処は博麗神社、時は正午を回って少し、天気は雲ひとつ無い快晴。
いつも通り縁側で茶を啜っていると、いつも通りいつもの魔理沙がやって来た。
つまり、何か厄介事を抱えて。
「おーい、霊夢ー聞いたか?」
「ええ、お昼くらい偶には自分の家で食べたら?」
「って、聞いてないだろ。」
仕方なく聞けば、最近とあるものが消える事件が相継いでいるらしい。
この時期、殆ど一部の者が要とする品。
チョコレート…だ、そうだ。
それが、ちょっと目を離した隙に忽然と姿を消してしまうらしい。
一度や二度ならず、処も時も問わず。
「ああ、それなら昨日…だったかしら?
普段は余り紅くないメイドが、珍しく顔と目を真っ赤にして此処に来たとき聞いたわよ。」
「なんだ、咲夜も被害に遭ったのか…これだといよいよ以って犯人が判らなくなってきたぜ。」
「紫の仕業じゃないの?」
しかし、今の時期 紫は冬眠している筈だ。
念の為に油揚げ片手に八雲の式を尋ねたところ、此処最近は静かに寝息を立てているだけだと言う。
それに、あれだけ大量のチョコを一人で食べるとは考え難い。
「じゃあ、あの暴食亡霊でしょ。」
だが、その従者である妖夢も件の被害者なのだ。
それだけ聞くと益々 幽々子が怪しく思えるが、彼女の賄いは全て妖夢がこなしており、
幻想郷中の…しかもチョコのみ幽々子がを食い荒らし回るなどとは考え難い。
死んでいるとはいえ、流石に其処まで堕ちてはいないだろう。
「じゃあ誰が…」
「それが判らないから参ってるんだぜ。
犯人を燻り出して、ジャッジメントするまでもなく私がデリート許可を…」
「って、魔理沙も?」
「あー…まぁ、な。」
「ふぅん…で、誰にあげるつもりだったのよ?」
「あー…それは、だな――
答えに困り、魔理沙の頬が徐々に紅潮していく。
そして、紅に染まり切る寸でのところで、突如辺りを闇が覆い出だす。
「ん? な、何だ?」
「おかしいわね、今日は雲ひとつ無い筈じゃ…」
二人同時に上を見上げると、巨大な『何か』が神社の空を覆っている。
茶色っぽく、仄かに甘い香りが――『何か』?
これは巨大なチョコレート!?
「ハッピィー St.バレンタイーン! らしいね」
何処からか声が響いてくる。
目を凝らすと、巨大な…『チョコ塊』とでも呼ぼうか、その中心に人影らしきものが。
「ちょ、誰よ! って言うか何!?」
「ははは…霊夢、目が悪くなった、か?
よく見てみろよ…アレは――
「幽霊らしい演出をしてみました(はぁと」
――魅魔様、だぜ…。」
目を凝らすと、居た、本当に。
緑の挑発を風に流し、青い衣とマントを風になびかせ。
快晴だった所為か、溶け始めているチョコ塊の中心に。
「何処が『幽霊らしい』だ!」
「そんな事はどうでもいいんだよ。
それより…霊夢!魔理沙!」
「あー…私はもうオチが読めたぜ。
この『弾幕』は」
「何よ!」
「私の『愛』を――
「回避不可能だな…。」
受け取りなッ!!」
ブンッ!!
「え?ちょっと『ブンッ!』って…」
「覚悟は出来たか? 私は、できてない…」
轟音、次いで破壊音、そして凄まじい地鳴り。
騒動の度に神社が壊れるのは、幻想郷に於いては最早一つの法則である。
要因と言うか、根元は大体絞られるのだが。
余談だが、この後 霊夢は一連の事件の犯人にされそうになった。
しかし、誰もが珍しく体裁を崩して弁解する霊夢と、神社のこの有様を見ると、
同情の言葉を投げ掛けて帰っていった。
尚、この後暫く魅魔は完全に姿を眩ましていたという。
いつも通り縁側で茶を啜っていると、いつも通りいつもの魔理沙がやって来た。
つまり、何か厄介事を抱えて。
「おーい、霊夢ー聞いたか?」
「ええ、お昼くらい偶には自分の家で食べたら?」
「って、聞いてないだろ。」
仕方なく聞けば、最近とあるものが消える事件が相継いでいるらしい。
この時期、殆ど一部の者が要とする品。
チョコレート…だ、そうだ。
それが、ちょっと目を離した隙に忽然と姿を消してしまうらしい。
一度や二度ならず、処も時も問わず。
「ああ、それなら昨日…だったかしら?
普段は余り紅くないメイドが、珍しく顔と目を真っ赤にして此処に来たとき聞いたわよ。」
「なんだ、咲夜も被害に遭ったのか…これだといよいよ以って犯人が判らなくなってきたぜ。」
「紫の仕業じゃないの?」
しかし、今の時期 紫は冬眠している筈だ。
念の為に油揚げ片手に八雲の式を尋ねたところ、此処最近は静かに寝息を立てているだけだと言う。
それに、あれだけ大量のチョコを一人で食べるとは考え難い。
「じゃあ、あの暴食亡霊でしょ。」
だが、その従者である妖夢も件の被害者なのだ。
それだけ聞くと益々 幽々子が怪しく思えるが、彼女の賄いは全て妖夢がこなしており、
幻想郷中の…しかもチョコのみ幽々子がを食い荒らし回るなどとは考え難い。
死んでいるとはいえ、流石に其処まで堕ちてはいないだろう。
「じゃあ誰が…」
「それが判らないから参ってるんだぜ。
犯人を燻り出して、ジャッジメントするまでもなく私がデリート許可を…」
「って、魔理沙も?」
「あー…まぁ、な。」
「ふぅん…で、誰にあげるつもりだったのよ?」
「あー…それは、だな――
答えに困り、魔理沙の頬が徐々に紅潮していく。
そして、紅に染まり切る寸でのところで、突如辺りを闇が覆い出だす。
「ん? な、何だ?」
「おかしいわね、今日は雲ひとつ無い筈じゃ…」
二人同時に上を見上げると、巨大な『何か』が神社の空を覆っている。
茶色っぽく、仄かに甘い香りが――『何か』?
これは巨大なチョコレート!?
「ハッピィー St.バレンタイーン! らしいね」
何処からか声が響いてくる。
目を凝らすと、巨大な…『チョコ塊』とでも呼ぼうか、その中心に人影らしきものが。
「ちょ、誰よ! って言うか何!?」
「ははは…霊夢、目が悪くなった、か?
よく見てみろよ…アレは――
「幽霊らしい演出をしてみました(はぁと」
――魅魔様、だぜ…。」
目を凝らすと、居た、本当に。
緑の挑発を風に流し、青い衣とマントを風になびかせ。
快晴だった所為か、溶け始めているチョコ塊の中心に。
「何処が『幽霊らしい』だ!」
「そんな事はどうでもいいんだよ。
それより…霊夢!魔理沙!」
「あー…私はもうオチが読めたぜ。
この『弾幕』は」
「何よ!」
「私の『愛』を――
「回避不可能だな…。」
受け取りなッ!!」
ブンッ!!
「え?ちょっと『ブンッ!』って…」
「覚悟は出来たか? 私は、できてない…」
轟音、次いで破壊音、そして凄まじい地鳴り。
騒動の度に神社が壊れるのは、幻想郷に於いては最早一つの法則である。
要因と言うか、根元は大体絞られるのだが。
余談だが、この後 霊夢は一連の事件の犯人にされそうになった。
しかし、誰もが珍しく体裁を崩して弁解する霊夢と、神社のこの有様を見ると、
同情の言葉を投げ掛けて帰っていった。
尚、この後暫く魅魔は完全に姿を眩ましていたという。