Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

幻想郷語

2010/05/29 17:11:30
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 霊夢はふと疑問に思った。

「なんで幻想郷の言語って日本語で統一されているの?」

 幻想郷にいるのは日本生まれの者ばかりではない。
 しかし、霊夢は確かにレミリアと日本語で話していた。
 何故レミリアは日本語を話せるんだろうか?学んだんだろうか?
 一度幻想郷を乗っとろうとした連中だ、そんな事をするとは思えない。

「…………そうねえ。」

 たまたま、私の家で晩御飯を食べていた紫は手を止め、ニッと笑った。
 また何かを考えているらしい。言わなきゃよかったか。

「じゃあ霊夢、貴方の話しているのは日本語かしら?」

 ???

 私は首を傾げた。

「日本語じゃなければ何語なのよ」
「さぁ?それは私の知るところじゃないわ。」

 紫は沢庵を口に放り込んだ。

「……意味が分かんないんだけど。」

 コリコリとした音が消えると、紫はまた口を開いた

「結論から言えば、私が言語の境界をなくしたからよ。」

 ……なんだ、それだけの話か。

「なにそれ、なんで最初からそう言わないのよ。」
「言語の境界は失せ……言語は一つになった。なら、その上で貴方は何語を話しているのかしら?それは本当に日本語かしら?」

 紫は笑みを崩さずに言った。こちらを馬鹿にしたような、鼻につく笑みだ。

「じゃあ、あんたが話しているのは何語よ。」
「何語に聞こえるかしら?」

 ニヤニヤと、腹が立つ

「日本語に決まってるわよ。言語の境界を操って幻想郷の言語は統一されたんでしょ?あんたも私も英語とか話すわけが無い。」
「霊夢、貴方は私の能力を勘違いしているようね。」

 紫は一つため息をして、お椀の四分の一程度に残ったお味噌汁を差し出した。

「例え話なんだけど、一つの広めの容器を想像して頂戴。長方形がいいかしらね。」

 想像してみる。

「そこに仕切りをいれて、片方にお味噌汁、もう片方にコンソメスープを入れるわ。これは間違いなく、"お味噌汁とコンソメスープ"よね?」
「それがなに?」
「じゃあ、仕切りを取ったらどうなるかしら?それはお味噌汁?それとも、コンソメスープ?」
「超マズい意味不明な液体ね。」
「……そういうこと。それはお味噌汁でもコンソメスープでもないわ。」
「つまり…………幻想郷にあるのは日本語でも英語でも無いって?」
「そうよ。私は仕切りをとったり、また二つを分けて仕切りを置く事が出来る。でもどちらかを消したりはできないわ。つまり、どちらかが置き換わることなんてありえない。」
「じゃあ、今私達が話しているのは何語なのよ?」



「さしずめ、"幻想郷語"かしらね。」







 馬鹿馬鹿しいと思った。私が話しているのは間違いなく日本語だ。
 幻想郷語などではない。私が今使っている言葉が外で通じないはずがない。
 その確信があった。だから聞いた。

「レミリア、貴方って英語話せる?」
「……?どうしたの?急に。」

 レミリアは首をかしげた。まるで私の質問そのものを疑問視するかのように。

「そのまんまの話よ。どうなの?」
「そのままって……今私が話しているのは確かに 英 語 でしょう?」

 私は硬直した。





 なんとなく。しかし確かに私は自分の言語に疑問と僅かな、得体の知れない恐怖を覚えていた。
 自分は日本の、幻想郷に生まれ、日本語を日常的に使って来た。それは考えるまでもなく日本語のはずだった。
 しかし、それをレミリアは英語だという。
 ありえない。私はこんにちわと言う。しかしハローとは言わない。レミリアは私のこんにちわがハローに聞こえるというのか?それとも、私のこんにちわはレミリアにとって英語なのか?
 分からない。ひょっとして私は自分で知らないうちに英語で話しているのか?私は英語を日本語と認識しているのか?
 これが幻想郷語だというのか?



「こんにちわありがとうおはようこんばんわさようならおやすみなさいいただきますごちそうさまおいしいうれしいかなしいたのしいよろしくおねがいします……」
「何をブツブツ言ってるんだ。」
「いってらっしゃいおかえりなさいただい…………ま、りさ?」
「魔理沙だぜ?」

 いつの間にやら境内にいた魔理沙は首を傾げた

「で、何を呟いてたんだ?神様でも降ろしてたのか?」
「別に……なんでもないわ。」

 恥ずかしいところを見られた。全部紫のせいだ。

「………………ねぇ、魔理沙。」
「どうした。」
「私、日本語喋ってるわよね?」
「はぁ?」

 魔理沙また首を傾げた。90度だ

「英語――――



 霊夢の体が小さく跳ねた。



     ――――を喋ってるつもりなのか?」

「………………。」

 ああそうだ。英語なんて私は話せない。あれはきっとレミリアのジョークなんだろう。紫とつるんで私をからかっているんだ。そうに違いない。だから早く鎮まれ私の胸の鼓動。

「なんでもないわ。忘れて。」
「私が話しているのは幻想郷語だぜ。」
「っ!?」

 不意打ちだった。
 なぜ魔理沙が幻想郷語を知っている?

「昔、紫に聞いたんだよ。幻想郷はなぜこうも言語が統一されてるのかってな。お前もそうじゃないのか?」
「…………。」

 見抜かれていた。

「あんたは納得いってるの?」
「霊夢は疑っているのか?」
「いや、だってさ、いままでずっと普通だった事が違ったのよ?しかも、それはすごく曖昧な物だったのよ?というか、幻想郷語って結局どんな言葉なのよ?日本語と何が違うの?英語と何が違うの?」
「私に言われてもな……霊夢は日本に生まれたから日本語に認識される言葉、レミリアはイギリスあたりに生まれたから英語に認識される言葉ってこったろ。赤ん坊に「これは日本語です」と英語を教えたら英語を日本語だと思って話すだろう?この幻想郷には幻想郷語しか存在できない。日本語も英語も中国語もドイツ語も、全て幻想郷語に変換される。隙間がそういう風にしたんだ。でも私達は日本語という存在しか知らないし、レミリアは英語しか知らない。だからそうとしか認識できないのさ。」
「なんだか気持ち悪いわね……自分のしていることが自分の認識と違うなんて。」
「便利じゃないか、幻想郷語。パチュリーの図書館にはいろんな本があるし、色んな言葉で書かれているだろう。けど、私は全部読める。」
「じゃあさ、日本語にある言葉で、英語には無い言葉はどうなるの?私、僕、俺、英語では全て"アイ"らしいけど。」
「幻想郷語に表せない言葉は無い。ただそれだけさ。」





 朝、いつものように目が覚めた霊夢は、なんとなく

「おはよう。」

 と言ってみた。
 朝ごはんを作って

「いただきます」

 と言った。

 考え過ぎだったのかもしれない。
 誰が幻想郷語だかなんだかとか言おうが、私には関係の無い話に過ぎない。
 私は日本語だと思っている。それでコミュニケーションを取るに問題が無いなら、それでいいのだ。
 そういえば、今晩は紅魔館でパーティーだったか。
 ああそうだ、レミリアは英語と言ったが、私は日本語に聞こえる。それに何の問題があるのか。
 むしろ、英語に聞こえたほうが問題なのだ。
 霊夢はそう結論づけると、昼過ぎには幻想郷語の事などすっかりと忘れていたのだった。











「Good evening. It seems to be busy alone.」

It was Reimu to call when Sakuya was arranging a party.
Reimu is always the first to arrive of the party.

「Good evening. Could you help if it thinks so?」

I returned it so.
It is a strange story that the shrine maiden comes to vampire's residence to play.
The devil exchanges it with the person who serves the god.
To begin with, even the country is different.
I think that there is really anything in Gensoukyou.

「No. I am always doing at the shrine.」
「It was so.」

At that time, Sakuya thought of the doubt.

(Why is the languages of Gensoukyou united in English?)

I will hear it from Yukari later.
It thought so and it began to arrange a party.
 最後の部分の和訳。

「こんばんは。一人で大変そうね。」
 パーティーの準備をする咲夜に声をかけたのは霊夢だった。
 霊夢はいつもパーティーの一番乗りだ。
「こんばんは。そう思うなら手伝ってくれないかしら?」
 私はそう返した。吸血鬼の館に巫女が遊びに来るのは変な話だ。悪魔と神に仕える者が交流を交わすのである。
 そもそも、国すら違うのだ。本当に幻想郷はなんでもありだと思う。
「嫌よ、神社の時はいつも私がやっているわ。」
「そうだったわね。」
 その時、咲夜はふと疑問に思った。
(なんで幻想郷の言語って英語で統一されているのかしら?)
 あとで紫に聞こう。そう思って、また準備を再開した。


 翻訳に突っ込んで多少修正しただけなので合ってるかは分かりません。英語苦手。
 それよりも本当に考察だけになって物語とは言えないものになってるのが心残り。
 超空気作家まるきゅー氏は凄いと思う。

>4
 すいません。そこまで考えていませんでした。
 ただ「こうだったら面白いなぁ」というようなことを感覚に任せて適当に書いただけなので
 失望したならすいません

>5
 英語弱いなー。確かにlet'sはおかしい
 直しておきます。指摘ありがとうございます
過剰睡眠摂取症候群
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
なるほど、そういう事だったのか…
何か色々と凄かったです。
2.名前が無い程度の能力削除
昔、天に届くような高い塔を築いていた時代の人々は皆同じ言葉を話していたそうです。
もしかしたら、紫は何らかの手段でそれを再現したのかもしれませんね。
すまん趣旨に反すること言っちゃって。
3.名前が無い程度の能力削除
これは興味深い…
RPGなんかで、別の国に行って地元のキャラと問題なく話してる…という事の説明は難しいが、
東方の世界なら無理なく説明出来るとは…ゆかりん万歳
4.優依削除
チョムスキー以後の言語学について詳しくないので間違いもあるでしょうが、少しばかり作品の考察をしてみました。
まず、魔理沙達によって語られている内容を疑う事から始めたのですが、どうやら本当に統一された言語のようですね。
初めは他者の使う言語を全て獲得していて、それらを全て第一言語と同一の言語だと認識しているのかと考えました。
(恐ろしい無知と浅慮から、日本語/英語というラベルの違いについてだけの話だろうと私は想像していたのです。)
「Shizuha hoped for a short winter.」「冬が短ければと静葉は願っていた」
なんらかの理由により発言がそれぞれ前半で途切れてしまった場合、意味も変わります。
「静葉の願いは~」と言い換える事によって一致させる事も可能ですが、そう上手く通じる時ばかりではないでしょう。
いつの日にか言語の不一致から誤解や疑問が生まれる事は簡単に予測できます。
こうした例について考えると霊夢の認識は間違いで、確かに共通の言語が使用されているのだと分かりますね。
しかし、ここで問題となるのがその言語をいつ獲得するかです。
日本人の例で言えば二歳ごろには既に英語の[RとL]などの、母語には無い発音の差異が認識できなくなりますよね。
言語に境目が無くなるというのは、全てが混ざる事だと紫は作中で語っています。
魔理沙は日本語しか知らない、けれど図書館の本を全て読めるという発言もあります。
(異なる言語だと認識した上で読めるのか、日本語で書かれているようにしか見えないのかは説明されていませんが。)
これらの点を慮るに、幻想郷語とは音韻の違いが言葉の意味を変化させない人工言語なのでしょう。
少なくとも中国語や、音調を上げ下げするだけで疑問形などに変化させる事の可能な日本語とは大きく異なる言語です。
具体的な言語名を挙げましたが、世界中を探したところで一致する言語は見つけられないでしょうね。

――本作品は幻想郷の内外を隔てている強大な結界の因子をソシュールの言語論に求めた話なのだと解釈しました。
外の世界と幻想郷で言語がまるで違うとは、異なる常識を基盤に持っているという意味なのでしょう。
ある恣意的な言語を受け入れるものしか幻想郷には存在できず、そうでないものは弾き出す結界というわけですね。
外の世界では「空想」の一言に纏められる概念も、霊夢達の世界では幻想郷語によって万の妖怪に分割される。
そうした世界像を持つのが幻想郷であり、細分化されすぎた言葉が世界の根源を支えている。
だからこそ私達は外から幻想郷を見つける事が出来ず、神隠しによって訪れても溶け込む事が出来ないのでしょう。
第一言語(母語)は思考を支えるものであり、切り換えるのは容易ではないため「視える」ようになるのも望み薄です。
このおかげで母語の異なる人間は取り込まず、妖怪などの幻想の種族である存在のみ取り込める境界も創れたのですね。
自らが神/妖精/悪魔/妖怪といった存在か、それに近しくて言語を共有している風祝のような者だけが進入できる……。
幻想郷語は博麗大結界と、幻と実体の境界との両者を同一の理論で組み上げる事の出来る、実に興味深い設定だと感じました。面白かったです。
タグから言語学の話だと思い込んでいたのですが、結界についての考察まで発展できる物語だったようですね。
ところでこんな事を言うと「話のためにキャラを使う」みたいで嫌なのですが、さとりにも登場して欲しかったです。
一つの共通言語だけがある世界で、果たして彼女はあらゆる言葉を使いこなせる通訳家と同じなのでしょうか?
彼女が知らない専門用語などは翻訳されるのか、されるのなら仕組みはどうなっているのか?
霊夢達にとって「理解できない言語」とされる言葉の存在は何を意味しているのか?
(見た事も聞いた事も無いけれど、日本語以外の言葉があるらしい、という認識を持っているだけ?)
そして、専門用語などはさとりにも理解できないのであれば、新しい言語の生まれる可能性はあるのか……?
この作品の世界観で是非とも、さとりによる幻想郷語の考察物が読んでみたいと思いました。
5.mthy削除
おぉ…。幻想郷での言語ってのは、わたしも色々考えてたので、こういうSSは嬉しいですねー。
うん、勉強に、というか、参考になりました。ありがとうございます。

あと、わたしも英語は苦手なので適当なこと言いますが、本文の最後から二行目の
>>Let's hear it from Yukari later.
ってところ。 Let's は誰かを誘う表現なので
I will(I'll) listen to Yukari about it later (?)
とかのほうがいいかも? と思いました。まぁ、戯言です。