博麗神社の一角で、お茶請けの煎餅を齧りながら博麗霊夢は溜息を吐く。暇だ、暇で暇でしょうがない。人間、趣味の一つや二つは持っていた方が良いという話はよく聞くが、成る程確かにその通りだ。故人の言う事は、本当に偉大だと思いながらも、再び溜息を吐く。
確かにその言葉自体に間違いは無いし、共感も出来る。だが、自分は産まれてこのかた殆んど何もやっていないのだ。いや、境内の掃除は毎日欠かさずやっているし、幾多の異変も解決して来てはいるがそれは博麗の巫女としての義務だからであって、別に好き好んでやっている訳ではない。そもそも、退屈な時間そのものが、珍しいのだ。
何故だかは分からないが、彼女の周りには常に人間や妖怪が集まって来る。例を挙げるとすれば、自分がいない時でさえ勝手に上がりこんでお茶を飲んでいる黒白の悪友とか、突然思いついた様にやって来て意味深な言葉に聞こえるが、本当は何の意味も無い言葉を残していく妖怪の大賢者とか、朝・昼・夜と常に酒を飲んで気楽に笑っている鬼とか……切りが無いのでこのくらいにしておこう。
兎も角、彼女の退屈を取っ払ってくれるであろう者達は今日に限って誰一人来ず、仕事以外に消極的な彼女はどうしようもないほど溢れている時間の使い道を決めあぐねている状態だった。
「全くどいつもこいつも……来なくて良い時にばっかり来て、来て欲しい時に来ないんだから……」
と、愚痴を言った所で誰か来るわけでもなし、まだ日は高いが今日はこのまま寝て日を過ごそうか。そうすればお腹も空かないし、体力も温存できる。まさに最高の案ではないか、そうと決まれば善は急げだ。
立ち上がり寝床に向おうとした瞬間、石階段を誰かが上ってくる気配を感じ、霊夢は眉を顰める。一体誰だというのだ、折角時間の使い道が決まったと言うのに――不機嫌になりながらも、とりあえず先程までいた位置に戻り座り直す。
そうして待つ事数秒、石階段から現れた人物を見て、霊夢は目を丸くした。
◇
「こんにちは、良い天気ね」
「……ええ、そうね」
ニコニコと笑顔を浮かべながら、そう話しかけて来る相手に霊夢はポリポリと頭を掻く。どうやら、珍しい事というのは重なるらしい。現に今目の前にいる人物――アリス・マーガトロイドとは大して親しいわけではない。だが、表面には出さないものの、霊夢にとって尋ねて来た相手が彼女だったという事は何よりも嬉しい事だった。アリスはどう思っているか知らないが、霊夢はアリスの事が好きだった。彼女は自分や魔理沙とは、雰囲気が違うのだ。上手く表現は出来ないが自分達が蛍の光だとすると、彼女は月――おそらくは箱入り娘として大切に育てられて来たからだろうが、霊夢にとっての理想の女性像と言うのが、まさにアリスそのものだった。だからこそ霊夢はアリスと話すのが楽しみだったし、いつも一緒に居る人形達を羨ましくさえ思った……恋は盲目であり、この状況は霊夢にとって至福の時間と言っても過言ではなかった……が、表面上は冷静に見える霊夢だが、内心は違っていた。
頭の中は真っ白で何も考えられないし、背中からは汗が滝の様に伝い落ちている。おまけに手はプルプルと震えて、湯飲みを持っていたら完全に零していただろう。結論から言うと、博麗霊夢はヘタレなのだ。
「……?どうしたの、霊夢?何か様子が変だけど」
「な、何でもにゃ……っ~!!」
噛んだ、しかも思い切り。舌が凄く痛い、泣きそうなくらいの痛みだ。だけどそれよりも何よりも、恥しい。穴があったら入りたいとはこの事だ。口を押さえて、涙目でプルプル震える霊夢を見てアリスは苦笑いを浮かべると、近づいて頭を撫でる。その瞬間、霊夢は顔を真っ赤にして声にならない叫びを上げると、そのまま気絶した。
余談になるが、霊夢を寝床に運んで神社を後にしたアリスが真っ赤な顔に嬉しそうな表情で口元を押さえて歩いているのを、黒白の魔法使いが見たとか見てないとか。
確かにその言葉自体に間違いは無いし、共感も出来る。だが、自分は産まれてこのかた殆んど何もやっていないのだ。いや、境内の掃除は毎日欠かさずやっているし、幾多の異変も解決して来てはいるがそれは博麗の巫女としての義務だからであって、別に好き好んでやっている訳ではない。そもそも、退屈な時間そのものが、珍しいのだ。
何故だかは分からないが、彼女の周りには常に人間や妖怪が集まって来る。例を挙げるとすれば、自分がいない時でさえ勝手に上がりこんでお茶を飲んでいる黒白の悪友とか、突然思いついた様にやって来て意味深な言葉に聞こえるが、本当は何の意味も無い言葉を残していく妖怪の大賢者とか、朝・昼・夜と常に酒を飲んで気楽に笑っている鬼とか……切りが無いのでこのくらいにしておこう。
兎も角、彼女の退屈を取っ払ってくれるであろう者達は今日に限って誰一人来ず、仕事以外に消極的な彼女はどうしようもないほど溢れている時間の使い道を決めあぐねている状態だった。
「全くどいつもこいつも……来なくて良い時にばっかり来て、来て欲しい時に来ないんだから……」
と、愚痴を言った所で誰か来るわけでもなし、まだ日は高いが今日はこのまま寝て日を過ごそうか。そうすればお腹も空かないし、体力も温存できる。まさに最高の案ではないか、そうと決まれば善は急げだ。
立ち上がり寝床に向おうとした瞬間、石階段を誰かが上ってくる気配を感じ、霊夢は眉を顰める。一体誰だというのだ、折角時間の使い道が決まったと言うのに――不機嫌になりながらも、とりあえず先程までいた位置に戻り座り直す。
そうして待つ事数秒、石階段から現れた人物を見て、霊夢は目を丸くした。
◇
「こんにちは、良い天気ね」
「……ええ、そうね」
ニコニコと笑顔を浮かべながら、そう話しかけて来る相手に霊夢はポリポリと頭を掻く。どうやら、珍しい事というのは重なるらしい。現に今目の前にいる人物――アリス・マーガトロイドとは大して親しいわけではない。だが、表面には出さないものの、霊夢にとって尋ねて来た相手が彼女だったという事は何よりも嬉しい事だった。アリスはどう思っているか知らないが、霊夢はアリスの事が好きだった。彼女は自分や魔理沙とは、雰囲気が違うのだ。上手く表現は出来ないが自分達が蛍の光だとすると、彼女は月――おそらくは箱入り娘として大切に育てられて来たからだろうが、霊夢にとっての理想の女性像と言うのが、まさにアリスそのものだった。だからこそ霊夢はアリスと話すのが楽しみだったし、いつも一緒に居る人形達を羨ましくさえ思った……恋は盲目であり、この状況は霊夢にとって至福の時間と言っても過言ではなかった……が、表面上は冷静に見える霊夢だが、内心は違っていた。
頭の中は真っ白で何も考えられないし、背中からは汗が滝の様に伝い落ちている。おまけに手はプルプルと震えて、湯飲みを持っていたら完全に零していただろう。結論から言うと、博麗霊夢はヘタレなのだ。
「……?どうしたの、霊夢?何か様子が変だけど」
「な、何でもにゃ……っ~!!」
噛んだ、しかも思い切り。舌が凄く痛い、泣きそうなくらいの痛みだ。だけどそれよりも何よりも、恥しい。穴があったら入りたいとはこの事だ。口を押さえて、涙目でプルプル震える霊夢を見てアリスは苦笑いを浮かべると、近づいて頭を撫でる。その瞬間、霊夢は顔を真っ赤にして声にならない叫びを上げると、そのまま気絶した。
余談になるが、霊夢を寝床に運んで神社を後にしたアリスが真っ赤な顔に嬉しそうな表情で口元を押さえて歩いているのを、黒白の魔法使いが見たとか見てないとか。
やべえ、ニヤニヤが本気で治まらない…
もっと広がれ霊アリの輪!!!
顔面崩壊!もっと広がれレイアリの輪!
レイアリはいいものだ
更なるレイアリを要求する!