Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

すごく先生ね!

2007/10/29 10:52:32
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「先生やりたい!」


 あたいが言うと、その人はいっぱい後ろにさがって、それから泣き出した。へんてこりんな帽子を抱っこして。生徒たちに、ええと、ハナムケできない、とか喚いている。泣くほど嬉しいのかな。
 約束だもんね。あたいが勝ったら何でも言うこときくって。湖はあたいの最強の場所だもん。負けるもんか。
「いいでしょ、あたいが先生で。やったげるよ任しといて」
「約束を破ってはいけない、普段生徒に言っていることだが……いや嘘も方便とも、しかし、」
 言葉を切ると、こっちを見た。あたいに憧れてる? たくさん見てから、「鹿がない」とか「舌がない」とか言って、
「一日だけお前に任せよう。何を教えたいかこの紙に書くといい」
 真っ白い紙と黒い炭をくれた。そっか、先生って何か教えるものだったんだ。紙のはじめに、炭で「教えること」と書く。
「ありがと。後は大丈夫だから」
 教えることを探すために、あたいはすごい光年で飛んだ。


 神社で巫女に紙を見せると、
「賽銭箱にお金を入れるといい気分になれるわよ。って、あんたが書くの? 心配だなぁ……」
 炭を取られそう。急いで書いた。平気なのになんで嫌そうな顔するんだろ。
「もしかしてあたいから先生取ろうとしてる!? やんないよ」
「要らないわ」


『さいせん箱に入れるとなれるわよ』


 獣道で会った狐に聞くと、
「三途の河の計算式はどうかしら。貴女では分からないかな」
 などとくやしいことを言った。
「ゲテモノのくせに生意気よ、かかってきなさいよ」
「正しくはけだものね、正しくないけど。ではまず河の定義から――」
 数字がいっぱいでわからないので途中で全力で力を出して逃げた。もっとちゃんと教えなさい、ごちゃごちゃでぐちゃぐちゃよ!
 何教わったかほとんど忘れた。


『さいせん箱に入れるとゲテモノになれるわよ。あなたでは正しくない』


 紅い家の番人は、
「忍耐と鍛錬に勝る宝はありません。どんな辛い状況でも心で乗り切れます」
 よくわからないけどとても熱いことを教えてくれた気がする。
「うん、どうもありがと。あのさ、何でそんな格好でいるの? バカみたいだよ」
 あたいがそう教えてあげると、番人は涙をわんさか落とした。スカートをちょびっとまくったポーズで、門に縛りつけられている。
「中身見えるよ。見せてるの?」
「やっぱり乗り切れません咲夜さんもうこれ解いてー、バカにバカって言われたー」
「無礼おくせんまんよ!」
 むかっとしたので凍らせて出て行ってやった。いい気味。


『さいせん箱に入れるとゲテモノになれるわよ。あなたでは正しくない咲夜さん。ニンジンと短気に勝る力はない』


 その後もいっぱいいっぱい教えることを聞いた。気がついたら空が暗かった。次の家で終わりにするつもり。
 竹やぶの中の小屋。へんてこりんな帽子の人が、へんてこりんなリボンの人に抱きついて泣いていた。大変な泣き声。
「私はどうしたら良いと思う、妹紅。やはりあの妖精の言葉になど従うべきではなかった。場の勢いでついやってしまった」
「深呼吸。慌てない。明日になれば忘れてるって」
 リボンの人が帽子の人の頭を撫でる。優しい感じ。
「でも、万一、万が一にもあれが覚えていてやってきたら! 可愛い教え子が冷凍保存される様は見たくない」
「よしよし、私がいるから。明日は教室見張ってるわ。凍ったら溶かす」
 じゃましたらいけないかな。ううん、何だか暑いし冷ましてあげよう。
「こんばんは」
 あたいを見ると、へんてこりんな帽子の人はひっ、とかぎゃっ、とかへんてこりんな声をあげた。何かしたっけ。
「ねえ、あたい教えることを探してるの。何か教えてよ」
 震えるへんてこな人じゃなくて、リボンの人が答えた。
「何でもいい?」
 頷いたら、明日は晴れると教えてくれた。わかりやすかった。
「明日晴れるなら、またガマと決闘しようかな。またあたいの全勝に決まってる」
「そうするといいわ」
 そうと決まったら早く帰らなきゃ。紙と炭を放り出して、あたいは急いで湖へ飛んだ。


「行ったよ」
「あ、ありがとう妹紅、生徒が救われた」
 慧音の濡れた頬を大事そうに拭うと、妹紅はチルノの紙を拾い上げた。目を走らせ、首を傾げ、慧音に差し出した。
「あれは何を教えるつもりだった?」


『さいせん箱に入れるとゲテモノになれるわよ。あなたでは正しくない咲夜さん。ニンジンと短気に勝る力はない。珍しい機械があ~う~。山の神様一番えらいんです←チルノはもっとえらい! うさぎ鍋はとり鍋と違ってやばんだから愛がこもってるんだぜ』
 Great Teacher 09。

 兎鍋って美味しいのでしょうか。
深山咲
コメント



1.名無し妖怪削除
ちるのてらつよす
2.名無し妖怪削除
兎鍋、それすなわち、鳥鍋
それはともかく、味は知らん。一度は食ってみたいものです。
妹紅かっこいいなあ
3.名無し妖怪削除
兎鍋は下ごしらえをしっかりしないと臭みがあって美味しくないです。
しかし、下ごしらえを確りしてからならかなり美味しいですよ(兎の年にもよる)