Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

同じ日は二度と来ない。

2008/09/03 13:34:05
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 静寂に包まれた夜。
 私が好きな独特の匂いのする薄暗い室内。
 凛とした虫の静かな鳴き声が、優しく私の耳に聞こえてくる。



 ……それが、私の理想の読書の時間。
 だけど、今はそんな静かな場所ではない。
 一応は静寂に包まれている室内。
 確かに、この独特の匂いというか出来上がってくる匂いも、実物も私は好き。
 えぇ、好きよ。大好き。
 咲夜が作る料理は大好きよ。
 だけどね、今は違うの。
 今、私は食堂にいるの。
 自分が食べるわけでもないの食堂にいるの。
 とっくに夕食は食べ終わっているのに私は食堂にいるの。
 微かに香る料理の匂いが鼻につくの。
 いつもの様に、ヴワル図書館で読書をしてもいいのだけれど、ピーピーうるさい娘が一人。
 静かに読書をしたいのだけれど、ピーピーうるさい小娘が一匹。
 お腹が空いた。お腹が空いた。と何度もさりげなくアピールしてくる小娘。
 二回いったわよ。大事なことだから覚えておきなさい。いいわね?
 で、その娘。
 それは誰かって? 決まってるじゃない。

「(ズババババババ!!)」

 にこにこ顔で、ヤキソバという料理を美味しそうに食べている赤毛の少女。
 席が他にも空いているのに、どうしてわざわざ私の隣で食べるのかしら。
 私が席を移動しても、この娘は料理を持ってわざわざついてくるし。

「ちょっと小悪魔……もうちょっと静かに食べなさい」
「むっふ―――だって……美味しいですよ」
 コトンと空になった皿をテーブルの上に置く。
 あぁ、ようやく食べ終わったのね。
 すっと、私はテーブルに両手を付き、脚全体に力を入れて、倦怠感溢れる体を持ち上げた。
 ―――いつの間にかあったのか。
 彼女の目の前にあるカレーライスに手をつけ始めるこの娘。

「貴女の胃袋は何で出来ているのかしら?」
「パチュリー様を思う心です」
 ゆるみきった笑顔。
 ほら、口元に青海苔ついてる。
 私の視線に気がついたのか、ペロリと艶やかな舌で青海苔を拭い取る。
 器用な娘ね。本当に。
「……はぁ、ゆっくり食べなさい」
「そんなパチュリー様が大好きです」
 何を言うのこの娘は……まったく。仕方がないわね。
 ストンと私はまた椅子に座る。
 

 スッと食堂の入り口から誰かが入ってくる気配。
 この時間帯に起きている人物は決まっている。

「御機嫌よう。私の愛しいパチェ」
「御機嫌よう。私の愛しい私のレミィ」
「(もぐもぐもぐ)」
 大きな口を開けて、大きな伸びをするレミィ。
 何を思ったか、小悪魔の対面席に座る。
「愛しい友の使い魔。美味しそうな匂いがすると思ったが、お前か」
「(もぐこくもぐこくもぐ)」
 テーブルに肘を着き、ニヤニヤと口元と目元を緩ませるレミィ。
 口を動かしながらも、コクコクと首を縦に振る小悪魔。
 貴女は私の使い魔だから、そんな態度が許されるのよ?
 レミィと親友の私の使い魔だから許されるのよ?

「おっとパチェ。私はそんなことで怒ることないから安心していい」
「……そうかしら。どうでもいいわ」
 ヤケに落ち着いてるわね……。
 カリスマデーかしら。
 あと心を読まないで。

「うー、パチェが冷たい。さーくーや!」
 ずるっと私は椅子からズリ落ちそうになる。
 前言撤回。まったく落ち着いていない。いつもとおりだわ。

「おはようございますお嬢様。お着替えのご用意遅れました」
「気にしないでいいよ咲夜。もう着替え済んだから。私も小悪魔と同じの食べたいー」
「すぐにご用意致します」
 ぱっとレミィの背後に現れ、ぱっとすぐに消える咲夜。
 メイドも大変ね。略してパパットメイド。
 略してPAD。
 関係ないけど。
 あと、着替え済んだと言った瞬間に軽く顔が落胆したのは気のせいよね。きっと気のせいよ。
 このロ○コンメイドが。


「さくやーまだー!?」
 まだ数分も経っていないのにギャアギャア騒ぎ出すレミィ。
 ギーコギーコと椅子で舟をこぐレミィ。
 見えてるわよ。
 あぁ…ほら、そんな股広げて舟こぐと後ろに倒れるわよ。
「さぁあああーきゅうううーやぁーぁぁああぁぁあ」
 バターンと椅子ごと倒れるレミィ。
 白いドロワーズから、白く細い足が二本生えている生物が誕生した。

「…何してるのよレミィ」
「ふ……これがレッドイリュージョンよ」
「変なカッコつけてないで早く立ち上がりなさい。丸見え」
「興奮した?」
「しないわよ」

 二本足のドロワーズ生物見ても誰も興奮しないわよ。

「――はぁ、私は戻るわ。小悪魔食べたら片付けてから来なさいよ」
「あれ、もういくのパチェ? もうイクのパチェ?」
「二回言わないで。言わないで。それにそれ何か卑猥だからやめて」
 二本足を開いたり閉じたりしてるドロワーズに別れを告げて、私は食堂を出る。
 ――あぁ、私の静かな夜は一体何処に行ってしまったのだろうか。






 一人図書館に戻り、気がついた。











 ――本忘れたわ。











 
こんにちは、蒼いのと申します。

なんとなく書いて、なんとなく見直して、なんとなくタイトル決めて投稿しました。
ぱっと見て、ぱっと暇つぶしになれば幸いです。
文章おかしい。ここ直したほうがいい等ありましたらご指摘ください。
読んでいただきありがとうございました。
蒼いの
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
>いつもの用に  様じゃないすか?
オチはある意味パチュリー臭くてありだとは思うんだけど、
本を持ってる記述がそれまでに何処にもないのが若干違和感かなぁと。
まぁパチェが本を持っているのはほぼデフォルト臭い気もするけど、そのあたりの書き込みはあってもよかったかなぁと。
でも面白かったです。 今後の活躍も期待したいと思います。

あとこぁ炭水化物過剰摂取しすぎw
2.蒼いの削除
さっそくの誤字指摘ありがとうございます。
確かに本を持ってる記述がなかったですね。
適切なご指摘ありがとうございます。
3.喚く狂人削除
このssで一番可愛いのはレミリア……否、れみりゃ。異論は認めん
4.名前が無い程度の能力削除
じゃあ、私は小悪魔に一票
5.名前が無い程度の能力削除
>「(ズババババババ!!)」
小悪魔どんな食い方してるんだww
しかしレミリアにカリスマが戻る日はいつ来るのだろうか・・・