狼ってのはすんごく楽だよな。ほら、例えば雄雌(しゆう)の関係。相手を選ぶときにな、狼が基準にしてるのは、オスならメスが出すフェロモン。メスからオスになら、単純にどれだけ強いかだろ? なにも悩む事なんて無いのさ。
それに引き替え人間ときたら、ややこしい事この上ないぜ。よく言うところでさ、顔がいいだとか、優しいだとか、金持ちだとか頭がいいだとか背が高いとか、髪の毛の色だとか脚が長いだとかいい香りがするだとか胸が大きいとか胸が大きいとか!
早口で一気にまくし立てた魔理沙は縁をバシバシと叩き、勢いそのままに煎れたてのお茶をあおった。
「だから、たった今から私の一人称は俺に変更させて頂くぜ」
「何でそうなるのよ」
煎餅を銜(くわ)えたままの霊夢は、ふにゃふにゃと適当な相づちを打った。
「男になるんだぜ」
「オトコ?」
「そう、男。ほら、言うじゃないか。男は皆狼だって。
結局の所、面倒なことに巻き込まれて痛い目見るのって大抵女だろ? 影でひっそりと泣いているのは女だろ? 頭が悪そうだからってフられて金髪に飽きたからってフられて、ちっちゃいからってフられて痩せ過ぎてるからってフられて薬品くさいからってフられて脚が短いからってフられて胸が無いからってフられて! 損なんだよ傷つきやすいんだよ女の子ってのは! だったら逆手をとってやろうってわけだ泣かせてやろうってわけだ復讐してやろうってわけだ!」
いつの間にか立ち上がり拳を振り回していた魔理沙の叫びは、鳥すら落とせそうなほどのけたたましさと共に、山びことなって幾重にも響く。その後(のち)の神社近辺には、完全な静寂が訪れた。
息を切らした魔理沙を横目に、霊夢は唇だけを動かして煎餅を口内に運び、湯飲みに半分ほどあったお茶をちびちびと啜(すす)る。長々と時間をかけて中身を飲み干した霊夢は、誰に言うでもなく呟いた。
「いいアイディアね」
それを聞いた魔理沙はほんの一瞬耳を疑ったが、何処となく遠い目の霊夢を見て、何と無しに悟った。
「大変だな、お互い」
「何の話よ。大体、私はあんたと違って女の子らしさに色気に満ち溢れてるの。それに、女の子の利点ってそれこそいろいろあるじゃない。例えば品物を負けてもらったり、鯛焼きをおまけしてくれたり、貴金属類のプレゼントがあったり質屋が高めに買い取ってくれたり。だから女ってのはいいものなのよ例え守銭奴な女の子を見ると吐き気がするなんて言われたとしても賽銭賽銭と乞食みたいだねって笑顔で貶(けな)されてもだって節約ってのは主婦の基本でしょ!? これはいわゆる花嫁修業よ!」
高らかに宣言した霊夢も魔理沙同様、いつの間にか立ち上がっていた。そのまま数秒。再びの沈黙もしばらく、二人はゆっくりと腰掛けた。
「……と言うわけで、私の一人称もたった今から俺に変わりましたとさ」
二つ向こうの山よりも更に向こうを見やって、霊夢はこぼす様に呟いた。
「男になるのか?」
「まさか。狼になるのよ。狼最強論」
「なるほど。俺も狼が良かったな」
「世の中早い者勝ちよ。狼は俺のもの」
「そうだな」
「ええ」
夕日に長い影を作る二人の乙女に、一筋の涙はよく栄えた。
それに引き替え人間ときたら、ややこしい事この上ないぜ。よく言うところでさ、顔がいいだとか、優しいだとか、金持ちだとか頭がいいだとか背が高いとか、髪の毛の色だとか脚が長いだとかいい香りがするだとか胸が大きいとか胸が大きいとか!
早口で一気にまくし立てた魔理沙は縁をバシバシと叩き、勢いそのままに煎れたてのお茶をあおった。
「だから、たった今から私の一人称は俺に変更させて頂くぜ」
「何でそうなるのよ」
煎餅を銜(くわ)えたままの霊夢は、ふにゃふにゃと適当な相づちを打った。
「男になるんだぜ」
「オトコ?」
「そう、男。ほら、言うじゃないか。男は皆狼だって。
結局の所、面倒なことに巻き込まれて痛い目見るのって大抵女だろ? 影でひっそりと泣いているのは女だろ? 頭が悪そうだからってフられて金髪に飽きたからってフられて、ちっちゃいからってフられて痩せ過ぎてるからってフられて薬品くさいからってフられて脚が短いからってフられて胸が無いからってフられて! 損なんだよ傷つきやすいんだよ女の子ってのは! だったら逆手をとってやろうってわけだ泣かせてやろうってわけだ復讐してやろうってわけだ!」
いつの間にか立ち上がり拳を振り回していた魔理沙の叫びは、鳥すら落とせそうなほどのけたたましさと共に、山びことなって幾重にも響く。その後(のち)の神社近辺には、完全な静寂が訪れた。
息を切らした魔理沙を横目に、霊夢は唇だけを動かして煎餅を口内に運び、湯飲みに半分ほどあったお茶をちびちびと啜(すす)る。長々と時間をかけて中身を飲み干した霊夢は、誰に言うでもなく呟いた。
「いいアイディアね」
それを聞いた魔理沙はほんの一瞬耳を疑ったが、何処となく遠い目の霊夢を見て、何と無しに悟った。
「大変だな、お互い」
「何の話よ。大体、私はあんたと違って女の子らしさに色気に満ち溢れてるの。それに、女の子の利点ってそれこそいろいろあるじゃない。例えば品物を負けてもらったり、鯛焼きをおまけしてくれたり、貴金属類のプレゼントがあったり質屋が高めに買い取ってくれたり。だから女ってのはいいものなのよ例え守銭奴な女の子を見ると吐き気がするなんて言われたとしても賽銭賽銭と乞食みたいだねって笑顔で貶(けな)されてもだって節約ってのは主婦の基本でしょ!? これはいわゆる花嫁修業よ!」
高らかに宣言した霊夢も魔理沙同様、いつの間にか立ち上がっていた。そのまま数秒。再びの沈黙もしばらく、二人はゆっくりと腰掛けた。
「……と言うわけで、私の一人称もたった今から俺に変わりましたとさ」
二つ向こうの山よりも更に向こうを見やって、霊夢はこぼす様に呟いた。
「男になるのか?」
「まさか。狼になるのよ。狼最強論」
「なるほど。俺も狼が良かったな」
「世の中早い者勝ちよ。狼は俺のもの」
「そうだな」
「ええ」
夕日に長い影を作る二人の乙女に、一筋の涙はよく栄えた。
これって東方キャラの名前だけをつかった東方一切関係ない支離滅裂な話なだけかと。
……で、なにが面白いんですか?
つーか、誰だ、魔理沙にそんなこと言ったのは。