。
アリスは数歩下がって距離を置き、改めて状況を把握しようとする。
霊夢が手にしているのはアリスが人形作りの際に使用するような、布を切るためのハサミ。

「こんにちは、アリス」
「霊夢!魔理沙に何をしたのよ!」
「うう、グス、ア、アリス?」
「魔理沙いったい何があったの!?」
「あ、アリス、私は…」
「大丈夫、私が助ける! 霊夢!魔理沙から離れなさい!」

霊夢は魔理沙のもとから離れ、 …無言でアリスの方へと歩みだした。

「ふ、ふーん、どうしても弾幕ろうってわけね。いいわ!今日は本気でいくわよ! 泣いたって知らないからねってきゃあ!?」

霊夢はアリスのお決まり染みた問答を聞き捨てながら、語りに入っていた彼女を突き倒した。

「いたた、卑怯よ!? 人の話はちゃんと最後まで聞かなきゃ駄目って、ママだって言ってたんだから!」
「いいわよ? それじゃあ聞いてあげる」

そう言って霊夢はアリスにのしかかり、手にしたハサミの切っ先でアリスの顔をなぞる。

「ひ! ちょ、霊夢怒った?も、もう冗談だってば。私がお友達に手を上げるわけ無いじゃない。
お茶目なジョークよ。あなたもそうでしょ?だからそれ仕舞って~」
「…アリス」

端から敵わないと分かっていたとはいえ、ろくに抵抗も出来ないまま組み敷かれて許しを請うアリスは情けなさ極まり、
魔理沙の冷たい視線に貫かれるのだった。
だが、そんなアリスも魔理沙の違和感を見逃さなかった。

「魔理沙、わ、腋が…」

魔理沙はハッとして自分の腋を手で覆ったが、アリスの驚愕した顔を見て諦めたように、その腕を力なく下ろす。
彼女の服は、腕の付け根の部分、いわゆる腋の下であるが、その部分が円形状に切り取られていた。
そこから見える悩ましげな腋にアリスの目は釘付けだった。

「うう、霊夢がいきなり押し倒してきて、私の腋を…」
「な、なんで?」
「天啓よ」

アリスの実に真摯な疑問に答えたのは霊夢だった。

「幻想郷の生娘たちの腋の下を片っ端から暴いてやるのよ!」
「何で、どうしてそんなひどいこと!」
「天啓があったのよ」

そう言って霊夢は昨日のことを語り出す。







その日霊夢は山中で妖怪に襲われていた少女を助け、ふもとの里まで送り返し、
謝礼と言って肉やら米やらを巻き上げてきたのだが、その里では事あるごとにがめつく物品を要求していたために
あまり良い顔をされていなかった。それは彼女の物の価値を考慮しないといった無重力気質が理由だったが、
傍から見れば変人であり、当然理解されない。帰る際に嫌味のひとつも言われるのだ。

「あれが貧乏神社の巫女なのね。あんな部分を曝しちゃって、みっともないったらありゃしない。
私がやったらポロっと出ちゃうわよ」
「いくらなんでも出しすぎよね。木綿が見えても平気なのかしら。まああの様子なら大丈夫そうだけど?すとーんって」

あははと嗤いが拡がる。
寄ってきて白々しく嫌味を並び立てたのは、霊夢が助けたはずの少女とその連れ達だった。
いつもは何を言われても、我が物顔で道の真ん中を闊歩するよな霊夢だったが、そのときばかりは逃げるように、
身をちぢめこて帰っていった。
神社に戻り、霊夢は初めて理解されないことを悔しがり、吼えた。



「腋の良さが解からん小娘共が!! 乳がなんだ!!」

自身が小娘であることと乳房のことは置いといて、腋については、彼女なりのこだわりであった。
周りからは博麗のアイデンティティのように思われているが、それは霊夢独自のセンスなのだ。
ゆえにそれを否定されると彼女としても非常に寂しい。センスに対する自信も揺らぐ。

「…やっぱり普通の着物みたいに、厚く着飾ったほうがかわいいのかしら」

腋だけ出しているところが問題となるのだが、ある意味時代を先取りしてるし、
凡人たちと生活を隔絶している彼女はそこに気付かない。受け入れ難い現実に葛藤しながら床につくと、
どこからとも無く声だけ響く。

「そんなことないよ」
「!? 誰よ! 紫?」
「妖怪なんかと一緒にされちゃ困るね。私ゃここに住んでる神様だ。お前さんは腋を出すべきだよ」
「はぁ、あれ? あんたどこかで会ったことある?」
「私ゃあんたほど腋の出ている立派な巫女は知らないね」
「そ、そう? そりゃどうも。でも神様、いきなり出てきて腋を出せってどういうこと?」
「腋は今幻想郷に足りていない物のひとつなのさ。いわゆる少女臭!」
「紫、あんたいい加減にしなさいよ! 前にも幻想郷中の少女臭を集めるって言って藍に靴下集めさせたでしょ!
ついでに言うと何で靴下なのよ!」
「(あの妖怪ろくなことしてないな)落ち着きな!博麗の巫女。
私ゃ靴下に消臭剤仕込むような妖怪とは似ても似つかぬ祟り神さ。言い直そう。
私が欲しいのは少女臭なんてかりそめの少女じゃない!本物にしかない少女度さ。そして霊夢。お前さんは本物だ」
「え? わ、私が?」

たとえ少女度などという不可解な要素について語ったのだとしても、まるで自分の感性が認められるような言葉に霊夢の心は揺れた。

「そうさ。私ゃ春だのなんだのが足りないからって他人様から奪ってまで集めようと言うほど愚かじゃない。
足りなきゃ少しずつ増やしてきゃいいんだ。そこでお前さんの力が必要だ。
お前さんが周囲に、腋が内包する少女分の素晴らしさを知らしめてやればいいのさ。
やがて少女といえば皆、腋を出さずにいられなくなる」
「本当!?」
「そうさ! 手始めに森の魔法使いたちをお前さんの腋の虜にしちまいな!」
「わかったわ、魔理沙たちを私色に染めてやる!」
「え!? ちょ、それは語弊があるだろ」

博麗霊夢は祟り神の犬になった▼







「そういうわけなのよ」

回想を聞き終えたアリスはすっかり目が据わっていた。一方魔理沙はうーんと唸りながら難しそうな顔をしている。

「霊夢 あなた騙されてるわ」

アリスは容赦なかった。

「何それ、少女度に少女臭? 腋に靴下!? あほか!! だいたいそれミ」
「待てよ! そんなのまだ分からないだろ」

魔理沙は必死にフォローに廻る。
そんな二人のやり取りも霊夢はまったく意に介さない。

「そうして私は腋の悟りを啓いたわけだけど、幻想郷には多くの救われない少女たちが溢れているわ。あの里の娘たちのように。だから私が諭してあげるの。力ずくでもね!」

アリスは何とかこのトリップ巫女を止めようと思案を巡らしたが、とりあえず後ろ手に組み敷かれている状況を打破しないことには、自分も魔理沙の二の舞いになるという結論に至った。

「あんな恥ずかしいのまっぴら御免だわ! うおら!」

アリスは自由になっている脚の遠心力によって、下腹部を軸にした回転を掛け霊夢を振りほどこうとするが、霊夢は片足を畳から離して見事にアリスの回転に乗り切り、透かさず腕を締め上げる。
踏み慣れた畳の上でのサブミッションは、霊夢に幾らか分があった。

「おとなしく腋を差し出すのよ!」
「痛い!痛い! 魔理沙助けて!」
「待ってろアリス!動くなよ」

アリスの目が再び据わってくる。
その目にはハサミを持って迫る魔理沙が映っていた。

「死なばもろともだ」
「くそー! 魔理沙のモノクロ! スケコマシ! ハゲ!」

にんまり嗤って言い放つ魔理沙をアリスは金切り声で罵倒する。

「うへへ、霊夢しっかり掴んでろ」

なにやらいやらしい顔になっている魔理沙。
このままでは自分の大事なもの、もとい腋を曝されてしまう。

(このままじゃ、汚されちゃう!  ? あれ?なんだか頭がフワフワする)

だが、アリスに必要以上のストレスをかけたのが魔理沙の失策だった。
このときアリスの脳内では、この絶体絶命の状況が一種の興奮状態を造り上げていた。
そこには多種多様な精神伝達物質が分泌されていたが、とりわけ統合失調の気があるアリスの神経系からは、ドーパ
ミンが溢れ出し、さらに日常的に服用している抗欝剤に含まれるセロトニンが気分を高揚させ、果ては俺の番だとば
かりにエンドルフィンがどこからともなく分泌された。

「「なに!?」ぐぇ」

脳内麻薬によって妖怪としての潜在能力を極限まで引き出したアリスは、霊夢の拘束を容易く跳ね飛ばし、
裏切り者の顔面に肘を叩き込んだ。
魔理沙は鼻っ面で肘の運動エネルギーを余すことなく受け止めると、膝をついて前のめりに倒れた。

「! 魔理沙を一撃か。アリス、おとなしく…」
「うふ、うふふ、新世界垣間見ちゃった」
「ア、アリス大丈夫?」

壊れたように嗤いだすアリスを、霊夢も不意に気遣う。
脳内麻薬の効能が表れ出したアリスは、霊夢の心配をよそにスカーフを解き、襟元に手を掛けた。

「え、 ええ!!?」
「スッパフォーム!!!」

アリスはものの一瞬で、その首からつま先にかけて、素肌を守っていた布を取り払った。

「アリス・スッパトロイド参上! どう?霊夢。もうあなたが暴ける結界など私に一片たりとも存在しないわ!」










「き ゃ あ あ あ あ !!!」

叫んだ。
霊夢は真っ赤に染めた顔を両手で覆う。
いくら悪霊に洗脳されていようが、自分と同じような少女が目の前でいきなり全裸になるという非常事態はショック以外の何でも無かった。

「何してんのよ! この変態!」
「これなら腋をどうこう出来ないでしょ。慌てちゃってどうしたの?この溢れんばかりの少女にあてられて、恐れおののいているのでしょうね」
「そんなわけあるか! どこが少女だって言うつもりよ!」
「ここかしら」
キャー

霊夢は容赦なかった。
霊夢がマウントをとってから三秒後にアリスは正気を取り戻すが、それも二秒後に意識ごと飛ばされた。
霊夢は気が済むまでアリスを殴ると、あらためて脱ぎ捨てられた服の腋をくりぬき、着せてやった。

それから一刻ほど居間にてお茶を啜っていた霊夢はすっかり落ち着いていた。
先ほどの出来事はトラウマになりそうだったが、救わなければならない少女達はまだまだいる。
こんなことで挫けてられない!そう心を強く持ち直すと霊夢は、くたばっているアリスと魔理沙を放って人里へと降りて行った。
















霊夢が山道を下る途中に、膝を抱えたスキマ妖怪が転がっていた。

「藍が反抗期なのよ」

話を聞くところによると、どうやら式神が彼女の意思と関係なく他人から少女臭(靴下)を奪ってくるために、そのしわ寄せが彼女に行くのだそうだ。

 
『お嬢様たちのマジ狩る☆さくやちゃん柄の靴下返しなさいよ!!』
『ご、ごめんなさいね』
劣情を秘めたるメイドにはなじられ、

『りぐるんの蟲王の靴下で何してんのよ!!』
『い、痛い! 踏まないでぇ』 
劣情に狂う花の妖怪には足げにされ、

『……私のプリ⑨ア』
『ひ、ひぃ、ひぃぃ』
劣情を誘う背丈の足りない閻魔には裁かれた。


「踏んだり蹴ったりなのよ~」
「あんたの式神なんだからどうにでもなるでしょ」
「それがあの子、暴れるのよ。靴下以外身に着けないで。『紫様にはフォックス(ソックス)の本当の良さは分からん!!』って言って」
「あんたがテンコー!に靴下集めさせたのが切っ掛けでしょ。自業自得よ。 …それはそうと、あんた良い腋してるわね」

霊夢の眼がいったのは、いつになく露出したスキマ妖怪の腋の下だった。

「ああ、さっき神社に行ったら霊夢はいないし、なんか三人とも腋を開けてたから私も早速やってみたんだけど、今ノンスリーブがトレンドだなんて知らなかったわ」
「の、のんすりいぶ? それより三人?」
「そうよ。悪霊が気絶してる魔法使いと人形遣いの腋を愛でてたわ」
「……」
「あ!腋で思い出した。霊夢、前から言おうと思ってたんだけど、腋を出すならちゃんと処理しなくちゃ駄目よ。今は薄くてもいつか濃くなるんだから」
「は?何?」
「ほらこれ、この符を使うのよ。これで『おけけ』を封印するの。ほらほら、やってあげるからバンザイして」
「やだ、何するのよ。やめなさいよ」

 ぺたこん

「ひゃっこい!」

 ごしごし

「くすぐったい!」

「いいわね? じゃあ剥がすわよ」
「え?」
 





 一方、逸早く歴史の異常に気付いた歴史家は、里の少女の腋を巫女から守るために自分の庵に少女達を匿っていた。

「こうして祟り神に取り憑かれた巫女は、マヨヒガの結界師の活躍によって正気を取り戻し、里の平穏は守られたんだ」
「あの腋がそんな怖い巫女だったなんて」
「慧音先生! ほんとに巫女はこの里に来ないの!?」
「安心しなさい。さっきまでリアルタイムで歴史を覗いていたからな。 あれ?歴史が更新されて…


…あばば」

新たに追加された内容から歴史家は目を逸らしたかったが、歴史を覗く白沢の目は瞼を閉じてもそこに残酷な事実を見せてくれる。
 
 


 慧音先生は、どんなに危機的な状況であっても決して動じず、歴史を手繰って常に最善の行動をとって私達を守ってくれる。
そんな先生がこの非常事態に自分達を前にして「あばば」などといった冗談めいた感動詞を使うなどありえないと思ってた。
きっとおそらく自分達の慣れぬ緊張をほぐしてくれようという配慮なのだろう。
慌てふためく慧音先生をよそに少女達がそんなことを考えていた丁度その時、何者かが庵の戸をぶち破って入ってきた。


































「スッパフォックス参上! お前たちのフォックスは全て頂く」

 
 慧音先生のエキストラステージが始まる。









 ふぃん
初めまして tomomoと申します。
こういう場で物を書くのは初めてになります。ドキドキです。
浅学非才の身ですが、また勉強して書きたいと思っています。
至らぬところありましたらじゃんじゃん言ってやって下さい。

あとアリスファンの皆さんごめんなさい。
tomomo
コメント



1.名無し妖怪削除
>アリス・スッパトロイド
新世界が垣間見えました!w
2.猫の転がる頃に削除
フォックス(ソックス)ハンター藍!?いかん、妙な色のオーマがあばばば。
3.tomomo削除
>名無し妖怪さん
新世界垣間見ちゃいましたか。
そしてワッパトロイドになっちゃいました。
>猫の転がる頃にさん
お子様向け靴下ばかりを狙うスッパソックスの趣向は、奴らの中でもさらに珍異なのですw
4.SETH削除
大丈夫か?
いや いい意味でw