グー
あぅー、お腹すいたー。
この前仕入れた食料は昨日食べ終えちゃったから、何も無いのよねー。
ホントは狩りに行かなきゃならないんだけど、今日は朝から激しい雨が降り続いてるし
お外に出たくないなー。こんな日は髪がぺたんこになって不快なのよー。
グー
それでもお腹が鳴る。
はぁ・・・仕方ないわねー。
メンドくさいけど空腹にはかなわないわー。
外が暗くなり始めた頃、私はポンチョをはおって食べ物を探しに出かけた。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
獲物はなかなか見付からなかった。
こんな雨だもん。みんなお家から出たくないわよねー
ふよふよとあてどなく飛んでいたら、随分遠くまで来てしまった。
初めて来る場所だ。
向こう岸が見えないくらい大きな川が流れている。折からの大雨で氾濫してるみたい。
う~ん、お魚は・・・獲れそうもないわねー。
諦めて別の場所を探そうを踵を返した時、ゴウゴウと濁流が荒れ狂う音に混じって
悲しげな泣き声が聞こえた。
よく見ると、こんな場所には不似合いな豪華過ぎる着物を着た女の人が川岸に佇んでいた。
川向こうをじっと見つめたまま、悲痛な声で泣いている。
私は彼女の方に飛んでいって、こう言った。
「あなたは食べても良い人類?」
本気で食べるつもりじゃないのよー?私も最近じゃ滅多に人を食べないしねー。
でも一応妖怪なんだし、この台詞だけは言わなきゃいけないと思うのよー。
女の人は私を見てビックリしているみたいだったけど、小さな声でこう答えた。
「?私は人ではありませぬ」
人じゃないのかー。私と同じ妖怪かしら?
「あなたは一体何をしてるのー?」
こんな雨の中をふよふよしてる私も変だけど、この女の人も変よねー。
「今宵は、我が愛しの殿とお会い出来る約束の夜なのです。」
「じゃあどうして泣いてるのよー?」
「雨で川が氾濫して・・・渡ることができませぬ」
天気が良ければ川を渡って会うことが出きるのだけど、
雨の日は渡れないと決められてるのだそう。
「年に一度の逢瀬の日だというのに、この雨・・・あぁ・・・殿・・・殿・・・」
女の人はさめざめと泣いている。仕方ないわねー
「そんなの飛んで渡れば良いわー。私が連れて行ってあげるわよー」
「ああ、なんとご親切なお申し出、誠に嬉しゅうございますれども・・・」
あらー?まだ何か問題でもあるのかしらー?
「ええ、実は・・・」
話を聞くと、テンテー?という神様が川を見張っていて、
この女の人がこっそり渡らないよう目を光らせてるらしい。
「あー、そーなのかー」
「お気持ちは・・・有り難く頂戴いたしまする・・・」
女の人はそう言って寂しげに笑った。
楽しい笑顔じゃない。悲しさを誤魔化すための笑顔よね。
・・・でも!まだ諦めるのは早いわよー?
だって、私は“宵闇の妖怪”なんだからー!!
「じゃあ、これならどおー?」
私は闇を展開して見せた。
「まあ・・・これは!」
私の闇は完全な闇。中に入ってしまえば外からは絶対に見えないし、
それに、こんな月も星も出ていない夜には、周囲の闇に溶け込んで
そこに闇があることさえ誰も気付かないのよー
「なんて素晴らしい!これならさしもの天帝も見つけること叶わぬでしょう」
そう言って、女の人は初めて心からの笑顔を見せた。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
こうして私は、女の人を背負って荒れ狂う濁流の上を横断した。
川は思った以上に幅があったけど、テンテー?にも誰にも見付かることはなく、
無事向こう岸に着いた。さっすが私の闇!カンペキよねー!
・・・実は、私にも外の景色がみえないので、ちゃんと着くか心配だったんだけど、
まっすぐ飛べばいいだけだから簡単だったわー
向こう岸には、男の人が涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら立ち尽くしていた。
女の人同様、豪華な着物を着ている。こういうの何処で売ってるのかな?
さあ、闇を解除して、感動のご対面よー
「ああ、殿!」
女の人は私の背中から降りると、男の人に駆け寄って抱きついた。
「?!姫!姫ではないか!!」
「殿、お会いしとうございました」
「わしも会いたかったぞ」
泣きながら固く抱き合う二人。
これで大丈夫よねー
私は食べ物を探さないといけないし、もう行かなきゃー
「じゃあ私は行くわねー」
そう言って飛び立とうとすると、男の人に引き止められてしまった。
「あ!しばし待たれよ」
えー?まだ何か用かしらー?
「なあにー?」
「この度はひとかたならぬご恩を賜った。かたじけない。」
「有難うございまする。感謝の言葉もございません」
「いーのよー。用はそれだけ?もう行っていい?」
「そのような訳にはいきませぬ。お礼をさせてくだされ」
お礼?何かくれるのかしらー?
グー
またお腹が鳴った・・・
「じゃあ食べ物がいいわー。お腹ぺこぺこなのよー」
「食べ物ですか・・・」
二人は顔を見合わせて何か相談している。
「申し訳ない。食べ物は無いのです。代わりにこれを・・・」
そう言って男の人はかけていた首飾りをくれた。
「この品を売って、食料にしてくだされ」
首飾りには見たこともないようなキレイな石が付いていた。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
もらった首飾りを持って香霖堂に行ったら、大変な騒ぎになった。
「ルーミア!この首飾りを一体何処で?!」
「なんでもいいから、食べ物ちょうだい~。お腹ペコペコなのよ~」」
「魔理沙、奥に肉があるから持ってきてやってくれ」
「よしきた!」
「何?何~?貴重品なの、これ?」
香霖堂には魔理沙と霊夢がいて、興味津々で話にくいついてきた。
「ほらルーミア、肉だぜ」
「お、お肉ー!(ガブリ)」
「わ!お前、全部持ってきたのか?!」
「ケチケチするなよ、霖之助。こりゃ、とてつもない値打ち物なんだろ?」
「そうよね!凄いキレイだし、こんなに大きいし。ダイヤモンドかしら?」
「いや・・・これは地球上のどんな鉱物とも違う。未知の宝石だ!」
「「未知の宝石~?!」」
三人してなんだか色々言ってたけど、私はお肉に夢中でほとんど聞いてなかった。
ガツガツ、お肉美味しいー!
いつの間にか、竹林のお屋敷のお姫様とお医者さんが呼び出されていた。
「・・・」
「どうですか輝夜さん?なんだか判りますか?」
「・・・月の品物ではないわね。永琳、あなたも見る?」
「それでは、ちょっと拝見・・・そうですね。月で採れる鉱物ではありませんね」
「おいおい!地球でもなくて月でもないって、なんなんだこれは?!」
「ルーミア、これをどこで手に入れたのか教えなさいよ」
お肉を食べ終えて一息ついた私は、事の経緯を説明した。
「なんだそりゃ?」
「外星人・・・かしらね?」
「あなた、一体どこに行ってたの?」
そんな事聞かれても、私にだってわからないわー
「とにかくだ、残念ながらうちにはこれを買い取れるだけの資金が無い」
「えー?お肉がいっぱい買えると思ったのにー」
買ってもらえないと知って、私はちょっと悲しくなった。
「ん~、こりゃ紫向けの案件じゃないのか?」
「うん、それがいいだろうな」
「私、呼んでくるわ!」
結局、首飾りの事はスキマ妖怪の紫さんに一任することにした。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
そんなことがあったなんてすっかり忘れかけていた頃、紫さんが私のお家にやってきた。
「ルーミア、待たせたわね。外の世界のサザビーズに出品してたのよ」
サザ・・・ビ?・・・しゅっぴん?
何を言ってるのかよくわからなかったけど、
紫さんは私に、信じられないくらいたくさんのお金をくれた。
積み上げると、お家の壁一面がすっかり隠れてしまうくらいのお金だ。
紫さんはニッコリ笑って、こう言った。
「これで毎日お肉が食べられるわよ?」
お肉!お肉!!毎日お肉が食べられる!!
そう思ったら、早くもヨダレが垂れてきた。
あぅー、お腹すいたー。
この前仕入れた食料は昨日食べ終えちゃったから、何も無いのよねー。
ホントは狩りに行かなきゃならないんだけど、今日は朝から激しい雨が降り続いてるし
お外に出たくないなー。こんな日は髪がぺたんこになって不快なのよー。
グー
それでもお腹が鳴る。
はぁ・・・仕方ないわねー。
メンドくさいけど空腹にはかなわないわー。
外が暗くなり始めた頃、私はポンチョをはおって食べ物を探しに出かけた。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
獲物はなかなか見付からなかった。
こんな雨だもん。みんなお家から出たくないわよねー
ふよふよとあてどなく飛んでいたら、随分遠くまで来てしまった。
初めて来る場所だ。
向こう岸が見えないくらい大きな川が流れている。折からの大雨で氾濫してるみたい。
う~ん、お魚は・・・獲れそうもないわねー。
諦めて別の場所を探そうを踵を返した時、ゴウゴウと濁流が荒れ狂う音に混じって
悲しげな泣き声が聞こえた。
よく見ると、こんな場所には不似合いな豪華過ぎる着物を着た女の人が川岸に佇んでいた。
川向こうをじっと見つめたまま、悲痛な声で泣いている。
私は彼女の方に飛んでいって、こう言った。
「あなたは食べても良い人類?」
本気で食べるつもりじゃないのよー?私も最近じゃ滅多に人を食べないしねー。
でも一応妖怪なんだし、この台詞だけは言わなきゃいけないと思うのよー。
女の人は私を見てビックリしているみたいだったけど、小さな声でこう答えた。
「?私は人ではありませぬ」
人じゃないのかー。私と同じ妖怪かしら?
「あなたは一体何をしてるのー?」
こんな雨の中をふよふよしてる私も変だけど、この女の人も変よねー。
「今宵は、我が愛しの殿とお会い出来る約束の夜なのです。」
「じゃあどうして泣いてるのよー?」
「雨で川が氾濫して・・・渡ることができませぬ」
天気が良ければ川を渡って会うことが出きるのだけど、
雨の日は渡れないと決められてるのだそう。
「年に一度の逢瀬の日だというのに、この雨・・・あぁ・・・殿・・・殿・・・」
女の人はさめざめと泣いている。仕方ないわねー
「そんなの飛んで渡れば良いわー。私が連れて行ってあげるわよー」
「ああ、なんとご親切なお申し出、誠に嬉しゅうございますれども・・・」
あらー?まだ何か問題でもあるのかしらー?
「ええ、実は・・・」
話を聞くと、テンテー?という神様が川を見張っていて、
この女の人がこっそり渡らないよう目を光らせてるらしい。
「あー、そーなのかー」
「お気持ちは・・・有り難く頂戴いたしまする・・・」
女の人はそう言って寂しげに笑った。
楽しい笑顔じゃない。悲しさを誤魔化すための笑顔よね。
・・・でも!まだ諦めるのは早いわよー?
だって、私は“宵闇の妖怪”なんだからー!!
「じゃあ、これならどおー?」
私は闇を展開して見せた。
「まあ・・・これは!」
私の闇は完全な闇。中に入ってしまえば外からは絶対に見えないし、
それに、こんな月も星も出ていない夜には、周囲の闇に溶け込んで
そこに闇があることさえ誰も気付かないのよー
「なんて素晴らしい!これならさしもの天帝も見つけること叶わぬでしょう」
そう言って、女の人は初めて心からの笑顔を見せた。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
こうして私は、女の人を背負って荒れ狂う濁流の上を横断した。
川は思った以上に幅があったけど、テンテー?にも誰にも見付かることはなく、
無事向こう岸に着いた。さっすが私の闇!カンペキよねー!
・・・実は、私にも外の景色がみえないので、ちゃんと着くか心配だったんだけど、
まっすぐ飛べばいいだけだから簡単だったわー
向こう岸には、男の人が涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら立ち尽くしていた。
女の人同様、豪華な着物を着ている。こういうの何処で売ってるのかな?
さあ、闇を解除して、感動のご対面よー
「ああ、殿!」
女の人は私の背中から降りると、男の人に駆け寄って抱きついた。
「?!姫!姫ではないか!!」
「殿、お会いしとうございました」
「わしも会いたかったぞ」
泣きながら固く抱き合う二人。
これで大丈夫よねー
私は食べ物を探さないといけないし、もう行かなきゃー
「じゃあ私は行くわねー」
そう言って飛び立とうとすると、男の人に引き止められてしまった。
「あ!しばし待たれよ」
えー?まだ何か用かしらー?
「なあにー?」
「この度はひとかたならぬご恩を賜った。かたじけない。」
「有難うございまする。感謝の言葉もございません」
「いーのよー。用はそれだけ?もう行っていい?」
「そのような訳にはいきませぬ。お礼をさせてくだされ」
お礼?何かくれるのかしらー?
グー
またお腹が鳴った・・・
「じゃあ食べ物がいいわー。お腹ぺこぺこなのよー」
「食べ物ですか・・・」
二人は顔を見合わせて何か相談している。
「申し訳ない。食べ物は無いのです。代わりにこれを・・・」
そう言って男の人はかけていた首飾りをくれた。
「この品を売って、食料にしてくだされ」
首飾りには見たこともないようなキレイな石が付いていた。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
もらった首飾りを持って香霖堂に行ったら、大変な騒ぎになった。
「ルーミア!この首飾りを一体何処で?!」
「なんでもいいから、食べ物ちょうだい~。お腹ペコペコなのよ~」」
「魔理沙、奥に肉があるから持ってきてやってくれ」
「よしきた!」
「何?何~?貴重品なの、これ?」
香霖堂には魔理沙と霊夢がいて、興味津々で話にくいついてきた。
「ほらルーミア、肉だぜ」
「お、お肉ー!(ガブリ)」
「わ!お前、全部持ってきたのか?!」
「ケチケチするなよ、霖之助。こりゃ、とてつもない値打ち物なんだろ?」
「そうよね!凄いキレイだし、こんなに大きいし。ダイヤモンドかしら?」
「いや・・・これは地球上のどんな鉱物とも違う。未知の宝石だ!」
「「未知の宝石~?!」」
三人してなんだか色々言ってたけど、私はお肉に夢中でほとんど聞いてなかった。
ガツガツ、お肉美味しいー!
いつの間にか、竹林のお屋敷のお姫様とお医者さんが呼び出されていた。
「・・・」
「どうですか輝夜さん?なんだか判りますか?」
「・・・月の品物ではないわね。永琳、あなたも見る?」
「それでは、ちょっと拝見・・・そうですね。月で採れる鉱物ではありませんね」
「おいおい!地球でもなくて月でもないって、なんなんだこれは?!」
「ルーミア、これをどこで手に入れたのか教えなさいよ」
お肉を食べ終えて一息ついた私は、事の経緯を説明した。
「なんだそりゃ?」
「外星人・・・かしらね?」
「あなた、一体どこに行ってたの?」
そんな事聞かれても、私にだってわからないわー
「とにかくだ、残念ながらうちにはこれを買い取れるだけの資金が無い」
「えー?お肉がいっぱい買えると思ったのにー」
買ってもらえないと知って、私はちょっと悲しくなった。
「ん~、こりゃ紫向けの案件じゃないのか?」
「うん、それがいいだろうな」
「私、呼んでくるわ!」
結局、首飾りの事はスキマ妖怪の紫さんに一任することにした。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
そんなことがあったなんてすっかり忘れかけていた頃、紫さんが私のお家にやってきた。
「ルーミア、待たせたわね。外の世界のサザビーズに出品してたのよ」
サザ・・・ビ?・・・しゅっぴん?
何を言ってるのかよくわからなかったけど、
紫さんは私に、信じられないくらいたくさんのお金をくれた。
積み上げると、お家の壁一面がすっかり隠れてしまうくらいのお金だ。
紫さんはニッコリ笑って、こう言った。
「これで毎日お肉が食べられるわよ?」
お肉!お肉!!毎日お肉が食べられる!!
そう思ったら、早くもヨダレが垂れてきた。
「そーきたかー!」と好印象だったのですが、その後がちょっと・・・。
お礼に貰った貴重品を換金したお金で肉を買ってルーミアほくほく。
彼女の活躍は誰も知らない。という程度で終わらせた方が良かったと
思います。
サザビーズとか明らかに蛇足ですし、これだけ貴重なアイテムを前に
理由も無く蒐集家の魔理沙が食指を動かさないのも不自然ですから。
るみゃ子が毎日お肉食べれて幸せなら俺も幸せだ。
ラストについてのコメントが多いようですね。
やはり、ルーミアが幸せになった所で、私自身が一人で満足してしまったのはマズかった。
作者がではなく、読者を満足させることをもっと考えなくてはいけませんね。精進します。