Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

半纏霊夢コタツ装備は反則的に可愛い

2012/03/17 16:12:02
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「霊夢さーん! お邪魔しまーす!」

 建てつけの悪い戸をガラガラと開けて、大きな声で家主を呼ぶ。
 「入っていいわよー」という気の抜けた声を聞いて、私は意気揚々と靴を脱ぐ。
 いやぁ外は寒かった、なんて思ったけど、この中もさして暖かくはなかった。
 というより、外と差異がなかった。
 建物の中なのに……と、早速感じたスキマ風に向かって呟く。

「こちらですかー?」

 恐らく声がしたと思われる方向にある部屋に向かうと、予想通り霊夢さんが居た。

 しかし、その姿はいつものような巫女服ではなく、モコモコした半纏姿で。
 そして、縁側に座ってお茶を飲んでいるのではなく、埋もれるようにコタツに入って、ずるずるとラーメンを啜っていた。

「何やってるんですか……」
「いやぁ、お昼に暖かくなるまでのんびりしてようと思ったら……ダメね、ここは楽園だわ」
「つまり、一度コタツに入ったら出られなくなった、と」
「真・楽園の巫女の誕生ね」

 霊夢さんはうんうんと頷いて、またラーメンを啜った。

「ま、早苗も入りなさいよ」

 適当に、社交辞令であることを全く隠す様子もなく、霊夢さんは私にコタツを勧めた。

 入ったら出られなくなる、なんて言うけど、私はそこまで精神力が弱くはない。
 身体も冷え切ってることだし、お邪魔しよう。

 と、私は手袋やマフラーを取って、霊夢さんの正面の位置に座った。
 
「……何見てるのよ」

 私が、『あー本当に暖かいなぁ』とか『霊夢さんと素足絡めたいなぁ』とか。
 そんなことをボーッと考えていると、霊夢さんはラーメンを啜りつつ私を睨んできた。

「いえ、まっすぐ向くとどうしても見えてしまうので」

 実際は、背中を丸めて食事をする様子がなんだか小動物のようで、可愛らしくて見ていたのだが、私は適当なことを言う。

「そういえば、アンタ何しに来たのよ。 素敵な賽銭箱は冬でもいつも通り寒々しいわよ?」
「凍死してないかな、と思いまして」

 本当は、誰しも引きこもりがちな冬の季節こそ、霊夢さん分を独占するのにちょうどいい、と思ったから来てみたのだが。
 言わない。 乙女ですもの。

「ふぅん……じゃあ、お役御免ついでに、一つ頼まれてくれるかしら」
「へ? 何です?」

 まさか霊夢さんが私を頼るなんて。
 こんなに珍しくて嬉しいことは他にない。



「蜜柑とってきて」




「……………」
 
 思わず沈黙。
 まさかこの巫女、コタツのために蜜柑すら取りにいけないのだろうか。

「台所に置いてあるから、すぐそこの」

 すぐそこなら、どうして自分で取りに行かないのか。
 そんなの決まりきっているけど。

 これ以上の堕落を手伝うのは、あまり勧められたことではないが、一度聞いてしまった手前、断りにくい。
 堕落しきって私をまた頼ってくれる霊夢さん、というのもなかなか悪くないし。
 ということで、私は渋々立ち上がり、堕霊夢さん(堕落とダレるをかけている)の為に蜜柑を取ってくることにした。



 蜜柑はすぐに見つかった。
 籠に山盛りになった、ツヤのいい甘そうな蜜柑。
 私もいくつかいただこうか、何て考えていると、

「……霊夢さんはコタツから出られないのに、何でラーメンなんか食べてるんでしょう……?」

 そんな疑問が浮かんだ。
 霊夢さんのことだし、コタツのまま移動したとか……?
 なんてバカなことを考えていくと、一つ嫌な発想が胸によぎった。
 ………うーん、これは霊夢さんに実際に訊いてみよう。
 そうでなきゃ解らない。

 そう決めて、私は蜜柑の山を崩さぬよう気をつけつつ、霊夢さんが居る部屋に向かった。
 




 


「はい、どうぞ」
「ん、ありがと」

 霊夢さんはまだラーメンを食べていた。
 もしかして元の量から半分も減っていないのでは。

 小動物のように可愛い霊夢さんは、食べる量も小動物並みなのだろうか。

 じゃなくて。
 『あの事』を訊くのだった。

「ねぇ、霊夢さん」
「んー?」
「そのラーメンって、何処から出てきたんです?」
「何処からって……まさか早苗はラーメンが天井や床から湧いてでるものだと思っているの?」
「………そういうことじゃありません」

 霊夢さんは箸を置いて、蜜柑の山から一つ取り出す。
 てっぺんから取らなかったのか、ごろごろと山が崩れた。

「あ~……」
「聞いてください」

 霊夢さんは、崩れた蜜柑をそのまま放置して、取った蜜柑を剥き始めた。

「私が訊きたいのは、霊夢さんがコタツから出ないまま、どうやってそのラーメンを入手したかです」

 外の世界には出前、なんてものがあったけど。
 幻想郷にもその文化が浸透してるなんて、聞いたことがない。

「……そんなこと、早苗には関係ないでしょ」
「それは………! ……そう、ですけど」

 その正論に、私は言葉を詰まらせる。
 霊夢さんがここまで答えをはぐらかすなんて、よほど訊かれたくないことなのか。
 でも、霊夢さんはもともと、自分のことを話すのを嫌がる性格だし、その延長なのかもしれないけど。

「もしかして、どなたかから……」

 私だけで考えていても仕方ない、と開き直って。
 先程思いついた『嫌な発想』を口にしてみる。

 と。



「あーん」


 霊夢さんは、私の口に蜜柑を一粒入れてきた。
 
「どう? 美味しい?」

 霊夢さんは、今の会話などなかったように、私にそう訊いた。

「………美味しい、です」

 蜜柑を咀嚼して飲み込んでから、私は答える。

「そう、それはよかった」

 笑って。
 霊夢さんは、またラーメンを啜り始めた。

 私はこれで、完全にそれ以上さっきの会話を続けられなくなった。

 あぁ、誤魔化されてしまったのだ。 私は。
 敵わないなぁ、なんて。
 そんなことを思った。

「……一口くださいよ、そのラーメン」
「だーめ」

 私の思いつきの一言を冷たく断って。
 霊夢さんは、美味しそうな音を立てて、蓮華でスープを飲み込んで。

 スキマ風が私の首筋を撫でた。
 私の冷えた足が、霊夢さんの温かい足に触れた。

 モコモコの毛皮のような半纏を着込んだ小動物は。
 私をいつまでもどこまでも魅了する、小悪魔でもあるのだった。

 
 
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
れいむさんかわいいです
2.名前が無い程度の能力削除
半裸に一瞬見えたっていうのはもうだめかも分からんね
れいさなイイネ
3.名前が無い程度の能力削除
炬燵を装備したまま異変解決できそう
4.名前が無い程度の能力削除
二人ともかわいいですね。
5.名前が無い程度の能力削除
シューティングでコタツ装備といえばパロディウスの猫だな
それはそうと半纏・コタツ・蜜柑は日本が誇る三種の神器バリエーションでもナンバーワンの神器っぷりだと思う
6.名前が無い程度の能力削除
うん?
7.名前が無い程度の能力削除
蕎麦じゃなくてラーメンであることに作者のこだわりを感じる。
うどんじゃなくて(以下同文

ところで、これは味噌ラーメンであるか百歩譲って醤油ラーメンだとしても
絶対 豚骨ラーメンではありませんよね!ね!?
8.こーろぎ削除
あらかわいい早苗さん
9.名前が無い程度の能力削除
このラーメン、スッと空間の亀裂から出てきたりしたんでしょうかね?……おっとおかしいな、後ろからスキマ風が……

そんなことより早苗さん可愛いな
10.目が覚める程度の能力削除
レイサナ最高でーーーーーーーーーーす