黒と白の服を着てる彼女は今日も、紅魔館の門番を倒したコトを自慢気に話す。
「いや、な。あいつがスペルカード使わないで本気で殴りかかってきたから零距離でマスタースパークを」
「……流石に美鈴が気の毒だわ」
「これで124勝1敗だぜ」
「1敗してるじゃない。どうして負けたの?」
「……無理矢理突っ切ろうとしたらハイキックで蹴落とされたんだ。酷いぜ」
「自業自得よ」
黄色い髪の彼女の頭には、私には理解できない恋符が浮かんでいるのだろう。
「ブレイジングスターで突っ込みつつファイナルマスタースパークを放つ!これで誰にも負けないぜ!!」
「そんな傍迷惑なスペルを使おうとするなら、私は涙を堪えて貴女を殺すわ」
「まて、わかった。考え直すから用意した日符を片付けてくれ!頼むから!!」
「……大体、そんな無茶なスペルを使ったら貴女の負担も半端じゃないのよ?まったくもう……」
「心配してくれてんのか?ふっふっふ、可愛い奴だぜ」
「日&月符『ロイヤル――」
「悪かった!!頼むからやめてくれ!!」
*
私は随分、彼女に憧れていて。彼女と同じように箒で空を飛んでみようと考えた。
「小悪魔、まだ離しちゃダメよ…!まだバランスが……!!」
「大丈夫、まだ離してないですよー」
「本当?……あ、ちょ、キャアア!!」
(少女転倒中。。。)
「…嘘吐き」
「離さなきゃ練習にならないでしょう」
“どうしても、バランスが上手く取れない”と。泣きが入っている私はどうみてもいつもの私だった。
*
「どうした中国!その程度か!?」
「くっ…!!中国って、言うなぁ!!!」
黒と白の服を着ている彼女の声はまるで、いつもの通りハシャいで浮かれている
子供のように甲高くて柔らかで。風も雲も無い今日の月夜みたいだ。
「よくもまぁ、飽きないわね」
「でもパチュリー様、戦ってる黒白を見るの好きですよね」
「自分で戦うのは真っ平御免だけど――」
「――私は彼女のように、空を駆け回るような飛び方は出来ないから」
「………パチュリー様?」
「時々妬ましくなるくらい、羨ましいわ。魔理沙にはどんな風景が見えているのかしら―――」
*
「貴女の戦い方を見ていると、貴女自身が星屑みたいに見えるわ」
「…誉め言葉だよな?」
「勿論よ。それでね―――」
私は尋ねた。
『星屑の一つの気分はどんな感じ?』
彼女は笑って、私の手を取った。
「すぐ教えてやるぜ」
そして無理矢理に私を抱き寄せて、彼女はいつも通り箒に跨って。
換気のために開けて置いた図書館の窓から―――
―――夜空へ、走り出した
―――風を超えて、全てを置いてけぼりにする速度で
「パチュリー、わかるだろ?」
「………!」
私は返事も出来ずに、小さく頷いた。彼女の体にしがみ付きながら、初めて見る世界を脳裏に焼き付けながら。
嗚呼、ようやく貴女の見ている世界に少しだけ触れられた。
『星屑の一つの気分はこんな感じ』