久々に休みが出来たので、オルゴールを投げて遊んでいたらお嬢様に怒られた。
「のぅ咲夜。オルゴールは投げ捨てる物では無いと思いはせんか?」
「すみません…… ですが、一回投げてみたかったんです」
「ふむぅ…… ぬしの考える事は分からないでありんす」
「お嬢様もやってみませんか? 結構楽しいですよ」
「たわけっ! ぬしのような奴は、今日の晩飯抜きじゃ!」
◆
ということで、十六夜咲夜、休日にして晩飯抜きである。
気を紛らわす為に、今度は外に出てオルゴールを投げたら、門番に見つかった。
「……咲夜さん。何やってるアル?」
「何、ってオルゴールを投げてるのよ」
「オルゴール…… ってオルゴールアルか?」
「そうよ、オルゴール。一回投げてみたかったの」
「一回って…… 沢山用意してるじゃないですか……アル」
「一回は一回。なのに、百回は百回でありながら一回でもあるのよ」
理屈は分からん、と首を振りつつ、美鈴は山積みになっているオルゴールを手に取った。
「これは…… 結構立派なオルゴールアル。音も鳴るアルねぇ。……咲夜さんの私物っぽくて幸いアル」
「私がそう軽率に紅魔館のオルゴールを投げると思う?」
「そ、そうですねアル! 咲夜さんがそんな奇行をするはずが……」
「最後のお楽しみにとっておいてあるに決まってるじゃない!」
門番は涙を流しながら、私にラーメンを作ってくれた。
◆
お腹いっぱいになった所で、図書館に行ってオルゴールを投げたら、パチュリー様に当たった。
「パチュリー様! 大丈夫ですか!?」
「……」
「パチュリー様っ!? 投げていいですか?」
「……」
「いいんですねっ!?」
「……」
ジャイアントスイングをするスペースが無かったので、代わりにナックルアローを食らわせてやった。
◆
パチュリー様がマジで行動不能なので、小悪魔に介抱させる事にした。
「パチュリー様、大丈夫かしらね?」
「大丈夫なんじゃないのぉ? いっつも倒れてる割にまだ生きてるから今回も大丈夫だと思うわぁ」
「ところで小悪魔…… オルゴール投げていい?」
「オルゴールぅ? いいけどぉ…… 出来れば、ここじゃなくて、地下室で投げて欲しいわぁ」
「地下室…… 妹様にぶつけろって事? それはいくら私でも死ぬわよ」
「キャッチオルゴールでもすればいいじゃないのぉ」
投げっぱなしの休日も、いよいよ佳境に来ている。
果たして投げっぱなしで終わること無くどうにかなるのだろうか。
◆
地下室へ。妹様は寝ていたので、たたき起こした。
「妹様! 朝ですよ!」
「我は夜行性なり……」
「じゃあ夜です!」
「確かに今は夜である! だが、やる事が無い故寝ているのだ! それとも何か? 咲夜、貴様が我の遊戯の相手を務めるとでも言うのか?」
「その通りです。遊びましょう、妹様」
「合い分かった。では……」
懐からスペルカードを取り出した妹様を制する。
「待って下さい。今日は弾幕ごっこで遊ぶのではありません」
「ほぅ…… では、何をするのだ?」
「キャッチオルゴールです。オルゴールを投げ合って、取れなかった方が負けです」
「なるほどのぅ…… 面白そうじゃ」
「その代わり…… 私も全力です。お互い恨みっこ無しで」
「当然だ。貴様が本気で無ければ、我も本気を出す意味がないからな!」
ここに来て、投げっぱなしのオルゴールが、交流の手段と変わる。
その時、オルゴールの位置は変化する。
◆
ポンポンポロロンポンポロロン。
奇妙な旋律を奏でるオルゴールが、香霖堂に、それはもうたくさんあった。
私は思わず小遣いで全部買ってしまった。香霖も在庫処理に困っていたらしく、格安で売ってくれた。
そのオルゴールの山、どうやら五種類に分かれているらしく。
私の音色、お嬢様の音色、妹様の音色、美鈴の音色、パチュリー様の音色。五種類あって、五人分。
そう思って聞くと、とってもしっくり来る物だった。
これは奇跡なのかなー、と私はオルゴールを聴きながら思った物だ。
……だけど、流石に部屋の半分を占めてて邪魔だった。
◆
オルゴールはみるみるうちに無くなっていく。
安物だから、一投ごとにぶっ壊れる。
既に勝負は投げ合いでは無く、如何に相手にダメージを与えるかに変化していた。
「咲夜ぁ! そろそろ倒れてはどうだ!?」
「い、妹様こそ……」
お互い満身創痍である。煩雑に響くオルゴールの残骸が発する音が、空しい。
地下だから反響して余計空しい。
めんどうなので、ナイフを投げる時の要領で山積みになってるオルゴールを全部投げた。
妹様KO。マジでキレかかってるけど、気にしない。
三十六計逃げるにしかず。
◆
こうして、十六夜咲夜の休日は終わった。
◆
咲夜はあっという間に逃げていってしまった。
残されたのは山のようなオルゴールの残骸。
その中でも損傷が軽いのを引っ張り出して、聞いてみると妙にしっくり来て、思わず握りつぶしてしまった。
まるで憎く、それでいて大好きな姉のよう。
もうちょっと損傷が軽いのを探してみたら、結局山のようなオルゴールは五種類に分別される事が分かった。
姉。図書館在住の魔女。敬虔な門番。瀟洒な召使い。そして……もう一種類。
これは…… 私なのだろうか。
◆
そっとベッドの下にオルゴールを隠した。
一つぐらいなら隠す隙間はある。
「のぅ咲夜。オルゴールは投げ捨てる物では無いと思いはせんか?」
「すみません…… ですが、一回投げてみたかったんです」
「ふむぅ…… ぬしの考える事は分からないでありんす」
「お嬢様もやってみませんか? 結構楽しいですよ」
「たわけっ! ぬしのような奴は、今日の晩飯抜きじゃ!」
◆
ということで、十六夜咲夜、休日にして晩飯抜きである。
気を紛らわす為に、今度は外に出てオルゴールを投げたら、門番に見つかった。
「……咲夜さん。何やってるアル?」
「何、ってオルゴールを投げてるのよ」
「オルゴール…… ってオルゴールアルか?」
「そうよ、オルゴール。一回投げてみたかったの」
「一回って…… 沢山用意してるじゃないですか……アル」
「一回は一回。なのに、百回は百回でありながら一回でもあるのよ」
理屈は分からん、と首を振りつつ、美鈴は山積みになっているオルゴールを手に取った。
「これは…… 結構立派なオルゴールアル。音も鳴るアルねぇ。……咲夜さんの私物っぽくて幸いアル」
「私がそう軽率に紅魔館のオルゴールを投げると思う?」
「そ、そうですねアル! 咲夜さんがそんな奇行をするはずが……」
「最後のお楽しみにとっておいてあるに決まってるじゃない!」
門番は涙を流しながら、私にラーメンを作ってくれた。
◆
お腹いっぱいになった所で、図書館に行ってオルゴールを投げたら、パチュリー様に当たった。
「パチュリー様! 大丈夫ですか!?」
「……」
「パチュリー様っ!? 投げていいですか?」
「……」
「いいんですねっ!?」
「……」
ジャイアントスイングをするスペースが無かったので、代わりにナックルアローを食らわせてやった。
◆
パチュリー様がマジで行動不能なので、小悪魔に介抱させる事にした。
「パチュリー様、大丈夫かしらね?」
「大丈夫なんじゃないのぉ? いっつも倒れてる割にまだ生きてるから今回も大丈夫だと思うわぁ」
「ところで小悪魔…… オルゴール投げていい?」
「オルゴールぅ? いいけどぉ…… 出来れば、ここじゃなくて、地下室で投げて欲しいわぁ」
「地下室…… 妹様にぶつけろって事? それはいくら私でも死ぬわよ」
「キャッチオルゴールでもすればいいじゃないのぉ」
投げっぱなしの休日も、いよいよ佳境に来ている。
果たして投げっぱなしで終わること無くどうにかなるのだろうか。
◆
地下室へ。妹様は寝ていたので、たたき起こした。
「妹様! 朝ですよ!」
「我は夜行性なり……」
「じゃあ夜です!」
「確かに今は夜である! だが、やる事が無い故寝ているのだ! それとも何か? 咲夜、貴様が我の遊戯の相手を務めるとでも言うのか?」
「その通りです。遊びましょう、妹様」
「合い分かった。では……」
懐からスペルカードを取り出した妹様を制する。
「待って下さい。今日は弾幕ごっこで遊ぶのではありません」
「ほぅ…… では、何をするのだ?」
「キャッチオルゴールです。オルゴールを投げ合って、取れなかった方が負けです」
「なるほどのぅ…… 面白そうじゃ」
「その代わり…… 私も全力です。お互い恨みっこ無しで」
「当然だ。貴様が本気で無ければ、我も本気を出す意味がないからな!」
ここに来て、投げっぱなしのオルゴールが、交流の手段と変わる。
その時、オルゴールの位置は変化する。
◆
ポンポンポロロンポンポロロン。
奇妙な旋律を奏でるオルゴールが、香霖堂に、それはもうたくさんあった。
私は思わず小遣いで全部買ってしまった。香霖も在庫処理に困っていたらしく、格安で売ってくれた。
そのオルゴールの山、どうやら五種類に分かれているらしく。
私の音色、お嬢様の音色、妹様の音色、美鈴の音色、パチュリー様の音色。五種類あって、五人分。
そう思って聞くと、とってもしっくり来る物だった。
これは奇跡なのかなー、と私はオルゴールを聴きながら思った物だ。
……だけど、流石に部屋の半分を占めてて邪魔だった。
◆
オルゴールはみるみるうちに無くなっていく。
安物だから、一投ごとにぶっ壊れる。
既に勝負は投げ合いでは無く、如何に相手にダメージを与えるかに変化していた。
「咲夜ぁ! そろそろ倒れてはどうだ!?」
「い、妹様こそ……」
お互い満身創痍である。煩雑に響くオルゴールの残骸が発する音が、空しい。
地下だから反響して余計空しい。
めんどうなので、ナイフを投げる時の要領で山積みになってるオルゴールを全部投げた。
妹様KO。マジでキレかかってるけど、気にしない。
三十六計逃げるにしかず。
◆
こうして、十六夜咲夜の休日は終わった。
◆
咲夜はあっという間に逃げていってしまった。
残されたのは山のようなオルゴールの残骸。
その中でも損傷が軽いのを引っ張り出して、聞いてみると妙にしっくり来て、思わず握りつぶしてしまった。
まるで憎く、それでいて大好きな姉のよう。
もうちょっと損傷が軽いのを探してみたら、結局山のようなオルゴールは五種類に分別される事が分かった。
姉。図書館在住の魔女。敬虔な門番。瀟洒な召使い。そして……もう一種類。
これは…… 私なのだろうか。
◆
そっとベッドの下にオルゴールを隠した。
一つぐらいなら隠す隙間はある。