Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ある晴れた日の空

2006/10/11 08:39:49
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吸血鬼が死んだ。
吸血鬼が死ぬなどあり得ない、と言うがそれはあくまで人が殺そうとした場合だ。
自分から死のうと考えればその限りではない。
そう、紅魔館の主、レミリア・スカーレットは、永遠とも取れる生涯に終止符を、自らの手で打った。
その友、パチュリー・ノーレッジは、幾ばくか前に小悪魔と「マジックアイテムを探しに森の探索に行く」と出て以来行方不明だ。
恐らくは、喘息の発作の時に人間に狩られたかしたのだろう。
そしてそこのメイド、十六夜咲夜はもう居ない。
館内にいるメイドの闘争の狭間にて、ナイフを腹部に刺され、あっけなく逝った。
レミリアの妹・フランドール・スカーレットは、孤独で精神がやられてしまった。
おそらく、レミリアは孤独に耐えられなかったのだろう。
だから、命を絶った。
そして、紅魔館は廃墟と化した。







桜の亡霊は、昔と変わりない。
ただ、その周りには変わりはあった。
常に傍らに居た半身半霊の従者、魂魄妖夢が姿を消した。
半身半霊と言えど、半身の方は時の流れには抗えなかったのだろう。
また、庭先の墓が増えた気がする。
霊達の中にも、新しく増えた者が沢山居る。
そして今は、新しい従者が着いている。
魂魄家の新しい従者か、今回は少女ではなく少年の姿をしている。
まだ顔に幼さを残し、主が眠りから目覚めなくておろおろしている姿には愛らしさを覚える。
そうしてその新しい従者と変わりなく性格を送る亡霊には、時の流れはさぞ早いことだろう。








八雲邸でも、ここは殆ど年がら年中変わっていない。
そこの主・八雲紫も、全くと言っていいほど変わりがない。
ただ、変わりがあるとすれば、冥界と同じく、従者だろうか。
八雲紫の長年の従者・八雲藍は、長い年月を生き、天寿を迎えた。
そうしてその八雲藍の立場に立つことになったのは、以前藍に愛されていた八雲橙だ。
背は伸び、風格も身に纏い、既に蓬莱の人の形にも劣らないほどの妖力を手に入れた。
そして、橙は新しく化け犬を躾て、式神としている。
それはまさしく一昔前の藍と橙のように見て取れる。非常に愛しく思う。
このマヨヒガでは、時の流れは恐ろしく遅いようで、早くもあり、止まったようでもある。と、私は思う。









蓬莱の人の形も、昔と変わりない。
従者も、殺し合う相手も、まったく変わりない。
館の近くにいる兎も、白兎によく似た兎が治めている。
月兎は、以前より少しか老いた感じはするが、それでもまだ現役である。
もう一人の蓬莱の人の形も、ほとんど変わらない。
ただ、良く見ると、よく一緒にいるところを見かけた歴史の妖怪、上白沢慧音が居ない。
生者必滅、やはり慧音もこの例には漏れなかった、と言うことか。
しかしこの生者必滅には、蓬莱の人の形は含まれない。
蓬莱の薬の罪深さとは、そう言ったことだろう。
全く罪深き物だ。











死神と裁判官は、いつも通りに仕事をしている。
何十年も、何百年も。
だから、この周辺だけは時の止まったような感覚も覚える。
変化があるとすれば60年に一度の大開花のみ、
それ以外は同じ風景が毎年繰り返されるだけである。
同じ過ぎて、飽きは感じられないものか。しかし、死者を送り届けるという点では、これは非常に向いているのかも知れない。
死者は24時間365日フルタイムで生まれ続けている、無論その中に慧音や藍が含まれていたのは言うまでもない。
それを常に裁き続ける裁判官というのは、常人では到底耐えられないだろうと、私はこう思う。









博麗神社は、昔と同じく古びた神社のままだ。
中を見てみれば、縁側で巫女が紅茶を飲んでいて、その横に白黒の服を着た魔法使いが居る。
ここだけ見れば、ここだけ時間の流れを受けていないかのように見える。
夏には鬼が祭りを催して、秋には悪霊が物思いに耽る。
矢張り、時間の流れを受けていないかのようだ。
しかし、それでも違いは出る。
神社の奥の神棚を見てみると、霊夢の時は13代目だったのが、21代目になっている。
代替わりに代替わりを繰り返し、今の幻想郷があるのだな、と思う。
大事な人が死んだ時、あなたは「ただあるがままに」と受け入れることが出来ますか?
それとも、老いや事故を憎み、時の流れを妬みますか?
南無
コメント



1.CACAO100%削除
生があれば死が有る、必然の流れ、必然の止まり
死ねるのは生が有るから、生亡き者に死は無い
終わりが無い其れが終わり、行き着いた先はそれぞれだが
之は始まりと終わりを繰り返すだけ、其れを継ぐのは必然と出てくる
どれだけ死のうと、其れを継ぐ生は必ず何処かで出てくる
死は始まり、生も始まり
では・・・生は何処から来たのだろうか?
2.名無し妖怪削除
心に打たれる話なのに何故だろうか、悲しいな。

あぁ……紅魔館組が悲惨だからかw
3.アティラリ削除
これもまた時の流れ
必ず来る必然、終わりある流れの奔流、受け継がれる意思
週末を迎えた者は何を考え、何を残していくものか……

あれ?何か違和感が……

……そういえば美鈴はどうなtt
4.TNK.DS削除
始まったものには、終わりがある。生きるという事もまた然り。
その終わりは大切な物を失う事に直結するのだが、受け継がれるものもある。
生命は必ず終焉を迎えるとしても、その生命の意思は受け継がれまた始まりを生み、また何かが受け継がれる。
終わりと始まりを繰り返しながら人の生はずっと巡っていくんだろうなーとこの作品を読んで考えました。

5.名無し妖怪削除
鈴仙が慧音より長生きなのが意外。…蓬莱の薬飲んだ?
6.暇人削除
これが誰の視点で語られているのかが気になりました。

パチェカワイソウ……orz