※一部プチ百合化してます。
嫌いな人はちょっと注意してください。
「まったく・・・しつこいわね。私はこんなとこで死にはしないから大丈夫よ。」
そう言い残して紅白のお姉さんは去って行った。
「強い死体のお姉さん・・・お空を、お願いね・・・」
あたいはそっと呟いた。多分あのお姉さんには聞こえていないだろう。
「お空・・・」
もう1度呟いた時、既にあのお姉さんは見えなくなっていた。
「はぁ、大丈夫かなぁ・・・」
自分で言うのもなんだが、元気娘のあたいがこんなに沈むのも久しぶりだ。
そもそものきっかけは、少し前に山の神様がお空にヤタガラスの力を授けた事にある。
お空は変わってしまった。
最初に見た時、あたいは唖然とした。
胸には大きな赤い眼。
体をも包めそうな大きくて白いマント。
そこに描かれた無数の星。
右腕には銃のような重厚な棒。
新しい力を手に入れたお空は今までにないぐらいはしゃいでいた。
その時の笑顔は今でもはっきりと思い浮かぶ。
あぁ、この笑顔の理由がこんな力を手に入れたことじゃなければ良かったのに。
前までの仕事熱心であたいと一緒に頑張っていたお空は影をひそめてしまった。
今のお空は自分の力を過信している。地上征服なんて出来るはずがない。
それどころか、さとり様かあるいは鬼達に知られたらその時点で終わりなのに。
「あたいがお空を止められたら良いのになぁ・・・」
この時あたいは自分の非力さを恨んだ。
出来れば誰にも知られないうちにお空を元に戻してあげたかった。
でも、それはもう出来ない。あたいの力じゃお空には敵わない。
お空の力はもう手に負える程度のものではなかった。
その熱気にほとんど誰も近付けないぐらい。
だからこうして怨霊を地上に送り、助けを求めた。
あのお姉さんならきっとお空を止めてくれるはずだ。
あたいはもうそこに望みを託すしかなかった。
あたいの知ってるお空は今はいない。
時に一心同体。
時に以心伝心。
そんなお空がいなくなってしまうかもしれない。
永遠に。
そんなことには絶対になってほしくない。
大好きなお空を失いたくない。
たとえ何が起こったとしても。
誰よりも大切な親友（ひと）だから。
何にも代えることは出来ないから。
この身が傷ついたって構わないから。
お願い、戻ってきて・・・お空・・・
「・・・やっぱり、行かなきゃ！」
あたいは灼熱地獄跡の炎の間を抜けていった。
今頃お空とあのお姉さんが段幕を張り合っているのだろう。
あちこちが炎に包まれている。
いつもよりずっと熱いけれど、そこは火焔猫の意地で耐える。
だってお空の為だもの。
炎の熱さなんかに構ってはいられない。
無我夢中で駆け抜ける。
他のことなんて頭に入らない。
とにかくお空の元へ行かなければならない。
あたいの勘がそう言っていた。
「・・・」
奥に行くと、そこにはぐったりとしたお空がいた。
「お空？」
声をかけてみたものの、動かない。
「お空！」
声を張り上げても、返事がない。
だけど今のお空を無理に起こす訳にはいかない。
もし深手を負っていたとしたら大変だから。
いつもだったらこんな時には1発蹴るなりなんなり出来るのに。
あぁ、あたいはまだ今のお空を受け入れきれていないんだ。
まだ「前の」とか「今の」とか言う余裕があったんだ。
こうなったら自然と起きるのを待つしかない。
暫くあたいはお空の隣に座って待つことにした。
あれからどれぐらい経ったんだろう。
お空は未だに起きる気配がない。
「ま・・・まさか死んでないよね？」
あたいは急に不安になり、お空の顔を覗き込んだ。
特に苦しそうな様子ではなかった。
取り敢えず楽な姿勢にしてあげようと思い、あたいはお空を抱きかかえた。
その時、お空の身体からすっと力が抜けたのを感じた。
「・・・そんな！」
あたいは火車だ。
もし死体があれば、それを運ぶのが仕事だ。
もし目の前のお空が死んでいるならば・・・
あたいはそれを運んでいかなければならない。
そんなの嫌だ。
死体運びは楽しいけど、いくらなんでもそんなことは出来ない。
お空が炎の燃料になってしまうなんて耐えられない。
火力を管理するペットがいなくなるとかっていう問題じゃない。
確かに管理する奴の代わりはいるかもしれない。
だけど、お空の代わりはどこを探してもいるはずがない。
「お姉さん・・・確かにあたいはお空を懲らしめてって頼んだね。
でも、やりすぎだよ・・・
死んじゃったら意味がないじゃない。
あたいにだって動ける程度の怪我で済ませてくれたのに。
むしろ、お姉さん達にとって本当に懲らしめるべき相手は・・・あたいなのに。
お空、起きてよ。
死んでないんでしょ？
冗談はもう止めてよ。
約束したよね、ずっと親友だって。
嘘吐いたら針地獄に落とすって。
こんなに呆気ないものなの？
ねぇ、嘘でしょう？
お願い・・・行かないで・・・
何もしないから、戻って来て・・・お願いだから・・・」
もう前のお空でも今のお空でも構わなかった。
目の前のお空が目を覚ましてくれれば、それで良かった。
あたいはやりすぎたのかもしれない。
こんなことになるんだったら、多少危険を冒してもあたいが自分で懲らしめるべきだった。
「お空・・・」
後悔の念で一杯になった。
「何で起きないの・・・うぅっ・・・」
もう1度お空を抱きかかえると、自然と涙が零れ落ちた。
「・・・いい加減にしてよ！冗談がキツ過ぎるよ！」
もはやこの時のあたいは軽く情緒不安定になっていた。
「お空・・・お空！」
あたいは堪えきれなくなって、お空を強く抱きしめた。
拭わなかった涙がひとしずく、お空の顔にかかった。
「・・・うにゅ・・・お燐？」
「・・・！」
その時、お空の目が開いた。
あたいはその驚きを声に出すことすら出来なかった。
「どうしたの・・・？何で泣いてるの、お燐？」
起き上がったお空は何も知らない。
さっきまでのあたいのことはきっと何も知らないはずだ。
「良かった・・・生きてた・・・うっ・・・」
安心したせいか、更に涙が溢れてきた。
「・・・？」
「うわぁぁぁぁぁん！」
あたいは予想もしなかった勢いでお空に抱きついた。
「お燐・・・」
「お空・・・良かった・・・本当に・・・うっ・・・」
「・・・」
お空は何が何だか理解できないままあたいの頭をそっと撫でてくれた。
その感触がなんとなく心地よかった。
「ていうかさ、『生きてた』ってどういう意味？」
「だってさっきいくら呼んでも答えなかったから・・・」
「あ、ごめん。その時多分寝てたわ。」
「・・・え？」
「あの巫女との戦いで疲れちゃって。
もしかして大分時間経ってた？」
「・・・」
あたいの手に力が入っていくのを感じた。
「ちょ、お燐？私なんか変な事言った！？」
お空は相変わらずわかっていない。
「・・・お空の馬鹿っ！！」
ばっちーん
「痛っ・・・いきなりビンタなんて酷いよ！」
「今まであたいがどんだけ心配してきたと思ってるの！」
「そんな心配する程の怪我はしてないって・・・」
「でもずっと待ってても起きなかったからてっきり死んだかと・・・」
「そ、それこそ酷いよっ！」
「いやぁ、まぁ。
でも、無事みたいで何よりだね。」
「あの巫女を呼び込んだのはお燐のくせに・・・」
「えへへ。」
いつの間にあたいは余裕を取り戻していたらしい。
「だって最近のお空、前と違うみたいで・・・」
「え、そう？私は核の力を手に入れた事以外は・・・」
「あるよ！地上征服しようとしてたでしょ？」
「・・・そうだっけ？」
「・・・」
流石お空、本当に鳥頭だ。
しかしまさか自分の野望まで忘れるなんて、予想外だった。
「でもこれで前のお空に戻ってくれるみたいだし、一件落着だね。」
「お燐・・・」
突然お空はあたいの顔を覗き込んだ。
「何？」
「たとえ核の力があっても無くても・・・」
「？」
「・・・私は私だから。」
「・・・！」
どくん、と1回だけ心臓が高鳴った。
考えてみればそうだ。あたいはお空の本質を見失いかけていた。
力を得ても、結局お空であることに変わりはない。
暴走しかけてはいたものの、それだって結局「お空」だった。
「そう、だね・・・」
あたいはそっとお空に笑いかけた。
＊ ＊ ＊
あたいとお空は親友だ。
さとり様のペットになって以来、ずっと。
その友情はこれからもずっと続くだろう。
もうあたいは惑わされない。
目の前にいるお空は、紛れもなく「お空」であることに。
嫌いな人はちょっと注意してください。
「まったく・・・しつこいわね。私はこんなとこで死にはしないから大丈夫よ。」
そう言い残して紅白のお姉さんは去って行った。
「強い死体のお姉さん・・・お空を、お願いね・・・」
あたいはそっと呟いた。多分あのお姉さんには聞こえていないだろう。
「お空・・・」
もう1度呟いた時、既にあのお姉さんは見えなくなっていた。
「はぁ、大丈夫かなぁ・・・」
自分で言うのもなんだが、元気娘のあたいがこんなに沈むのも久しぶりだ。
そもそものきっかけは、少し前に山の神様がお空にヤタガラスの力を授けた事にある。
お空は変わってしまった。
最初に見た時、あたいは唖然とした。
胸には大きな赤い眼。
体をも包めそうな大きくて白いマント。
そこに描かれた無数の星。
右腕には銃のような重厚な棒。
新しい力を手に入れたお空は今までにないぐらいはしゃいでいた。
その時の笑顔は今でもはっきりと思い浮かぶ。
あぁ、この笑顔の理由がこんな力を手に入れたことじゃなければ良かったのに。
前までの仕事熱心であたいと一緒に頑張っていたお空は影をひそめてしまった。
今のお空は自分の力を過信している。地上征服なんて出来るはずがない。
それどころか、さとり様かあるいは鬼達に知られたらその時点で終わりなのに。
「あたいがお空を止められたら良いのになぁ・・・」
この時あたいは自分の非力さを恨んだ。
出来れば誰にも知られないうちにお空を元に戻してあげたかった。
でも、それはもう出来ない。あたいの力じゃお空には敵わない。
お空の力はもう手に負える程度のものではなかった。
その熱気にほとんど誰も近付けないぐらい。
だからこうして怨霊を地上に送り、助けを求めた。
あのお姉さんならきっとお空を止めてくれるはずだ。
あたいはもうそこに望みを託すしかなかった。
あたいの知ってるお空は今はいない。
時に一心同体。
時に以心伝心。
そんなお空がいなくなってしまうかもしれない。
永遠に。
そんなことには絶対になってほしくない。
大好きなお空を失いたくない。
たとえ何が起こったとしても。
誰よりも大切な親友（ひと）だから。
何にも代えることは出来ないから。
この身が傷ついたって構わないから。
お願い、戻ってきて・・・お空・・・
「・・・やっぱり、行かなきゃ！」
あたいは灼熱地獄跡の炎の間を抜けていった。
今頃お空とあのお姉さんが段幕を張り合っているのだろう。
あちこちが炎に包まれている。
いつもよりずっと熱いけれど、そこは火焔猫の意地で耐える。
だってお空の為だもの。
炎の熱さなんかに構ってはいられない。
無我夢中で駆け抜ける。
他のことなんて頭に入らない。
とにかくお空の元へ行かなければならない。
あたいの勘がそう言っていた。
「・・・」
奥に行くと、そこにはぐったりとしたお空がいた。
「お空？」
声をかけてみたものの、動かない。
「お空！」
声を張り上げても、返事がない。
だけど今のお空を無理に起こす訳にはいかない。
もし深手を負っていたとしたら大変だから。
いつもだったらこんな時には1発蹴るなりなんなり出来るのに。
あぁ、あたいはまだ今のお空を受け入れきれていないんだ。
まだ「前の」とか「今の」とか言う余裕があったんだ。
こうなったら自然と起きるのを待つしかない。
暫くあたいはお空の隣に座って待つことにした。
あれからどれぐらい経ったんだろう。
お空は未だに起きる気配がない。
「ま・・・まさか死んでないよね？」
あたいは急に不安になり、お空の顔を覗き込んだ。
特に苦しそうな様子ではなかった。
取り敢えず楽な姿勢にしてあげようと思い、あたいはお空を抱きかかえた。
その時、お空の身体からすっと力が抜けたのを感じた。
「・・・そんな！」
あたいは火車だ。
もし死体があれば、それを運ぶのが仕事だ。
もし目の前のお空が死んでいるならば・・・
あたいはそれを運んでいかなければならない。
そんなの嫌だ。
死体運びは楽しいけど、いくらなんでもそんなことは出来ない。
お空が炎の燃料になってしまうなんて耐えられない。
火力を管理するペットがいなくなるとかっていう問題じゃない。
確かに管理する奴の代わりはいるかもしれない。
だけど、お空の代わりはどこを探してもいるはずがない。
「お姉さん・・・確かにあたいはお空を懲らしめてって頼んだね。
でも、やりすぎだよ・・・
死んじゃったら意味がないじゃない。
あたいにだって動ける程度の怪我で済ませてくれたのに。
むしろ、お姉さん達にとって本当に懲らしめるべき相手は・・・あたいなのに。
お空、起きてよ。
死んでないんでしょ？
冗談はもう止めてよ。
約束したよね、ずっと親友だって。
嘘吐いたら針地獄に落とすって。
こんなに呆気ないものなの？
ねぇ、嘘でしょう？
お願い・・・行かないで・・・
何もしないから、戻って来て・・・お願いだから・・・」
もう前のお空でも今のお空でも構わなかった。
目の前のお空が目を覚ましてくれれば、それで良かった。
あたいはやりすぎたのかもしれない。
こんなことになるんだったら、多少危険を冒してもあたいが自分で懲らしめるべきだった。
「お空・・・」
後悔の念で一杯になった。
「何で起きないの・・・うぅっ・・・」
もう1度お空を抱きかかえると、自然と涙が零れ落ちた。
「・・・いい加減にしてよ！冗談がキツ過ぎるよ！」
もはやこの時のあたいは軽く情緒不安定になっていた。
「お空・・・お空！」
あたいは堪えきれなくなって、お空を強く抱きしめた。
拭わなかった涙がひとしずく、お空の顔にかかった。
「・・・うにゅ・・・お燐？」
「・・・！」
その時、お空の目が開いた。
あたいはその驚きを声に出すことすら出来なかった。
「どうしたの・・・？何で泣いてるの、お燐？」
起き上がったお空は何も知らない。
さっきまでのあたいのことはきっと何も知らないはずだ。
「良かった・・・生きてた・・・うっ・・・」
安心したせいか、更に涙が溢れてきた。
「・・・？」
「うわぁぁぁぁぁん！」
あたいは予想もしなかった勢いでお空に抱きついた。
「お燐・・・」
「お空・・・良かった・・・本当に・・・うっ・・・」
「・・・」
お空は何が何だか理解できないままあたいの頭をそっと撫でてくれた。
その感触がなんとなく心地よかった。
「ていうかさ、『生きてた』ってどういう意味？」
「だってさっきいくら呼んでも答えなかったから・・・」
「あ、ごめん。その時多分寝てたわ。」
「・・・え？」
「あの巫女との戦いで疲れちゃって。
もしかして大分時間経ってた？」
「・・・」
あたいの手に力が入っていくのを感じた。
「ちょ、お燐？私なんか変な事言った！？」
お空は相変わらずわかっていない。
「・・・お空の馬鹿っ！！」
ばっちーん
「痛っ・・・いきなりビンタなんて酷いよ！」
「今まであたいがどんだけ心配してきたと思ってるの！」
「そんな心配する程の怪我はしてないって・・・」
「でもずっと待ってても起きなかったからてっきり死んだかと・・・」
「そ、それこそ酷いよっ！」
「いやぁ、まぁ。
でも、無事みたいで何よりだね。」
「あの巫女を呼び込んだのはお燐のくせに・・・」
「えへへ。」
いつの間にあたいは余裕を取り戻していたらしい。
「だって最近のお空、前と違うみたいで・・・」
「え、そう？私は核の力を手に入れた事以外は・・・」
「あるよ！地上征服しようとしてたでしょ？」
「・・・そうだっけ？」
「・・・」
流石お空、本当に鳥頭だ。
しかしまさか自分の野望まで忘れるなんて、予想外だった。
「でもこれで前のお空に戻ってくれるみたいだし、一件落着だね。」
「お燐・・・」
突然お空はあたいの顔を覗き込んだ。
「何？」
「たとえ核の力があっても無くても・・・」
「？」
「・・・私は私だから。」
「・・・！」
どくん、と1回だけ心臓が高鳴った。
考えてみればそうだ。あたいはお空の本質を見失いかけていた。
力を得ても、結局お空であることに変わりはない。
暴走しかけてはいたものの、それだって結局「お空」だった。
「そう、だね・・・」
あたいはそっとお空に笑いかけた。
＊ ＊ ＊
あたいとお空は親友だ。
さとり様のペットになって以来、ずっと。
その友情はこれからもずっと続くだろう。
もうあたいは惑わされない。
目の前にいるお空は、紛れもなく「お空」であることに。
この空燐可愛すぎです！