ひやりとした空気を頬に感じて眼を覚ます。時計を見ると午前8時。いつもより若干早い目覚めだった。
ベッドからもそもそと這い出た私は、寝ぼけ眼で窓の方を見る。カーテンのスキマから、昨晩閉めたはずの窓がほんの少しだけ開いているのが見えた。どうやら寒さの原因はこれらしい。
「……?」
なぜ閉めたはずの窓が開いているのだろうと疑問を抱きながら、とりあえず窓を閉めようと窓際へ向かう。
「……わ!」
カーテンを開けると、真っ白い景色が私の目に飛び込んできた。遠く向こうに見える湖も、森も、なにもかもが白銀に染まっている。
ほう──と感嘆の溜息を洩らす。窓枠に頬杖をついた私はしばらくの間、寒さも忘れて外の絶景を楽しんでいた。
ふと、屋敷の門が目に留まる。一箇所だけ不自然に、モッコリと雪が積もっている部分がある。あれはなんだろうと考えていると、屋敷から咲夜がシャベルを持って門の所までやってきた。咲夜はなにやら慌てた様子でモッコリを掘り始める。少しすると、人間の頭のようなものが発掘された。
「なんだ、美鈴か」
いつものように門で眠っていたら埋まってしまったのだろう。可哀想に。
雪に埋もれた美鈴を見ていたら、こっちも寒さを思い出した。まだパジャマのままだった私は窓を閉めて着替えを用意し、1Fにある浴場へと向かった。
「あら、失礼」
「いいってことよ」
脱衣場のドアを開けると、なぜか生まれたままの姿で仁王立ちしたレミィが私を迎え入れた。この時間はいつもならベッドの中にいるはずだが、はてさて。
そんなわけで、レミィと一緒にシャワーを浴びる。一つしかないシャワーヘッドを2人で交互に使用するため、正直かなりめんどうだ。私よりも先に体を洗い終わったレミィがバスタブにゆっくりと浸かる。
「ふぅ……」
真っ赤な浴槽に浸かりながら、満足そうに息を洩らすレミィ。私も体を洗い終えたので、レミィの隣に腰を下ろした。
「ところでパチェ、昨日の夜のことなんだけど」
「んー」
悪戯気な口調でレミィが話しかける。
「サンタさんはやって来たかね?」
「サンタが来るのは今日でしょ」
レミィの嬉々とした表情が一瞬で凍りついた。
「そ……そうだったの?」
「ええ」
今日は12月24日、世間で言うところのクリスマス・イヴ。つまり、サンタクロースが来るのは今日の夜中だ。
「そう……そうなの」
浴槽からあがったレミィはフラフラと出て行ってしまった。一体どうしたというのだろう。
しばらくして、私も浴場を後にする。いつもより少し厚めの服に着替えて部屋に戻る。
「レミィったらどうしたのかしら……あ──」
そこでベッドの横にあるものに気がついた。
ベッドの横には、淡い紅色の縞々模様が入った靴下がポテンと置かれていた。靴下の中にはどうやら小さな箱が入っているようだ。
「なるほどね」
さっきのレミィの落ち込みぶりはこれのせいか。朝、窓が少し開いていたのを思い出す。きっとあれも、レミィの演出だったのだろう。
私は靴下から箱を取り出し蓋を開けた。
「わぁ……」
私は感嘆の溜息を洩らす。箱の中には、金色に輝く太陽の意匠のブローチが入っていた。
正直驚いた。レミィがくれた物だとは思えないくらい良いセンスだと、失礼ながら思ってしまう。
きっと、私がいつも帽子につけている月の形のブローチと対になるように選んでくれたのだろう。鏡台の前に行き、さっそく着けてみる。太陽のブローチは、始めから月のブローチとワンセットだったかのように、違和感無く帽子に収まった。
「ふふっ」
私は思わず微笑んだ。勘違いで一日ずれてしまったとはいえ、吸血鬼であるはずのレミィがキリストの聖誕祭の行事に、しかも自らが最も嫌っている太陽を贈り物に選ぶなんて。
わざわざ靴下にプレゼントを入れていたり、窓を少し開けていたりとやけに芸が細かいところを見ると、この日のために色々と調べてくれていたのだろう。しかめっ面でクリスマスについて調べるレミィを思うと、自然と頬が緩んでしまった。
(あわてんぼうね……)
私はクローゼットの中に入れておいた2つの箱を両手に抱えて部屋を出た。きっとレミィはまた眠ってしまっただろう。本当ならばこの時間はレミィにとっては就寝時間なのだから。
レミィの部屋にたどり着いた私は、ドアをそっと開けてベッドに近寄る。レミィは妹と一緒にすぅすぅと寝息を立てている。
部屋の隅に置いてあるゴミ箱から、大きな靴下がはみ出しているのが見えた。私はその靴下を拾い上げて中に箱を詰め、レミィの枕元に静かに置いた。もう一つ用意しておいた箱はフランの枕元へ。ついでに窓もほんの少しだけ開けておいた。
レミィの部屋から戻る途中、咲夜に会った。私の帽子の新しいブローチに気がついた咲夜は「サンタさんからですか?」と聞いた。
「ええ。あわてんぼうのサンタさんから」
2人してくすくすと笑いあう。穏やかに笑う咲夜の首には銀色の装飾が施された首輪がついていた。咲夜は「それでは、また後ほど」と告げるとレミィの部屋へ向かっていった。手には2つの箱を持って。
その日の晩餐──
テーブルには色とりどりの豪華な料理が所狭しと並べられており、席に着いた者達の手元には真っ赤な血のワインが入ったグラスが置かれている。
ニヤリと唇を歪めた小さな領主はワイングラスを手に持つと、ゆっくりと天に掲げた。
それに続いて皆がグラスを持ち上げる。
そして領主の目配せと共にその場にいる全員が、この悪魔達が住まう館にはまったく相応しくないセリフを声高らかに唱え上げた。
『Merry Christmas!!』
私は太陽のブローチ
咲夜は銀の首輪
フランは人形と絵本
レミィは金の指輪と、石の仮面
皆がそれぞれ持ち寄った、サンタクロースのプレゼントを、美鈴がうらやましそうに眺めていた。
ベッドからもそもそと這い出た私は、寝ぼけ眼で窓の方を見る。カーテンのスキマから、昨晩閉めたはずの窓がほんの少しだけ開いているのが見えた。どうやら寒さの原因はこれらしい。
「……?」
なぜ閉めたはずの窓が開いているのだろうと疑問を抱きながら、とりあえず窓を閉めようと窓際へ向かう。
「……わ!」
カーテンを開けると、真っ白い景色が私の目に飛び込んできた。遠く向こうに見える湖も、森も、なにもかもが白銀に染まっている。
ほう──と感嘆の溜息を洩らす。窓枠に頬杖をついた私はしばらくの間、寒さも忘れて外の絶景を楽しんでいた。
ふと、屋敷の門が目に留まる。一箇所だけ不自然に、モッコリと雪が積もっている部分がある。あれはなんだろうと考えていると、屋敷から咲夜がシャベルを持って門の所までやってきた。咲夜はなにやら慌てた様子でモッコリを掘り始める。少しすると、人間の頭のようなものが発掘された。
「なんだ、美鈴か」
いつものように門で眠っていたら埋まってしまったのだろう。可哀想に。
雪に埋もれた美鈴を見ていたら、こっちも寒さを思い出した。まだパジャマのままだった私は窓を閉めて着替えを用意し、1Fにある浴場へと向かった。
「あら、失礼」
「いいってことよ」
脱衣場のドアを開けると、なぜか生まれたままの姿で仁王立ちしたレミィが私を迎え入れた。この時間はいつもならベッドの中にいるはずだが、はてさて。
そんなわけで、レミィと一緒にシャワーを浴びる。一つしかないシャワーヘッドを2人で交互に使用するため、正直かなりめんどうだ。私よりも先に体を洗い終わったレミィがバスタブにゆっくりと浸かる。
「ふぅ……」
真っ赤な浴槽に浸かりながら、満足そうに息を洩らすレミィ。私も体を洗い終えたので、レミィの隣に腰を下ろした。
「ところでパチェ、昨日の夜のことなんだけど」
「んー」
悪戯気な口調でレミィが話しかける。
「サンタさんはやって来たかね?」
「サンタが来るのは今日でしょ」
レミィの嬉々とした表情が一瞬で凍りついた。
「そ……そうだったの?」
「ええ」
今日は12月24日、世間で言うところのクリスマス・イヴ。つまり、サンタクロースが来るのは今日の夜中だ。
「そう……そうなの」
浴槽からあがったレミィはフラフラと出て行ってしまった。一体どうしたというのだろう。
しばらくして、私も浴場を後にする。いつもより少し厚めの服に着替えて部屋に戻る。
「レミィったらどうしたのかしら……あ──」
そこでベッドの横にあるものに気がついた。
ベッドの横には、淡い紅色の縞々模様が入った靴下がポテンと置かれていた。靴下の中にはどうやら小さな箱が入っているようだ。
「なるほどね」
さっきのレミィの落ち込みぶりはこれのせいか。朝、窓が少し開いていたのを思い出す。きっとあれも、レミィの演出だったのだろう。
私は靴下から箱を取り出し蓋を開けた。
「わぁ……」
私は感嘆の溜息を洩らす。箱の中には、金色に輝く太陽の意匠のブローチが入っていた。
正直驚いた。レミィがくれた物だとは思えないくらい良いセンスだと、失礼ながら思ってしまう。
きっと、私がいつも帽子につけている月の形のブローチと対になるように選んでくれたのだろう。鏡台の前に行き、さっそく着けてみる。太陽のブローチは、始めから月のブローチとワンセットだったかのように、違和感無く帽子に収まった。
「ふふっ」
私は思わず微笑んだ。勘違いで一日ずれてしまったとはいえ、吸血鬼であるはずのレミィがキリストの聖誕祭の行事に、しかも自らが最も嫌っている太陽を贈り物に選ぶなんて。
わざわざ靴下にプレゼントを入れていたり、窓を少し開けていたりとやけに芸が細かいところを見ると、この日のために色々と調べてくれていたのだろう。しかめっ面でクリスマスについて調べるレミィを思うと、自然と頬が緩んでしまった。
(あわてんぼうね……)
私はクローゼットの中に入れておいた2つの箱を両手に抱えて部屋を出た。きっとレミィはまた眠ってしまっただろう。本当ならばこの時間はレミィにとっては就寝時間なのだから。
レミィの部屋にたどり着いた私は、ドアをそっと開けてベッドに近寄る。レミィは妹と一緒にすぅすぅと寝息を立てている。
部屋の隅に置いてあるゴミ箱から、大きな靴下がはみ出しているのが見えた。私はその靴下を拾い上げて中に箱を詰め、レミィの枕元に静かに置いた。もう一つ用意しておいた箱はフランの枕元へ。ついでに窓もほんの少しだけ開けておいた。
レミィの部屋から戻る途中、咲夜に会った。私の帽子の新しいブローチに気がついた咲夜は「サンタさんからですか?」と聞いた。
「ええ。あわてんぼうのサンタさんから」
2人してくすくすと笑いあう。穏やかに笑う咲夜の首には銀色の装飾が施された首輪がついていた。咲夜は「それでは、また後ほど」と告げるとレミィの部屋へ向かっていった。手には2つの箱を持って。
その日の晩餐──
テーブルには色とりどりの豪華な料理が所狭しと並べられており、席に着いた者達の手元には真っ赤な血のワインが入ったグラスが置かれている。
ニヤリと唇を歪めた小さな領主はワイングラスを手に持つと、ゆっくりと天に掲げた。
それに続いて皆がグラスを持ち上げる。
そして領主の目配せと共にその場にいる全員が、この悪魔達が住まう館にはまったく相応しくないセリフを声高らかに唱え上げた。
『Merry Christmas!!』
私は太陽のブローチ
咲夜は銀の首輪
フランは人形と絵本
レミィは金の指輪と、石の仮面
皆がそれぞれ持ち寄った、サンタクロースのプレゼントを、美鈴がうらやましそうに眺めていた。
あと咲夜さんのプレゼント…首輪だと!?
美鈴だけプレゼントを誰からも貰ってませんが、その理由は何でしょうか?
明確な理由を書いて置かないと一部の人から反感を食らう原因になる事が
あるので注意したほうが良いですよ。
読んでいて全く時間の無駄でした。個人的には作者が雪に埋もれてしまえばいいのに。と思いました。
が、もっとひどい扱いの作品も他にいっぱいありますからね。
それ以外の部分はとても良かったです。
レミリアのカッコつけきれないとこも微笑ましかった。
と、勝手に思っときます。
レミィの石仮面に誰も突っ込まないのが驚き桃の木。
美鈴がうらやましそうに眺めていた、ならいくらでも取りようがありますし
内容からも特定キャラいじめでないのは明白なのに読者の脊髄反射はいただけません
ただそういう読者も少なからずいるので作者様は配慮するべきなのかも知れません
悪魔がクリスマスしたっていいじゃない、幻想郷だもの!
しかし咲夜さん…チョーカーじゃなくて首輪…だと…!?
美鈴はきっとこのあと皆からプレゼントもらえるんですねw
しかし咲夜さんに首輪…w
おそらくまだ自室には戻っていないとかそんなパターンだと思えます、この感じだと。
レミリアがパチュリーに贈る側というのは珍しいかも。
儚4コマでも雪の中で寝てるのに、美鈴の扱いが悪いとか言い出すのはどうかと。
小悪魔もいないのに美鈴についてだけ書き込んで批判していますし、
美鈴ファンの傾向が如何にひどいかを喧伝してるようなものです。
筆致そのものはかなり悪くないので、新人さんであることも含めて今後に期待、かな。