※初投稿、および原作未プレイです。登場人物の性格・口調違和感注意。
私ことアリス・マーガトロイドは近頃とても不愉快である。
魔法の森で隠遁に近い生活を送っているとはいえ、流行にはそれなりに気を配っていたはずなのだけれど。
それに気付くのが遅かったせいで、今ではいいカモにされている。
「……ぅん?」
ぼんやりとした意識の中に、蝉の声が届いてくる。薄く眼をひらくと、視界の隅に境内を掃除している巫女の姿。
そうだった、霊夢に誘われて神社に遊びに来ていたんだっけ……。
少ししびれていた右手のほうを見ると、飲みかけのお茶がぽつんと残されている。出されたときは湯気が立ち上っていたのに、今は見る影もない。
どうやら少し眠っていたらしい。
ふっと息を吐いて、はたと気付く違和感。
まさかと思いながら、そこをそっと指でなぞってみる。
乾いたくちびるに感じる微かな濡れた痕。
くそう、やられた!
先ほどから背中しか見せない巫女を睨みつける。
繰り返し同じ場所を箒で掃いているため、玉砂利がはけて今はもう穴をほりはじめていた。
れ、霊夢まで、そんな。
そう、これがなにも最初のことではなかった。
はじめて気がついたのは、魔理沙の家にお呼ばれされたとき。
あの日もぽかぽかとした良い天気で、魔道書を読んでいる間に居眠りをしてしまった。
気持ちのよいまどろみの中で感じる違和感。
なにかしらと、そっと瞼をあげると、視界いっぱいに広がる魔理沙の顔。
ぎゅっと目を瞑って、顔を真っ赤にしながら必死といった感じで私に口づけている。
なにこれ? ……う~ん、なんか面倒になりそうだから眠っておこう。
そのときの私の気持ちをどうか察してほしい。
翌日、借りていた本片手に、このことを相談してみようかと知識の魔女パチュリーに会いに出かけた。
はじめはいつもの関心のない顔で話を聞いていた彼女だけれど、内容が核心に近づくにつれて徐々に目が吊りあがっていき、終いには私の話を無視して「あの泥棒猫よくもっ」と爪を噛んで一人の世界に旅立ってしまった。
おかげで手持無沙汰になったかっこうの私は、昨日のことで寝不足気味だったことも手伝って次第に舟を漕ぎはじめ、とうとう夢の世界に落ちてしまう。
まさか、パチュリーまで……。
配役が代わっただけで、昨日と同じ映像が目の前に広がっていた。
眠ったふりしかできなかった私を笑ってもらいたい。
とまあ、二人の行動が理解できなかったこのときの私はしばらく不安定な日々を過ごすことになったのだけれど、偶然立ち聞きした天狗の話ですべては合点がいくことになった。
その話とはこうだ。
「あやや、早苗さんもキスを?」
「文さんもですか。アリスさんったら隙だらけですもの。悪いとは思ったのですがついつい誘惑に負けてしまい、すみません」
「鈴仙さんもいたしたようですし、この次は誰ですかね」
結論から言うと幻想郷流行りのいたずらだった。
スペルカードルールとはまた違ったいたずら勝負。相手の隙をついたことを自慢するのがこのいたずらの趣旨と私は推論した。
……というかあいつら珍しく遊びに来たかと思ったら、そんなことを企んでいたのか。おいしいからって少し奮発して購入しておいた紅茶をだして損をした。う~、ケーキも。
兎にも角にも、私は望まないうちにカモになっていたのである。まったく不愉快極まりない。
だから霊夢に誘われた時は、良い機会だし相談しようと思っていたのに。
霊夢までこの流行にのっているとは。乗り遅れたのは私だけか。
その巫女、私が目覚めたことに気づいているはずなのに、振り向こうとしない。
こちらから見てとれるのは、揺れる黒髪からのぞく赤くなった耳。よく見るとうなじまで真っ赤である。
そんなにいたずらが成功したことが嬉しいのか。小刻みに肩が震えている。
またしても私は負けたのだ。正直、裏切られた気持ちでいっぱいである。
私は猛省した。頼れるのは自分だけ。次は絶対に負けないと。
あくる日、幽香が遊びに来た。
幽香は最近よくうちにくる。そしていつも決まってこういうのだ。
「いい天気よねぇ、眠くならない?」
ほらね。
怖いから幽香の前では一度も眠ったことがないけれど、今日は別。
見ていなさい。怖い怖い幽香の隙をついたと自慢してあげるから。もうカモは卒業よ。
「そうね。よかったら幽香も一緒にお昼寝してみない?」
さあ、勝負開始よ。
私ことアリス・マーガトロイドは近頃とても不愉快である。
魔法の森で隠遁に近い生活を送っているとはいえ、流行にはそれなりに気を配っていたはずなのだけれど。
それに気付くのが遅かったせいで、今ではいいカモにされている。
「……ぅん?」
ぼんやりとした意識の中に、蝉の声が届いてくる。薄く眼をひらくと、視界の隅に境内を掃除している巫女の姿。
そうだった、霊夢に誘われて神社に遊びに来ていたんだっけ……。
少ししびれていた右手のほうを見ると、飲みかけのお茶がぽつんと残されている。出されたときは湯気が立ち上っていたのに、今は見る影もない。
どうやら少し眠っていたらしい。
ふっと息を吐いて、はたと気付く違和感。
まさかと思いながら、そこをそっと指でなぞってみる。
乾いたくちびるに感じる微かな濡れた痕。
くそう、やられた!
先ほどから背中しか見せない巫女を睨みつける。
繰り返し同じ場所を箒で掃いているため、玉砂利がはけて今はもう穴をほりはじめていた。
れ、霊夢まで、そんな。
そう、これがなにも最初のことではなかった。
はじめて気がついたのは、魔理沙の家にお呼ばれされたとき。
あの日もぽかぽかとした良い天気で、魔道書を読んでいる間に居眠りをしてしまった。
気持ちのよいまどろみの中で感じる違和感。
なにかしらと、そっと瞼をあげると、視界いっぱいに広がる魔理沙の顔。
ぎゅっと目を瞑って、顔を真っ赤にしながら必死といった感じで私に口づけている。
なにこれ? ……う~ん、なんか面倒になりそうだから眠っておこう。
そのときの私の気持ちをどうか察してほしい。
翌日、借りていた本片手に、このことを相談してみようかと知識の魔女パチュリーに会いに出かけた。
はじめはいつもの関心のない顔で話を聞いていた彼女だけれど、内容が核心に近づくにつれて徐々に目が吊りあがっていき、終いには私の話を無視して「あの泥棒猫よくもっ」と爪を噛んで一人の世界に旅立ってしまった。
おかげで手持無沙汰になったかっこうの私は、昨日のことで寝不足気味だったことも手伝って次第に舟を漕ぎはじめ、とうとう夢の世界に落ちてしまう。
まさか、パチュリーまで……。
配役が代わっただけで、昨日と同じ映像が目の前に広がっていた。
眠ったふりしかできなかった私を笑ってもらいたい。
とまあ、二人の行動が理解できなかったこのときの私はしばらく不安定な日々を過ごすことになったのだけれど、偶然立ち聞きした天狗の話ですべては合点がいくことになった。
その話とはこうだ。
「あやや、早苗さんもキスを?」
「文さんもですか。アリスさんったら隙だらけですもの。悪いとは思ったのですがついつい誘惑に負けてしまい、すみません」
「鈴仙さんもいたしたようですし、この次は誰ですかね」
結論から言うと幻想郷流行りのいたずらだった。
スペルカードルールとはまた違ったいたずら勝負。相手の隙をついたことを自慢するのがこのいたずらの趣旨と私は推論した。
……というかあいつら珍しく遊びに来たかと思ったら、そんなことを企んでいたのか。おいしいからって少し奮発して購入しておいた紅茶をだして損をした。う~、ケーキも。
兎にも角にも、私は望まないうちにカモになっていたのである。まったく不愉快極まりない。
だから霊夢に誘われた時は、良い機会だし相談しようと思っていたのに。
霊夢までこの流行にのっているとは。乗り遅れたのは私だけか。
その巫女、私が目覚めたことに気づいているはずなのに、振り向こうとしない。
こちらから見てとれるのは、揺れる黒髪からのぞく赤くなった耳。よく見るとうなじまで真っ赤である。
そんなにいたずらが成功したことが嬉しいのか。小刻みに肩が震えている。
またしても私は負けたのだ。正直、裏切られた気持ちでいっぱいである。
私は猛省した。頼れるのは自分だけ。次は絶対に負けないと。
あくる日、幽香が遊びに来た。
幽香は最近よくうちにくる。そしていつも決まってこういうのだ。
「いい天気よねぇ、眠くならない?」
ほらね。
怖いから幽香の前では一度も眠ったことがないけれど、今日は別。
見ていなさい。怖い怖い幽香の隙をついたと自慢してあげるから。もうカモは卒業よ。
「そうね。よかったら幽香も一緒にお昼寝してみない?」
さあ、勝負開始よ。