「うえぁ~・・・あーつーいぃ~・・・」
今年も、この季節がやってきた。
私の、嫌いな季節が・・・
-------------------------------------------------------------
私、八雲 藍は九尾の狐である。
九尾と言う名の通り、尻尾がちゃんと9本ある。
触り心地がいいらしく、よく皆が触りに来たりする。
中には一本まるごと抱きついたりもするのも居るが・・・
「らぁ~ん~・・・どうにかならないのこの暑さはぁ~・・・」
夏である。
「自然を歪める力なんて持ってませんよ。我慢して下さい」
そう、夏なのである。
「全く・・・あなたはそんなに尻尾があってよく涼しい顔してられるわねぇ・・・?」
ある時は好まれるこの尻尾も、この時期は忌み嫌われるものとなる。
「まぁ私はずっとこれですし、もう慣れてますよ」
「慣れとかそういう問題なのかしら・・・」
「ともかく、早く起きてくださいよ。折角いい天気なんですから」
「天気が良過ぎると動く気にもならないわぁ・・・特に今の季節はねぇ・・・」
・・・ダメだこの主。
----------------------------------------------------------------
どうにかして紫様を引きずり起こし、もろもろの家事を済ませて。
ようやく落ち着いたので縁側にて一息ついている所である。
紫様は博麗神社で涼んでくると言い出して先ほど出かけになった。
橙は・・・この暑さの中でも元気に飛び回っている事だろう。
言われて見れば、確かにいつもよりは暑いかもしれない。
でも私からすれば本当に少々の違いであって、気になるほどでもないのだ。
・・・空を見上げる。
雲一つない快晴。
洗濯物を干すにはこれ以上ないほどの天気。
そしてこの暑さ。
背中が少し寂しい。
少し前までは、私の背中には大抵紫様か橙が私の尻尾を抱きつきに来ていた。
とても気持ちよさそうにしている顔を見ていると、自然と私も幸せな気持ちになっていた。
しかし今の季節、ただでさえ暑いこの時期にこの尻尾に群がるようなことはない。
余計暑くなるんだそうだ。見てるだけでも暑苦しくなりそうだとも言われた事もある。
・・・当然と言えば当然なんだが。
夏が嫌いな人はこの暑さに嫌気が差しての事だろう。
しかし私は・・・
「・・・はぁ」
私の隣に寄ってくれる人がいなくなる。
こんな寂しいことはない。
毎年の事―――と言えば確かにその通りで、長い間こうして過ごしてきた。
こうなるのもいい加減慣れていてもおかしくはないのだが・・・
「やっぱり、慣れないなぁ」
どうしても、心のどこかに残る寂しさを拭うことは出来なかった。
----------------------------------------------------------------
(・・・ん?)
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
もう陽が落ちている。
ということは、もう洗濯物を取り込まねばならない。
「・・・さて、洗濯物を取り込んで、その後は夕飯の準備かな」
・・・独り言が多くなったな、と最近思うようになった。
ここ数年は特にそうかもしれない。
紫様は夜遅くまで向こうで涼んでいる事だろう。
橙はたまに来る事もあるが、それでもすぐに帰ってしまう。
今夜は、1人で夕飯を食べる事になるだろうな・・・
そう思うと、寂しさがこみ上げてくる。
(あれ、おかしいな・・・何で泣いてるんだろう・・・)
無意識に、涙が出ていた。
「紫様ぁ・・・私は、私は・・・」
気がついたら、私は膝をついて、自分で自分の体を抱きしめていた。
今まで、こんなことはなかった。
寂しさを感じることはあった。
でも、ここまで・・・泣くほどまで寂しいと思った事なんてなかった。
どうして・・・
「あらあら、1人で泣いちゃって。藍らしくもないわね」
不意に、声がした。
「う・・・ぇ・・・?」
私は、少し混乱していた。
「ふふ、1人で寂しかったかしら?かわいいところあるのね」
茶化すように笑っている。
「まだ向こうに居ようと思ってたんだけど、霊夢に追い返されちゃったわ。いつもならそんなこともないのだけれど」
ゆっくりと、紫様が近づいてくる。
「でも、あなたを見たら納得しちゃった」
「紫・・・さま・・・」
そして
「ごめんなさいね。こんな思いをさせるなんて主として失格かしら」
背中から、抱きしめられた。
「紫様・・・」
「いいのよ、何も言わなくても」
「失格だなんて、言わないでください」
「藍・・・」
失格なんてとんでもない。
紫様は、いつまでも・・・
「いつまでも、私の主で居てください。私は、紫様の式ですから」
「・・・藍」
私を呼ぶと、抱きしめる力を少し強めて、
「我慢する事なんてないわ・・・いいのよ、思いっきり泣きなさい」
「・・・え?」
「泣いて・・・これまでの寂しさを全部流しなさい。私が受け止めてあげるわ」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で・・・何かが音を立てて崩れ去った。
「う・・・くっ・・・くぅっ、う、うぁっ、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
私は泣いた。
我を忘れていたと思う。
いつまで泣いていたのかも分からなかった。
とにかく・・・私は泣いていた。
-----------------------------------------------------------------
気がつくと朝になっていた。
隣には・・・紫様が座られていた。
話を聞けば、あの後私は泣き疲れてそのまま寝てしまったようだ。
私が寝た後、紫様が添い寝してくれたらしい。
あの後も私が寂しい思いをしないように、と。
それを聞いて、私はまた涙が出ていた。
でも今度は、寂しさから来るものじゃなくて。
その日から、私はこの季節が少しだけ好きになった。
今年も、この季節がやってきた。
私の、嫌いな季節が・・・
-------------------------------------------------------------
私、八雲 藍は九尾の狐である。
九尾と言う名の通り、尻尾がちゃんと9本ある。
触り心地がいいらしく、よく皆が触りに来たりする。
中には一本まるごと抱きついたりもするのも居るが・・・
「らぁ~ん~・・・どうにかならないのこの暑さはぁ~・・・」
夏である。
「自然を歪める力なんて持ってませんよ。我慢して下さい」
そう、夏なのである。
「全く・・・あなたはそんなに尻尾があってよく涼しい顔してられるわねぇ・・・?」
ある時は好まれるこの尻尾も、この時期は忌み嫌われるものとなる。
「まぁ私はずっとこれですし、もう慣れてますよ」
「慣れとかそういう問題なのかしら・・・」
「ともかく、早く起きてくださいよ。折角いい天気なんですから」
「天気が良過ぎると動く気にもならないわぁ・・・特に今の季節はねぇ・・・」
・・・ダメだこの主。
----------------------------------------------------------------
どうにかして紫様を引きずり起こし、もろもろの家事を済ませて。
ようやく落ち着いたので縁側にて一息ついている所である。
紫様は博麗神社で涼んでくると言い出して先ほど出かけになった。
橙は・・・この暑さの中でも元気に飛び回っている事だろう。
言われて見れば、確かにいつもよりは暑いかもしれない。
でも私からすれば本当に少々の違いであって、気になるほどでもないのだ。
・・・空を見上げる。
雲一つない快晴。
洗濯物を干すにはこれ以上ないほどの天気。
そしてこの暑さ。
背中が少し寂しい。
少し前までは、私の背中には大抵紫様か橙が私の尻尾を抱きつきに来ていた。
とても気持ちよさそうにしている顔を見ていると、自然と私も幸せな気持ちになっていた。
しかし今の季節、ただでさえ暑いこの時期にこの尻尾に群がるようなことはない。
余計暑くなるんだそうだ。見てるだけでも暑苦しくなりそうだとも言われた事もある。
・・・当然と言えば当然なんだが。
夏が嫌いな人はこの暑さに嫌気が差しての事だろう。
しかし私は・・・
「・・・はぁ」
私の隣に寄ってくれる人がいなくなる。
こんな寂しいことはない。
毎年の事―――と言えば確かにその通りで、長い間こうして過ごしてきた。
こうなるのもいい加減慣れていてもおかしくはないのだが・・・
「やっぱり、慣れないなぁ」
どうしても、心のどこかに残る寂しさを拭うことは出来なかった。
----------------------------------------------------------------
(・・・ん?)
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
もう陽が落ちている。
ということは、もう洗濯物を取り込まねばならない。
「・・・さて、洗濯物を取り込んで、その後は夕飯の準備かな」
・・・独り言が多くなったな、と最近思うようになった。
ここ数年は特にそうかもしれない。
紫様は夜遅くまで向こうで涼んでいる事だろう。
橙はたまに来る事もあるが、それでもすぐに帰ってしまう。
今夜は、1人で夕飯を食べる事になるだろうな・・・
そう思うと、寂しさがこみ上げてくる。
(あれ、おかしいな・・・何で泣いてるんだろう・・・)
無意識に、涙が出ていた。
「紫様ぁ・・・私は、私は・・・」
気がついたら、私は膝をついて、自分で自分の体を抱きしめていた。
今まで、こんなことはなかった。
寂しさを感じることはあった。
でも、ここまで・・・泣くほどまで寂しいと思った事なんてなかった。
どうして・・・
「あらあら、1人で泣いちゃって。藍らしくもないわね」
不意に、声がした。
「う・・・ぇ・・・?」
私は、少し混乱していた。
「ふふ、1人で寂しかったかしら?かわいいところあるのね」
茶化すように笑っている。
「まだ向こうに居ようと思ってたんだけど、霊夢に追い返されちゃったわ。いつもならそんなこともないのだけれど」
ゆっくりと、紫様が近づいてくる。
「でも、あなたを見たら納得しちゃった」
「紫・・・さま・・・」
そして
「ごめんなさいね。こんな思いをさせるなんて主として失格かしら」
背中から、抱きしめられた。
「紫様・・・」
「いいのよ、何も言わなくても」
「失格だなんて、言わないでください」
「藍・・・」
失格なんてとんでもない。
紫様は、いつまでも・・・
「いつまでも、私の主で居てください。私は、紫様の式ですから」
「・・・藍」
私を呼ぶと、抱きしめる力を少し強めて、
「我慢する事なんてないわ・・・いいのよ、思いっきり泣きなさい」
「・・・え?」
「泣いて・・・これまでの寂しさを全部流しなさい。私が受け止めてあげるわ」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で・・・何かが音を立てて崩れ去った。
「う・・・くっ・・・くぅっ、う、うぁっ、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
私は泣いた。
我を忘れていたと思う。
いつまで泣いていたのかも分からなかった。
とにかく・・・私は泣いていた。
-----------------------------------------------------------------
気がつくと朝になっていた。
隣には・・・紫様が座られていた。
話を聞けば、あの後私は泣き疲れてそのまま寝てしまったようだ。
私が寝た後、紫様が添い寝してくれたらしい。
あの後も私が寂しい思いをしないように、と。
それを聞いて、私はまた涙が出ていた。
でも今度は、寂しさから来るものじゃなくて。
その日から、私はこの季節が少しだけ好きになった。
ありがとう!
でも藍様のフサフサ九尾は夏は心が寒い
夏なのにね
藍様は一人ぼっちじゃないよ
実にモフモフです
ゆかりん優しいよゆかりん