「小町、八雲紫に教えを説きに行きますよ」
「無理です止めましょう」
あたいは即答した。
幻想郷最強最悪極悪非道と噂されているような妖怪に説教なんて、無謀すぎる。
何より、それに付き合わされるあたいの身が心配だし。
「いくら何でも危険すぎますよ。八雲紫は彼女自身がやたらめった強い上に、これまたどえらく強い式神を持ってるらしいじゃないですか。あたいは映姫様を危ない目に合わせたくないから言ってるんですよ?」
「大丈夫。何も喧嘩しに行くわけじゃないわ」
いきなり見ず知らずの相手に説教される側からしたら、喧嘩を売っているとしか思えないような気がするんですが。
どう言って引きとめようかと悩んでいると、映姫様が「よいしょっ」とあたいの背中に飛び乗ってきた。
「さあ、行きますよ」
「……本気ですかぁ?」
「本気です。ほらほら、早く出発しなさい」
映姫様があたいの頭を笏でぺしぺしと叩いて、早く能力を使えと急かして来る。
こうなってしまったらもう何を言っても無駄だと悟ったあたいは、ため息を付きながらマヨヒガの方角を向いて、距離を操る程度の能力を発動させた。
「落ちないようにしっかり掴まっててくださいよ」
あたいの背中にしがみ付いてる映姫様が、腕にぎゅっと力を込めた。
飛び立とうとすると何故か映姫様にまた頭を叩かれた。
「小町、足を肩幅ぐらいに開いて、鎌を両手で構えて頂戴」
「……こうですか?」
言われた通りにする。
すると映姫様は二本の笏をあたいの両肩に乗せて、
「フォビドゥンガンダム!」
「……」
「……」
ちょっと和んだ。
「APU起動、カタパルト接続、ヒガンルトゥール、スタンバイ!
システム、オールグリーン!進路クリア、フォビドゥン発進、どうぞっ!」
「オノヅカ・コマチ、フォビドゥン行きまーす!」
……反射的にノってしまった自分に軽く鬱になりながら、ここからマヨヒガまでの距離を縮める。
景色が目にも止まらぬ勢いで流れていき、一秒も経たないうちに到着した。
「アンチビーム爆雷射出!全周警戒!索敵用意!」
「映姫様映姫様、そろそろ帰ってきてきてください」
あたいの背中に背負われたままトリップしている映姫様をなだめつつ、目の前にある小さな家へと歩いていく。
八雲一家は全部で三人だと聞いているけど、なんだかもの凄く狭そうな家だ。
「ごめんくださーい」
玄関の戸をノックして待つ。返事はない。何度か繰り返してみたけど、誰も出ない。
「留守かしら?」
映姫様が首を傾げた。ってか、いつまでおんぶしてればいいんだろう。そろそろ降りて欲しい。
「留守みたいですね。帰りましょうそうしましょう」
ぶっちゃけ帰りたい。映姫様はあたいの肩越しに腕を伸ばし戸に手をかけ、
「鍵は開いてるわね。さあ、行きますよ!」
ビシィッ!と前方を指差す映姫様。行けと、行けと言うんですか。
あたいはヤケクソ気味に家の中に足を踏み入れた。
「……狭いですね」
「部屋が二つしかないなんて!」
閻魔様もビックリだ。
二つ並んでいる部屋のうち、まずは手前の部屋の戸を開けた。誰もいない。
「やっぱり留守ですよこれ。ささ、帰りましょう!……いや、すいません言ってみたかっただけです。行きますよ行きますよ。行きますから怒りながら乳揉むのやめてくださいホント」
あたいは覚悟を決めてもう一方の戸に手をかける。
……中から何か声が聴こえる。映姫様とあたいは警戒しながら戸に耳を押し付けた。
「藍さまっ!藍さまぁあぁぁっ!」
「ほら、ここね?ここがいいのね!?」
「あひぃ!紫さまそこは駄目ですよぉおおおおッホオオオオゥ!」
ギシギシアンアンギシギシアンアン
「帰りましょう小町」
「そっすね」
~完~
突っ込みどころ三つ。
和むな!
さっさと止めろ!
…そうだな…
でも、私はサブ機体だったりしますよー! メインはイージスですが。
やっぱり大鎌使うキャラって、いいですよね。