春。
「・・ぐ~・・・・・が~・・・・・・・zzZ」
とある草花の咲き乱れる丘で一人の鬼が大の字になっていびきをかきながら寝ていた。
なぜ、其処で寝ているのかはわからない。概ね手に持った瓢箪の中の酒を飲みながら、この季節満開を迎えている桜で
花見酒をしていたと見られる。
そこへ、一人の少女が現れた。その少女は、髪が白色なのか銀色なのか・・・赤いもんぺを穿き長い髪を揺らしながらこの
丘へとやってきた。そして、その少女-藤原妹紅-は辺りを大きく見回すと小さな鬼の姿を見つけ半ば呆れながらも鬼の寝
ている場所へと歩いていった。そのまま傍まで歩み寄ると、少しきつい口調で寝ている鬼に話しかける。
「・・おい。起きろ・・鬼。・・・つるぺったん!」
「・・・・んぁ?・・・・・」
鬼-伊吹翠香-が目を覚ました。「つるぺったん」という単語で起きるのもどうかと思うが・・少々寝ぼけているようで、
よだれを垂らしながらどこか虚ろとしている。目も半開きだ。しかし、妹紅を見つけるとすぐにいつもの翠香に戻った。
「・・やぁ~・・ヒック・・よくきたねぇ~。」
「昼間からよく飲むねぇ。酒の飲みすぎは体に悪いよ?」
「あたしゃ、鬼だから大丈夫~。」
「どうだかね・・・。」
妹紅が翠香のいる丘を訪れた理由。それはただ単純に翠香に誘われたからだった。妹紅が竹林から出かける機会は少
なく、異変が起きたとき、宴会に誘われたとき、人里にいる半獣に会いに行くときぐらいしか出かけないのだ。相手が翠香
でなければ竹林からあまり出ない妹紅は断っていたかもしれない。では、何故わざわざ竹林を出てまでやってきたのか。
それは今の今まで翠香と話す機会がなかったからだ。しかし、それだけではたいした理由にもならないので、これはただの
気まぐれといっても良いかもしれない。翠香の一方的な気まぐれなのだろうが、それでも永いときを生きる二人にとっては貴重
な時間でもある。だからこそ、悠久の時を生きる翠香と永遠の時を生きる妹紅はほんの小さなことも大切にするようにしていた。
風が吹くたびに桜の花びらが舞う桜の木の下で、一人は杯を手に、もう一人は瓢箪を手に酒を飲んだ。ときに他愛もない話を
しながら静かな一時を過ごす。
「・・・・・・・・・・・。」
「どうかしたぁ~?」
「・・いやなに、たまにはこういうのもいいかなっと思って・・・さ。普段が普段だからね。」
「ん~。そっかぁ~。でも、楽しいんでしょ?輝夜との遊びは。」
「まぁね。自分が生きてるということを一番に実感できる。皮肉なものさ。」
「生きてるって素晴らしいね!」
「あのなぁ・・」
そして妹紅は頭を抱える。あまり翠香のような性格のものとは接しないため翠香のテンションについていけないのだ。
しかし、別段それを苦ともしていない。むしろその方が楽しい。そう、妹紅は感じていた。
・・・端から見れば珍しい組み合わせに見えるだろう。だが、ここは幻想卿である。何が起こるかわからない。だからこそ、この
他愛もない日々が面白おかしく過ごせるのだ。
生きること・・それはこの世界に生れ落ちてから誰もが抱く行為。それは案外難しい。
「外の世界の人間はみんな忙しそうに外の世界を走り回ってる。でも幻想卿は違う。色々なものが幻想になるこの世界では
自分の望むことを、好きなことをするができる。まぁそれには限度があり、外の世界と比べれば不便と思うこともあるだろうけ
ど、あたしはこっちの方が好きだね~。勝手気ままにできる方が気が楽だしねぇ~。」
「気が楽・・か。」
翠香の言うことに妙に納得してしまう。それは妹紅が蓬莱の薬を口にしてから今まで蓬莱山輝夜への復讐の念しか持っていなかったから。
それこそが妹紅が輝夜と”遊び”をするようになったきっかけであり、原因でもある。だから、妹紅は今が楽しいと思うことができたのだろう。
「そういう生き方も悪くない・・か。」
「人それぞれだからねぇ~」
そんなもんさ。と言う翠香のことばを最後に二人は口を閉ざし、二人は日が暮れるまで桜の木の下で酒を飲み交わした。
伊吹翠香と藤原妹紅。
どこか似ている半面、性格はまったくの正反対。
そんな二人だからこそ惹かれあうものがあったのかもしれない。
終わり
「・・ぐ~・・・・・が~・・・・・・・zzZ」
とある草花の咲き乱れる丘で一人の鬼が大の字になっていびきをかきながら寝ていた。
なぜ、其処で寝ているのかはわからない。概ね手に持った瓢箪の中の酒を飲みながら、この季節満開を迎えている桜で
花見酒をしていたと見られる。
そこへ、一人の少女が現れた。その少女は、髪が白色なのか銀色なのか・・・赤いもんぺを穿き長い髪を揺らしながらこの
丘へとやってきた。そして、その少女-藤原妹紅-は辺りを大きく見回すと小さな鬼の姿を見つけ半ば呆れながらも鬼の寝
ている場所へと歩いていった。そのまま傍まで歩み寄ると、少しきつい口調で寝ている鬼に話しかける。
「・・おい。起きろ・・鬼。・・・つるぺったん!」
「・・・・んぁ?・・・・・」
鬼-伊吹翠香-が目を覚ました。「つるぺったん」という単語で起きるのもどうかと思うが・・少々寝ぼけているようで、
よだれを垂らしながらどこか虚ろとしている。目も半開きだ。しかし、妹紅を見つけるとすぐにいつもの翠香に戻った。
「・・やぁ~・・ヒック・・よくきたねぇ~。」
「昼間からよく飲むねぇ。酒の飲みすぎは体に悪いよ?」
「あたしゃ、鬼だから大丈夫~。」
「どうだかね・・・。」
妹紅が翠香のいる丘を訪れた理由。それはただ単純に翠香に誘われたからだった。妹紅が竹林から出かける機会は少
なく、異変が起きたとき、宴会に誘われたとき、人里にいる半獣に会いに行くときぐらいしか出かけないのだ。相手が翠香
でなければ竹林からあまり出ない妹紅は断っていたかもしれない。では、何故わざわざ竹林を出てまでやってきたのか。
それは今の今まで翠香と話す機会がなかったからだ。しかし、それだけではたいした理由にもならないので、これはただの
気まぐれといっても良いかもしれない。翠香の一方的な気まぐれなのだろうが、それでも永いときを生きる二人にとっては貴重
な時間でもある。だからこそ、悠久の時を生きる翠香と永遠の時を生きる妹紅はほんの小さなことも大切にするようにしていた。
風が吹くたびに桜の花びらが舞う桜の木の下で、一人は杯を手に、もう一人は瓢箪を手に酒を飲んだ。ときに他愛もない話を
しながら静かな一時を過ごす。
「・・・・・・・・・・・。」
「どうかしたぁ~?」
「・・いやなに、たまにはこういうのもいいかなっと思って・・・さ。普段が普段だからね。」
「ん~。そっかぁ~。でも、楽しいんでしょ?輝夜との遊びは。」
「まぁね。自分が生きてるということを一番に実感できる。皮肉なものさ。」
「生きてるって素晴らしいね!」
「あのなぁ・・」
そして妹紅は頭を抱える。あまり翠香のような性格のものとは接しないため翠香のテンションについていけないのだ。
しかし、別段それを苦ともしていない。むしろその方が楽しい。そう、妹紅は感じていた。
・・・端から見れば珍しい組み合わせに見えるだろう。だが、ここは幻想卿である。何が起こるかわからない。だからこそ、この
他愛もない日々が面白おかしく過ごせるのだ。
生きること・・それはこの世界に生れ落ちてから誰もが抱く行為。それは案外難しい。
「外の世界の人間はみんな忙しそうに外の世界を走り回ってる。でも幻想卿は違う。色々なものが幻想になるこの世界では
自分の望むことを、好きなことをするができる。まぁそれには限度があり、外の世界と比べれば不便と思うこともあるだろうけ
ど、あたしはこっちの方が好きだね~。勝手気ままにできる方が気が楽だしねぇ~。」
「気が楽・・か。」
翠香の言うことに妙に納得してしまう。それは妹紅が蓬莱の薬を口にしてから今まで蓬莱山輝夜への復讐の念しか持っていなかったから。
それこそが妹紅が輝夜と”遊び”をするようになったきっかけであり、原因でもある。だから、妹紅は今が楽しいと思うことができたのだろう。
「そういう生き方も悪くない・・か。」
「人それぞれだからねぇ~」
そんなもんさ。と言う翠香のことばを最後に二人は口を閉ざし、二人は日が暮れるまで桜の木の下で酒を飲み交わした。
伊吹翠香と藤原妹紅。
どこか似ている半面、性格はまったくの正反対。
そんな二人だからこそ惹かれあうものがあったのかもしれない。
終わり
でも、「翠」じゃなくて「萃」・・・
わかりゃあいいですよね!
後、幻想『卿』…間違い、幻想『郷』ですよ?