Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

リリカはなんだかんだで愛されている。

2011/08/03 00:46:21
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 ここは霧の湖の外れにひっそりと余り人に知られていない古びた洋館。
その洋館からは似つかわしくない騒がしい音が奏でられている。
鬱・躁・普通の音が入り混じったこの音は、私たちが演奏をして奏でているもの。
「ふぅ……」
「今日はここまでにしようか♪」
「そうだねー」
 今さっき静かに一息ついたのは人呼んで騒霊ヴァイオリスト、ルナサ・プリズムリバー!
月の光のような髪色をし、漆黒の衣装で身を染めて、天辺に月の飾りがついたこれまた黒の三角帽をかぶった私の姉さん。
性格は物静かだけど、自分の意見はちゃんと通すしっかり者で、よく私の話し相手とかもしてくれる尊敬する姉よ。
 一方今さっき呑気に振舞ったのが我がプリズムリバー三姉妹の次女、人呼んで騒霊トランペッター、メルラン・プリズムリバー!
乳白色のややウェーブのかかった髪で、純白の衣装に身を沈めて、天辺に太陽の飾りがついたこれまた白の三角帽をかぶった私の姉さん。
性格は良く言えばいつでも明るい、悪く言えばお調子者。
よく私を弄り倒してくるけど、メル姉に付き合ってると楽しくなるからいいんだけどね。まぁ、一応ポジティブさだけでは尊敬する姉ね。
そして最後の紹介よ!
「ルナサ、夕飯まだー」
「……決めてなかった」
「ちょっとまって」
落ち着くのよ私。深呼吸。深呼吸よ。
スーハー、ウーハー!
「何よリリカ。今から人がせっかく夕飯論議を始めようかと思ってるのに」
「……何かあった?」
「いやさ、人が自己紹介をしようとしているのに横やり入れるってどういうこと?」
「何を言ってるのよ。誰が自己紹介を必要としているのよ。……ハッ!リリカあんたもしかして練習のしすぎで……」
「かわいそうに……」
 口元を服の袖で隠して「よよよ」となく演技をする姉、二人。
ごめん、この二人尊敬しているなんて嘘。
「まぁ、リリカなんてほっといて夕飯決めよー」
「……一応二人とも何食べたい?」
 流石ルナ姉……!ちゃんと私の事も気にしてくれてる!
ルナ姉大好き、私一生ついて行くよ!
「ハンバーグ!」
「カレー♪」
「じゃあ間を取って……」
 ああ、カレーハンバーグか。まぁ、妥当だよね。
やっぱりルナ姉は偉いなぁ。ちゃんと私たちの事を考えて優先してくれてるんだもん。
「牛丼だな……」
前言撤回。この姉、自分のことしか考えてなかった。

                ◆

「お腹いっぱいになっちゃったね」
「お腹いっぱい幸せいっぱいよ」
「……満腹」
 食卓には既に空になっている箸が乗った三つの丼が並んでいる。中には米一粒もついておらず、きっちり残さず食べられていた。
ルナ姉になんで牛丼を食べたくなったかと聞いたら「吉野家に導かれた」とよくわからない答えが返ってきた。
全くわけがわからないよ。
 まぁ、ルナ姉がよくわからない言動、行動をするのは、今に始まったことじゃないからいいけど。
この間なんか私が夜も深いからそろそろ寝ようと思って、ベッドに潜ったら全裸で待機していた。
とりあえずその時はルナ姉をベッドから蹴飛ばして、相手せずにすぐ寝たけど。
しばらくその場で「用がすんだらもう帰れっていうの……」って嘘泣きしていたけど相手にしなかった。
「それにしても私たち姉妹なのに、好みがかなりはっきりしてるわよね」
「言われてみれば確かにそうだね」
「……激しく同意する」
 三人とも首を縦に頷いて、納得している。
ルナ姉、メル姉も私も好みが全く違うもんなぁ……。
「……楽器を演奏する身としてお互いの事を知らないというのはまずいから、今一度お互いのことを知っておくべき」
「確かにルナサの言うことは一理あるわね」
珍しくメル姉が「うんうん」と腕を組んで頷いている。
流石メル姉、真面目に決めているんだろうけど、頬にご飯粒がついているから説得力がない。
「じゃあ……やるわ。題して、姉妹の心を読み取れよ!間違えたら姉の言うことには絶対服従ゲーム!」
 あ、あれ?ルナ姉そんなキャラじゃ無かったよね?ってちょっとまって今さっき何って言った?
姉の言うことには絶対服従って言わなかった?
「ルナ姉、ルナ姉」
「もう食べたでしょ……」
「にょろーんって違う!」
 危ない、ルナ姉のペースに流されるところだった!
ここは絶対に言及しないと私が不利になる!
私は机を思いっきり「バン!」と叩いて立ち上がる!
「今さっき、姉の言うこと絶対服従って言ったけどそれじゃあ私が絶対不利じゃん!」
「今さら何言ってんのよリリカ。あんたは年がら年中不利な立場に置かれてるのよ」
「えっ……?そうなのルナ姉……?」
「……そんなこともしらなかったの?プリズムリバーの中で髪の色も普通だしこれといった特別な音も出せないし性格も別段普通だから最も影が薄くて私は必死にリリカを励まそうと何度も何度もリリカを落ち込ませないために必死にコンタクトを取ってきたのにリリカは私を蔑に扱うし私の気持ちを考えたことあったの?リリカのベッドに全裸待機していた時どれだけ私が勇気出したとやったと思ってるの?ちゃんとそれぐらい気付いてよだからリリカは人気が出ないんだよ」
「ごめんルナ姉。ルナ姉がそこまで饒舌になれるとは思ってなかった。私、姉妹なのにルナ姉のこと全然知らなかったわ」
本当にルナ姉がここまで饒舌になれるとは思ってなかった。ってか今さっき言ってた時、目に光が宿って無くて怖かった。
「……とりあえずやるわ。ルールは簡単。私に関する質問を投げかけるから、二人は私に関する質問の答えを後で配られるフリップに書き込むだけ。それを正解したほうにはご褒美をあげるわ。リリカは正解しても罰ゲーム」
「それはおかしい」
 私がルナ姉に抗議を申し立てようとした時、床が爆発した。
ルナ姉と私を挟んでいたテーブルは爆散し、丼は錐りもみ回転しながら宙へと舞い上がった!
何を言っているか解らないけれど、私もよくわからない。
粉塵巻き起こる中、一人の背の高い人影が徐々に見えてきた。
美しき緋の衣を身に纏い、高い身長で圧倒的存在感を小柄な私に見せつける。
鋭い眼力は、はるか全てを見透かすことのできるのではないかという錯覚さえも起こさせる。
そして黒い帽子からびろんと後ろに垂れ下がった帽子に、結ばれた赤いリボンから出た触角のような布。
右手は天高く突き上げ、そしてその中でも人差し指を天へと突き上げる。左手は腰に添えるだけ。
「どうも空気の読める女、永江衣玖です」
 そういうといきなりジャンプし、錐もみ回転しながら落ちてくる丼を、空中で見事に無駄のない動きでキャッチした!
そしてそのまま丼を部屋の隅へと置いた。
「はっ……!もしかしてあなたが衣玖さんなの!?」
メル姉が被雷したかのような顔で、衣玖さんとやらを見つめている。
「知っているのメル姉?」
「ええ、ある時は子供が川でおぼれている所に現れて、助け出して無言で去っていき、そしてまたあるときは火事の現場に現れ一陣の風を巻き起こし一瞬にして沈下して無言で去っていく、それが衣玖さんよ!人は衣玖さんが去っていくときにこういうわ『キャーイクサーン』って」
「呼びません」
「メル姉あっさり否定されたけど」
「ふふふ、リリカは解ってないわねぇ。これは謙遜してるのよ。さすがは衣玖さんだわ」
「いえ、本当に違うんですが……」
表情を見る限り困っているから、たぶんメル姉の妄想が暴走しているだけなんだろうなぁ。
ってかメル姉はどこでそんな情報を得たんだろ。
「……メルラン、困ってるからやめてあげなさい」
「ちぇー、新聞に載ってたから本当なのにー」
ま た 天 狗 か 。
いい加減あの新聞廃刊しないのかな。印刷費の無駄だとおもうんだけど。
「何故ここに来たかというと面白そうな匂いがしましたので嗅ぎつけてきました」
「……じゃあ審判して」
「ええ、いいですよ」
「ちょっとまった!私たちの事を何も知らない人に審判任せていいの!?」
「得てして自分の事は他人の方がよく知っているということもありますし、ここは大目に見てください」
「……そういうこと」
「む、むぅ」
 余り納得いかないけれどルナ姉がそういうなら仕方ないか。
かくしてルナ姉が提案したゲームをすることになった。


                      ◆

「……手元にフリップとペンは配られた?」
「届いたよー」
「うん、あるよ」
「ちなみに私も答えます」
 さて、ルナ姉の事についてなら一通り知っているつもりだけど、どんな問題が出るんだろ?
どうせ、趣味の事とか聞いてくるんだろうなぁ。雨の日の読書ってことは既にわかりきってるのに。
私は余裕の表情でペン回しに興じている。
「じゃあ第一問。私の趣味は?」
 ほら来た。簡単じゃん。
雨の日の読書っと。
「じゃあ手元のフリップを一斉にオープンして」
 めんどくさいなぁ。ルナ姉のことは尊敬しているから殆どの事は解ってるのに、いちいちこんなことするなんて。
さてと、まずは一問目クリアっと。

雨の日の読書(リリカ)
リリカいじめ(メルラン)
リリカいじめ(衣玖)

「おい、まてあんたら」
「何よ。間違ってないでしょ」
「そうです。これで合ってるはずです」
 二人ともそざ当たり前のように言い張ってきた。何だろうこの疎外感。
いや、こんな二人のふざけた回答よりも大切なのはルナ姉の回答があってればそれでいいんだから。
まぁ、ルナ姉の事だからちゃんと答えてくれてるはず!
「……私の回答はこれ」
ルナ姉もフリップを手元に持ってきてペンをさらさらって走らせて書き、そしてそれをオープンした。

リリカいじめ(ルナサ)

こんちくしょう。

「というわけで間違ったから罰ゲーム……」
「はいはい。もうなにー?」
「……成仏してきて」
「死ねってか」
 この姉顔色一つ変えないでさらっとそんなことを言い放つなんて、私の事を本当に妹としてみているのかな?
「まぁ、冗談……。次の問題行くわ」
「あ、まったルナサご褒美くれないの?」
「……はい」
 ルナ姉はごそごそとポケットを漁ると紙きれを一つメル姉に渡した。
「何これ?」
「吉野家株主優待券……。あると便利」
ルナ姉。あんたどこまで吉野家好きなのよ。
三人とも微妙な雰囲気に包まれたまま、第二問に移ることになった。
「第二問。ルナサ・プリズムリバーとは何?」

……え?
いや、何と聞かれたら私の姉としか言いようがないんだけど……。
ま、まぁとりあえず姉って書いておこう。
「はいじゃあフリップを一斉にオープン」

尊敬する姉(リリカ)
No.51イチロー(メルラン)
吉野家の店長(衣玖)

ねぇ、メル姉。私ルナ姉を尊敬するの止めようかと思うの。
まぁ、でもルナ姉がそこまでふざけた回答をしてるわけないよね。
ふとルナ姉のフリップを見てみる。

幻想郷吉野家支店店長(ルナサ)

 ルナ姉。私演奏家として尊敬していたけどもうそれ無理みたい。
というよりもいつの間に、幻想郷に吉野家できたの。
そしていつ店長に就任したの。
「だめねぇリリカは。ルナサがそんなストレートな問題出すわけないじゃない。心を読まなきゃ」
「そうですよ。空気を読んで回答を導き出すのが美しい回答ですよ」
 何この二人のしたり顔。
ってかメル姉も間違えてるじゃん。
それよりも何故衣玖さん正解できのよ。
「……二人罰ゲーム」
「ちぇー、何?」
「成仏しろとかやめてよねルナ姉」
 ルナ姉は再びポケットをごそごそと漁り出した。
ルナ姉のポケットって四次元ポケット的なものなの?
そして私たちに黒いイヤホンと音楽再生機を渡された。
「……それ聞いてみて」
「え、うん」
 私とメル姉は言われるがままにルナ姉の指示通り耳にイヤホンを差し込み、音楽再生機の電源を入れ再生する。



『どうも、ルナサです。最近妹がかわいすぎて毎日妄想が絶えません。一番下の妹のリリカは私がお風呂上がりでタオル一枚になって、リリカの前を通るとリリカは顔を赤らめて必死に視線をそらそうとします。かわいいです。お姉ちゃんはそんなリリカが大好きです。この間リリカのベッドに忍びこんで驚かそうと思ったら、ひどい扱いを受けてしまいました。ごめんなさい。お姉ちゃんはリリカがかわいすぎて我慢できないの。よくわからないお姉ちゃんと思うかもしれないけど、嫌いにならないで。私はリリカの事がかわいいと思っているから素直になれないの。ごめんなさい。こんな姉で』

……殺してよ。いっそ殺してルナ姉。

 隣のメル姉も私と同じような表情をしている所を見ると、メル姉はメル姉の事を言われたんだろう。
私たちはお互いに見つめ合い涙を流しながら、無言のまま肩を抱き合った。
同じ苦痛を味わった仲間は仲が深くなるとは本当の事だったのね。
「ふふふ、素晴らしい姉妹愛ですね」
「……えぇ、私もあんなに私の思いを汲み取ってくれるとは思っていなかったから」
 ルナ姉は涙を流しながら衣玖さんと感動している。
三人ともこの場で涙を流しているけれど、たぶん意味が大きく違うと思う。
 私とメル姉はひとしきりに泣いて落ち着くと、気を取り直してフリップに書いた回答を消して次の問題に挑む。
「第三問。今私が考えていることを当てて」
 よし来た!この問題ならルナ姉が吉野家の店長であろうと関係ない!
長年一緒に過ごしてきた仲なんだもん。これくらいわかる。
確か、夕食の後ルナ姉は大体いつも緑茶を飲んでゆっくりしてるのをよく見る。
今日はそれをする前に衣玖さんが来て、できていないからそろそろ緑茶が飲みたいはずだ!
……いや、ここまできてそんな簡単な問題がでるかな?
いや出るわけがない!
私、落ち着け。ここはルナ姉の目を見るんだ。そこから心で何を考えているかをなんとなくで読み取ろう!
ルナ姉の方を見ると、ルナ姉の目に光が灯ってなかった。
私はそれに呆気を取られて、口を開けたまま固まっているとメル姉が私の様子に気づいた。
「ふふっ、甘いわねリリカ。目から心を読み取ろうとしても無駄よ」
「ど、どういうこと……」
「私たちの姉は心を閉ざすことができる」

……それって引き籠りだよね?

「で、でも心閉ざしちゃったら、何考えているとか読み取れないじゃん!」
「そうね……。ルナサは今何を考えているのか私でもさっぱりだわ……」
私たちが二人ともどうしようもないと感じ黄昏ていると、衣玖さんがいきなり立ち上がりフィーバーの構えをとり私たちに語りかけてきた。
「ふふふっ、どうしたんですか二人とも。心を閉ざしても心が通じ合ってるのがあなたたちではないのですか?姉妹、いや、本当の大切な人ならば心が閉ざしていてもその心をこじ開けることができるはずですよ。それがあなたたち、プリズムリバー三姉妹の絆というものではないですか?」
「「い、衣玖さぁああああああああああんんん!!!!!!」」
 私たちはフリップを投げ出し衣玖さんへと泣きながら抱きついた。
そうよ、なんでこんなことを解らなかったの。私たちなら、ルナ姉が例え心を閉ざしてたとしても心を通わすことができるはず!
何年も何年も一緒に辛いことも楽しいことも分かち合ってきたじゃない!できるはずよ!私たちになら!
「メル姉!私たちにならできるよね!?」
「もちろんよ!あたりまえじゃない!私たちは姉妹なのよ!」
私とメル姉は二人とも自信満々の顔で見つめ合い、そしてフリップを勢いよくめくった!

夕食の後のゆったりした時間がほしい(リリカ)
夕食の後のゆったりした時間がほしい(メルラン)
最近、メルランの胸が大きくなってきて揉みがいがでてきてお姉ちゃんはうれしいわ。そしてついにこの間リリカに胸の大きさ負けた。でもいいの二人の胸が大きくさえなってくれれば、おっぱいが大きいってことは胸いっぱいに夢を詰め込めるもの。二人とも早く私なんかを超えて偉大な演奏家になるのよ。(衣玖)

 よし!メル姉との答えは一致した!
衣玖さんは恐らく解らないからヤケになって回答したんだろうなぁ。
まぁ、無理もないか。これはルナ姉のことを普段から知っている私たちしか答えられないもん。
ルナ姉の目も光が灯って、フリップに答えをさらさらと書きだした。そして書き終えると「ふぅ」と一息ついて、フリップをめくった。

最近、メルランの胸が大きくなってきて揉みがいがでてきてお姉ちゃんはうれしいわ。そしてついにこの間リリカに胸の大きさ負けた。でもいいの二人の胸が大きくさえなってくれれば、おっぱいが大きいってことは胸いっぱいに夢を詰め込めるもの。二人とも早く私なんかを超えて偉大な演奏家になるのよ。(ルナサ)

 赤の他人の方が心を通じさせてるなんて、姉妹って何だろうね。
それよりも衣玖さんなんで心閉ざされてたのに回答できたの。
「……というわけで罰ゲーム」
「もう好きにして……」
「メル姉に同じ」
 私たちは二人とも、やれやれと言わんばかりのため息をついた。
だってもう、これルナ姉が私たちをいじってるようにしか見えないもん。
「……じ、じゃあ二人とも目を瞑って」
何だろう?今さっきまでの声のトーンが違って妙に震えていたけど。
私は疑問を抱きながら言われるがままに、瞼をそっと降ろした。
目の前は何も見えずに、そのままただただ時間が過ぎていく。
そしてしばらくすると私の頬に、何か柔らかく湿ったものが触れた感触が伝わった。
なんだろこれ……?
「も、もう目を開けていい……」
 目を開けるとルナ姉が顔を赤くしてスカートを握りしめて俯いていた。
メル姉と私は頭に「?」を浮かべながらお互いの顔を見つめ合っている。
「ふふっ、ルナサさん貴女がまさかそこまで大胆だとは思いませんでしたよ」
衣玖さんはなんだか全てを知っているようで、くすくすと温かい笑みで見守っていた。
「……言わないで。恥ずかしいから」
 ルナ姉はますます顔を赤らめてるし、よくわからない。
私が首をかしげていると、隣のメル姉が私に耳打ちをしてきた。
「リリカ、今さっきたぶんルナサ。キスしたわよ……」
「えっ!?」
私は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
メル姉は口の前に指を立てて「しーっ」というサインを私に送ってきた。
「で、でもなんで……?」
「解らないわよ。でも解ることが一つあるわ」
「な、なに?」
 私はごくりと唾を飲み込み、メル姉に尋ねてみた。
メル姉は「ふふふ」と得意げに笑って私にこう言った。
「ルナサはデレ期なのよ!!」

この姉を信じた私がダメだった。

 私はメル姉の戯言に呆れつつも、フリップに書き込んだ自信作の回答を無作為に消していく。
それにしてもデレ期ねぇ。ルナ姉にはそんなもの絶対ないと思うんだけどなぁ。
「さ、最終問題……」
ルナ姉そろそろ顔をあげようよ。顔も赤らめたままだし。見てるこっちが恥ずかしいから。
「……わ、私ルナサ・プリズムリバーはリリカのことをどうおもっている?」
 え……?もしかして、本当にデレ期?
ふと、メル姉の方をみると親指をつきたてて笑顔でこちらを見ている。
衣玖さんのほうも見てみると、白い歯を輝かせながら、同じように親指をつきたてて笑顔で見ていた。
これは本当かもしれない……!
 じゃ、じゃあこういう解答じゃないの!?
私はワクワクとどきどきの入り混じった気持ちで、フリップにペンを走らせていく!
私はこの問題を絶対に答えられる自信がある!
だって私もルナ姉を同じように想っているから!
私は意気揚々とフリップをめくる!

愛する妹(リリカ)
愛する妹(メルラン)
愛する妹(衣玖)

 よし!答えも同じ!これは頂いた!
それにしてもルナ姉私の事をそんな風に思っていてくれたなんて……。
ごめん、私だめな妹だよね。ルナ姉の気持ちを一つも考えないで。ルナ姉はいつも私の事を気にかけてくれてたんだよね。
それに気付けないなんて……。ごめんなさい。
あれおかしいな……また涙でてきちゃったや……。
「……リリカ。涙出てる。はい、ハンカチ」
「ごめん……」
「いいよ……。私たち姉妹だから」
ルナ姉からハンカチを受け取り、目尻に溜まった涙を拭いたら幾分落ち着いた。
「答えを発表する……」
 ルナ姉はペンをフリップにゆっくりと走らせ、解答を書いていく。
「できた。答えはこれ……」
ルナ姉はゆっくりとフリップをゆっくりとオープンさせていく。
その瞬間が私にはスローに視えた。
回転していくフリップ。その動きはまさにパラパラ漫画のコマ送りに見えた!
そして答えが発表された!

影が薄い(ルナサ)

「上等よ!弾幕で決着をつけようよ!ルナ姉!」
「ふぅん、リリカじゃ私に勝てないわよ?」
「面白そうだから私もまぜてー♪」
三人ともフリップを投げ捨て、楽器を具現化して弾幕を展開していく!
そのままどたばたと騒霊らしく弾幕を放ちあった。
その騒ぎの中衣玖さんがフリップを拾い上げ、何か書いていたのが見えたけどそんなことはたいして気にしていなかった。
「ふふふ、羨ましいものですね。では私は空気を読んでここから立ち去りましょうか」
衣玖さんはフリップに何かを書きこんだ後、消えるようにいなくなっていた。
弾幕がある程度終結して弾幕で荒れた部屋の片づけをしていると、ルナ姉が衣玖さんが書いていたフリップを見つけた。
私たちはフリップに興味津々でルナ姉の周りに集まった。
「ねーねー、早く見ようよ」
「そうよルナサ早く」
「わかった……」
ルナ姉はゆっくりとフリップをめくった。
そして衣玖さんが去る前に書いていたフリップにはこう書いてあった。

姉妹の絆、プライスレス(衣玖)

「「「衣玖さぁあああんんんんんんんん!!!!!!!!!」」」

私たち三人の叫びは幻想郷中に響いたとか響かなかったとかは確かじゃない。
ちなみにその叫び声が迷惑騒音として翌日の文々。新聞で取り上げられることになったのは余談だ。
どうもお久しぶりです。月彼岸です。
先日の大⑨州東方祭4で配布した無料本を微妙に手直ししました。
プリバ書きたいなぁとか思いつつ、プリバだけではネタが思いつかなかったので
衣玖さんを混ぜたらこうなりました。
まぁ、こんなんでもいいじゃない。人間だもの。
名前が無い程度の能力
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
こ、これが姉妹愛……だと……どういうことなの……?
2.名前を間違える程度の能力削除
最後のルナサのフリップ『影が薄い』には、重要なメッセージが隠されている。
そう、リリカは可愛いんだからもっと押していくべきだと・・・・・・だが、罰ゲームと称してキスしてしまった気恥ずかしさから、素直に書けなかった。
つまり、この作品は姉妹愛の証明であり、『姉妹の絆、プライスレス』を良い意味で体言していたんだ!
3.名前が無い程度の能力削除
>先日の大⑨州東方祭4で配布した無料本を微妙に手直ししました
疑問に思ったけど大丈夫?(規約云々的な意味で