紅魔館の門番こと紅美鈴が副業を始めた、という噂を聞いて幻想郷のあちこちから色んな客がやってきた。
「いらっしゃいませ、女性同性恋的美容院へようこそ……って咲夜さん!? あ、その、これは」
「言い訳は聞かないわ。遺言も聞かない」
上司にあたる(?)咲夜の耳にも当然その噂は届いていた。
「気功を応用したマッサージ、ですってね。ふーん、なるほどね」
「あ、あ、ああぁ……」
いつの間にか咲夜の手の上で数本のナイフが踊っていた。
美鈴は焦る。
そして、
「咲夜さんもやっていきますか?」
ナイフが動きを止めた。
メイド長の白い額に青筋が浮かび上がっていく様が、まるで美鈴の寿命が終わる事を示唆しているかのようだ。
振り上げた咲夜の腕が、まさに美鈴を穿つその寸前、
「ん? ……なにかしら」
美鈴はギュッと瞑った目を恐る恐る開けた。
すると、どうだろう。あの怖ろしい鬼の形相だった上司が、いっぱしの乙女を気取ったかのごとく紅潮しているではないか。
上気した頬に、おろおろとした視線。
逡巡が丸分かりのわざとらしい、うーん、という首の傾き。
「あ、あの……」
と、咲夜の視線を先を追ってみると、そこにはマッサージのコース一覧が書かれたお品書きがあった。
その一角。
「ねえ美鈴。こ、この『巨乳的』っていうのは、その……豊胸にも効果があったりなかったりするのかしら?」
一瞬の間。
美鈴の口の端が持ち上がり、次の瞬間には満面の笑みを浮かべて、
「咲夜さんもやっていきますか?」
二人は紅魔館の一室を改造して作られたマッサージ部屋へと姿を消した。
…………。
……。
…。
一月が経った。
相変わらず盛況が続く女性同性恋的美容院を訪れる人足は絶たない。
しかしながら、何事も話題になると面倒ごとも増えるもので、とある寺子屋教師の密告により開店以来の危機を迎える事となった。
「ええっ!? 風営法違反の疑い……?」
美鈴の目の前に突きつけられたのは、営業停止命令及びその理由の詳細が書かれた一枚の紙切れだった。
そして、それを突きつけている人物こそ、
「この店の営業内容自体が、つまるところ、真っ黒なのです」
四季映姫である。
その横には、心ここにあらずといった面持ちの死神が一人。
「数日前に、一枚の嘆願書が私の元に届きました。
なんでも、この店を訪れた寺子屋の生徒が、"いかがわしい"行為に夢中になってしまったそうです。
まだ嫁入り前の、大人になりかけの生徒を汚れきった不埒な女性の手にかけるなど言語道断! というわけです」
「ま、待ってください! それはいくらなんでも酷いです! 名誉毀損です!」
「名誉毀損? そういう貴女は立派な淫行罪ですよ」
「実際に見てもいないのに、そんな言いがかりはやめてください! そんなに言うなら、あなたもやっていきますか?
うちがどんなに健全な商売か、その目で、その体で確かめていってくださいよ」
「何を言うかと思えば……でも、まあ」
映姫はそこで隣の死神に一瞥をくれると、うん、と頷いた。
「確かめてからでも遅くはありませんね。私を最後の客として商うことを許可しましょう」
美鈴はその言葉を聞き届けると、映姫を奥の部屋へと案内した。
と、それまでボーッと突っ立っているだけだった死神が俄かに騒ぎ出した。
「やだっ、あたいも一緒に行きます!」
「こら、小町。これは遊びじゃないんですよ。おとなしく待合室で鎌でも研いでおきなさい」
「はい」
「素直だなぁ」
死んだ魚の目になった死神を残し、裁判長と門番は奥へと消えた。
……。
「ただいま。小町、さあ、帰りますよ」
「えっ。営業停止は」
「いいんです。さあ、帰りましょう」
「ちょっと、お前! えーき様に何をしたのさ!」
「なにって、マッサージですけど。なんなら、あなたもやっていきますか」
「えーき様?」
「いってらっしゃい」
……。
「えーき様、帰りましょうか」
また来ます、と一礼をして死神と裁判長は二人仲良く帰っていった。
美鈴は艶を漂わせる息を一つ吐くと、安堵に胸をなでおろした。
一時は肝を冷やしたが、どうにか首の皮がつながった。これでまた明日も営業ができる。
繁盛して得た金を使って、紅魔館の横に10/1スケールのパチュリーの像が建った。
依然として、女性同性恋的美容院は続いた。
美鈴は言う。
「お客様が悦んでくれれば、わたしはそれだけで嬉しいんです。
えっ、クレーム、嫌がらせ? あはは、相手が女性なら無問題ですよ!」
Fin
次からは皆顔を赤らめながらコソコソしながら来店するのか?
マッサージの方法を是非とも取材したいのですが!!
せめてマッサージされてるお客さんの悦んでる顔だけでもいいですからーー!!!
ところで庭に置くには10/1スケールのパチュリーの像って小さくないか? それじゃフィギュアじゃないかww
ホントだー!!!!www
じゃあ下から覗けるんですか?!
いや俺としては嬉しいがww
おもろかった。
いや、まあ行ってみたいですけどwww
あわよくばパチュリー様に会ってくる
何故誰もツッコまないwwwwwwww
色んな視点から読んで頂けるのは楽しいですね。ありがとうございました。