「はっ……くしょん!」
「なによ、風邪? 宴会近いんだからうつさないでよね」
「おう、悪かったぜ。少し冷え込んできたからかな……」
「帰って休んだほうが良いんじゃない? こじらせると辛いわよ」
「そうだな……それじゃあお暇する、二人とも風邪には気をつけろよ!」
「……? 開いてるぜ?」
「おはよう、見事に顔色悪いわね」
「こじらせちまったかな、こういうときは妖怪がうらやましいぜ」
「寝たままでいいわよ、ちょっと様子が気になっただけだから」
「はは、心配されるようじゃ私もまだまだだな」
「ちょっと。服びしょびしょじゃない、着替え用意するから替えなさいよ」
「あ、ああ。悪いな」
「はい。着替え。濡れたのは私が洗っておくわよ、あんたん所だと一日で茸はえそうじゃない」
「ごもっともだ」
「明日にはまにあいそうかしら?」
「宴会は外せないぜ……」
「……ま、頑張んなさい、クッキー置いていくわよ」
「おう、すまんな」
「珍しいな」
「そうかしら? 確かにあんまりここまでくることはなかったわね」
「見たとおり弱っているんだが、大事な用か?」
「いいえ、弱っていると聞いてお見舞いに、ね」
「はぁ、心遣い感謝だな」
「明日の宴会で本を何冊か返してもらう予定だし」
「……そんな予定はないぜ」
「あんまり取り返せないと私がしかられるのだけれど」
「それじゃあ、力づくで……」
「今の貴女に追い討ちするほど鬼じゃなくてよ」
「はは」
「まぁしっかり直しなさい、大きな宴会になるんだし、仲間はずれはさびしいでしょ」
「そうだな、うつして直すのが一番なんだが」
「私は仕事があるから倒れられないのよ、それじゃあお大事に、良く効く紅茶置いてくわ」
「悪いな、それじゃあ」
「今日は来客が多いな」
「珍しいものが見れるとかじゃない?」
「見世物って意味ならお前のほうが出来そうだがな、縁日とかで」
「大勢の前だと緊張するから……」
「情けないな半人前」
「せっかく見舞いに来たのにそんな扱い?」
「見舞いの品は置いて帰ってくれ、どうせ持ち帰っても食われるだけだろ」
「まぁ、そこは否定しないけど」
「明日の宴会はお前のところも来るんだっけか?」
「え、ああ。大きな宴会になるって話だからね」
「じゃあ早めに行って手伝ってやれよ、主人の分までさ」
「……そうね、それじゃあお大事に、羊羹置いてくわ」
「おう、また明日な」
「おお、病気のときに来るとはいいタイミングだな」
「残念ながら薬は持ってきてないけどね」
「なんだそれ、存在意義を否定してるのと一緒だぜ」
「さらっと酷い事言わないでくれる? 病気のときでも全然変わらないのね」
「意外と無理してるんだがな」
「どれどれ、熱は……まだあるわね、着替えはきちんとやってるみたいで重畳」
「手伝ってもらっちまったがな、寒いのにわざわざ見舞いとは頭が下がるぜ」
「ん、あぁ手か。まぁついでだしね、師匠に急げって言われているわけでもないから」
「ついで……か」
「さて、それじゃあそろそろ行くよ、栄養ドリンクはもっていたから置いてくね」
「それ、爆発しないのか……?」
「さぁ?」
「どうもー清く正しい……」
「帰ってくれ」
「あやや、いきなり門前払いとは冷たいですねぇ」
「見てのとおりこちとら病人だ」
「そんな貴女に、読むだけで風邪が吹き飛ぶ! 文々。新聞ですよ」
「……それほんとか?」
「面白おかしい記事を読めば少しは愉快になれます」
「効能変わってんじゃねぇか」
「まあまあ、宴会の為にしっかり直すぞっていう活力剤にでもなれば!」
「だから効能……」
「それでは、忙しい身なので失礼いたします、また明日っ!」
「こんにちはー」
「どうして入ってこれるんだ?」
「え?」
「ついさっき天狗が来て疲れたから鍵閉めておいたんだが」
「あぁ、奇跡ですね」
「もっと有意義に使えよ、私の風邪を治すとか」
「自然の摂理に従わないといけませんよね」
「……で、見舞いか?」
「えぇ、明日宴会だというのに、主役格が大変だと聞いて」
「見舞いの品は?」
「もぅ現金ですねぇ、まぁこれです、たまたま持ち歩いていたお守り」
「……効くのか?」
「そりゃもう、恋愛成就間違いなしです」
「風邪なおんねーのかよ」
「健康祈願は人気がありまして……」
「まぁいいや、もらっとく」
「えぇ、頑張って直してくださいね、それではそろそろ」
「……ところで、本当に奇跡で何とかならないのか?」
「さっき使っちゃったので、充電しないとダメです」
「……珍しい奴が来たな。ですか」
「あぁ、疲れているなら喋らなくても良いですよ、考えてくれれば」
「まぁ、こういうときぐらいは便利、ですかね」
「そうですね、明日の宴会は地霊殿も参加しますので……」
「見舞いの品は……温泉卵ですね」
「……貴女はもしかしたら少し鈍いのかもしれませんね」
「失礼しました、気にしないでと言うのも無理な言い方でしたね」
「まぁ、ゆっくりお休みなさい、それでは」
「こんにちは」
「本当に今日は珍しい客が多いな」
「そうですか、こういうときに来客が多いと言うことは慕われているということと考えていいと思いますよ」
「顔が広い自信はあるがな」
「まぁ何であれ。結構な数のお見舞いをもらっているようですし、私がいまさら何を言うこともないのでしょうか?」
「いや、魔法使い仲間は少ないからな」
「あらあら、ちょっと弱気に見えますよ、らしくもない」
「……少し考え事をしてな、体が弱っているときはへんな夢も見るし、悪い考えにはまり易い。宗教はこういうときに勧めるのが良いんじゃないのか」
「友人の危機に普及をする気はありませんよ、それに心から納得しないのだとしたらそんなものは無意味です」
「そうか……」
「お見舞いの品、ありますよ。流石に巻物を上げることは出来ませんが……どうしました?」
「……色んな奴が今日たずねてきてくれたけどさ、あいつは来なかったんだ」
「……それで?」
「もしかしたら、明日の宴会に歓迎されてないのかなって思ってさ」
「……なるほど。もし本当にそう思っているのなら……少し助け舟を出さなければなりませんね」
「助け舟?」
「ええ……明日の宴会は大規模なものになる予定との事で、それぞれの代表者が博麗神社に挨拶に出向きました、私もこの見舞いはそのついで。になります」
「……」
「まぁ殆ど答えのようなものですが、調子が悪いのならこのぐらいで十分でしょうか、それでは明日の宴会楽しみにしていますよ」
「お、おう、またな」
「お見舞いを置いていくのを忘れていました……」
「おっす」
「あら、早いじゃない、準備の手伝いでもしてくれるのかしら」
「おう、昨日休んだら元気になったからな、大宴会だし協力するぜ」
「そう、それじゃあいろいろ頼もうかしら……」
「霊夢」
「何?」
「ありがとな」
「……さっさと準備するわよ、今日は忙しくなるんだから」
このSSは例外だな、この方がすっきりと読める
いい話でした