オリジナル設定てんこ盛りです。
それでも良いと言う方のみどうぞ。
今年はいろいろな事があったな。
と、誰もいない漆黒の闇を飛びながらアリスは思う。
始まりは春。
暦の上では既に春になっているのにいつまでも続く冬。
顛末は知らないけど、懐かしい人と再会し、新たな出会いがあった。
……最も、あの巫女は私の事をすっかり忘れていたようだけど。
夏の始めには多くの宴会があった。
魔理沙が幹事を勤め、多くの人妖を集めていた。
その影に隠れて暗躍してたのも居たけど、結果として私は多くの友人を得た。
……あの子鬼は何故か家に居座ってたりする。
夏の終わりに、私達妖怪にとってはとても大きな事件が起こった。
妖怪は多かれ少なかれ、月の影響を受ける。
吸血鬼や人狼等はその際たる者だけど、それ以外の妖怪にとっても月は無くてはならない物。
その月が、隠された。
魔理沙と組んだのは久しぶりだけど、あの子は以前と比べ物にならないほど魔法を使いこなし、私を驚かせた。
……それが嬉しくもあり、ほんの少し、寂しかったりもする。
そして、冬。
私が知らない幾つもの事件が起こり、結果として多くの人妖が霊夢や魔理沙を中心にして集まった。
中には神も居るみたいだけど。
その中には私と親しくなった者も、また、未だ碌に話した事もない者も多い。
それでも、今年は何時もとは違う。
今も、年越しの宴会に呼ばれ、楽しく過ごしてきた。
その帰りなのだ。
宴会はまだ続いて居て、このまま新年を祝う宴会に移るのだろう。
そしてまた何時ものように、宴会が終れば霊夢が一人で片付けるのだろう。
……まぁ、その時になったら手伝ってあげてもいいかな。
アリスはそんな事を思い出しながら、家路につく。
楽しい一年。
その締めくくり。
本当を言えば、あの宴会の中で年を越したい気持ちもあった。
でも、それを振り切ってアリスは家路に着く。
引き止めた霊夢や魔理沙の手を振り切って。
たった一つの約束の為に。
「あら、もう来ているのかしら?」
出る時消した筈の灯が、アリスの家に灯っていた。
懐中時計を出し、確認すれば既に二十二時を回っている。
ちょっと、遅すぎたかしらね。
約束の時間は二十二時だった事を思い出し、少しばつの悪い顔で家へ急ぐ。
「おっそーい」
「あたっ」
アリスが自宅の扉を開ければ、中で待ち構えていた人物がいきなりでこピンをお見舞いしてきた。
時間としては五分も遅れてはいないのだけど、やはり遅れたことには変わりない。
アリスは恨めしげにその人物を見上げながらも文句は言わなかった。
「……ただいま。久しぶりね、魅魔。
変わり無い様で安心したわ」
「お帰り。あんたも変わりない……ってことも無いか。
でもまぁ、元気な様で安心したよ」
あぁ、上海と蓬莱もひさしぶりだねぇ、と。
魅魔は自分にじゃれ付いてきた上海の頭をなでる。
蓬莱は心配そうに、額をなでるアリスの事を見ていた。
「魅魔様ー! アリスー!
そんな所で遊んでないで速く来いよー!」
「そうそう、お蕎麦伸びちゃうわよ」
勝手に上がりこんでいる客人は、どうやら既にキッチンから漂ってくる香りにやられているらしい。
アリス自身、玄関に入るなり漂ってきた蕎麦の香りに空腹を感じ始めていた。
「向うも待ちきれないようだし、早く上がりなさい。ほら」
魅魔は未だに玄関で蹲っているアリスに手を差し伸べる。
アリスはその手をとって立ち上がり、引かれるままに居間に向かう。
そこには、何処から如何見ても魔女という格好をした少女と、巫女服を着た少女が席についていた。
もっとも、どちらもその外見年齢が、イコール実年齢である訳ではない。
魔女は既に60を越えている筈だし、巫女の方は既にこの世の者ではない。
それはアリスも、その手を引いている魅魔も同じ事だ。
上海や蓬莱にしても、もう既に40年以上稼動している。
「遅いわよアリス」
「うふ、うふふ。宴会は楽しかったか?」
巫女は、その外見年齢に見合うような可愛らしい仕草で笑い、
魔女は面白そうにアリスを見ながらからかって来る。
「遅れてごめんなさい靈夢、魔梨沙」
アリスは素直に二人に謝って、人形達に年越し蕎麦を持ってくるように伝える。
程なくして全員の席に蕎麦がいきわたり食事の支度がすんだ。
毎年この時の挨拶は魅魔がすることになっている。
「まぁ、挨拶って言っても堅苦しい事をいう気はないさね。
今年も各々元気でやってるようで安心した。
来年もこうやって集まれる事を願いながら、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
ちりん、と。
コップ同士がぶつかり合い澄んだ音を奏でる。
注がれている酒はこの日の為にアリスが用意した銘酒で、前に一度手を出そうとした萃香が酷い目にあっていたりする。
それを一口。
「うん、美味いな」
「そうね。辛さの中にほんのりとある甘みがなんとも言えず」
そんな靈夢と魔梨沙の感想に笑みを浮かべながら、アリスは蕎麦をすする。
「蕎麦の方も美味い。
随分と上達したもんだね。
ここに来たばかりの時は料理も掃除も碌にできなかったって言うのにさ」
「もう魅魔、昔の事を掘り返さないでよ。
それって40年以上も昔の話じゃないの」
自分でも忘れ去りたい過去を掘り返され、真っ赤になって慌てるアリス。
そんな様子を見て魔梨沙と靈夢は楽しそうに笑う。
「そうそう、料理焦がしたり掃除しててバケツひっくり返したりは日常茶飯事だったし」
「私のところに、料理教えてってきた事もあったわね」
「って、魔梨沙と靈夢も乗らないでよ!」
追い討ちを掛けられ、更に慌てるアリスを見て魅魔が大笑い。
三人の笑い声に囲まれて、アリスはまったくもう、といいながらも笑顔に戻る。
……アリスはこの人達が好きだった。
それぞれ違う理由ながら別れがあり、あの頃の面々で今この幻想郷に残るのは、アリスとこの場にいない妖怪のみ。
それは寂しくもあったけど、だからこそこの時間はアリスにとってとても大切な物だった。
「で、今年はどんな事があったんだい?」
魅魔がアリスにそんな事を聞いてくる。
例年、この質問をされてもアリスは自分が行った実験などを話して、皆に呆れられるのだけど。
だからこそアリスはこの質問が嫌いだったんだけど。
今年は違う。
寧ろアリスはこの質問を待っていた。
話したい事は幾らでもある。
例えば靈夢の孫娘。
靈夢ににて優しく、妖怪にも人にも好かれている不思議な巫女。
例えば魔梨沙の孫娘。
周りに迷惑と笑顔を振りまくやっぱり不思議な魔法使い。
子鬼も幽霊も不死人も、色々話したい事がある。
だから、いつに無く饒舌でアリスは言葉を紡ぐ。
「そうかい。それは安心した」
「え?」
いくつかの話を終えたところで、魅魔はそういった。
魔梨沙と靈夢もほっとしたように顔をほころばせている。
「私達と別れてから、他人と触れ合うのを恐れていたように見えたけど、安心したわ」
「正直、アリスが宴会なんてのに出る日が来るなんて思ってなかったからね」
「え? 何言って……」
「もう、時間さね。
楽しいひと時は過ぎるのも早い」
「あ……」
遠くから、ゴーンという音が響いてくる。
後10分かそこらで年が明ける。
前からの決まりだった。
彼女達がここにいられる時間は、年が明けるまで。
年が明けたら、彼女達はそれぞれがあるべき場所へ帰っていく。
ぽん、と。
アリスの頭に魅魔の手がのせられる。
「そんな悲しそうな顔をしなさんな。
お前にはこれからもずっと共に生きていく友人達がいるだろう?
私達はもうこの幻想郷には居られない」
「でも、私たちはアリスの事を忘れないし、見守っていく心算よ?」
「私の孫を、魔理沙をよろしくな」
くしゃくしゃと髪の毛をかき回す魅魔の手が離される。
「魅魔、魔梨沙、靈夢……」
「これがお別れじゃない。
きっとまた、来年もこうして逢えるさ」
「だから、さよならは言わないわよ」
「私たちが居なくなる事を悲しむ必要はないよ、アリス。
だから最後まで笑って送っておくれ」
「……うん。またね、皆」
最後に、アリスはとびっきりの笑顔で送り出す。
魔界からこの幻想郷に引っ張ってきて、魔法を教えてくれた魅魔を。
共に魅魔に学んで切磋琢磨した魔梨沙を。
魅魔の使用人としてドジばかりしていた私に何だかんだと面倒を見てくれた靈夢を。
……ごーん……
と、最後の鐘の音が鳴り響いた。
それでも良いと言う方のみどうぞ。
今年はいろいろな事があったな。
と、誰もいない漆黒の闇を飛びながらアリスは思う。
始まりは春。
暦の上では既に春になっているのにいつまでも続く冬。
顛末は知らないけど、懐かしい人と再会し、新たな出会いがあった。
……最も、あの巫女は私の事をすっかり忘れていたようだけど。
夏の始めには多くの宴会があった。
魔理沙が幹事を勤め、多くの人妖を集めていた。
その影に隠れて暗躍してたのも居たけど、結果として私は多くの友人を得た。
……あの子鬼は何故か家に居座ってたりする。
夏の終わりに、私達妖怪にとってはとても大きな事件が起こった。
妖怪は多かれ少なかれ、月の影響を受ける。
吸血鬼や人狼等はその際たる者だけど、それ以外の妖怪にとっても月は無くてはならない物。
その月が、隠された。
魔理沙と組んだのは久しぶりだけど、あの子は以前と比べ物にならないほど魔法を使いこなし、私を驚かせた。
……それが嬉しくもあり、ほんの少し、寂しかったりもする。
そして、冬。
私が知らない幾つもの事件が起こり、結果として多くの人妖が霊夢や魔理沙を中心にして集まった。
中には神も居るみたいだけど。
その中には私と親しくなった者も、また、未だ碌に話した事もない者も多い。
それでも、今年は何時もとは違う。
今も、年越しの宴会に呼ばれ、楽しく過ごしてきた。
その帰りなのだ。
宴会はまだ続いて居て、このまま新年を祝う宴会に移るのだろう。
そしてまた何時ものように、宴会が終れば霊夢が一人で片付けるのだろう。
……まぁ、その時になったら手伝ってあげてもいいかな。
アリスはそんな事を思い出しながら、家路につく。
楽しい一年。
その締めくくり。
本当を言えば、あの宴会の中で年を越したい気持ちもあった。
でも、それを振り切ってアリスは家路に着く。
引き止めた霊夢や魔理沙の手を振り切って。
たった一つの約束の為に。
「あら、もう来ているのかしら?」
出る時消した筈の灯が、アリスの家に灯っていた。
懐中時計を出し、確認すれば既に二十二時を回っている。
ちょっと、遅すぎたかしらね。
約束の時間は二十二時だった事を思い出し、少しばつの悪い顔で家へ急ぐ。
「おっそーい」
「あたっ」
アリスが自宅の扉を開ければ、中で待ち構えていた人物がいきなりでこピンをお見舞いしてきた。
時間としては五分も遅れてはいないのだけど、やはり遅れたことには変わりない。
アリスは恨めしげにその人物を見上げながらも文句は言わなかった。
「……ただいま。久しぶりね、魅魔。
変わり無い様で安心したわ」
「お帰り。あんたも変わりない……ってことも無いか。
でもまぁ、元気な様で安心したよ」
あぁ、上海と蓬莱もひさしぶりだねぇ、と。
魅魔は自分にじゃれ付いてきた上海の頭をなでる。
蓬莱は心配そうに、額をなでるアリスの事を見ていた。
「魅魔様ー! アリスー!
そんな所で遊んでないで速く来いよー!」
「そうそう、お蕎麦伸びちゃうわよ」
勝手に上がりこんでいる客人は、どうやら既にキッチンから漂ってくる香りにやられているらしい。
アリス自身、玄関に入るなり漂ってきた蕎麦の香りに空腹を感じ始めていた。
「向うも待ちきれないようだし、早く上がりなさい。ほら」
魅魔は未だに玄関で蹲っているアリスに手を差し伸べる。
アリスはその手をとって立ち上がり、引かれるままに居間に向かう。
そこには、何処から如何見ても魔女という格好をした少女と、巫女服を着た少女が席についていた。
もっとも、どちらもその外見年齢が、イコール実年齢である訳ではない。
魔女は既に60を越えている筈だし、巫女の方は既にこの世の者ではない。
それはアリスも、その手を引いている魅魔も同じ事だ。
上海や蓬莱にしても、もう既に40年以上稼動している。
「遅いわよアリス」
「うふ、うふふ。宴会は楽しかったか?」
巫女は、その外見年齢に見合うような可愛らしい仕草で笑い、
魔女は面白そうにアリスを見ながらからかって来る。
「遅れてごめんなさい靈夢、魔梨沙」
アリスは素直に二人に謝って、人形達に年越し蕎麦を持ってくるように伝える。
程なくして全員の席に蕎麦がいきわたり食事の支度がすんだ。
毎年この時の挨拶は魅魔がすることになっている。
「まぁ、挨拶って言っても堅苦しい事をいう気はないさね。
今年も各々元気でやってるようで安心した。
来年もこうやって集まれる事を願いながら、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
ちりん、と。
コップ同士がぶつかり合い澄んだ音を奏でる。
注がれている酒はこの日の為にアリスが用意した銘酒で、前に一度手を出そうとした萃香が酷い目にあっていたりする。
それを一口。
「うん、美味いな」
「そうね。辛さの中にほんのりとある甘みがなんとも言えず」
そんな靈夢と魔梨沙の感想に笑みを浮かべながら、アリスは蕎麦をすする。
「蕎麦の方も美味い。
随分と上達したもんだね。
ここに来たばかりの時は料理も掃除も碌にできなかったって言うのにさ」
「もう魅魔、昔の事を掘り返さないでよ。
それって40年以上も昔の話じゃないの」
自分でも忘れ去りたい過去を掘り返され、真っ赤になって慌てるアリス。
そんな様子を見て魔梨沙と靈夢は楽しそうに笑う。
「そうそう、料理焦がしたり掃除しててバケツひっくり返したりは日常茶飯事だったし」
「私のところに、料理教えてってきた事もあったわね」
「って、魔梨沙と靈夢も乗らないでよ!」
追い討ちを掛けられ、更に慌てるアリスを見て魅魔が大笑い。
三人の笑い声に囲まれて、アリスはまったくもう、といいながらも笑顔に戻る。
……アリスはこの人達が好きだった。
それぞれ違う理由ながら別れがあり、あの頃の面々で今この幻想郷に残るのは、アリスとこの場にいない妖怪のみ。
それは寂しくもあったけど、だからこそこの時間はアリスにとってとても大切な物だった。
「で、今年はどんな事があったんだい?」
魅魔がアリスにそんな事を聞いてくる。
例年、この質問をされてもアリスは自分が行った実験などを話して、皆に呆れられるのだけど。
だからこそアリスはこの質問が嫌いだったんだけど。
今年は違う。
寧ろアリスはこの質問を待っていた。
話したい事は幾らでもある。
例えば靈夢の孫娘。
靈夢ににて優しく、妖怪にも人にも好かれている不思議な巫女。
例えば魔梨沙の孫娘。
周りに迷惑と笑顔を振りまくやっぱり不思議な魔法使い。
子鬼も幽霊も不死人も、色々話したい事がある。
だから、いつに無く饒舌でアリスは言葉を紡ぐ。
「そうかい。それは安心した」
「え?」
いくつかの話を終えたところで、魅魔はそういった。
魔梨沙と靈夢もほっとしたように顔をほころばせている。
「私達と別れてから、他人と触れ合うのを恐れていたように見えたけど、安心したわ」
「正直、アリスが宴会なんてのに出る日が来るなんて思ってなかったからね」
「え? 何言って……」
「もう、時間さね。
楽しいひと時は過ぎるのも早い」
「あ……」
遠くから、ゴーンという音が響いてくる。
後10分かそこらで年が明ける。
前からの決まりだった。
彼女達がここにいられる時間は、年が明けるまで。
年が明けたら、彼女達はそれぞれがあるべき場所へ帰っていく。
ぽん、と。
アリスの頭に魅魔の手がのせられる。
「そんな悲しそうな顔をしなさんな。
お前にはこれからもずっと共に生きていく友人達がいるだろう?
私達はもうこの幻想郷には居られない」
「でも、私たちはアリスの事を忘れないし、見守っていく心算よ?」
「私の孫を、魔理沙をよろしくな」
くしゃくしゃと髪の毛をかき回す魅魔の手が離される。
「魅魔、魔梨沙、靈夢……」
「これがお別れじゃない。
きっとまた、来年もこうして逢えるさ」
「だから、さよならは言わないわよ」
「私たちが居なくなる事を悲しむ必要はないよ、アリス。
だから最後まで笑って送っておくれ」
「……うん。またね、皆」
最後に、アリスはとびっきりの笑顔で送り出す。
魔界からこの幻想郷に引っ張ってきて、魔法を教えてくれた魅魔を。
共に魅魔に学んで切磋琢磨した魔梨沙を。
魅魔の使用人としてドジばかりしていた私に何だかんだと面倒を見てくれた靈夢を。
……ごーん……
と、最後の鐘の音が鳴り響いた。
まず最初に一言。
間に合わなんだわorz
創想話は結構前から読んでいて、時間があったらなんか囲うと想ってましたけど、
結局正月休みまで時間が取れなくて気付いたら新年まで後2時間。
それまでに何とか短編くらいは書こうと筆を執ったものの見事に遅きに失しました。
これが初投稿となりますが、出来れば感想などをいただけると嬉しいです。
それとも亀やロケットか?うふふ