閉じられた空間、今なお広がり続ける空間。
魔法の力により淡い光を放ち続けるランプ。
増え続ける膨大な数の魔法書、それらを収める膨大な本棚。
ここは魔法図書館。
失われた知識、禁術、秘術、そういったものが書となり集う場所。
この魔法図書館が出現したのと同時に管理者となる悪魔もここに召喚された。
赤く長い髪、赤い瞳をした悪魔であった。
――私と契約を望むもの、あなたの望みはなんでしょうか?
――――――
――わかりました。私は『知識の歴史』たるあなたと、今ここに契約を結びます。
望みはここ魔法図書館の管理、そしていつか訪れるであろう純粋に『知識』を望む物に仕えること。
対価ですが、そうですね…。この図書館に相応しい司書としての服を下さい。
図書館を管理するものといえば司書。なら服装は司書服が相応しいですからね。
そんなものでいいのかと?いいのですよ。私は些細なことでも満たされてしまう欲の小さい『小悪魔』なのですから。
――――――
――ふふ、ありがとうございます。では、どうぞ管理はお任せ下さい。
いつでも館長をお出迎えできるよう司書として名に恥じぬようにしておきますね。
/ / / / / / / / / / / /
「ん……、懐かしい夢をみたなぁ…」
夢から目の覚めた私は、あまりの懐かしさに思わずそう呟いてしまった。
そういえば、契約を結んでからどれだけの時間が過ぎたのでしょう?
数えてなかったし、常に同じ明るさでいるこの図書館では、そんなこと考えるだけ無駄なのだろうけど。
それでも、この夢を稀に見るたびについつい考えてしまう。
「でも、この夢を見たということはまた”干渉者”がでたようですね。
この図書館の存在を認知できるということはかなりの力の持ち主みたいだけど…。
それだけということは適任者ではなかったみたいですね」
適任者でないと分かった時点で私はその思考を打ち切った。
さて、と一息ついて私は主が来たとき、時間感覚がないのはまずいと思って魔法で作った懐中時計に目をやる。
5時を少し回ったところ。
いつもより気持ち早く起きたみたいです。
ベッドから体を起こし、いつもの司書服に着替える。
そこでふと気づいてしいました。
「……最近、胸元がキツイ気がします………。」
まさか……、太った…?!いえいえ、まさかまさか?
ただ、まだ見ぬ主のためにとお菓子とか紅茶とかお料理とかを作ってはもったいないからと残さず食べてるだけですよ?
そりゃあ最近ちょっと量が多いかなとか思わなくも無いですが……
でも……、いや!!司書としての仕事を頑張ってる私が太るはずがありません!!
取得カロリー = 消費カロリーのはずです。
=の部分が<でもいいくらいのはずです!
大きくなるべきところが大きくなるのは女性として嬉しい限りなのです!
道具に頼って大きく見せる必要のない………何をいってるんでしょうか私は?
まあ、これ以上大きくなっても少し困るので作る量を自重しましょう、そうしましょう。
「さて、気を取り直して朝ごはんでもつくりますか」
今日の朝食はリンゴ半分とグレープフルーツと紅茶にしました。
……いいじゃないですか別に。
朝食を食べ終えた後、次は司書としてのお仕事を始めます。
まず昨日のお昼から今日の朝までに現れた新たな本の確認作業からです。
魔法書、禁術、最近は絵本のような、魔法とは関係の無い本も入ってくるようになりました。
ここにある全ての本のタイトル等は覚えてはいますが、数だけではなく種類も膨大になってきました。
絵本などはタイトルごとに分けて整頓しますが、禁術や魔法書はそうはいかないのです。
禁術はまず封印処理をおこない、暴走及び簡単に閲覧できないようにしておきます。
魔法書はまず属性ごとに分けた後に、強い魔力を帯びた本の確認をし、
見つかれば魔力の暴走の無いようにこれも封印処理をおこないます。
すべての確認と封印処理が終わらないと、整頓できないという時間のかかる作業なのです。
だいたいこれで午前中の時間を使い切ってしまいますね。
お昼からは、先ほどの本を全て本棚へ収めていきます。
これは地味な作業なのですが、数が数です。
気合を入れていきましょう。
本棚に入れ終えたら今度はちょっとしたティータイムです。
私はよくこの時間にまだ来ぬ主となる人のことを考えます。
知識を求めるものがここを求めるのですから魔法使いであるのは確かでしょう。
女性でしょうか男性でしょうか?
個人的には女性であって欲しいですね。
やはり、お話しするとき会話がはずみやすいでしょうし。
まだ見ぬ主、その姿を想像するだけでも楽しい時間となります。
ティータイムの終了後、後はひたすら本のお手入れです。
たとえここに来た書物であっても、手を加えて上げなければ朽ちてしまいます。
そうなってしまえば、それは真の意味での知識の消失となってしまいます。
膨大な数がありますが、それでもこの作業を続けるのは契約という縛りではなく、純粋に私が本が好きだからです。
毎日手に触れてあげてお手入れをする、愛おしさが沸かないはずがありません。
私はこの作業を夕食を挟んで就寝の2時間前まで続けます。
本のお手入れの終わった後、私は一日の汚れを洗い流します。
お手入れする私自身が汚れていれば何の意味もありませんからね。
汚れを洗い流した後、今日たどり着いた書物の記録をし、それを終えたら一日のお仕事の終了です。
全てを終え、ベッドで眠りに付くまでの間、私は再びまだ見ぬ主のことを考えます。
そして、そのまま眠りに付きます。
そうすれば夢の中でなら会うことができるかも知れないから―――
/ / / / / / / / / / / /
『―――様、紅茶をお持ちしましたよ。』
『あら、ありがとう。――、あなたも一緒にどう?』
『よろしいのですか?ありがとうございます、―――様』
『あなたの入れる紅茶はおいしいし、それに…独りで飲むより二人で飲んだほうが美味しいでしょう?』
『ふふ、そうですね。では新作のクッキーもお持ちしますね』
『……嬉しいけど、貴女のはつい食べ過ぎちゃうのよね……』
『大丈夫ですよ。甘さ、カロリー控えめですよ?
それに―――様は膨大な知識を得ることでカロリーを消化していらっしゃるでしょう?
大丈夫ですよ。それに栄養はいくところにいくはずです』
『……嫌味かしら?』
『そ…そんな訳ありませんよ。私はただ―――様のことを想って――』
『ふふ、冗談よ。やっぱり貴女をからかうのは面白いわね』
『あぅ…、ひどいですよぉ―――様ぁ』
/ / / / / / / / / / / /
まだ見ぬ主、貴女は―
可愛らしい方でしょうか?美しい方でしょうか?
明るい方でしょうか?気高い方でしょうか?それとも内気な方でしょうか?
どのように笑う方なのでしょうか?
どのように怒るのでしょうか?
どのように人を、物を、書を、知識を愛する方なのでしょうか?
悠久の時の中、寂しさに囚われてしまった私のココロ。
どのように私の名前を呼んでくれますか?
私を愛してくれますでしょうか?
契約などではなく、私自身が望みます。
まだ見ぬ主、あなたがここに訪れるまで私は貴方を待ち続けましょう。
いつまでも、いつまでも……――
魔法の力により淡い光を放ち続けるランプ。
増え続ける膨大な数の魔法書、それらを収める膨大な本棚。
ここは魔法図書館。
失われた知識、禁術、秘術、そういったものが書となり集う場所。
この魔法図書館が出現したのと同時に管理者となる悪魔もここに召喚された。
赤く長い髪、赤い瞳をした悪魔であった。
――私と契約を望むもの、あなたの望みはなんでしょうか?
――――――
――わかりました。私は『知識の歴史』たるあなたと、今ここに契約を結びます。
望みはここ魔法図書館の管理、そしていつか訪れるであろう純粋に『知識』を望む物に仕えること。
対価ですが、そうですね…。この図書館に相応しい司書としての服を下さい。
図書館を管理するものといえば司書。なら服装は司書服が相応しいですからね。
そんなものでいいのかと?いいのですよ。私は些細なことでも満たされてしまう欲の小さい『小悪魔』なのですから。
――――――
――ふふ、ありがとうございます。では、どうぞ管理はお任せ下さい。
いつでも館長をお出迎えできるよう司書として名に恥じぬようにしておきますね。
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「ん……、懐かしい夢をみたなぁ…」
夢から目の覚めた私は、あまりの懐かしさに思わずそう呟いてしまった。
そういえば、契約を結んでからどれだけの時間が過ぎたのでしょう?
数えてなかったし、常に同じ明るさでいるこの図書館では、そんなこと考えるだけ無駄なのだろうけど。
それでも、この夢を稀に見るたびについつい考えてしまう。
「でも、この夢を見たということはまた”干渉者”がでたようですね。
この図書館の存在を認知できるということはかなりの力の持ち主みたいだけど…。
それだけということは適任者ではなかったみたいですね」
適任者でないと分かった時点で私はその思考を打ち切った。
さて、と一息ついて私は主が来たとき、時間感覚がないのはまずいと思って魔法で作った懐中時計に目をやる。
5時を少し回ったところ。
いつもより気持ち早く起きたみたいです。
ベッドから体を起こし、いつもの司書服に着替える。
そこでふと気づいてしいました。
「……最近、胸元がキツイ気がします………。」
まさか……、太った…?!いえいえ、まさかまさか?
ただ、まだ見ぬ主のためにとお菓子とか紅茶とかお料理とかを作ってはもったいないからと残さず食べてるだけですよ?
そりゃあ最近ちょっと量が多いかなとか思わなくも無いですが……
でも……、いや!!司書としての仕事を頑張ってる私が太るはずがありません!!
取得カロリー = 消費カロリーのはずです。
=の部分が<でもいいくらいのはずです!
大きくなるべきところが大きくなるのは女性として嬉しい限りなのです!
道具に頼って大きく見せる必要のない………何をいってるんでしょうか私は?
まあ、これ以上大きくなっても少し困るので作る量を自重しましょう、そうしましょう。
「さて、気を取り直して朝ごはんでもつくりますか」
今日の朝食はリンゴ半分とグレープフルーツと紅茶にしました。
……いいじゃないですか別に。
朝食を食べ終えた後、次は司書としてのお仕事を始めます。
まず昨日のお昼から今日の朝までに現れた新たな本の確認作業からです。
魔法書、禁術、最近は絵本のような、魔法とは関係の無い本も入ってくるようになりました。
ここにある全ての本のタイトル等は覚えてはいますが、数だけではなく種類も膨大になってきました。
絵本などはタイトルごとに分けて整頓しますが、禁術や魔法書はそうはいかないのです。
禁術はまず封印処理をおこない、暴走及び簡単に閲覧できないようにしておきます。
魔法書はまず属性ごとに分けた後に、強い魔力を帯びた本の確認をし、
見つかれば魔力の暴走の無いようにこれも封印処理をおこないます。
すべての確認と封印処理が終わらないと、整頓できないという時間のかかる作業なのです。
だいたいこれで午前中の時間を使い切ってしまいますね。
お昼からは、先ほどの本を全て本棚へ収めていきます。
これは地味な作業なのですが、数が数です。
気合を入れていきましょう。
本棚に入れ終えたら今度はちょっとしたティータイムです。
私はよくこの時間にまだ来ぬ主となる人のことを考えます。
知識を求めるものがここを求めるのですから魔法使いであるのは確かでしょう。
女性でしょうか男性でしょうか?
個人的には女性であって欲しいですね。
やはり、お話しするとき会話がはずみやすいでしょうし。
まだ見ぬ主、その姿を想像するだけでも楽しい時間となります。
ティータイムの終了後、後はひたすら本のお手入れです。
たとえここに来た書物であっても、手を加えて上げなければ朽ちてしまいます。
そうなってしまえば、それは真の意味での知識の消失となってしまいます。
膨大な数がありますが、それでもこの作業を続けるのは契約という縛りではなく、純粋に私が本が好きだからです。
毎日手に触れてあげてお手入れをする、愛おしさが沸かないはずがありません。
私はこの作業を夕食を挟んで就寝の2時間前まで続けます。
本のお手入れの終わった後、私は一日の汚れを洗い流します。
お手入れする私自身が汚れていれば何の意味もありませんからね。
汚れを洗い流した後、今日たどり着いた書物の記録をし、それを終えたら一日のお仕事の終了です。
全てを終え、ベッドで眠りに付くまでの間、私は再びまだ見ぬ主のことを考えます。
そして、そのまま眠りに付きます。
そうすれば夢の中でなら会うことができるかも知れないから―――
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『―――様、紅茶をお持ちしましたよ。』
『あら、ありがとう。――、あなたも一緒にどう?』
『よろしいのですか?ありがとうございます、―――様』
『あなたの入れる紅茶はおいしいし、それに…独りで飲むより二人で飲んだほうが美味しいでしょう?』
『ふふ、そうですね。では新作のクッキーもお持ちしますね』
『……嬉しいけど、貴女のはつい食べ過ぎちゃうのよね……』
『大丈夫ですよ。甘さ、カロリー控えめですよ?
それに―――様は膨大な知識を得ることでカロリーを消化していらっしゃるでしょう?
大丈夫ですよ。それに栄養はいくところにいくはずです』
『……嫌味かしら?』
『そ…そんな訳ありませんよ。私はただ―――様のことを想って――』
『ふふ、冗談よ。やっぱり貴女をからかうのは面白いわね』
『あぅ…、ひどいですよぉ―――様ぁ』
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まだ見ぬ主、貴女は―
可愛らしい方でしょうか?美しい方でしょうか?
明るい方でしょうか?気高い方でしょうか?それとも内気な方でしょうか?
どのように笑う方なのでしょうか?
どのように怒るのでしょうか?
どのように人を、物を、書を、知識を愛する方なのでしょうか?
悠久の時の中、寂しさに囚われてしまった私のココロ。
どのように私の名前を呼んでくれますか?
私を愛してくれますでしょうか?
契約などではなく、私自身が望みます。
まだ見ぬ主、あなたがここに訪れるまで私は貴方を待ち続けましょう。
いつまでも、いつまでも……――
なかなかいい話でした
別に読みにくくもなかったですし
他人に尽くす女の子って素敵
出来るだけ早く七曜魔女が訪れることを願って……。
GJ!