幻想郷。
そこはいつもと変わらず、ただ自然のままの表情を見せていた。
だが、私、四季映姫はいつもの姿ではなかった。
なにせ、あの見るもの全てを威圧し、閻魔たる威厳を感じさせる服を着ていない。
それこそ今の姿を見て、私に気づける者などいないだろう。
そしてなにより、人里と魔法の森の境界とも言うべき場所にある香霖堂。
そこに私は居た。
「ほら、お茶が入ったよ。今日もお茶請けは煎餅だけどいいかな?」
「ええ、ありがとうございます」
お茶を受け取り口に運ぶ。
そのやり取りは自然なものだった。
当然だろう。今日も、と言うとおり私はよく香霖堂に来ていた。
ここには頻繁に来ているし、付き合いもそれなりのものだ。
だがそれにもかかわらず、私がここに来ている事を知っているものなど誰もいなかった。
いや、それは正確ではない。
誰も知らないのではない。誰にも知られないようにしているのだ。
その理由は偏に、秘密が、私のあまりに身勝手な秘密があるからだ。
それは些細な事だった。最初は些細な事だったのだ。
しかし、初めは些細な事だって、いつかは取り返しの付かないことになってしまう事だってあるのだ。
そんなこと、誰でもない、この私が一番知っていることだ。
それなのに、私はこの秘密を明かさないでいる。
だって、本当に楽しく、本当に嬉しいのだ。
四季映姫・ヤマザナドゥではない、本当の自分を出せることが、涙が出るほど幸せなのだ。
それ故に、この身が行う所業は許されないと知りながら、私は続けていく。
「大丈夫、必ず守ってみせる。
なに。霊夢や魔理沙は確かに大変だけども、まだ僕の方が一枚上手だよ」
私の不安に気づいたのか、彼はそう声を掛けてくれる。
その優しさが私を支えてくれる。
彼は周りに関心がなさそうで冷たくに感じるが、それが彼の優しさなのだと知っていた。
「頼りにしていますよ」
優しさに感謝を述べる。
心は決まった。否、この不徳を行った時から既に決まっている。
後戻りは出来ない。ならば、不徳の内にそれを越える幸せを掴むだけだ。
「今日は、もう時刻だね」
「そうですか。もう少し味わっていたかったのですが」
そう言うも、名残を捨て、直ぐに立ち上がり出口に向かう。
ドアノブに手を掛ける。だがそこで忘れものに気づく。
踵を返すと、霖之助も気づいたのかこちらに近づいてくる。
それに合わせて私も近づき、そして
映姫は僕からマントを受け取り
「じゃあ行ってきます!」
そう言って飛び出していった。
「ミスティア! ルーミア!」
「あれ? 今日は早いわねリグル」
「そーなのかー?」
窓の外で、ミスティア・ローレライとルーミアと、リグル・ナイトバグが
楽しそうに向こうの空へ飛んで行く。
僕は余ったお茶を飲み干しながら考える。
霊夢たちに隠しておく自信はある。勘が鋭くともいまだ子供だ。だが、
「僕に気づかれるぐらいじゃ、駄目だろう。閻魔様」
今日も今日とて幻想郷はいつも通りである。
そこはいつもと変わらず、ただ自然のままの表情を見せていた。
だが、私、四季映姫はいつもの姿ではなかった。
なにせ、あの見るもの全てを威圧し、閻魔たる威厳を感じさせる服を着ていない。
それこそ今の姿を見て、私に気づける者などいないだろう。
そしてなにより、人里と魔法の森の境界とも言うべき場所にある香霖堂。
そこに私は居た。
「ほら、お茶が入ったよ。今日もお茶請けは煎餅だけどいいかな?」
「ええ、ありがとうございます」
お茶を受け取り口に運ぶ。
そのやり取りは自然なものだった。
当然だろう。今日も、と言うとおり私はよく香霖堂に来ていた。
ここには頻繁に来ているし、付き合いもそれなりのものだ。
だがそれにもかかわらず、私がここに来ている事を知っているものなど誰もいなかった。
いや、それは正確ではない。
誰も知らないのではない。誰にも知られないようにしているのだ。
その理由は偏に、秘密が、私のあまりに身勝手な秘密があるからだ。
それは些細な事だった。最初は些細な事だったのだ。
しかし、初めは些細な事だって、いつかは取り返しの付かないことになってしまう事だってあるのだ。
そんなこと、誰でもない、この私が一番知っていることだ。
それなのに、私はこの秘密を明かさないでいる。
だって、本当に楽しく、本当に嬉しいのだ。
四季映姫・ヤマザナドゥではない、本当の自分を出せることが、涙が出るほど幸せなのだ。
それ故に、この身が行う所業は許されないと知りながら、私は続けていく。
「大丈夫、必ず守ってみせる。
なに。霊夢や魔理沙は確かに大変だけども、まだ僕の方が一枚上手だよ」
私の不安に気づいたのか、彼はそう声を掛けてくれる。
その優しさが私を支えてくれる。
彼は周りに関心がなさそうで冷たくに感じるが、それが彼の優しさなのだと知っていた。
「頼りにしていますよ」
優しさに感謝を述べる。
心は決まった。否、この不徳を行った時から既に決まっている。
後戻りは出来ない。ならば、不徳の内にそれを越える幸せを掴むだけだ。
「今日は、もう時刻だね」
「そうですか。もう少し味わっていたかったのですが」
そう言うも、名残を捨て、直ぐに立ち上がり出口に向かう。
ドアノブに手を掛ける。だがそこで忘れものに気づく。
踵を返すと、霖之助も気づいたのかこちらに近づいてくる。
それに合わせて私も近づき、そして
映姫は僕からマントを受け取り
「じゃあ行ってきます!」
そう言って飛び出していった。
「ミスティア! ルーミア!」
「あれ? 今日は早いわねリグル」
「そーなのかー?」
窓の外で、ミスティア・ローレライとルーミアと、リグル・ナイトバグが
楽しそうに向こうの空へ飛んで行く。
僕は余ったお茶を飲み干しながら考える。
霊夢たちに隠しておく自信はある。勘が鋭くともいまだ子供だ。だが、
「僕に気づかれるぐらいじゃ、駄目だろう。閻魔様」
今日も今日とて幻想郷はいつも通りである。