博麗神社の縁側、すっかり冷え切った夏の夕方のことだった。
そこには魔理沙とアリスの二人が寄り添うように座っていた。
霊夢はというと今日は夏祭りだから仕事があると言って既に里の方に出向いていた。
二人の間には沈黙しかなかった。
日頃対立してばかりの二人、何か言い出したらまた相手を起こらせてしまうのではないか。魔理沙はそれが怖かった。
「なぁ、アリス…」
勇気を出して声をかけてみてもアリスはそっぽを向いて何よ、と答えるだけだった。
「あぁ、いや、何でもないぜ」
どもってしまい、結局話を切り出せない自分。それが魔理沙にとってはとても歯痒かった。
一方でアリスは困惑していた。
大切な話があるから四時ぐらいに博麗神社に来てくれといわれて何かと思って来たものの、当の魔理沙は中々話を始めない。
声をかけられてもついつい味気のない返事を返してしまう。
魔理沙に呼ばれたことは初めてだったし、少しぐらい仲良くなってもいいのに…。そう思っていても自分ではどうしようもなく、結局魔理沙の言葉を待つしか出来なかった。
「アリス、夏祭り行かないか?」
ついにシビレをきらした魔理沙はそう言った。
「へ?」
という間の抜けた返事を返したのはアリスだ。
「いやぁ、最近私たちって喧嘩ばかりだし、…そろそろ仲直りがしたくて…」
言い終わって魔理沙は少し後悔をした。
何を私は言ってるんだ。…もう少し言い方ってものもあっただろうに。
喧嘩といっても大抵悪いのは自分だと自覚はしていた。でも言い出せなかった。
何か仲直りのチャンスはないかと霊夢に相談したところ、出た案がこの夏祭りだった。
「デート気分で楽しみなさいよ」
と彼女は言っていたが今は気が気でなかった。
ここまで恥ずかしいことを言って、断られたらどうしよう…と。
何という間抜けな声を出してしまったものだ、とアリスは嘆いた。
仲直り?何で私と魔理沙の二人だけで…。
…二人っきり。想像しただけで顔が真っ赤に染まった気がした。
「ア、アリス…?やっぱり私じゃだめか?」
心配になって顔を覗き込もうとしてきた魔理沙を手で制止し、本当に私で良いの?と確認する。
え、と素っ頓狂な声を上げたのは今度は魔理沙だった。
「だって、魔理沙…友達沢山いるでしょ?何も私と行かなくても…」
言っていて胸が苦しくなっていくのを感じていた。
もしここで他の人と行くと言われたら後でいくら後悔しても遅いことを分かっていた。
考えた分だけ、悪い方向に頭が働く。
「いや、アリスとじゃないとだめなんだ」
その一言でアリスに何かがこみ上げてきた。
あぁ、言ってしまった。告白じゃああるまいし…。
「…ありがとう。是非行かせてもらうわ」
同様に顔を染めている魔理沙は歓喜した。
「そうこなくちゃな。…そろそろ時間だし、行こうぜ」
「まったく…仕事が早いわねぇ」
早く行こうとした理由は二つ。
一つは早く祭りに行きたかったから。
もう一つは自分が実は口下手なくせして格好つけて結局恥ずかしくなってしまったことを隠すためだからだった。
里の住人は祭りが好きだった。
結婚祝いで祭りを開き、出産祝いで祭りを開くほどだった。
今回の夏祭りだって夏に入ってすでに三回目のものだった。
アリスも何度か一人で来たことがあり、顔見知りと会うたびに切ない思いをしていた。
また誘われなかった…と。
興味をなさそうな素振りをしていた自分が原因だということは分かっていた。
それでも彼女にはそれが辛かったのだ。
「ねえ魔理沙。金魚すくいしていい?」
「おう、いいぞ。次は終わったら私の番だぜ?」
「はいはい…。魔理沙には絶対に負けないからね!」
「ねえ、射的していい?」
「どうぞどうぞ」
「…全然当たらないんだけど」
「やり方の問題だぜ。…こういう感じで」
「へぇ…。魔理沙は凄いわねぇ」
「うん?そうか…?」
「ねえ、あのふわふわした奴、何?」
「わた飴だぜ」
「…投げて遊ぶの?」
「いや、食べ物だ。砂糖で作った」
「食べてみたいけど太りそうね…」
「せっかくの祭りだしものは試しって奴だ。…一個買ってくる」
「あら、ありがとう」
「アリス、随分楽しそうに見えるぜ」
「だって楽しいもの…」
「ん、そうか。それはよかったぜ」
楽しい時間が過ぎていくのはあっという間だった。
日が完全に落ちて、祭りは終わりに近づいていった。
「…祭りの後の余韻って何か悲しいわね」
「そうだな。…でもそれがあってこそ祭りだと私は思うぜ」
屋台を片付けていく人も、星の散らばった空も、何もかもが悲哀を映し出していた。
「私ね、お祭りは嫌いだったの」
「そりゃまた珍しいなぁ」
階段に腰をおろした二人、まだ残っていた花火が打ち上げられていく。
「だって、一人で屋台を見ても、花火を見ても楽しくないもの」
そういうアリスの横顔は暗かった。
「…ごめん、悪かった」
「別に魔理沙を責めてるわけじゃないわよ…」
何ともいえない気分だった。
自分が霊夢たちと遊びほうけていた間、彼女はずっと苦しかったのだろうか。
そう考えただけでも魔理沙はぞっとした。
自分だったらきっと、耐えられないだろう。
「でね、今日誘ってもらったとき、本当に嬉しかったの」
さっきと一転し、表情は明るくなっていた。
「だから…本当に今日はありがとう」
満面の笑みを浮かべてきたアリス。
魔理沙にとってはそれだけで十分だった。
「また…誘ってくれる?」
「勿論だぜ。今度は霊夢を含めて三人で行くか?」
「うん!…ありがとう魔理沙。じゃあね!」
「あぁ、ちょっと!」
じゃあね、と言ったあと飛び上がったアリスは瞬く間に夜空の中へ消えていった。
「ちくしょう…結局思いは伝えられなかったか…」
残された魔理沙の思いは、今日届くことはなかった。
そこには魔理沙とアリスの二人が寄り添うように座っていた。
霊夢はというと今日は夏祭りだから仕事があると言って既に里の方に出向いていた。
二人の間には沈黙しかなかった。
日頃対立してばかりの二人、何か言い出したらまた相手を起こらせてしまうのではないか。魔理沙はそれが怖かった。
「なぁ、アリス…」
勇気を出して声をかけてみてもアリスはそっぽを向いて何よ、と答えるだけだった。
「あぁ、いや、何でもないぜ」
どもってしまい、結局話を切り出せない自分。それが魔理沙にとってはとても歯痒かった。
一方でアリスは困惑していた。
大切な話があるから四時ぐらいに博麗神社に来てくれといわれて何かと思って来たものの、当の魔理沙は中々話を始めない。
声をかけられてもついつい味気のない返事を返してしまう。
魔理沙に呼ばれたことは初めてだったし、少しぐらい仲良くなってもいいのに…。そう思っていても自分ではどうしようもなく、結局魔理沙の言葉を待つしか出来なかった。
「アリス、夏祭り行かないか?」
ついにシビレをきらした魔理沙はそう言った。
「へ?」
という間の抜けた返事を返したのはアリスだ。
「いやぁ、最近私たちって喧嘩ばかりだし、…そろそろ仲直りがしたくて…」
言い終わって魔理沙は少し後悔をした。
何を私は言ってるんだ。…もう少し言い方ってものもあっただろうに。
喧嘩といっても大抵悪いのは自分だと自覚はしていた。でも言い出せなかった。
何か仲直りのチャンスはないかと霊夢に相談したところ、出た案がこの夏祭りだった。
「デート気分で楽しみなさいよ」
と彼女は言っていたが今は気が気でなかった。
ここまで恥ずかしいことを言って、断られたらどうしよう…と。
何という間抜けな声を出してしまったものだ、とアリスは嘆いた。
仲直り?何で私と魔理沙の二人だけで…。
…二人っきり。想像しただけで顔が真っ赤に染まった気がした。
「ア、アリス…?やっぱり私じゃだめか?」
心配になって顔を覗き込もうとしてきた魔理沙を手で制止し、本当に私で良いの?と確認する。
え、と素っ頓狂な声を上げたのは今度は魔理沙だった。
「だって、魔理沙…友達沢山いるでしょ?何も私と行かなくても…」
言っていて胸が苦しくなっていくのを感じていた。
もしここで他の人と行くと言われたら後でいくら後悔しても遅いことを分かっていた。
考えた分だけ、悪い方向に頭が働く。
「いや、アリスとじゃないとだめなんだ」
その一言でアリスに何かがこみ上げてきた。
あぁ、言ってしまった。告白じゃああるまいし…。
「…ありがとう。是非行かせてもらうわ」
同様に顔を染めている魔理沙は歓喜した。
「そうこなくちゃな。…そろそろ時間だし、行こうぜ」
「まったく…仕事が早いわねぇ」
早く行こうとした理由は二つ。
一つは早く祭りに行きたかったから。
もう一つは自分が実は口下手なくせして格好つけて結局恥ずかしくなってしまったことを隠すためだからだった。
里の住人は祭りが好きだった。
結婚祝いで祭りを開き、出産祝いで祭りを開くほどだった。
今回の夏祭りだって夏に入ってすでに三回目のものだった。
アリスも何度か一人で来たことがあり、顔見知りと会うたびに切ない思いをしていた。
また誘われなかった…と。
興味をなさそうな素振りをしていた自分が原因だということは分かっていた。
それでも彼女にはそれが辛かったのだ。
「ねえ魔理沙。金魚すくいしていい?」
「おう、いいぞ。次は終わったら私の番だぜ?」
「はいはい…。魔理沙には絶対に負けないからね!」
「ねえ、射的していい?」
「どうぞどうぞ」
「…全然当たらないんだけど」
「やり方の問題だぜ。…こういう感じで」
「へぇ…。魔理沙は凄いわねぇ」
「うん?そうか…?」
「ねえ、あのふわふわした奴、何?」
「わた飴だぜ」
「…投げて遊ぶの?」
「いや、食べ物だ。砂糖で作った」
「食べてみたいけど太りそうね…」
「せっかくの祭りだしものは試しって奴だ。…一個買ってくる」
「あら、ありがとう」
「アリス、随分楽しそうに見えるぜ」
「だって楽しいもの…」
「ん、そうか。それはよかったぜ」
楽しい時間が過ぎていくのはあっという間だった。
日が完全に落ちて、祭りは終わりに近づいていった。
「…祭りの後の余韻って何か悲しいわね」
「そうだな。…でもそれがあってこそ祭りだと私は思うぜ」
屋台を片付けていく人も、星の散らばった空も、何もかもが悲哀を映し出していた。
「私ね、お祭りは嫌いだったの」
「そりゃまた珍しいなぁ」
階段に腰をおろした二人、まだ残っていた花火が打ち上げられていく。
「だって、一人で屋台を見ても、花火を見ても楽しくないもの」
そういうアリスの横顔は暗かった。
「…ごめん、悪かった」
「別に魔理沙を責めてるわけじゃないわよ…」
何ともいえない気分だった。
自分が霊夢たちと遊びほうけていた間、彼女はずっと苦しかったのだろうか。
そう考えただけでも魔理沙はぞっとした。
自分だったらきっと、耐えられないだろう。
「でね、今日誘ってもらったとき、本当に嬉しかったの」
さっきと一転し、表情は明るくなっていた。
「だから…本当に今日はありがとう」
満面の笑みを浮かべてきたアリス。
魔理沙にとってはそれだけで十分だった。
「また…誘ってくれる?」
「勿論だぜ。今度は霊夢を含めて三人で行くか?」
「うん!…ありがとう魔理沙。じゃあね!」
「あぁ、ちょっと!」
じゃあね、と言ったあと飛び上がったアリスは瞬く間に夜空の中へ消えていった。
「ちくしょう…結局思いは伝えられなかったか…」
残された魔理沙の思いは、今日届くことはなかった。
マリアリ分の補給になりました!
GJ!
大抵対立設定はアリスのツンデレに変換されててツンデレ嫌いの俺には耐え難い事だったんだけど
これは純粋に好き。
そいつは良かったぁぁ
>>2
好きだけど思いを伝えられずもやもやしてる普通の女の子。それが俺のマーガトロイド
>>3
違うっ、甘いのが書けないだけなんだorz
怒らせて?(誰にも気付かれないかもだけど一応…
あっさりしてて良かったです