覚悟の上で変貌してみた

　紅美鈴は激怒していた

　かの白黒の魔法使いによって門を突破されたからだ

　それも何度も何度も…

　だが、いくら美鈴が怒っても相手は捕まらず
　
　逆に門を破壊されてしまう

　その件に関しては上からもある程度の理解は得ていて

　それほど怒られる程のものではないのだが

　
「よう中国、本借りに来たぜ」
「止まってください！此処は紅魔…」
「それじゃあ、さくっと通してもらうぜ」

　マスタースパーク

「いやっほ～！また本を借りにきたぜ！」
「上から止めろといわれてるんです！」
「そうか、じゃあ諦めてくれ」

　ブレイジングスター

「おっす！」
「またあｎ「ドラゴンメテオ」みぎゃあ！？」
「…さて、さっさと向かうか」


　始めのうちは上からも文句を言われていたが
　そのうち、何も言われなくなって
　通られても仕方が無いと思われるようになってしまった
「……ちくしょう」
　既に、門番としてのプライドはボロボロになっていた
　


「あばよ～！」
　そして、その日も魔理沙によって門を突破されて
　美鈴は破壊された門の前で大の字になっていた
　
「……また負けちゃった…」　
　体の痛さよりも悔しさで目元が熱くなる
（これで何連敗目だろう…）
　倒れこんで青空を見ながらボーっと負けた理由を考える

　美鈴はけして弱くない　
　長い間紅魔館の門番としてやってきたのは運だけではない
　きちんとした実力が伴っているからだ
　だが、それでも魔理沙に勝てないのには理由がある
「…弾幕じゃなかったら負けないのに…」

　弾幕決闘…博麗の巫女が提唱した
　スペルカードシステムそれによって
　美鈴の戦闘力の根本である『近接格闘』が完全に封じられてしまったのだ

「はぁ…どうすれば弾幕で勝つ事できるんでしょう」

　無論、美鈴自身は弾幕でも決して他の者に劣る事は無いが
　大量の数をばら撒いて敵を牽制する美鈴の弾幕では
　圧倒的な貫通力を誇る魔理沙の戦い方とは物凄く相性が悪いのだ　
　その上スピードや回避能力、手癖の悪さは
　美鈴よりも、魔理沙の方が上回る

「……くっ…」

　泣きそうになるのをくっと歯をかみ締めて堪えると
　美鈴がその場から起き上がる
　これから、門の修理をしないといけないのだ
（また、魔理沙に破壊される為に…）
　ネガティブな思想になりかけているのにきがつく
「はぁ…いけないなあ」
　頬をパンパンと自分の手で叩いて少しでも明るい事を考える
（魔理沙さんに私が勝っている部分でも考えよう）

　美鈴がそう思って弾幕戦で魔理沙に自分が勝っている部分を考える

　威力…（魔理沙さんのマスタースパークには勝てないな）×
　命中力…（魔理沙さんに当たったためしが無い）×
　回避力…（避ける間も在りません）×

（なんだか、更に凹みそうになってきた）
　少々鬱な気分になってきて遂に、一つだけ魔理沙に勝る部分を見つけた
　そして、それに気がついた瞬間
「…そうだ…」
　美鈴の頭の中に一つの計画が思い浮かんだ…
「…私が…私自身が…」

　
　その日から、美鈴は誰にも言わず一つの計画を試す事にした










　そして一週間後


「さて、お嬢様の為に今日もお布団を干さないと…」
　紅魔館のメイド長である十六夜咲夜が今日の予定を考えていると
「め、メイド長！」
　廊下の方から誰かが走ってきた
　それがメイドの一人なら走るなと言ってから
　仕事に戻るように説得したであろう　　　
　だが、咲夜の傍に現われたのは
「門番隊は部署が違わない？」
　咲夜の配下のメイドではなく美鈴の配下である門番隊の者だった
　咲夜の目の前に立つと肩で息をしながら声をかける
「め、メイド長…も、門番長が…はぁはぁ」
「何があったの？」
　
　門番長…つまり美鈴の名前が出た事でただ事ではないと咲夜が悟り
　目の前の門番の一人に何があったのかを問いかけた

「も、門番長を止めてください！」
「止める？」
　いきなり美鈴を止めろといわれて怪訝な顔をしている咲夜に対して
「と、とりあえず来てください！」
「え、ちょ、ちょっと待ちなさい！？」
　門番隊が咲夜を連れて美鈴の下に走り出した









　紅魔館の門番隊のトレーニングルームその一室に門番隊と美鈴は居た
「た、隊長！おやめください！」
「もうこれ以上は…」　　
「駄目ですって！」
　門番隊の面々が美鈴に対して今している事を止めようとしていた
　だが、周りになんと言われようとも美鈴はそれを止めなかった
「これ以上そんな事したら…」
「門番長自身がどうなるかわかってるんじゃないですか！」

　無論、美鈴自身もどうなるのかわかっていた
「解っています…でも、これが私に出来る唯一の事です！」
　一週間の間に、既に美鈴の身体はかなりの変貌を遂げていた
　その姿はまだ美鈴の輪郭を保ってはいるが
　これ以上の無理を重ねれば、元の姿に戻れるか解らなくなる
　だが、その身と引き換えに門を守る事ができるようになる
　美鈴はそれをわかって無茶をしているのだ



「美鈴！」
　門番隊が美鈴を止めているとき
　咲夜がトレーニングルームの扉をあけて駆け込んできた　
　門番隊をかき分けて、美鈴が居る場所に駆け込み
「め、美鈴…貴方！」
　美鈴の姿を見て絶句した
「…咲夜さん…」
　そこに居るのは一週間前の美鈴ではない
　その姿はあまりにも痛々しいものであった
「美鈴…今すぐそれを止めなさい」
　咲夜も門番隊と同じで美鈴がしている事を止めようとする

「…いくら咲夜さんの命令でも聞けません」
　だが、美鈴もそれを拒否すると再び行動を開始する
「止めないのなら！」
　その様子を見て、咲夜が強硬手段に出る
　時を止めて、大量のナイフを美鈴にばら撒く
（御免なさい美鈴…でも…今の貴方を止めないといけない！）

　体の変貌をしている美鈴を戻さないといけない
　その思いで大量のナイフをばら撒き
（そして時は動き出す！）
　止めていた時間が動き出し
　大量のナイフが美鈴に向けて放たれた
　そして、美鈴の体中に突き刺さる…はずだった

「無駄ですよ…咲夜さん」
「そ、そんな！？」
　美鈴に投げられたはずのナイフは、全て美鈴の身体に当り





























「今の私の『腹筋』の前にはナイフは通じません！」



　
　マッチョになりかけている美鈴の身体によって
　ナイフの刃が全て破壊されてしまった

「これで腹筋を更に鍛え上げれば…
　魔理沙さんのマスタースパークにも耐えきれます」
「止めて美鈴！お願いだから…ムキムキにならないで！」

　咲夜が絶叫する
　目の前に居る美鈴は『まだ』美鈴の面影を残しているが
　上腕筋はパンパンに膨れ上がり
　脚も筋肉が膨れ上がり綺麗だった脚線美が台無しになろうとしていた
　そして、今鍛えているのは腹筋…
　もし…もし御腹が綺麗に六つに割れるようなことになれば


「弾幕少女って言われなくなるのよ！？いいのそれで！」
「それで魔理沙さんを止めれるならば！喜んで！」　

　美鈴が更に腹筋のスピードを上げ始めた





　この後、半泣きの咲夜が大急ぎでレミリアに報告　
　美鈴を除く紅魔館首脳達が大急ぎで美鈴を止めに向かう事になった

　結局、美鈴の耐久力超強化作戦は
　紅魔館首脳陣全員に抱き付かれ、パチュリーと咲夜の半泣きの説得と
　レミリアとフランの二人の泣きつきによって破棄された




　
　後にレミリア・スカーレット氏がこう語る

「もし、あの時門番隊の一人が咲夜を連れてこなかったら
　紅魔館の宝であるあの豊満な胸がなくなって
　硬い胸板になっていたかもしれない」

　どうも、脇役です…

　マッチョなメーリンは好きですか？
　私は女性らしい柔らかな美鈴が大好きです