朝、目が覚めた途端、私は涙を流した。
目が覚めたら突然、悲しみに襲われたのだ。
寝ているときに悲しい夢を見て、それを思い出したという訳でもない。
無意識での反応に近い。条件反射じみた涙。目元が熱い。
その理由は…………らしくないんだぜ。
ここは霧雨邸。
辺りはいつものように静寂。魔法の森の朝は静かなのである。
さて、今日の午前は紅魔館の大図書館へ行って本を借りるところから始まるか。
だが、その前に。
心を落ち着かせる朝のコーヒーからだな。
あぁ、パチュリーが使っているコーヒーカップだと美味く感じるな。
門番は寝ていた。いつも通りだった。
さて、いつも通り堂々と侵入した。いつも通りに本を借りていくんだぜ。
借りたコーヒーカップもしばらく借りたまま。そう、それでいいんだ。
それが日常だ。敢えて無駄に。敢えて面白くなるように借りる。
……いつも通りに。アリスのことはもういい。
パチュリーのところで本を借りた。
途中、私の自慢でもある魔法使いの帽子が少し焦げたが、名誉勲章みたいなモノだ。
魔法使いと魔法で決闘出来たんだから。
帰りも門番は寝ていた。いつも通りだった。
それで、丁度、今は昼。私は里を歩いていた。
今日は何を食べようか。……昨日も一人でそんなことを考えたっけ。
アリスとは喧嘩をしたんだったな。別にいつも一緒に食事を取っている訳でもないけど。
……こんなことは関係ないことか……って、ん?
あぁ、何か色々と現れてきたぞ。男に女にじーさん、ばーさん。子供まで。
そういえば、私は英雄だったな。何か前に私の生態を調べる為に色々と訊かれたときに、そんな話を聴いたっけ。
はっはっは。存分に私を拝めるといい。無料だ。職業、魔法使いだ。魔法使いは凄いぞ。
…………いや、私は盗賊じゃない。魔法使いなんだ。
そう、それでいいんだ。勇者のパーティに入って、魔王を倒すんだ。
しかし、魔王って誰だ?
……幽香か。
そんなことを考えていたら幽香を見つけた。花屋の子と話している。
八つ当たりじみた勢いであいつに話そうとして―――――――――――――――――私は止めた。
絶縁状態にある私の父親が居たからだ。
こういうときはあいつに憎まれ口を軽く叩いたあと、幽香にマスタースパークを放ち同じ技で相殺してもらう。
……だが、家を出た。
その過去が。よりによって今…………。
昼食を取らずに霊夢のところまで来た。
逃げるように……いや、威勢よく私はここまで来たんだ。
さすがに腹が減ったので、霊夢に飯をくれと言ったらぶっ飛ばされた。
当然のことだった。
私は今、台所を借りて料理をしている。
霊夢の分まで作っていた。
さすが霊夢。無駄が無い。しかも優しさがある。
でも、腹が減っている私を使わなかったらもっと良かったが、それは贅沢か。
……さて。今は夜。
先程、霊夢のところで適当に時間を潰したあと、家に帰ってきた。
そして……そして、それから椅子に座ってボーっとしていた。
景色を眺めながら。
風で揺れる木の葉を眺めながら。
片付けたくない大事な道具を眺めながら。
……家を出た、か。
私は昼頃、里であいつと会ったときのことを思い出す。
あのときは昔の思い出が脳裏に浮かんでいた。
一つは、昔、一人で家を出てから、この家を建てたときに寂しく感じたこと。
当時、私は一人だった。
香霖も居たけど、あいつは私と同じ境遇ではなかった。
だから、霧雨邸を建てたときも心が空虚だった。
それと霊夢は何か違う。霊夢の存在は異質で、私とは世界が違っていた。
絶縁状態にあった私は、似たような縁を持つ者が居なかったから寂しかった。
ただし、アリスが来るまでは。
そう、それに二つ目はアリスのこと。
アリスは魔界から修行の為にこっちに来た。魔法の森に家を構えたのもその為だ。
あいつも私と似たような境遇で、自ら修行の為に家族との連絡を絶ったみたいだと。
しかし、あいつすっかり成長してて、最初誰かと思ったっけな。
そう、アリスも家を出たんだ。
あいつが居なければ私と同じ境遇の人間は自分一人だっただろう。それはあいつも同じ。
そして。
三つ目はアリスと昨日、喧嘩したときのこと……。
それが脳裏に浮かんだ瞬間、あいつとの記憶を全て否定したくなった。
……そういえば、アリスは。
アリスは今まで何をしていたのだろう。
アリスは…………だけど!!
つい、椅子からドンと大きい足音を立てて、立ち上がってしまう。
すると、何かが落ちた。
それを手に取る。
これは……人形。アリスのところから借りた人形だ。
人形はボロボロだ。埃にまみれている。私が今までぞんざいに扱ったからだろう。
だが、大事にそれを、包むようにそれを持った。手の感覚を感じれる程、それを愛おしく。
私は、それを改めて認識して。
……ふっ。ははは。ははははははははははははは!!
心の中で大爆笑した。口もにやけてしまう。
あぁ、馬鹿だ。最高に馬鹿だな、私は。
さて、今日が終わるまでまだ時間は有る。
しかし、無になるまでに―――――――――――――――――やることはたくさんあるんだぜ!
門番は夜も寝ていた。いつも通りだった。
紅魔館に入っていく。途中の廊下で会った咲夜とレミリアが、珍しいモノを見るように少し驚いていたが素通りだ。
夜中という時間に堂々と忍び込んだことが珍しかったのだろう。
だが、箒に跨って飛びながら、一目散に大図書館を目指す。驚いている間がチャンスだ。
「おい、パチュリー!」
「……何かしら」
「昨日借りた本とコーヒーカップを返しに来たぜ! じゃあな!!」
「…………は?」
よし、今日のここはこれで良し!!
これで図書館には来なかったことになる。
今日は本来。
パチュリーのところには行かなかった。
里で逃げることもなかった。
霊夢のところで昼食を取ることもなかった。
今日は。
朝気だるく起きたあと。
昼食を取る為に里へ向かって、あいつに憎まれ口を一つ叩いて、幽香と争って。
それから、アリスの家に行ってよりを取り戻す筈だった。
だから、私は取り戻す。私の今日を。アリスとの仲を。
その為には今日を否定して、今日をもう一度創り直す。今からアリスのところに行けば済む問題じゃあない。
今日したことを否定して、今日するべきことをしなければな。
そうして、いつも通りの私に為って、いつも通りの私でアリスと一緒に居たいんだ!
私が私に嘘をつくのは嫌なんだ。嘘をついたままアリスと会うのは嫌なんだぜ。
里に着いた。
運が良いことに幽香がまた花屋に来ていたようだ。
よし、マスタースパークをぶっ放す。
花屋が壊れる?
あいつが居るから大丈夫だぜ!
「―――――――――――――!!」
予想通り恐ろしいまでの反射速度で私へと振り向き、幽香はマスタースパークを放った。
山火事を起こすような火力は同等の火力により相殺される。
もっとも、あいつなら必ずやってくれると分かっていたから、安堵はあったけどな。
よし、昼のどうしよもない怒りはこれで解消出来た。
次は霧雨店だ!!
「馬鹿ね。逃がすと思って?」
幽香が迫ってくる。その姿は正に魔王だった。
ふん、面白い。こっちの方が熱いんだぜ。
箒に跨りながら里の上空を彗星のように飛翔する。
その後ろからマスタースパーク、マスタースパーク、マスタースパーク、マスタースパーク・・・。
今夜は一年分のマスタースパークが拝めるな! それに心臓が飛び跳ねる程、スリルがあるぜ。
もっとも、避けれなければゲームオーバーだがな。残機もゼロだし。
追ってきている幽香よりも私の方が断然速い。後ろの幽香の姿も小さい。
だが、幽香は大よその予測で私を撃ち落すことが出来る。何せ射程、範囲、共に馬鹿だ。
しかし、彗星は撃ち落されるもんじゃないだろ。
「―――――――――――よし、着いた!」
そうして、あいつが住んでいる霧雨店の上空に着いた。
やること?
決まっている。
「おまえなんか大嫌いだぜ!!」
夜、迷惑をかけるとかもう考えない。頭の中を真っ白にして、心の底から叫ぶ。
これであいつの耳に入ったな。どうせあいつは、この馬鹿娘がって笑うことだろう。
よし、これで里は終了。次は霊夢のところだな。
幽香を振り切って霊夢が住んでる神社に来た。
そして、霊夢の居る寝室まで遠慮もせずにズカズカと突き進んだ。
起きた霊夢にぶっ飛ばされた。
だが。
「霊夢。悪いな。私は里で飯を食いたい!!」
「……はぁ?」
痛い額も強引に気にしないことにする。
私はそれを告げて魔法の森に向かった。ここも良し。
魔法の森上空。
もう夜の暗さが失われようとしている時間だ。
時間が無い。
私は彗星の如く飛翔しながら考える。
だが、幸いにしてアリスの家は目を瞑っても何処にあるかが解かる。
私はそのままアリスの家の方角へと進んでいく。
あぁ、まったく。ここに来るまでたくさんの人、それに何匹かの妖怪に迷惑をかけてしまったな。
本当、困った奴だな。私は悪だ。
だけど。
――――――――――――――――――――――それでもアリスと一緒に居たいんだ!!
そうして、アリスの家の屋根をぶち破って侵入した。
当然、大きい音が鳴ったと共にアリスが起きる。
「ちょっ、ちょっと貴方何してんのよ!?」
「よう。朝食はフレンチトーストが良い」
本来既に寝ている時間ということもあって眠い。
だが、ここで眠る訳にはいかない。
「何がフレンチトーストよ! 貴方……!」
「アリス。悪かったな」
……この一言を言う為にわざわざ多くの人に迷惑をかけてきた。他人が知ったら大爆笑だな。
まったく。我ながら破天荒だ。
「それだけだ。じゃあな」
「待ちなさいよ」
「……何だ?」
アリスが。アリスが私を睨んでいる目から涙を流しながら、話しかける。
ははっ、私も破天荒だが、アリスも存外破天荒だな。こんな展開は予測できなかったぜ。
「……私も悪かったわ」
「アリス……」
…………あぁ。良かった。
しかし、そうこうしている内にかすかな朝日が差してきたな。
私がしていないことは、気だるく起きることと、里で昼食を食べていないこと、か。
じゃあ、まず寝よう。
「お休み」
「ちょっと、魔理沙!?」
私は力尽きたように床で横になった。
さて、気だるく起きたらアリスと人間の里で昼食を取りに行こう。
そう、一緒に。
目が覚めたら突然、悲しみに襲われたのだ。
寝ているときに悲しい夢を見て、それを思い出したという訳でもない。
無意識での反応に近い。条件反射じみた涙。目元が熱い。
その理由は…………らしくないんだぜ。
ここは霧雨邸。
辺りはいつものように静寂。魔法の森の朝は静かなのである。
さて、今日の午前は紅魔館の大図書館へ行って本を借りるところから始まるか。
だが、その前に。
心を落ち着かせる朝のコーヒーからだな。
あぁ、パチュリーが使っているコーヒーカップだと美味く感じるな。
門番は寝ていた。いつも通りだった。
さて、いつも通り堂々と侵入した。いつも通りに本を借りていくんだぜ。
借りたコーヒーカップもしばらく借りたまま。そう、それでいいんだ。
それが日常だ。敢えて無駄に。敢えて面白くなるように借りる。
……いつも通りに。アリスのことはもういい。
パチュリーのところで本を借りた。
途中、私の自慢でもある魔法使いの帽子が少し焦げたが、名誉勲章みたいなモノだ。
魔法使いと魔法で決闘出来たんだから。
帰りも門番は寝ていた。いつも通りだった。
それで、丁度、今は昼。私は里を歩いていた。
今日は何を食べようか。……昨日も一人でそんなことを考えたっけ。
アリスとは喧嘩をしたんだったな。別にいつも一緒に食事を取っている訳でもないけど。
……こんなことは関係ないことか……って、ん?
あぁ、何か色々と現れてきたぞ。男に女にじーさん、ばーさん。子供まで。
そういえば、私は英雄だったな。何か前に私の生態を調べる為に色々と訊かれたときに、そんな話を聴いたっけ。
はっはっは。存分に私を拝めるといい。無料だ。職業、魔法使いだ。魔法使いは凄いぞ。
…………いや、私は盗賊じゃない。魔法使いなんだ。
そう、それでいいんだ。勇者のパーティに入って、魔王を倒すんだ。
しかし、魔王って誰だ?
……幽香か。
そんなことを考えていたら幽香を見つけた。花屋の子と話している。
八つ当たりじみた勢いであいつに話そうとして―――――――――――――――――私は止めた。
絶縁状態にある私の父親が居たからだ。
こういうときはあいつに憎まれ口を軽く叩いたあと、幽香にマスタースパークを放ち同じ技で相殺してもらう。
……だが、家を出た。
その過去が。よりによって今…………。
昼食を取らずに霊夢のところまで来た。
逃げるように……いや、威勢よく私はここまで来たんだ。
さすがに腹が減ったので、霊夢に飯をくれと言ったらぶっ飛ばされた。
当然のことだった。
私は今、台所を借りて料理をしている。
霊夢の分まで作っていた。
さすが霊夢。無駄が無い。しかも優しさがある。
でも、腹が減っている私を使わなかったらもっと良かったが、それは贅沢か。
……さて。今は夜。
先程、霊夢のところで適当に時間を潰したあと、家に帰ってきた。
そして……そして、それから椅子に座ってボーっとしていた。
景色を眺めながら。
風で揺れる木の葉を眺めながら。
片付けたくない大事な道具を眺めながら。
……家を出た、か。
私は昼頃、里であいつと会ったときのことを思い出す。
あのときは昔の思い出が脳裏に浮かんでいた。
一つは、昔、一人で家を出てから、この家を建てたときに寂しく感じたこと。
当時、私は一人だった。
香霖も居たけど、あいつは私と同じ境遇ではなかった。
だから、霧雨邸を建てたときも心が空虚だった。
それと霊夢は何か違う。霊夢の存在は異質で、私とは世界が違っていた。
絶縁状態にあった私は、似たような縁を持つ者が居なかったから寂しかった。
ただし、アリスが来るまでは。
そう、それに二つ目はアリスのこと。
アリスは魔界から修行の為にこっちに来た。魔法の森に家を構えたのもその為だ。
あいつも私と似たような境遇で、自ら修行の為に家族との連絡を絶ったみたいだと。
しかし、あいつすっかり成長してて、最初誰かと思ったっけな。
そう、アリスも家を出たんだ。
あいつが居なければ私と同じ境遇の人間は自分一人だっただろう。それはあいつも同じ。
そして。
三つ目はアリスと昨日、喧嘩したときのこと……。
それが脳裏に浮かんだ瞬間、あいつとの記憶を全て否定したくなった。
……そういえば、アリスは。
アリスは今まで何をしていたのだろう。
アリスは…………だけど!!
つい、椅子からドンと大きい足音を立てて、立ち上がってしまう。
すると、何かが落ちた。
それを手に取る。
これは……人形。アリスのところから借りた人形だ。
人形はボロボロだ。埃にまみれている。私が今までぞんざいに扱ったからだろう。
だが、大事にそれを、包むようにそれを持った。手の感覚を感じれる程、それを愛おしく。
私は、それを改めて認識して。
……ふっ。ははは。ははははははははははははは!!
心の中で大爆笑した。口もにやけてしまう。
あぁ、馬鹿だ。最高に馬鹿だな、私は。
さて、今日が終わるまでまだ時間は有る。
しかし、無になるまでに―――――――――――――――――やることはたくさんあるんだぜ!
門番は夜も寝ていた。いつも通りだった。
紅魔館に入っていく。途中の廊下で会った咲夜とレミリアが、珍しいモノを見るように少し驚いていたが素通りだ。
夜中という時間に堂々と忍び込んだことが珍しかったのだろう。
だが、箒に跨って飛びながら、一目散に大図書館を目指す。驚いている間がチャンスだ。
「おい、パチュリー!」
「……何かしら」
「昨日借りた本とコーヒーカップを返しに来たぜ! じゃあな!!」
「…………は?」
よし、今日のここはこれで良し!!
これで図書館には来なかったことになる。
今日は本来。
パチュリーのところには行かなかった。
里で逃げることもなかった。
霊夢のところで昼食を取ることもなかった。
今日は。
朝気だるく起きたあと。
昼食を取る為に里へ向かって、あいつに憎まれ口を一つ叩いて、幽香と争って。
それから、アリスの家に行ってよりを取り戻す筈だった。
だから、私は取り戻す。私の今日を。アリスとの仲を。
その為には今日を否定して、今日をもう一度創り直す。今からアリスのところに行けば済む問題じゃあない。
今日したことを否定して、今日するべきことをしなければな。
そうして、いつも通りの私に為って、いつも通りの私でアリスと一緒に居たいんだ!
私が私に嘘をつくのは嫌なんだ。嘘をついたままアリスと会うのは嫌なんだぜ。
里に着いた。
運が良いことに幽香がまた花屋に来ていたようだ。
よし、マスタースパークをぶっ放す。
花屋が壊れる?
あいつが居るから大丈夫だぜ!
「―――――――――――――!!」
予想通り恐ろしいまでの反射速度で私へと振り向き、幽香はマスタースパークを放った。
山火事を起こすような火力は同等の火力により相殺される。
もっとも、あいつなら必ずやってくれると分かっていたから、安堵はあったけどな。
よし、昼のどうしよもない怒りはこれで解消出来た。
次は霧雨店だ!!
「馬鹿ね。逃がすと思って?」
幽香が迫ってくる。その姿は正に魔王だった。
ふん、面白い。こっちの方が熱いんだぜ。
箒に跨りながら里の上空を彗星のように飛翔する。
その後ろからマスタースパーク、マスタースパーク、マスタースパーク、マスタースパーク・・・。
今夜は一年分のマスタースパークが拝めるな! それに心臓が飛び跳ねる程、スリルがあるぜ。
もっとも、避けれなければゲームオーバーだがな。残機もゼロだし。
追ってきている幽香よりも私の方が断然速い。後ろの幽香の姿も小さい。
だが、幽香は大よその予測で私を撃ち落すことが出来る。何せ射程、範囲、共に馬鹿だ。
しかし、彗星は撃ち落されるもんじゃないだろ。
「―――――――――――よし、着いた!」
そうして、あいつが住んでいる霧雨店の上空に着いた。
やること?
決まっている。
「おまえなんか大嫌いだぜ!!」
夜、迷惑をかけるとかもう考えない。頭の中を真っ白にして、心の底から叫ぶ。
これであいつの耳に入ったな。どうせあいつは、この馬鹿娘がって笑うことだろう。
よし、これで里は終了。次は霊夢のところだな。
幽香を振り切って霊夢が住んでる神社に来た。
そして、霊夢の居る寝室まで遠慮もせずにズカズカと突き進んだ。
起きた霊夢にぶっ飛ばされた。
だが。
「霊夢。悪いな。私は里で飯を食いたい!!」
「……はぁ?」
痛い額も強引に気にしないことにする。
私はそれを告げて魔法の森に向かった。ここも良し。
魔法の森上空。
もう夜の暗さが失われようとしている時間だ。
時間が無い。
私は彗星の如く飛翔しながら考える。
だが、幸いにしてアリスの家は目を瞑っても何処にあるかが解かる。
私はそのままアリスの家の方角へと進んでいく。
あぁ、まったく。ここに来るまでたくさんの人、それに何匹かの妖怪に迷惑をかけてしまったな。
本当、困った奴だな。私は悪だ。
だけど。
――――――――――――――――――――――それでもアリスと一緒に居たいんだ!!
そうして、アリスの家の屋根をぶち破って侵入した。
当然、大きい音が鳴ったと共にアリスが起きる。
「ちょっ、ちょっと貴方何してんのよ!?」
「よう。朝食はフレンチトーストが良い」
本来既に寝ている時間ということもあって眠い。
だが、ここで眠る訳にはいかない。
「何がフレンチトーストよ! 貴方……!」
「アリス。悪かったな」
……この一言を言う為にわざわざ多くの人に迷惑をかけてきた。他人が知ったら大爆笑だな。
まったく。我ながら破天荒だ。
「それだけだ。じゃあな」
「待ちなさいよ」
「……何だ?」
アリスが。アリスが私を睨んでいる目から涙を流しながら、話しかける。
ははっ、私も破天荒だが、アリスも存外破天荒だな。こんな展開は予測できなかったぜ。
「……私も悪かったわ」
「アリス……」
…………あぁ。良かった。
しかし、そうこうしている内にかすかな朝日が差してきたな。
私がしていないことは、気だるく起きることと、里で昼食を食べていないこと、か。
じゃあ、まず寝よう。
「お休み」
「ちょっと、魔理沙!?」
私は力尽きたように床で横になった。
さて、気だるく起きたらアリスと人間の里で昼食を取りに行こう。
そう、一緒に。