猫が、日向で眠りこけている。
こういう場合、急激に距離を詰めれば寝ている時でも周囲に警戒を怠らない野生の動物はすぐに危険を察知し逃げてしまう。
私は息を詰め、ゆっくりと一歩ずつ距離を詰める。
見えて来た見えて来た、まんまるとふとった愛らしいスコティッシュフォールドだ。
麗らかな陽の光を存分に吸い取った美しい毛並み、あと少し。
十分に近付き、手を伸ばせば届く距離になった頃、私は静かに手を伸ばし眠っている猫に触れようとした、が。
足元の枯れ枝を踏み割ってしまい、辺りに乾いた音が響く。
「ニャッ!」
「あぁっ!」
猫は音を敏感に拾い、逃げてしまった。
残された私は何となく気まずくなり、さっきまで撫でようと思っていた手を開いたり閉じたりする。
家で暮らしている猫たちには無い野性と言うものを見物しようと地上に出て来たのにこのざまだ。
「はぁ…」
溜息をつき歩きだす。
空を見やれば憎たらしい程の快晴だ。
そこかしこに日向ぼっこをしている猫たちが居ても良いのに。
CoD4のベテランオールギリードアップからワンショットワンキルをノーデスクリアできる私がまさか寝ている猫に後れをとるとは…。
ヨーロピアンエクストリームの山猫相手は楽勝なのにリアルの野良猫に勝てない私ってなんなんだろ。
「…考えるの止そ」
と思った瞬間、タイミングが良すぎるほどに猫が来た。
私のことなど眼中にないのか、呑気に伸びをしている。
これは好機、先程の悔しさをすべて撫で撫でに費やしてしまおう。
そう思って歩を進めた瞬間、猫は私の方へ首を向け警戒する。
「(落ち着いて私、こういうのはタイミングが重要よ。地獄の黙示録の例もあるじゃない。あれ、面白かったですか?)」
猫は動かなくなった私を見て安心したのかまた首を戻し、箱座りの体勢に移った。
「(落ち着くのよ、あの座り方はリラックスしている、と同時に咄嗟に逃走へと移れる究極の体勢……言うならホバリングしながら周囲警戒しているガンシップ、気をつけて)」
冷や汗を垂らしながら一歩一歩近づく、そして距離が5メーター近くになったくらいで私に気づいた猫がたふたふした体から片足を出し睨みつける。
「(くっ…気づかれた、こうなったら一回通行人のふりして歩き去るわ)」
猫を見ずに前を向き歩き去る。大丈夫、猫は警戒を解いて眠りこけ始めた。
私はひとまず置いてあった段ボールへ潜り込み作戦を練る。
「(ふぅ、脳内でマクミラン先生を再生して助かった)」
しかし厄介なことになった。猫は自身の警戒範囲内に入ったものを警戒する癖がある。
警戒範囲は、対象の身長によって異なる。
私の身長が半分だったら近付ける範囲が大きくなる、と言う事は…
「(…試してみる価値はありそうね)」
私は身を隠していた段ボールから飛び出し、ぐっとしゃがみ込みちょこちょこ歩きを始めた。
うんうん良い調子、段々と近づいてきた、問題の5メートル範囲に到達した瞬間、猫はまたもやたふたふした体から足を突き出し逃走しようとする。
「(なんだって?)」
私は驚いた。
体表面積を少なくし出来うる限りの遅い速度で近付いてもばれるとは。
恥も外聞もかなぐり捨て膝を折り曲げちょこちょこ歩いてもばれるとは!
「(くっ…離脱よ!)」
私は諦め、立ちあがり歩き去った。
結局、猫に触れずじまい。
「…はぁ、私猫に嫌われてるのかしら」
地上の妖怪や人間に嫌われて、更には猫に嫌われるなんて…。
でも、お姉ちゃんは猫や犬とかに好かれてたなぁ。
なんて思っていると誰もいない公園に辿り着いた。
「…ん?あの人」
誰もいない、と思っていたがいた。
ベンチに座り何かを撫でている。
何だろうと思いつつ近寄ると、それは見慣れた人物が座っていた。
「お姉ちゃん!」
そう、私の姉、古明地さとりだ。
「こいし、あんまり大きい声出さないで下さい、この子がびっくりしちゃうでしょ」
「あ、ごめん…ってその猫!」
「ん?この猫ちゃんがどうかしました?」
お姉ちゃんの膝の上で気持ちよさそうに眠っているのは先程逃げられたスコティッシュフォールドだった。
目を閉じお姉ちゃんにされるがままの猫は、先程の見事なまでの身のこなしで私から逃げおおせた姿とは別人だった、いや、別猫か。
「お姉ちゃん」
「なんですか」
「隣、座って良い?」
「えぇどうぞ」
私はお姉ちゃんの隣に座り、猫を見つめる。
「…さっきね、この子に逃げられたの」
「でしょうね、この子にあった時『帽子かぶった女の子にあった』って言ってましたもん」
「無意識に近づいたのにばれた、なんで?」
「上手く施された偽装は逆に見つかりやすい、こういう言葉を知ってますか?こいし」
「…分かんない」
素直に言うと、お姉ちゃんは詳しく説明してくれた。
詳しすぎて、意味が良く分からなかったけど。
「ねぇお姉ちゃん、私も撫でて良い?」
「えぇどうぞ…と言っても私の猫じゃないんですけどね」
私は静かに眠っている猫の頭に手を置いて、撫でる。
猫は口を開け欠伸をして、また眠る。
「『気持ちいい』って言ってます」
「ほんと?」
「えぇ」
次は頭から背中にかけて手を滑らせる。
期待した通り、気持ちの良い毛並みだ。
いくらか時間が経つと、猫は立ち上がり膝から飛び降りて何処かへ走り去って行った。
お姉ちゃんはベンチから立ち上がり伸びをすると、私に問いかける。
「…さて、私はもう帰ります。こいし、あなたはもう少し地上に居ますか?」
「うぅん、今日はお姉ちゃんと一緒に帰る」
「そうですか」
私はベンチから立ちあがってお姉ちゃんの手を握って、家へと帰ることにした。
こういう場合、急激に距離を詰めれば寝ている時でも周囲に警戒を怠らない野生の動物はすぐに危険を察知し逃げてしまう。
私は息を詰め、ゆっくりと一歩ずつ距離を詰める。
見えて来た見えて来た、まんまるとふとった愛らしいスコティッシュフォールドだ。
麗らかな陽の光を存分に吸い取った美しい毛並み、あと少し。
十分に近付き、手を伸ばせば届く距離になった頃、私は静かに手を伸ばし眠っている猫に触れようとした、が。
足元の枯れ枝を踏み割ってしまい、辺りに乾いた音が響く。
「ニャッ!」
「あぁっ!」
猫は音を敏感に拾い、逃げてしまった。
残された私は何となく気まずくなり、さっきまで撫でようと思っていた手を開いたり閉じたりする。
家で暮らしている猫たちには無い野性と言うものを見物しようと地上に出て来たのにこのざまだ。
「はぁ…」
溜息をつき歩きだす。
空を見やれば憎たらしい程の快晴だ。
そこかしこに日向ぼっこをしている猫たちが居ても良いのに。
CoD4のベテランオールギリードアップからワンショットワンキルをノーデスクリアできる私がまさか寝ている猫に後れをとるとは…。
ヨーロピアンエクストリームの山猫相手は楽勝なのにリアルの野良猫に勝てない私ってなんなんだろ。
「…考えるの止そ」
と思った瞬間、タイミングが良すぎるほどに猫が来た。
私のことなど眼中にないのか、呑気に伸びをしている。
これは好機、先程の悔しさをすべて撫で撫でに費やしてしまおう。
そう思って歩を進めた瞬間、猫は私の方へ首を向け警戒する。
「(落ち着いて私、こういうのはタイミングが重要よ。地獄の黙示録の例もあるじゃない。あれ、面白かったですか?)」
猫は動かなくなった私を見て安心したのかまた首を戻し、箱座りの体勢に移った。
「(落ち着くのよ、あの座り方はリラックスしている、と同時に咄嗟に逃走へと移れる究極の体勢……言うならホバリングしながら周囲警戒しているガンシップ、気をつけて)」
冷や汗を垂らしながら一歩一歩近づく、そして距離が5メーター近くになったくらいで私に気づいた猫がたふたふした体から片足を出し睨みつける。
「(くっ…気づかれた、こうなったら一回通行人のふりして歩き去るわ)」
猫を見ずに前を向き歩き去る。大丈夫、猫は警戒を解いて眠りこけ始めた。
私はひとまず置いてあった段ボールへ潜り込み作戦を練る。
「(ふぅ、脳内でマクミラン先生を再生して助かった)」
しかし厄介なことになった。猫は自身の警戒範囲内に入ったものを警戒する癖がある。
警戒範囲は、対象の身長によって異なる。
私の身長が半分だったら近付ける範囲が大きくなる、と言う事は…
「(…試してみる価値はありそうね)」
私は身を隠していた段ボールから飛び出し、ぐっとしゃがみ込みちょこちょこ歩きを始めた。
うんうん良い調子、段々と近づいてきた、問題の5メートル範囲に到達した瞬間、猫はまたもやたふたふした体から足を突き出し逃走しようとする。
「(なんだって?)」
私は驚いた。
体表面積を少なくし出来うる限りの遅い速度で近付いてもばれるとは。
恥も外聞もかなぐり捨て膝を折り曲げちょこちょこ歩いてもばれるとは!
「(くっ…離脱よ!)」
私は諦め、立ちあがり歩き去った。
結局、猫に触れずじまい。
「…はぁ、私猫に嫌われてるのかしら」
地上の妖怪や人間に嫌われて、更には猫に嫌われるなんて…。
でも、お姉ちゃんは猫や犬とかに好かれてたなぁ。
なんて思っていると誰もいない公園に辿り着いた。
「…ん?あの人」
誰もいない、と思っていたがいた。
ベンチに座り何かを撫でている。
何だろうと思いつつ近寄ると、それは見慣れた人物が座っていた。
「お姉ちゃん!」
そう、私の姉、古明地さとりだ。
「こいし、あんまり大きい声出さないで下さい、この子がびっくりしちゃうでしょ」
「あ、ごめん…ってその猫!」
「ん?この猫ちゃんがどうかしました?」
お姉ちゃんの膝の上で気持ちよさそうに眠っているのは先程逃げられたスコティッシュフォールドだった。
目を閉じお姉ちゃんにされるがままの猫は、先程の見事なまでの身のこなしで私から逃げおおせた姿とは別人だった、いや、別猫か。
「お姉ちゃん」
「なんですか」
「隣、座って良い?」
「えぇどうぞ」
私はお姉ちゃんの隣に座り、猫を見つめる。
「…さっきね、この子に逃げられたの」
「でしょうね、この子にあった時『帽子かぶった女の子にあった』って言ってましたもん」
「無意識に近づいたのにばれた、なんで?」
「上手く施された偽装は逆に見つかりやすい、こういう言葉を知ってますか?こいし」
「…分かんない」
素直に言うと、お姉ちゃんは詳しく説明してくれた。
詳しすぎて、意味が良く分からなかったけど。
「ねぇお姉ちゃん、私も撫でて良い?」
「えぇどうぞ…と言っても私の猫じゃないんですけどね」
私は静かに眠っている猫の頭に手を置いて、撫でる。
猫は口を開け欠伸をして、また眠る。
「『気持ちいい』って言ってます」
「ほんと?」
「えぇ」
次は頭から背中にかけて手を滑らせる。
期待した通り、気持ちの良い毛並みだ。
いくらか時間が経つと、猫は立ち上がり膝から飛び降りて何処かへ走り去って行った。
お姉ちゃんはベンチから立ち上がり伸びをすると、私に問いかける。
「…さて、私はもう帰ります。こいし、あなたはもう少し地上に居ますか?」
「うぅん、今日はお姉ちゃんと一緒に帰る」
「そうですか」
私はベンチから立ちあがってお姉ちゃんの手を握って、家へと帰ることにした。
いやしかし、こいしちゃん結構ゲーマーだなwww
流石はさとり様、なでなで
ウタナキャアタラナイデショーウ