紅魔館、今日もフラン様が廊下を飛んでいく。
「廊下は走らないでください。」
「走ってないもーん。」
「そんなスピードで飛ばないでください。」
「やだー。」
メイドのお小言どこ吹く風。
姉君の定めた規定飛行速度ブッチギリ、フラン様は飛んでゆく。
今日は大好きな魔理沙が遊びに来てくれる日。
そりゃあ、居ても立っても居られない。玄関まで魔理沙をお出迎え。
と、廊下の先には見慣れたとんがり帽子。
「魔ー理ー沙ぁー」
「お、フランー。」
フラン様に気づいた魔理沙。手を振り笑顔で応える。
が、その笑顔もある事に気づくとみるみる凍りつく。
ヤバイ。ヤバイ。あのスピードはヤバイ!
だが、しかし。ここでフランを避けるなど、この魔理沙が許さない!
「よーし、来い!受け止めてやる!」
バッと両手を広げ、ふんばって、受け止める体勢完了!覚悟完了!
その様子に気づいたフラン様。魔理沙が抱きとめてくれる!
嬉しくて嬉しくて…スピードアップ。
「魔、理、沙ぁー!」
そのまま魔理沙の胸にダイブ!
どーん!
「どおあぁぁぁぁぁぁぁーーー!?」
…どかーん。
哀れ魔理沙。後方の壁に吹き飛ばされていきましたとさ。
紅魔館は、フランのお部屋。
魔理沙と遊ぶフラン様。今日は魔理沙にダンスを披露。
右に左に軽快ステップ。
右に、左に、右に、左に。
クルリと回ればスカートもフワリ。
クルリ、フワリ、クルリ、フワリ。
そして、ダンスの終わりはおしゃまにお辞儀。
スカートの裾をつまんでおしゃまにお辞儀。
「おしまい♪」
パチパチパチパチ
笑顔で顔を上げるフラン様に惜しみない拍手。
「うまいもんだなぁ。」
魔理沙は飾らない、真っ直ぐな感想を述べてくれる。
「魔理沙に見せたくて練習したんだよ。」
「くぅ、嬉しい事言ってくれるじゃないか。」
なでなで
魔理沙が嬉しいとフランも嬉しい。
「でも、私だけにってのはもったいないな。今度はレミリア達にも見せてやろうぜ。」
「うん。」
でも実は。部屋の入り口、ドアの隙間。
レミリアお嬢様と咲夜さん。こっそり覗いておりました。
鼻血で床を真っ赤に染め上げて。
紅魔館は、柱の並ぶ大きな広間。
今度は鬼ごっこで追いかけっこ。
鬼の魔理沙、パタパタ逃げるお嬢様を追いかける。
「魔理沙ー、こっちこっち。」
見れば柱の影からフラン様、ひょっこり顔出しこっちを見てる。
「む、そっちか。」
テテテと魔理沙が近づくと、ヒョイとフランは柱の影へ。
「こっちだよー、魔理沙」
ところがどっこい、不思議なことに、今しがたの声がするのは廊下の向こうの正反対。
まったく逆の柱の影。そっちを向けば、そこには確かにフラン様。
「ありゃ?」
「こっちこっちー」
今度はなんと上から声が降ってくる。
天井からぶら下がるフラン様が見下ろしている。
「ありゃりゃ?」
「おーい、こっちだってばぁ」
今度は後ろ?
「フランー…。」
ペタリと魔理沙、降参だとばかりに座り込む。
「鬼ごっこで『フォーオブアカインド』はナシだぜぇ…」
『えへへー。』
4人一緒にフラン様、出てきて一緒に舌も出す。
3時のおやつは紅茶とケーキ。
おいしく食べて…。
「ありゃ?」
いつのまにか静かになっている事に気づく魔理沙。
いつの間にかフランは静かな寝息を立てている。
「やれやれだぜ…。」
よっとフランを抱え、ベッドに寝かしつけてやる。
「…魔…理沙…。」
「んー?私はここにいるぜ?」
そう言って手を握る。キュッと握ったその手は思ったよりも小さいものだった。
心なしかフランの表情が和らいだ気がした。
「起きたらまた遊ぶか?今度は何してあそぶ?」
そこには、かつてのフランはもういない。
暗い、暗い、どこまでも続く迷路のような暗闇の檻に一人囚われていたフランドール・スカーレットはもういない。
そこにいるのは、喜び、怒り、悲しみ、楽しむフランがいるだけ。
はなぢ噴きそうですた。
こんな良作があるから発掘作業は止められませんw