Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

助勢

2014/09/23 22:21:14
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※若干グロい表現があるので注意!














ガチャッ


「お?珍しい顔だな。どうしたんだ?」


「紫様は多忙を極めるため、私が代理で来たのだ。」


「多忙?睡眠の間違いじゃないのか?」


「……まあ、似たようなものだ。」


「ぷ、大変だな、式ってやつも。……で、要件は何だ?今は依頼品の花の水やりで忙しいんだが。」


「博麗の巫女……。」


「!」


「彼女が苦戦を強いられている。」


「……。」


「手を貸しに行ってはくれないか?」


「……承知したぜ。」







「はあ、はあ、はあっ……。」


うっそうと生い茂る森の中、その緑の中にひときわ目立つ赤と白の衣服。


しかし、その衣服は、土埃や血飛沫などで、あちこちがくすんでいた。


「グオオオオオ!!!」


霊夢は、地響きが起こるような音に耳をふさぎながら、眼前を凝視した。


その目線の先には、霊夢の何倍もの背丈と、何倍もの体積を持つ異形の妖怪。


先ほどの音は、その咆哮だった。


「これは、まずいわね……。くっ……う。」


紅白の衣服を身にまとった巫女、博麗霊夢は、左腕に大きく出来た傷をかばいながら、


とうとう膝をついてしまう。


なぜこのような妖怪に挑んでいるのか。発端は、里の賢者の依頼によるものだった。


―――近辺でルールを知らぬ妖怪が里の人間を襲っている。被害も甚大なものだ。―――


いわば、人食い妖怪といったところか。


人食い妖怪といえば、宵闇の妖怪が有名だが、その妖怪は比較的聞き分けがよく、


規約通り里の人間は襲わないだけでなく、しっかりと断れば外来の者でも(腹が減ってなければ)博麗神社まで案内をしてくれる。


しかし、この異形はここに来てからまだ日が浅いらしく、目の前を通る人間を片っ端から、


その大きな体の中に取り込んできたようだ。


すでに里の賢者が再三にもわたる警告をしていたようだが、


今日に至るまで、改善は見られなかった。


それどころか、その賢者すらも襲う始末。


これはもう修正不可能だ。


霊夢は賢者の依頼を聴きいれ、その異形の住み家とされる森の奥深くへと飛んだ。


そして現在に至るのだが……。


「まさか、霊力を吸い取られるとはね……。」


博麗の巫女は妖怪退治のエキスパートだ。そのなかでも霊夢は、他の影響を受けないという、


きわめて特殊な能力を持っていた。


それだというのに、今の形勢は異形の方が圧倒していた。


「オオオオ……、グオオオオオオオ……!!!」


「くっ……、また……!」


原因は、この咆哮だった。


『霊吸の波動』


この異形がかつて居た世界の人々はそう言った。


この咆哮を聞いた者は、気力をはじめとした生物に流れるありとあらゆる力を、吸い取られてしまう。


そして、戦う気力を奪われた戦士は、成す術もなくその腹の中に飲み込まれてしまうという。


まだ戦いに慣れたばかりの戦士や、魔力一辺倒の導師は苦戦しやすい相手、と言われていた。


そして霊夢もまた、例外なく霊力を吸収され、文字通り地に伏していた。


もはや御札を飛ばす霊力も残っていない。


「ガアアア……!」


異形は、対象が抵抗する意思を無くしたと判断をし、その大きな口を開けてレイムに喰らいつこうとする。


「もう、ここまでのようね……。」


霊夢は、目を瞑った。


そして、



霊夢の周りは、






大きな黒い影に覆われてゆく。
















ドゴオオオオオオオオオ!!!







その時だった。


突如響いた轟音に霊夢は目を開けた。


さっきまで目の前に居たはずの異形は、悶絶の声と共に大きく体を仰け反らせ、


異形がいた場所は円状に大きく焼け焦げていた。


―――この“魔法”、まさか!―――


霊夢は上空を見上げた。








青い空、白い雲、その中にひときわ目立つ黒と、白。そして竹ボウキ。左手にはなぜか水差しジョウロ。


魔法使い、霧雨魔理沙は眼下に広がる広大な森の上空をホウキにまたがって飛んでいた。


幻想郷の大賢者、八雲紫の式、八雲藍の懇願によって、いまこうして空に浮かんでいる。


霊夢が苦戦。幻想郷に住まうものには信じられない言葉だが、


魔理沙はなんの困惑もなく平然としている。


百戦錬磨と言われている博麗の巫女。


だがそんな彼女でも苦戦や敗走することだってある。


魔理沙はそれをよく理解していたからだ。


しかし、一見平然としているかのように見えた魔理沙の目には、


やがて別の色が見え始めた。


驚きとも困惑とも、あせりとも違う、それは怒り。


その目先には、図体のデカイ妖怪と、それを前に地に伏す紅白の姿が見えた。


「……チッ!」


魔理沙は舌打ちをしたのち、右手を目の前にかざした。


やがてそこには金色で、八角形をした小さな魔具がポン!という軽快な音とともに現れた。


そして、魔理沙の口がまるで何かを唱えるように高速で動きだす。


それと同時に先ほどの魔具に光が集まって行く。


「八卦炉よ、咆哮せよ!」


    『マスタースパーク』


金色の八角形……ミニ八卦炉から、轟音と共に巨大なレーザーが打ち出された。








霊夢が上空をみると、快晴の空に浮かぶ白黒の物体が目に入った。


間違いない、霧雨魔理沙だ。


最大の親友にして、最大のライバル。


……と彼女は自称している。


体を大きく仰け反らせていた異形は、


やがて体制を立て直し、自らの上空に飛ぶ新しい獲物に目をやった。


そして、大きく口を開け、息をこれまた大きく吸い込み始めた。


あの咆哮への予備動作だ。


「! 魔理沙!気をつけて!」


霊夢の叫びを聞いてなのか、魔理沙はミニ八卦炉をポケットにしまった後、


ホウキを強く握り、異形に向かって猛烈な勢いで突撃を始める。


しかし、魔理沙と異形との距離は遠く離れており、全速力で突撃した魔理沙でも間に合わず、


「グオオオオオオオオオ!!!」


霊夢を苦しめた咆哮、『霊吸の波動』が響き渡った。


「ああっ……!」


霊夢は思わず声をあげた。


しかし、魔理沙は突撃を中断することは無かった。


「グァ!?」


異形もそれには驚きを隠せなかった。


魔理沙は空を飛んだり、魔法を行使する上で魔力を使用する。


もしあの咆哮をまともに受けたのならば、魔理沙は魔法を使うことはおろか、


空を飛ぶことすらできないはず。なのに、魔力を奪われた様子が一切ない。


まるでその咆哮が聞こえないかの如く……。


「驚いたか?」


いつの間にか、魔理沙は異形の目の前、というよりも口の前に来ていた。


「正解はこれだ。」


魔理沙の右手が自らの耳に向かう。そして、何かを示すように指をとんとんと当てる。


そこには、魔理沙のやや小ぶりな耳、そしてその穴にはなにかが詰まっている。


『みみせん』だ。


しかし、図体だけで頭が空っぽそうな異形にそんなものは分からず、


しばらくボーっとしていたようだが、やがて再び大きな口を開け、吸い込みを始めた。


「デカイ口だな。それで人を沢山食べて来たのか?」


「でも、」


「その大きな口が、時には命取りになるんだぜ?」


魔理沙は右ポケットから何かを取り出し、吸い込みを続けている異形の口めがけて放り込んだ。


異形は、突然喉に入ってきた異物を、若干苦しみながらもごくり、と飲み込んだ。


魔理沙はにやりと口元をつり上げた。


そして、右手を前に出し、


パチン


と指を鳴らした。


その瞬間。


ドゴォ!!!


異形の中心、ちょうど胃にあたる部分が爆発した。


「ゴアアアアアアア!!!」


口から血しぶきを吐きながら苦痛の叫びを上げ、異形は地面を揺らしながら倒れた。


この攻撃に、霊夢は似たようなものを思い出した。


     『ディープエコロジカルボム』


手のひらサイズの小瓶が地面に落ちて数秒で爆発する魔理沙の魔法の一つ。


おそらくそれが異形の腹の中で爆発したのだろう。


だが、それは“弾幕ごっこ”という遊びの概念の中の物に過ぎず、


これほどの殺傷力などないはずだった。


そう、これは遊びではない、命がけの戦い。


対妖怪退治用に作られ、煌びやかな名前ともかけ離れたそれは、もはや一つの爆弾に等しかった。


「これで終わりだ。」


魔理沙はミニ八卦炉を再び取り出し、詠唱を始めた。


とたんに光が集まるが、先ほどよりも光が大きい。


「決まりを守れない奴は、ここで生きる資格など無い!」


集まった光は、一瞬のうちに八卦炉の中に収縮され、


まるで爆発するかのように一気に放たれた。


それと同時に魔理沙の周りからキラキラと星の形をした無数の弾幕が放出される。


     『ファイナルスパーク』


魔理沙の得意技にして必殺の奥義だ。


そしてこれもまたいつもの弾幕ごっこに使われるものとは違う、


恐ろしいまでのパワーと殺傷力を秘めた、最大の消滅魔法。


それをまともに受けた異形がどうなったかなど、火を見るより明らかだった。


やがて、異形を覆った光の波動は、徐々に収束してゆく。


その場に、異形の姿は無かった。






「助かったわ、魔理沙……。」


霊夢は負傷した左腕をかばいながらようやく起き上がると、


自らを救ってくれた友人に礼を言う。


しかし、返ってきたのは言葉ではなかった。





バチン!!





破裂音ともとれる音をたてた後、霊夢の体は吹き飛ばされた。


その頬は、灼熱の如くひりひりと熱を持っていた。


「……もし、私が助けに来なかったら、お前はどうなっていた?」


魔理沙はそう言いながら痛む頬へ手を当てて庇う霊夢に歩み寄った。


その表情には、怒りを孕んでいた。


「そもそも、あの妖怪の姿を思い出してみろ。どう考えてもあの大きな口を利用してくるに決まっている。


 それだというのに、前準備もなく、自らの力を過信して……。」


「わ、私は過信してなんて……!」


過信、という言葉にカチンと来たのか、苛立ちを覚えながら言い返す。


しかし、


「ならあのザマは何!?」


魔理沙の怒号で、再び霊夢は黙り込んでしまった。


「私ですら、対処一つであの妖怪を倒すことができたというのに……、


 いい!?あんたは、この幻想郷という世界において大きな優位点を持っているのよ!?


 それなのに、遠吠え一つで術を封じられ、あんな無様な姿を晒して……!





 此処に居たのが私じゃなくて、なんの力ももたない里の人間だったらどうなっていたの!!」





魔理沙の言葉に、霊夢は頭を下した。


その瞬間だった。






パシャパシャパシャ……






霊夢の頭に冷たいものが降り注いだ。


そして、あともう少しで頭に当たるという位置に、何かがごとり、と落ちてきた。


さっきまで魔理沙が左手に持っていたジョウロだ。そして先ほどの冷たいものは水だったのだろう。


「それあげるわ。湖にでも行って頭を冷やしてきなさい、修行不足のグータラ巫女。」


そう言い残して、魔理沙はホウキにまたがり、空へと戻っていった。



その背に、霊夢のすすり泣く声を受けながら。















「おつかれさま。」


「なんだ?もう眠くないのか?」


「おかげさまで。」


「そうか。」


「……まだ博麗の巫女が憎いのね。」


「……。」


「無理もないわね。たしかにあなたの母親を先代の巫女は見捨てたわ。でもそれは」


「仕方がなかった、っていいたいんだろ?」


「そうよ。そして、その子供である霊夢には何の罪もないことも……、」


「……、分かっている、分かっているさ。そんなことは。」


「なら、どうしてあの子に強く当たるの?」


「見ていたのか……。」


「ええ、最初から最後まで『スキマ』で見させてもらったわ。」


「……目の前で見ていたんだ、私は……。母様が、妖怪に食われてゆく様を……。


 私は、忘れられなかった。母様の醜い姿、巫女様の、冷たい表情。」


「霊夢には、霊夢には、あんな人みたいにはなってほしくないの……っ。」
魔理沙は感情的になるといつもの口調じゃなくなると思う。


本当はもっと先まで考えていたはずが、入力している途中で頭から飛んでしまい、こんな尻切れトンボの結末に……。
内容が内容なので、投稿するか迷いましたが、ジェネリックという物があるというのを知って、
こちらに投稿しました。
以下は力量不足で作品内に書入れることができなかった小ネタです。

ジョウロ
じつはただの如雨露ではなく、水が永久に湧き続けるというマジックアイテム。
戦いの最中は、中に水は入っていない。



閲覧ありがとうございました

※9月28日 一部表現に不自然な点を発見したので修正
alsis
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
改行が多すぎて見づらい
話の内容は良かっただけに惜しい
2.alsis削除
>>1さん

コメントありがとうございます。
また、ご指摘ありがとうございます。
まだまだ勝手がわからず改行を多めにしていました。
次の投稿の機会がありましたら貴方の言葉を反映いたします。